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コミュニケーションが苦手なマネジャーが知っておきたい思考のクセ
コミュニケーションが苦手なマネジャーが知っておきたい思考のクセ

コミュニケーションが苦手なマネジャーが知っておきたい思考のクセ

「これを言ったら傷つけるかもしれない」「部下に話しかけるタイミングが、つかめない」――そう考え込んでいるうちにタイミングを逃し、言えないまま終わってしまう。コミュニケーションに苦手意識を持つマネジャーは、こんな悩みを抱えていないだろうか。

対人場面での心理的負荷が高く、その負荷を下げるために会話の機会を回避・最小化しようとする――こうした特性はマネジメントの壁となり得るが、必要なコミュニケーションを取るための方法はある。その手がかりの一つとなるのが、自分も相手も尊重しながら率直に思いを伝え合う「アサーティブネス」だ。

この領域の研究を長年続ける近畿大学の堀田美保教授に話を聞いた。

堀田 美保 近畿大学総合社会学部総合社会学科 教授

大阪大学大学院前期課程、人間科学研究科を修了後、カナダCarleton大学にてPh.D(Psychology)を取得。現在、近畿大学 総合社会学部 心理系専攻にて、社会心理学などを担当。アサーティブジャパン認定講師、理事。主な著作に『アサーティブネス: その実践に役立つ心理学』(ナカニシヤ出版)、『自分に向き合うアサーティブネス(仮)』(ナカニシヤ出版より近刊)、『現代文化スタディーズ』(共編著、晃洋書房)、『テキスト心理学 心の理解を求めて』(分担執筆、ミネルヴァ書房)など。

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目次

マネジャーはどこで詰まるのか

対人場面での心理的負荷が高いタイプ。一口にそう言っても、その特徴は様々だ。本稿では次のような傾向を一部あるいは全て有している人を仮定する。

  1. 1 雑談への抵抗感
  2. 2 相手の感情を読み取ることへの過剰な緊張
  3. 3 感情・意見の言語化が苦手
  4. 4 対人接触後の消耗度が高い
  5. 5 話しかけられるより話しかける方が圧倒的に苦手
  6. 6 拒否・否定・ネガティブ情報の伝達への強い忌避

これらの特徴がマネジャーの役割と重なるとどうなるか。「詰まり方」は色々な形で表れるだろう。

  1. A 距離の縮みにくさ コミュニケーションが事務的なやり取りに終始してしまい、部下から「人間味が見えない」と感じられる。
  2. B 過剰忖度 「今これを言ったら部下は落ち込むかも」「忙しそうだから後にしよう」と、フィードバックや指摘を先延ばし、言うべきことを飲み込んでしまう。結果、問題が大きくなってから指摘したり、次に同じ問題が起きたときに「前回言わなかった」ことが引け目になり、さらに言いにくくなったりする。
  3. C 不満の漏れ出し ため息、目を合わせない、返信の遅れ、そっけない返答。過剰忖度で飲み込み続けた不満が、言語化されないまま態度に漏れ出し、部下に無言の「圧」として伝わってしまう。
  4. D 過剰準備 フィードバックなどの言いにくいことを伝える前に、頭の中で何度も話す内容をリハーサルし、切り出し方を入念に組み立てる。だが想定とは違う反応が返ってきた瞬間、その場で柔軟に言葉を返せなくなる。
  5. E 業務偏重のコミュニケーション 関係性構築やコンディション把握の対話が苦痛なので、コミュニケーションが「進捗確認」「タスク管理」に偏る。
  6. F 仲介回避 部下同士の対立、他部署との合意形成など、対立調整を含む仲介業務から距離を取る。一歩引いた立場に身を置き、判断や介入を先送りしがちになる。

本稿では「B. 過剰忖度」にフォーカスする。フィードバックや業務上の指摘は、部下を育て、組織を前に進めるための中核的な行為だ。先延ばしを続ければ、部下は成長の機会を失い、上司本人も言葉にできない不満を抱え続けて消耗していく。

「相手も自分も尊重する」アサーティブネスという考え方

部下に言うべきことが言えない。この問題を解きほぐす鍵が、「アサーティブネス」だ。

「アサーティブネスとは、自分の気持ちを大切にし、心のうちに閉じ込めることなく、その気持ちを相手に届けやすくするためのスタンスとスキルの総体です。とはいっても、無理にでも相手にイエスと言わせる方法ではありません。相手も自分も尊重するコミュニケーションを指します」(堀田教授)

