メンバーへの関わり
【形骸化を招く】「1on1は部下のための時間」を、取り違えていないか?
「1on1は部下のための時間」。そう掲げた結果、部下が話すことを何も用意しないまま、「手ぶら」で1on1にやって来る。そんな場面に心当たりのあるマネジャーも多いのではないでしょうか。
立命館大学大学院教授の樋口知比呂氏は、こうした状況を招く原因は1on1の位置づけの甘さにあると指摘し、1on1を評価プロセスの一部に組み込むことを提案します。
多くの企業が直面する1on1の形骸化から、どうすれば抜け出せるのか。PwCコンサルティングの加藤守和氏、KAKEAI代表取締役社長の皆川恵美を交えた議論は、1on1の目的をどう定めるかに始まり、生成AIが対話にどう関わるかにまで広がりました。

1on1の価値は「話した後」に表れる。働きがいと成果をつなぐ対話の条件
上司と部下の対話は、部下の働きがいや仕事の成果に、どのように結びつくのか──。立命館大学ビジネススクール教授の樋口知比呂氏、PwCコンサルティングの加藤守和氏、KAKEAI代表取締役社長の皆川恵美の3者に、これからの上司の役割、形だけの対話から抜け出す方法、生成AI時代の対話のあり方などを議論していただきました。
本鼎談は、樋口氏と皆川のプレゼンからスタート。樋口氏は、働く人の意欲がどのような条件で高まるのかを、産業・組織心理学の研究をもとに解説。皆川は、約1万人を対象にした1on1の実態調査から、成果につながる1on1とそうでない1on1の違いを報告しました。
本稿では、この二つの発表の内容をダイジェストで紹介します。

「育成キャンセル」は、上司だけの問題か。AI時代の若手の育て方
上司が部下や後輩への指導を控える「育成キャンセル」が注目を集めている。2026年9月21日、『月曜から夜ふかし』(日本テレビ系)が育成を避けたがる上司の本音を取り上げ、話題を呼んだ。その後、『ABEMA Prime』でも特集され、KAKEAI代表の本田英貴も出演している。
番組では、管理職の6割以上が「育成キャンセル」を経験しているという調査を起点に、上司がなぜ指導をためらうのかが議論された。
大手チェーン企業の人事部に所属し、自らも中間管理職として部下を育ててきたゲストのよっしー氏は、部下が自分を飛ばして相談窓口に訴えたことがあって以来、部下に言いたいことが言えなくなったと語った。
もっとも、上司が育成から手を引くのは、ハラスメントへの恐怖からだけではない。
昨年の東洋経済オンラインの記事では、仕事に追われ、部下を育てる余力のない管理職の間で「部下育成キャンセル界隈」という言葉が自虐的に使われていると紹介している*。
番組で紹介されたライトワークスの調査では、『何度指導しても改善が見込めず、効果がないと感じた』(55.4%)が、管理職が指導を控える理由の最多だった*。
つまり、「育成キャンセル」の背景には、部下に踏み込むことへの躊躇だけでなく、育てる余力のなさや、「言っても変わらない」という手応えのなさなど、さまざまな事情が絡んでいる。
そこに近年、生成AIの普及が加わり、若手が仕事を覚える環境そのものが揺らぎ始めている。
育成の必要性も難しさもこれまで以上に高まるなか、上司は部下にどう関わればいいのだろうか。
面倒見の良い店長の前で、次々に部下が倒れていく。崩壊を食い止めたのは、たった30分の対話だった(ウィル取締役・神野正和氏)
2018年、名古屋。会社が初めて関西の外に構えた拠点で、体調を崩した部下が一人、また一人と離脱していく。崩れゆくチームを前に、店長は呆然としていた。自分はちゃんと部下を見てきたはずなのに、なぜ――。
不動産仲介を中核とする株式会社ウィルの取締役、神野正和さんが8年前に経験した出来事だ。社内の誰よりも熱い思いで1on1に取り組む神野さんの原点は、ここにある。
1対1の対話は、崩れかけたチームをどう変えたのか。当時の状況をありのままに振り返ってもらった。
ABOUT THE SERIES
DISCOVERING 1on1とは
なぜ、あの人は1on1に情熱を注ぐのか。思いの奥には、対話の大切さに気づいた原点がある――。本シリーズでは、1on1に深く向き合ってきたキーパーソンに、その始まりの物語を聞く。さまざまな原体験に触れる中で、私たちも自らが対話を行う理由を見つけていく。
叱るのをためらう上司、傷つかずに成長したい若手——すれ違いを埋めるネガティブ・フィードバックの技術
ハラスメントと捉えられることを恐れ、部下に対する指導の仕方に悩んでいませんか?
ある調査では、上司の8割以上が「ミスをしてもあまり厳しく叱咤しない」と回答しています。その一方で、上司からのフィードバックの少なさに物足りなさを感じている部下も少なくありません。
最近は「褒める」「認める」といったポジティブ・フィードバックの重要性が強調されることが多いですが、それと同時に、ミスや望ましくない行動を是正するためのネガティブ・フィードバックも必要不可欠です。しかし、指摘の仕方によっては相手が過度に落ち込んだり反発したりして逆効果になる可能性もあり、より難しさを感じているマネジャーも多いのではないでしょうか。
そこで、ネガティブ・フィードバックに関する現状や研究結果を確認しつつ、若手の成長につながる指導の仕方を探っていきます。

