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内発的動機づけとは? 「やらされ感」を減らし主体性を引き出す方法
内発的動機づけとは? 「やらされ感」を減らし主体性を引き出す方法

内発的動機づけとは? 「やらされ感」を減らし主体性を引き出す方法

内発的動機づけは、部下のやる気を引き出すために知っておきたいキーワードの一つです。内発的動機づけは自分の内側から湧き上がるやる気のことであり、組織の生産性向上において部下の内発的動機づけをいかに高められるかが大きなポイントになります。

本記事では、アメリカの心理学者​​エドワード・デシ(Edward L. Deci)とリチャード・ライアン(Richard M. Ryan)が提唱した「自己決定理論」を中心に、内発的動機づけの心理学的背景と、社内や業務で実践しやすい内発的動機づけの高め方について解説します。

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目次

内発的動機づけとは?  意味と定義、関連語の紹介

内発的動機づけ(Intrinsic Motivation)は動機づけの一種で、活動そのものに達成感や満足感を見出していることを指します。例えば内発的動機づけが高まった状態で仕事に取り組む人は、お金や出世のために働くのではなく、仕事をすること自体に楽しみや価値を見出し、休日でも自ら望んで仕事に打ち込むことがあります。内発的動機づけが高い状態では、自発的にその活動に取り組むため、高い意欲を持続させることができます。

動機づけの意味

そもそも動機づけとは「やる気を引き出すこと」で、心理学的には「行動を始発させ、維持し、一定の方向に導く心理的エネルギー」と定義されます。やる気を引き出す要因が、興味・関心や自己満足など自分の内側にある場合を「内発的動機づけ」、金銭的な報酬や罰など外部環境にある場合を「外発的動機づけ」といいます。

外発的動機づけの意味

外発的動機づけとは、報酬・評価・罰など外部の要因によって動機づけることです。例えば、「売上目標を達成したらインセンティブを支払う」という仕組みは、インセンティブ(報酬)で売上の向上に対する従業員の意欲を引き出しています。外発的動機づけでは、対象となる行動を引き起こすことができます。しかし報酬を得る(または罰の回避)ことを目的とした行動であるため、上辺だけの行動変容に留まりやすくなります。

内発的動機づけと外発的動機づけの違い

デシとライアンによる複数の研究から、内発的に動機づけられた行動の方が、外発的に動機づけられた行動よりも活動の質が高いことが示されています。内発的に動機づけられた活動は、その活動自体が目的となるため、いわゆる「フロー体験」が生じやすく、活動の質が高まるのです。具体的には、物事の理解度が深まって知識が定着しやすいことや、創造性や柔軟性が増してより良い問題解決に辿り着きやすくなります。

外発的動機づけは、相手に「〜すべき」「〜しなければならない」という心理的な圧力を与えます。そのため、望ましい行動を引き出し、ルーティン課題における効率性を高める時には有効ですが、弊害もあります。活動への「やらされ感」が強いため、結果だけを追い求めて「手抜き」や「不正」を誘発すること、また、行動は報酬量に依存するため、一度外発的に動機づけると報酬を止めづらくなってしまいます。

内発的動機づけと外発的動機づけの違い
内発的動機づけ 外発的動機づけ
誘因 自分の内側から湧き出る感情
例)満足感、達成感、興味など
自分の外側にある報酬・罰則
例)金銭、地位、罰則など
活動の捉え方 活動すること自体が目的。
活動はやりがいや楽しみを感じること。
活動は報酬を得る/罰を回避するための手段。
活動は統制されており、「〜しなければならない」という義務感がある。
持続性 高い 低い
(報酬や罰がなくなると消失)
活動の質 創造性や柔軟性を高める
深く理解し、知識が定着する
より良い問題解決に辿り着きやすい
単純作業のペースを早める
結果を重視し、プロセスが軽視される
(活動の形骸化)