堀田教授は、「自分を尊重する・しない」と「相手を尊重する・しない」という二軸で、コミュニケーションの型を四象限に整理している。

この四象限のうち、対人場面に大きな負荷を感じやすい人の多くは「④受身型」に位置づけられるという。

「受身型」は、周囲に忖度し、我慢をし続ける傾向がある。その結果、不満を爆発させてしまったり、あるいはため息を漏らす、視線をそらす、そっけない返答をする、といった態度を無意識に取ってしまったりすることがある。

「頼まれた仕事を100%納得して引き受けているなら問題ありません。しかし多くの場合、どこかに小さな不満が残っているものです。『なんで自分ばかり』『これだけやっているのに誰も感謝しない』といった不満が大きくなると、次第に『相手が悪い』という方に思考が向かってしまいます」(堀田教授)

上司であれば、こうした不満が部下に向いてしまうおそれがある。

アサーティブネスの基本となる「五つの柱」

「受身型」から抜け出すには、何を心がければよいのか。堀田教授は、アサーティブに振る舞うための基本として「五つの柱」を挙げる。

  1. 1 誠実 自分の気持ちに正直になり、何を感じ、何を望んでいるのかを自分自身に問いかける。怒りや不満が湧いたら、その奥にあるものを探る。怒りは「自分が大切にしているもの」を映し出す手がかりでもある。相手に対しても誠実な態度で接し、思ってもいないことは口にしない。
  2. 2 率直 伝えたいことを、相手に伝わるように、具体的に、簡潔に言葉にする。「察してほしい」「空気を読んでほしい」では相手に届かない。態度や表情だけで示そうとせず、何をどうしてほしいのかを具体的に相手がわかる行動レベルにおとして、明確に言語化する。
  3. 3 対等 役職や経験、年齢に上下があっても、組織や部署の目標に向かって協働している人間としては対等である、という姿勢を保つ。相手を見下さず、自分も卑下しない。問題が生じたときは「問題」に焦点を当て、共に解決を探る。「あの人さえ変わってくれれば」という思考は、関係をこじらせる落とし穴になる。
  4. 4 自己責任 目の前の問題には、自分にも責任の一端があると引き受ける。部下が同じミスを繰り返した場合、それは自分が早めに声をかけてこなかった結果とも言えるかもしれない。状況や相手だけに原因を求めず、自分にできたこと、これからできることに目を向ける。
  5. 5 相手理解 相手にも事情がある、と想像をめぐらせる。「なぜできないのか」と問い詰める前に、「できない背景には何があるのだろう」と考えてみる。私的な事情があるのかもしれないし、業務量の問題かもしれない。その推測を率直かつ簡潔に口に出し、それに対する相手の言葉に耳を傾ける。それを意識するだけで、自らの語気は和らぎ、相手も応えやすくなる。

このうち、コミュニケーションに苦手意識を持つマネジャーがつまずきやすいのが「②率直」と「④自己責任」だ。

まず、心の中の不満や苛立ちをそのまま口にしてしまうことには気をつけたい。「またミスしたのか」「やる気はあるのか」などと感情のままに強い言葉をぶつけるのは、「率直」ではなく「攻撃」である。

「アサーティブネスは相手を責めない限りにおいて成立します。自分を主語にして『私は心配している』『私はこう感じている』と率直に伝えることが大事です」(堀田教授)

「自己責任」も常に意識しておきたい。その姿勢を持たないと、思わしくない状況になった時に、その理由を外に求めてしまいやすい。経緯はどうあれ、言いづらいからといって先延ばしを選択してきたのは自分である。その事実を引き受けて初めて「(望ましい状況を引き寄せるために)自分から相手に働きかける」「自分からコミュニケーションを取る」という選択肢が生まれる。

なお、この「自分から伝える」という行動は、部下に対してのみ求められるものではない。マネジャー本人が自身の上司にものを言えているか、困ったときに相談できているか、部下はその振る舞いを見ている。

マネジャー自身が自分の上司と必要なコミュニケーションが取れていないのに、「困ったら相談してほしい」と部下に伝えても、その言葉は響かない。アサーティブネスは、自分の上司や同格以上の相手に対しても発揮すべきものであることを、ぜひ頭の片隅に置いておいていただきたい。