リフレクションとは? 意味・やり方と部下の内省を促す問いを解説
納期に間に合わなかった。顧客からクレームを受けた。こうした問題が起きたとき、部下に「今回の仕事を振り返ってみよう」と促し、本人も改善策を口にしたとします。それでも、次の案件で同じ問題が繰り返されることがあります。
人は、仕事を経験しただけで自動的に成長するわけではありません。同じ出来事を経験しても、そこから判断の癖や成功の要因をつかみ、次の仕事に生かせる人もいれば、経験がその場限りで終わる人もいます。その違いを生むのが、経験を捉え直して意味を見いだすリフレクションです。
本記事では、リフレクションの意味と理論的な背景を確認します。さらに、職場における内省支援の効果やマネジャー自身の振り返り方、1on1で部下の内省を促す問いを解説します。
無理に腹を割らなくていい――対人関係が苦手なマネジャーの負荷を下げる二つの方法
苦手な部下がいる。それでも立場上、ミスを指摘したり、耳の痛いフィードバックを返さなければならない。でも、そのたびに気が重くなり、つい後回しにしてしまう——対人関係に苦手意識を持つマネジャーなら、思い当たる場面ではないだろうか。しかもやっかいなのは、この心理的な重さが、避けようとするほど増していくことだ。
では、苦手な部下とどう向き合い、マネジメントを成り立たせていけばいいのか。対人苦手意識の生成過程について研究する東京未来大学こども心理学部の日向野智子准教授へのインタビューの後編では、その具体策を紹介する。

東京未来大学こども心理学部 准教授 昭和女子大学大学院生活機構研究科後期博士課程を修了。博士(学術)。東洋大学21世紀ヒューマン・インタラクション・リサーチ・センターPD、立正大学心理学部特任講師などを経て、2013年に東京未来大学こども心理学部専任講師に着任。2017年より現職。専門は対人社会心理学。対人関係における苦手意識や対人ストレス、ソーシャルスキルを主なテーマに研究を続けている。
🔹前編記事
苦手な部下への一言が、なぜこんなに重いのか――マネジャーを縛る「対人苦手意識」の正体
「この件、あの部下に言わないといけない。でも、どう切り出そう」。そう迷ううちにタイミングを逃し、その日も言えずに終わる——。特定の相手との対話になると気が重くなり、つい後回しにしてしまう。人付き合いに苦手意識を持つマネジャーには、覚えがあるのではないだろうか。
部下を支えるリーダーシップが求められる今、対話から逃げられない場面はむしろ増えている。
なぜ、避けたいのに避けられず、避けるほど苦しくなるのか。対人苦手意識の生成過程を研究する東京未来大学こども心理学部の日向野智子准教授に、その仕組みを聞いた。前編では「なぜ避けてしまうのか」を解き明かす。

東京未来大学こども心理学部 准教授 昭和女子大学大学院生活機構研究科後期博士課程を修了。博士(学術)。東洋大学21世紀ヒューマン・インタラクション・リサーチ・センターPD、立正大学心理学部特任講師などを経て、2013年に東京未来大学こども心理学部専任講師に着任。2017年より現職。専門は対人社会心理学。対人関係における苦手意識や対人ストレス、ソーシャルスキルを主なテーマに研究を続けている。
信頼される上司は、なぜ「短く・頻繁に」話すのか。「長さより頻度」の理由と実践のコツ
部下とのコミュニケーションが重要なのは分かっていても、目の前の業務が忙しくて時間が取れない、若手に話が通じない、声のかけ方が分からない——そんな難しさを感じているマネジャーは少なくないでしょう。
よくあるアドバイスとして「コミュニケーションは“一度の長さ”より“頻度”が大事」、「毎日ちょっとでも声をかけることを習慣づけよう」というものがありますが、なぜ“長さ”より“頻度”なのでしょうか?
ここでは、調査研究や企業事例を元に対話の長さや声掛けの頻度による効果の違いを確かめ、部下とのコミュニケーションに対する苦手意識を克服するコツをお伝えします。