内発的動機づけと外発的動機づけの関係性

内発的動機づけと外発的動機づけは、相反するものではありません。外発的動機づけが内発的動機づけを弱めることもあれば、外発的に動機づけられた活動が内在化し、内発的動機づけとして作用することもあります。各現象について解説します。

アンダーマイニング効果とは

アンダーマイニング効果とは、内発的動機で始めたことであっても、外発的動機づけが加わることで活動への興味を失ってしまう現象です。最初は熱意や情熱があっても、活動が報酬や罰と結びつくことで、「楽しみ」から報酬を得る「手段」に変化するために起こります。

デシとフラストはアンダーマイニング効果の例として、子供の習い事でのエピソードを挙げています。ある子供が大好きな楽器の演奏を習い始めましたが、「練習すればシールがもらえ、シールが貯まるとご褒美がもらえる」という仕組みを導入したところ、練習に大きな苦痛を感じるようになってしまいました。親子で話し合って練習とご褒美を切り離した結果、子供は再び楽器演奏を楽しむようになったそうです。

このエピソードから、ご褒美(報酬)が子供に毎日の練習を促すこと、さらに子供にとって楽器の演奏が「楽しいこと(内発的動機)」から「ご褒美を得る手段(外発的動機)」に変化したことで内発的動機づけが弱まった(苦痛になった)ことがわかります。デシとフラストはこうした状態を「報酬によって支配されている」状態だと解説しています。

報酬が持つ二つの機能

報酬には、動機づけの機能と、フィードバックとしての機能の二つがあり、後者の場合は内発的動機づけを維持することが可能です。

動機づけを目的とする報酬は、「目標達成をすればインセンティブを与える」のように、活動(目標達成)を引き出すための報酬(インセンティブ)として機能します。ここでは報酬が外発的動機づけの要因となり、内発的動機づけを弱めます。

一方、同じインセンティブ制度であっても、フィードバックを目的としていれば、メンバーは「自分が組織に貢献できた」、「頑張りを認めてもらえた」という感覚を持てるため、内発的動機づけを弱めません。むしろ、「もっと貢献したい」と内発的動機を強める場合もあります。

報酬の効果は渡す時の「伝え方」によって変わります。内発的動機づけを維持させるためには、(1)相手への貢献をねぎらうこと、(2)成果に見合った報酬にすることの二つを心がけましょう。

外発的動機づけから内発的動機づけに変える「内在化」とは

報酬やルールなどの外部要因によって始めた行動も、自分にとって意味のあることとして取り込めば、自発的な行動に変わっていきます。このプロセスを「内在化」といいます。

内在化には「取り入れ」と「統合」の2種類があります。取り入れは、外発的に動機づけられた活動やルールを鵜呑みにすることです。自分の価値観とは融合せず、「〜しなければならない」という義務感が行動を引き起こしています。取り入れられた行動は「本当にやりたいこと」ではないため、自己実現に向けて遠回りをする、挑戦に失敗する、周囲に反抗する、といった弊害が生じます。こうした場合、精神的健康度も低下します。

統合は、ルールや仕組みを咀嚼し自分の価値観に組み込むことです。活動することが自分の価値観の一部になっているため、内発的に動機づけられて高い意欲を持って活動に取り組むことができます。こうした場合は、活動の質が向上し、良い結果や精神的な健康に繋げられます。

例えば、同じ営業職でもインセンティブのために売上を作っている場合、お願い営業など強引な提案をするかもしれません。一方、自社プロダクトを本当に良いものだと捉えている営業担当者なら、「自社プロダクトをより多くの顧客に使ってもらうためにどうすれば良いか」を考え、提案方法を改善しながら熱心に営業活動に取り組むでしょう。

自己決定理論:内発的動機づけの心理学的背景

上司が部下のモチベーションを高めようとしたとき、その働きかけが外発的動機づけとして作用してしまうことがあります。大切なのは、「どう動機づけるか」ではなく、「部下が自ら動機づける条件をどう作り出すか」という視点を持つことです。ここでは、内発的動機づけを高める三つの基本的な欲求について解説します。