本稿ではアサーティブネスの基本的な考え方を整理した。後編の記事では、具体的な実践の方法を紹介する。

🔹後編「耳の痛いことを伝える六つのポイントとは? コミュニケーションが苦手なマネジャーの実践的会話術」はこちら

(構成:堀尾大悟)

📂 心理的安全性を高める組織づくりと1on1の実践

アサーティブに率直な言葉を届けるには、相手が安心して受け取れる関係性が土台です。過剰忖度で言葉を飲み込んでしまう背景にも、率直に話せる空気があるかどうかが関わっています。下記の資料では、心理的安全性を阻む「静かな壁」の正体と3つの原因を整理し、段階に応じた1on1の設計と運用を紹介しています。

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🔹あわせて読みたい

・【最新版】アサーティブ・コミュニケーションとは? 職場への導入効果とハラスメント防止への活かし方

・個人と組織の成長が加速。マネジャーのための「1on1完全ガイド」

マネジャーはどこで詰まるのか

対人場面での心理的負荷が高いタイプ。一口にそう言っても、その特徴は様々だ。本稿では次のような傾向を一部あるいは全て有している人を仮定する。

  1. 1 雑談への抵抗感
  2. 2 相手の感情を読み取ることへの過剰な緊張
  3. 3 感情・意見の言語化が苦手
  4. 4 対人接触後の消耗度が高い
  5. 5 話しかけられるより話しかける方が圧倒的に苦手
  6. 6 拒否・否定・ネガティブ情報の伝達への強い忌避

これらの特徴がマネジャーの役割と重なるとどうなるか。「詰まり方」は色々な形で表れるだろう。

  1. A 距離の縮みにくさ コミュニケーションが事務的なやり取りに終始してしまい、部下から「人間味が見えない」と感じられる。
  2. B 過剰忖度 「今これを言ったら部下は落ち込むかも」「忙しそうだから後にしよう」と、フィードバックや指摘を先延ばし、言うべきことを飲み込んでしまう。結果、問題が大きくなってから指摘したり、次に同じ問題が起きたときに「前回言わなかった」ことが引け目になり、さらに言いにくくなったりする。
  3. C 不満の漏れ出し ため息、目を合わせない、返信の遅れ、そっけない返答。過剰忖度で飲み込み続けた不満が、言語化されないまま態度に漏れ出し、部下に無言の「圧」として伝わってしまう。
  4. D 過剰準備 フィードバックなどの言いにくいことを伝える前に、頭の中で何度も話す内容をリハーサルし、切り出し方を入念に組み立てる。だが想定とは違う反応が返ってきた瞬間、その場で柔軟に言葉を返せなくなる。
  5. E 業務偏重のコミュニケーション 関係性構築やコンディション把握の対話が苦痛なので、コミュニケーションが「進捗確認」「タスク管理」に偏る。
  6. F 仲介回避 部下同士の対立、他部署との合意形成など、対立調整を含む仲介業務から距離を取る。一歩引いた立場に身を置き、判断や介入を先送りしがちになる。

本稿では「B. 過剰忖度」にフォーカスする。フィードバックや業務上の指摘は、部下を育て、組織を前に進めるための中核的な行為だ。先延ばしを続ければ、部下は成長の機会を失い、上司本人も言葉にできない不満を抱え続けて消耗していく。

「相手も自分も尊重する」アサーティブネスという考え方

部下に言うべきことが言えない。この問題を解きほぐす鍵が、「アサーティブネス」だ。

「アサーティブネスとは、自分の気持ちを大切にし、心のうちに閉じ込めることなく、その気持ちを相手に届けやすくするためのスタンスとスキルの総体です。とはいっても、無理にでも相手にイエスと言わせる方法ではありません。相手も自分も尊重するコミュニケーションを指します」(堀田教授)

堀田教授は、「自分を尊重する・しない」と「相手を尊重する・しない」という二軸で、コミュニケーションの型を四象限に整理している。

この四象限のうち、対人場面に大きな負荷を感じやすい人の多くは「④受身型」に位置づけられるという。

「受身型」は、周囲に忖度し、我慢をし続ける傾向がある。その結果、不満を爆発させてしまったり、あるいはため息を漏らす、視線をそらす、そっけない返答をする、といった態度を無意識に取ってしまったりすることがある。

「頼まれた仕事を100%納得して引き受けているなら問題ありません。しかし多くの場合、どこかに小さな不満が残っているものです。『なんで自分ばかり』『これだけやっているのに誰も感謝しない』といった不満が大きくなると、次第に『相手が悪い』という方に思考が向かってしまいます」(堀田教授)