耳の痛いことを伝える六つのポイントとは? コミュニケーションが苦手なマネジャーの実践的会話術
対人場面に苦手意識を持つマネジャーが、メンバーと必要なコミュニケーションを重ねる方法を模索する企画。自分も相手も尊重しながら率直に思いを伝え合う「アサーティブネス」にそのヒントを得るべく、長年この領域の研究を続ける近畿大学の堀田美保教授に話を聞いた。
前編では、コミュニケーションが苦手なマネジャーが躓きやすいポイントを整理し、それをほぐすアサーティブネスの基本的な考え方を紹介した。
後編で扱うのは、より具体的な実践方法だ。頭の中のモヤモヤをそのまま口に出す「実況中継」、耳の痛いことを伝える六つのポイント、相手が変わらなくても対話を動かす向き合い方。明日から試せるテクニックを、堀田教授の解説とともに紹介する。
近畿大学総合社会学部総合社会学科 教授
大阪大学大学院前期課程、人間科学研究科を修了後、カナダCarleton大学にてPh.D(Psychology)を取得。現在、近畿大学 総合社会学部 心理系専攻にて、社会心理学などを担当。アサーティブジャパン認定講師、理事。主な著作に『アサーティブネス: その実践に役立つ心理学』(ナカニシヤ出版)、『自分に向き合うアサーティブネス(仮)』(ナカニシヤ出版より近刊)、『現代文化スタディーズ』(共編著、晃洋書房)、『テキスト心理学 心の理解を求めて』(分担執筆、ミネルヴァ書房)など。
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コミュニケーションが苦手なマネジャーが知っておきたい思考のクセ
「これを言ったら傷つけるかもしれない」「部下に話しかけるタイミングが、つかめない」――そう考え込んでいるうちにタイミングを逃し、言えないまま終わってしまう。コミュニケーションに苦手意識を持つマネジャーは、こんな悩みを抱えていないだろうか。
対人場面での心理的負荷が高く、その負荷を下げるために会話の機会を回避・最小化しようとする――こうした特性はマネジメントの壁となり得るが、必要なコミュニケーションを取るための方法はある。その手がかりの一つとなるのが、自分も相手も尊重しながら率直に思いを伝え合う「アサーティブネス」だ。
この領域の研究を長年続ける近畿大学の堀田美保教授に話を聞いた。
近畿大学総合社会学部総合社会学科 教授
大阪大学大学院前期課程、人間科学研究科を修了後、カナダCarleton大学にてPh.D(Psychology)を取得。現在、近畿大学 総合社会学部 心理系専攻にて、社会心理学などを担当。アサーティブジャパン認定講師、理事。主な著作に『アサーティブネス: その実践に役立つ心理学』(ナカニシヤ出版)、『自分に向き合うアサーティブネス(仮)』(ナカニシヤ出版より近刊)、『現代文化スタディーズ』(共編著、晃洋書房)、『テキスト心理学 心の理解を求めて』(分担執筆、ミネルヴァ書房)など。
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「合理的配慮」は対話から。成果を上げるニューロダイバーシティの本質
障がい者雇用において、合理的配慮と成果の両立は可能なのか?——この問いに対し、独自の「3ステップ」と「フルリモート」を武器に、精神・発達障がい者雇用の新たなスタンダードを築いているのが日揮グループの特例子会社・日揮パラレルテクノロジーズ(JPT)です。
同社は「ニューロダイバーシティアワード2025」においてニューロダイバーシティ賞を受賞するなど、先進事例として注目されています。
今回は同社社長の阿渡健太氏にインタビュー。阿渡氏自身も身体障がい者であり、日揮グループで障がい者採用を含めた人事担当者として勤めてきた背景があります。
なぜニューロダイバーシティには対話が必要なのか。マネジャーの属人的な頑張りに頼らない、再現性のある組織設計について伺いました。

日揮パラレルテクノロジーズ 代表取締役社長
1986年神奈川県横須賀市生まれ。先天性の両上肢障害がある。2005年に日揮(現日揮ホールディングス)入社し、人事を経験。2021年の日揮パラレルテクノロジーズ設立に携わり、2024年に社長就任。パラテコンドー日本代表選手としても活動する。
「お前、いいやつだな」と言えない職場で。産業医・大室正志氏が説く、マネジャーが頼るべき「主語」
職場から「いいやつ」が見えにくくなっている──。気配りをする人、頼まれごとを引き受ける人、場をなごませる人。組織の潤滑油のような存在が、以前より割に合わない立ち位置になっているのではないか。
ハラスメントへの警戒、リモートワークの定着、個人主義の浸透。他人との摩擦を避けられる環境が整うほど、人のために動くこと自体が損に感じられる。組織は人の関わりで成り立っているはずなのに、その関わりが痩せていく。
現代に漂うこの感覚を、複数の企業で産業医を務める大室正志氏はどう捉えているのだろうか。