❶自律性

デシとフラストによると、内発的動機づけは互いの自律性を尊重し合う人間関係の中で育ちます。人は誰でも「自分のことは自分で決めたい」という内なる欲求を持っており、その心は他者から選択の機会を提供されることで育まれていきます。

部下の自律性を伸ばすためには、部下の視点に立って、部下の「挑戦したい」「責任を持ちたい」という気持ちを後押しすることが欠かせません。

仕事の場面であれば、どのようなプロジェクトに参加し、日々どのようなスケジュールで動くのかなど、大小さまざまな場面で部下に選択の機会を提供することがその第一歩となります。

❷有能感

二つ目の基本的な欲求は、環境と効果的に関わることで育まれる有能感です。部下の有能感を高めるためには、部下にとって適切なレベルの挑戦ができるよう選択を支援し、部下の行動とその結果が明確にわかる状況を作ることが大切です。自分が効果的に行動できたことが分かれば、有能感を持つことができます。このような有能さと自律性の両方を感じられる挑戦は、部下の心身の健康や動機づけ、満足感を高めます。

なお、部下に承認や褒め言葉を伝える際は注意が必要です。褒め言葉が外発的動機づけになると、部下は褒められるために仕事をするようになり、仕事に対する内発的動機づけが弱まってしまうからです。部下を褒める際は、結果に対する肯定的なフィードバックとして伝え、動機づけを目的とした報酬にならないよう配慮しましょう。

例えば、「今月目標数字を達成してくれたお陰でチームの士気も上がったよ。来月もぜひがんばってね!」 といった労う言葉は、達成への労いと次月への励ましと共に、チームに貢献できた、という有能感も育てます。一方で、「今月の達成、よく頑張ったね。このまま再現性を持って達成し続けられたら、次回の人事評価で昇進を検討しようと思う」といった声かけは、上司にとっては労いや励ましのつもりでも、メンバーにとっては「昇進」を報酬とした外発的動機づけとして捉えられてしまうリスクがあります。

❸関係性

最後の基本的な欲求は関係性への欲求です。人は自分が決定権を持つ「自律性」に加え、他者と結びつき、互いに頼り頼られたいと思う「関係性」を求めています。自分の意思で他者を頼れる「健全な相互依存関係」が成り立つとき、人はさまざまな良い影響を受けます。

関係性への欲求は上司ー部下などの個人同士の関係だけでなく、集団(例えば自分が在籍する企業やチーム)への所属にも向けられます。自分の所属する組織が自分のアイデンティティの一部となることで、組織の考え方が自分の価値観として取り込まれていきます。その結果、組織の価値観や慣習に合わせた行動が内発的に動機づけられます。

内発的動機づけの具体例

仕事に対する内発的動機づけが高いメンバーがいると、チームの生産性はどのように変わるのでしょうか。近年AIの普及が進んでいますが、周囲を見渡すと、実際にAIを業務に活用したいという意欲は、人により大きく異なるのではないでしょうか。

AI技術に興味があり積極的に活用したい人は、誰に強制されるわけでもなく「AIでやってみた」と公私共に色々な使い方を編み出しています。周囲に積極的に使い方を広める人もいるのではないでしょうか。一方で技術にあまり興味のない人は、新しいツールを使うことを億劫に感じています。まさに前者は内発的動機づけが強い状態、後者は社内の方針や社会的な風潮に押されて取り組んでいる、内発的動機づけが弱い状態です。

このように内発的に動機づけられているかどうかで、仕事への向き合い方や生産性、精神面の負担は大きく異なります。内発的動機づけの高いメンバーが周囲に影響を与えれば、チーム全体の生産性を引き上げられます。やりがいや楽しみは人によって異なるため、部下を動機づけたいときは、その人の視点に立って考えましょう。対話を通じて部下への理解を深めながら、部下が自ら意思決定できるように促し、業務や目標が部下にとって意味のあるものだと、上司ー部下の間で共通認識を持つことが大切です。