上司であれば、こうした不満が部下に向いてしまうおそれがある。

アサーティブネスの基本となる「五つの柱」

「受身型」から抜け出すには、何を心がければよいのか。堀田教授は、アサーティブに振る舞うための基本として「五つの柱」を挙げる。

  1. 1 誠実 自分の気持ちに正直になり、何を感じ、何を望んでいるのかを自分自身に問いかける。怒りや不満が湧いたら、その奥にあるものを探る。怒りは「自分が大切にしているもの」を映し出す手がかりでもある。相手に対しても誠実な態度で接し、思ってもいないことは口にしない。
  2. 2 率直 伝えたいことを、相手に伝わるように、具体的に、簡潔に言葉にする。「察してほしい」「空気を読んでほしい」では相手に届かない。態度や表情だけで示そうとせず、何をどうしてほしいのかを具体的に相手がわかる行動レベルにおとして、明確に言語化する。
  3. 3 対等 役職や経験、年齢に上下があっても、組織や部署の目標に向かって協働している人間としては対等である、という姿勢を保つ。相手を見下さず、自分も卑下しない。問題が生じたときは「問題」に焦点を当て、共に解決を探る。「あの人さえ変わってくれれば」という思考は、関係をこじらせる落とし穴になる。
  4. 4 自己責任 目の前の問題には、自分にも責任の一端があると引き受ける。部下が同じミスを繰り返した場合、それは自分が早めに声をかけてこなかった結果とも言えるかもしれない。状況や相手だけに原因を求めず、自分にできたこと、これからできることに目を向ける。
  5. 5 相手理解 相手にも事情がある、と想像をめぐらせる。「なぜできないのか」と問い詰める前に、「できない背景には何があるのだろう」と考えてみる。私的な事情があるのかもしれないし、業務量の問題かもしれない。その推測を率直かつ簡潔に口に出し、それに対する相手の言葉に耳を傾ける。それを意識するだけで、自らの語気は和らぎ、相手も応えやすくなる。

このうち、コミュニケーションに苦手意識を持つマネジャーがつまずきやすいのが「②率直」と「④自己責任」だ。

まず、心の中の不満や苛立ちをそのまま口にしてしまうことには気をつけたい。「またミスしたのか」「やる気はあるのか」などと感情のままに強い言葉をぶつけるのは、「率直」ではなく「攻撃」である。

「アサーティブネスは相手を責めない限りにおいて成立します。自分を主語にして『私は心配している』『私はこう感じている』と率直に伝えることが大事です」(堀田教授)

「自己責任」も常に意識しておきたい。その姿勢を持たないと、思わしくない状況になった時に、その理由を外に求めてしまいやすい。経緯はどうあれ、言いづらいからといって先延ばしを選択してきたのは自分である。その事実を引き受けて初めて「(望ましい状況を引き寄せるために)自分から相手に働きかける」「自分からコミュニケーションを取る」という選択肢が生まれる。

なお、この「自分から伝える」という行動は、部下に対してのみ求められるものではない。マネジャー本人が自身の上司にものを言えているか、困ったときに相談できているか、部下はその振る舞いを見ている。

マネジャー自身が自分の上司と必要なコミュニケーションが取れていないのに、「困ったら相談してほしい」と部下に伝えても、その言葉は響かない。アサーティブネスは、自分の上司や同格以上の相手に対しても発揮すべきものであることを、ぜひ頭の片隅に置いておいていただきたい。

本稿ではアサーティブネスの基本的な考え方を整理した。後編の記事では、具体的な実践の方法を紹介する。

🔹後編「耳の痛いことを伝える六つのポイントとは? コミュニケーションが苦手なマネジャーの実践的会話術」はこちら

(構成:堀尾大悟)

📂 心理的安全性を高める組織づくりと1on1の実践

アサーティブに率直な言葉を届けるには、相手が安心して受け取れる関係性が土台です。過剰忖度で言葉を飲み込んでしまう背景にも、率直に話せる空気があるかどうかが関わっています。下記の資料では、心理的安全性を阻む「静かな壁」の正体と3つの原因を整理し、段階に応じた1on1の設計と運用を紹介しています。

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執筆者
下元陽

「1on1総研」編集長。クリエイターチーム「BLOCKBUSTER」、ミクシィ、朝日新聞社、ユーザベースを経て2025年KAKEAI入社。これからの人間のつながり方に関心があります。

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