内発的動機づけを高める方法

内発的動機づけを高めるためには、従業員の基本的欲求を満たす仕組み作りが求められます。選択機会を増やし、自律を土台とした有能感を育て、相互に頼れる関係を築くことへの欲求を満たすためには、どのような工夫が必要なのでしょうか。ここでは、全社的な視点と現場視点から、内発的動機づけを高める方法を具体的に解説します。

従業員の自律性を高めるキャリア支援制度の設計

従業員の自律性を高めるためには、従業員に選択の機会を提供する制度設計が求められます。異動や自己研鑽、業務ツールなど、トップダウンによる統制ではなく、従業員一人ひとりが主体的に選択できるように整えます。

例えばホームセンターのカインズでは、「DIY HR」と名付けた改革が行われ、社員がキャリアと学びの両面で自ら選択できる仕組みづくりを行いました。キャリアにおいては、会社都合中心だった人事異動に対し、手挙げ制・公募制を導入しました。学びにおいては、「CAINZアカデミアポータル」という自己学習のプラットフォームを設け、会社からの指示ではなく、従業員自身が学ぶテーマを選んで取り組めるようにしています。このように自律を促した結果、カインズでは、現場社員が自律的に顧客ニーズを把握し、商品やサービス改革を進めていく風土が醸成されていきました。

従業員の有能感を高めるインセンティブ制度の設計

有能感を高める方法として、インセンティブ制度や社内MVPなどの表彰制度も有効です。ただしインセンティブは目標達成への動機づけではなく、従業員の貢献に報いる制度として活用しましょう。動機づけを目的としない運用をすることで、内発的動機づけの低下を防ぎ、有能感を高めることができます。

上司から部下へ:三つの基本的欲求を満たす1on1

1on1やMBO(目標管理制度)は、三つの欲求を同時に満たす仕組みです。

1on1は、上司が部下への理解を深め、承認し、部下にとって目標がどのような意味を持つかを一緒に考える機会となります。対話を重ねて上司との関係が深まることで、部下の関係性への欲求も満たされます。

MBOを運用する際は、部下自身に目標を設定させ、進捗も自分で把握できるようにしましょう。自らの力量に見合った挑戦に取り組むことで、部下の有能感が育っていきます。

📂 1on1で「自律性・有能感・関係性」を育てるために

三つの基本的欲求を同時に満たす機会になる1on1。下記の資料では、1on1の準備・実施・振り返りの進め方に加え、メンバーの言葉を引き出す質問テンプレートを6カテゴリーで紹介しています。

📘 マネジャーのための1on1完全ガイド

上司から部下へ:業務の進め方や目標設定の支援

部下の自律性を高める方法の一つは、意思決定の場に部下を参加させることです。機密事項を扱う場合や、意思決定そのものの難易度が高い場合は、その遂行の方法を部下に委ねるのも一つの手です。部下自身がやり方を決めることで自律性が保たれますし、上司一人で考えるよりも効率的な方法が見つかることもあります。

半期や一年ごとに実施される目標設定の場面では、いま自分がすべきことや、将来達成すべきこと、想定される課題・障壁などを部下自身に考えてもらいましょう。マネジャーは情報提供やヒントを出すことに徹します。部下は自分の仕事を振り返りながら自分のレベルに合った目標を考え、次のステージに向けた挑戦意欲を持てるようになります。あわせて達成度や実績を測る指標も決めておけば、部下は自分の到達度を確認でき、成長の手応えを通じて有能感も育っていきます。

📂 「部下の視点」を引き出す問いかけのバリエーション

部下に意思決定や目標設定を委ねる場面では、相手の状況に合わせた問いかけが対話の質を左右します。下記の資料では、部下のタイプ別に特徴・コミュニケーション方針・具体的な質問例をまとめています。

📘 マネジャー向け1on1質問集

注意点1:メンバーの自律性と組織の「許容範囲」を両立させる

自律性を重んじても、組織として成立するためには制限が必要な場合もあります。どこまで自由に選んで良いか、という「許容範囲」を設定する際は、以下の三点を押さえましょう。

  • できるだけ許容範囲を広く設定して多くの選択肢を残す
  • 制限する理由を部下に明示する
  • 許容範囲を逸脱した際に生じ得るネガティブな結果について説明しておく

部下の価値観や内発的動機に寄り添いながら、組織としての許容範囲を丁寧に伝え、部下自身にも納得してもらうことが大切です。

注意点2:マネジャー自身が自律性を持つ

「やらされ感」を持っているマネジャーは、部下の自律性を支援できないことが研究から示されています。そのため、マネジャー自身の自律性を高め、内発的動機づけを強化することは、非常に重要な取り組みです。

デシは書籍で、自身のコンサルティングを通じてマネジャー層が変化した過程を紹介しています。それまで指示待ちで不満の多かったマネジャー層が、互いにコミュニケーションの機会を増やすことで協力関係が築かれ、トップに要望を出すようになりました。すると、マネジャー自身が部下の自律性を支えられるようになったといいます。マネジャー自ら選択肢を持ち、自律性を感じることで、上司・同僚・部下とのコミュニケーションが変わり、互いに自律性を支援する風土が生まれたのです。

内発的動機づけが重視される背景

内発的動機づけが重視される背景には、変化の激しい時代におけるイノベーション創出の必要性や人的資本経営、キャリア自律の要請などがあります。

市場環境や社会課題が複雑化し変化が早い現代では、従来の指示待ち型ではなく、自ら問いを設計し、柔軟な発想で従来にはない課題解決策を見出せる人材が求められています。部下の内発的動機づけを高めれば、部下は自社の課題や市場について深く理解し、創造的かつ柔軟に解決策を考えるようになるため、組織としてイノベーションを生み出しやすくなります。

また、終身雇用が崩壊し人材の流動性が高まると、より良い条件の企業を求めて従業員が転職するリスクが高まります。従業員の内発的動機づけを高めれば、自社の仕事に対して意味を感じ、仕事への満足度や組織に対するエンゲージメントが向上します。その結果、離職率の低下や定着率の向上が期待でき、人的資本経営の観点からも内発的動機づけの重要性が高まっています。

個人のキャリア形成においても、内発的動機づけは重要な役割を果たします。仕事に対する内発的動機づけが高い人は、自ら仕事に必要な知識を学び、自身の価値観と合致する仕事に手を挙げ、主体的にキャリア形成に取り組みます。キャリア自律を促進するという点でも、内発的動機づけへの注目が高まっています。

まとめ

内発的動機づけが高い状態では、人は活動すること自体に楽しみややりがいを感じ、自由な発想でより質の高いアウトプットを出すことができます。行動を引き出すための報酬や罰の提示は内発的動機づけを弱めます。部下の意欲を引き出すためには、「内発的動機づけが高まる条件をどう整えるか」という視点が重要です。

具体的には、部下が自ら行動を選択し、環境に適切に働きかけているという自律性と有能感を感じられる仕組みを作りましょう。内発的動機は人によって異なります。対話をして部下の価値観を理解し、部下の視点に立って承認や仕事の意味づけをおこなうことが必要不可欠です。

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内発的動機づけとは?  意味と定義、関連語の紹介

内発的動機づけ(Intrinsic Motivation)は動機づけの一種で、活動そのものに達成感や満足感を見出していることを指します。例えば内発的動機づけが高まった状態で仕事に取り組む人は、お金や出世のために働くのではなく、仕事をすること自体に楽しみや価値を見出し、休日でも自ら望んで仕事に打ち込むことがあります。内発的動機づけが高い状態では、自発的にその活動に取り組むため、高い意欲を持続させることができます。

動機づけの意味

そもそも動機づけとは「やる気を引き出すこと」で、心理学的には「行動を始発させ、維持し、一定の方向に導く心理的エネルギー」と定義されます。やる気を引き出す要因が、興味・関心や自己満足など自分の内側にある場合を「内発的動機づけ」、金銭的な報酬や罰など外部環境にある場合を「外発的動機づけ」といいます。

外発的動機づけの意味

外発的動機づけとは、報酬・評価・罰など外部の要因によって動機づけることです。例えば、「売上目標を達成したらインセンティブを支払う」という仕組みは、インセンティブ(報酬)で売上の向上に対する従業員の意欲を引き出しています。外発的動機づけでは、対象となる行動を引き起こすことができます。しかし報酬を得る(または罰の回避)ことを目的とした行動であるため、上辺だけの行動変容に留まりやすくなります。

内発的動機づけと外発的動機づけの違い

デシとライアンによる複数の研究から、内発的に動機づけられた行動の方が、外発的に動機づけられた行動よりも活動の質が高いことが示されています。内発的に動機づけられた活動は、その活動自体が目的となるため、いわゆる「フロー体験」が生じやすく、活動の質が高まるのです。具体的には、物事の理解度が深まって知識が定着しやすいことや、創造性や柔軟性が増してより良い問題解決に辿り着きやすくなります。

外発的動機づけは、相手に「〜すべき」「〜しなければならない」という心理的な圧力を与えます。そのため、望ましい行動を引き出し、ルーティン課題における効率性を高める時には有効ですが、弊害もあります。活動への「やらされ感」が強いため、結果だけを追い求めて「手抜き」や「不正」を誘発すること、また、行動は報酬量に依存するため、一度外発的に動機づけると報酬を止めづらくなってしまいます。

内発的動機づけと外発的動機づけの違い
内発的動機づけ 外発的動機づけ
誘因 自分の内側から湧き出る感情
例)満足感、達成感、興味など
自分の外側にある報酬・罰則
例)金銭、地位、罰則など
活動の捉え方 活動すること自体が目的。
活動はやりがいや楽しみを感じること。
活動は報酬を得る/罰を回避するための手段。
活動は統制されており、「〜しなければならない」という義務感がある。
持続性 高い 低い
(報酬や罰がなくなると消失)
活動の質 創造性や柔軟性を高める
深く理解し、知識が定着する
より良い問題解決に辿り着きやすい
単純作業のペースを早める
結果を重視し、プロセスが軽視される
(活動の形骸化)

内発的動機づけと外発的動機づけの関係性

内発的動機づけと外発的動機づけは、相反するものではありません。外発的動機づけが内発的動機づけを弱めることもあれば、外発的に動機づけられた活動が内在化し、内発的動機づけとして作用することもあります。各現象について解説します。

アンダーマイニング効果とは

アンダーマイニング効果とは、内発的動機で始めたことであっても、外発的動機づけが加わることで活動への興味を失ってしまう現象です。最初は熱意や情熱があっても、活動が報酬や罰と結びつくことで、「楽しみ」から報酬を得る「手段」に変化するために起こります。

デシとフラストはアンダーマイニング効果の例として、子供の習い事でのエピソードを挙げています。ある子供が大好きな楽器の演奏を習い始めましたが、「練習すればシールがもらえ、シールが貯まるとご褒美がもらえる」という仕組みを導入したところ、練習に大きな苦痛を感じるようになってしまいました。親子で話し合って練習とご褒美を切り離した結果、子供は再び楽器演奏を楽しむようになったそうです。

このエピソードから、ご褒美(報酬)が子供に毎日の練習を促すこと、さらに子供にとって楽器の演奏が「楽しいこと(内発的動機)」から「ご褒美を得る手段(外発的動機)」に変化したことで内発的動機づけが弱まった(苦痛になった)ことがわかります。デシとフラストはこうした状態を「報酬によって支配されている」状態だと解説しています。

報酬が持つ二つの機能

報酬には、動機づけの機能と、フィードバックとしての機能の二つがあり、後者の場合は内発的動機づけを維持することが可能です。

動機づけを目的とする報酬は、「目標達成をすればインセンティブを与える」のように、活動(目標達成)を引き出すための報酬(インセンティブ)として機能します。ここでは報酬が外発的動機づけの要因となり、内発的動機づけを弱めます。

一方、同じインセンティブ制度であっても、フィードバックを目的としていれば、メンバーは「自分が組織に貢献できた」、「頑張りを認めてもらえた」という感覚を持てるため、内発的動機づけを弱めません。むしろ、「もっと貢献したい」と内発的動機を強める場合もあります。

報酬の効果は渡す時の「伝え方」によって変わります。内発的動機づけを維持させるためには、(1)相手への貢献をねぎらうこと、(2)成果に見合った報酬にすることの二つを心がけましょう。

外発的動機づけから内発的動機づけに変える「内在化」とは

報酬やルールなどの外部要因によって始めた行動も、自分にとって意味のあることとして取り込めば、自発的な行動に変わっていきます。このプロセスを「内在化」といいます。

内在化には「取り入れ」と「統合」の2種類があります。取り入れは、外発的に動機づけられた活動やルールを鵜呑みにすることです。自分の価値観とは融合せず、「〜しなければならない」という義務感が行動を引き起こしています。取り入れられた行動は「本当にやりたいこと」ではないため、自己実現に向けて遠回りをする、挑戦に失敗する、周囲に反抗する、といった弊害が生じます。こうした場合、精神的健康度も低下します。

統合は、ルールや仕組みを咀嚼し自分の価値観に組み込むことです。活動することが自分の価値観の一部になっているため、内発的に動機づけられて高い意欲を持って活動に取り組むことができます。こうした場合は、活動の質が向上し、良い結果や精神的な健康に繋げられます。

例えば、同じ営業職でもインセンティブのために売上を作っている場合、お願い営業など強引な提案をするかもしれません。一方、自社プロダクトを本当に良いものだと捉えている営業担当者なら、「自社プロダクトをより多くの顧客に使ってもらうためにどうすれば良いか」を考え、提案方法を改善しながら熱心に営業活動に取り組むでしょう。

自己決定理論:内発的動機づけの心理学的背景

上司が部下のモチベーションを高めようとしたとき、その働きかけが外発的動機づけとして作用してしまうことがあります。大切なのは、「どう動機づけるか」ではなく、「部下が自ら動機づける条件をどう作り出すか」という視点を持つことです。ここでは、内発的動機づけを高める三つの基本的な欲求について解説します。

❶自律性

デシとフラストによると、内発的動機づけは互いの自律性を尊重し合う人間関係の中で育ちます。人は誰でも「自分のことは自分で決めたい」という内なる欲求を持っており、その心は他者から選択の機会を提供されることで育まれていきます。

部下の自律性を伸ばすためには、部下の視点に立って、部下の「挑戦したい」「責任を持ちたい」という気持ちを後押しすることが欠かせません。

仕事の場面であれば、どのようなプロジェクトに参加し、日々どのようなスケジュールで動くのかなど、大小さまざまな場面で部下に選択の機会を提供することがその第一歩となります。

❷有能感

二つ目の基本的な欲求は、環境と効果的に関わることで育まれる有能感です。部下の有能感を高めるためには、部下にとって適切なレベルの挑戦ができるよう選択を支援し、部下の行動とその結果が明確にわかる状況を作ることが大切です。自分が効果的に行動できたことが分かれば、有能感を持つことができます。このような有能さと自律性の両方を感じられる挑戦は、部下の心身の健康や動機づけ、満足感を高めます。

なお、部下に承認や褒め言葉を伝える際は注意が必要です。褒め言葉が外発的動機づけになると、部下は褒められるために仕事をするようになり、仕事に対する内発的動機づけが弱まってしまうからです。部下を褒める際は、結果に対する肯定的なフィードバックとして伝え、動機づけを目的とした報酬にならないよう配慮しましょう。

例えば、「今月目標数字を達成してくれたお陰でチームの士気も上がったよ。来月もぜひがんばってね!」 といった労う言葉は、達成への労いと次月への励ましと共に、チームに貢献できた、という有能感も育てます。一方で、「今月の達成、よく頑張ったね。このまま再現性を持って達成し続けられたら、次回の人事評価で昇進を検討しようと思う」といった声かけは、上司にとっては労いや励ましのつもりでも、メンバーにとっては「昇進」を報酬とした外発的動機づけとして捉えられてしまうリスクがあります。

❸関係性

最後の基本的な欲求は関係性への欲求です。人は自分が決定権を持つ「自律性」に加え、他者と結びつき、互いに頼り頼られたいと思う「関係性」を求めています。自分の意思で他者を頼れる「健全な相互依存関係」が成り立つとき、人はさまざまな良い影響を受けます。

関係性への欲求は上司ー部下などの個人同士の関係だけでなく、集団(例えば自分が在籍する企業やチーム)への所属にも向けられます。自分の所属する組織が自分のアイデンティティの一部となることで、組織の考え方が自分の価値観として取り込まれていきます。その結果、組織の価値観や慣習に合わせた行動が内発的に動機づけられます。

内発的動機づけの具体例

仕事に対する内発的動機づけが高いメンバーがいると、チームの生産性はどのように変わるのでしょうか。近年AIの普及が進んでいますが、周囲を見渡すと、実際にAIを業務に活用したいという意欲は、人により大きく異なるのではないでしょうか。

AI技術に興味があり積極的に活用したい人は、誰に強制されるわけでもなく「AIでやってみた」と公私共に色々な使い方を編み出しています。周囲に積極的に使い方を広める人もいるのではないでしょうか。一方で技術にあまり興味のない人は、新しいツールを使うことを億劫に感じています。まさに前者は内発的動機づけが強い状態、後者は社内の方針や社会的な風潮に押されて取り組んでいる、内発的動機づけが弱い状態です。

このように内発的に動機づけられているかどうかで、仕事への向き合い方や生産性、精神面の負担は大きく異なります。内発的動機づけの高いメンバーが周囲に影響を与えれば、チーム全体の生産性を引き上げられます。やりがいや楽しみは人によって異なるため、部下を動機づけたいときは、その人の視点に立って考えましょう。対話を通じて部下への理解を深めながら、部下が自ら意思決定できるように促し、業務や目標が部下にとって意味のあるものだと、上司ー部下の間で共通認識を持つことが大切です。

内発的動機づけを高める方法

内発的動機づけを高めるためには、従業員の基本的欲求を満たす仕組み作りが求められます。選択機会を増やし、自律を土台とした有能感を育て、相互に頼れる関係を築くことへの欲求を満たすためには、どのような工夫が必要なのでしょうか。ここでは、全社的な視点と現場視点から、内発的動機づけを高める方法を具体的に解説します。

従業員の自律性を高めるキャリア支援制度の設計

従業員の自律性を高めるためには、従業員に選択の機会を提供する制度設計が求められます。異動や自己研鑽、業務ツールなど、トップダウンによる統制ではなく、従業員一人ひとりが主体的に選択できるように整えます。

例えばホームセンターのカインズでは、「DIY HR」と名付けた改革が行われ、社員がキャリアと学びの両面で自ら選択できる仕組みづくりを行いました。キャリアにおいては、会社都合中心だった人事異動に対し、手挙げ制・公募制を導入しました。学びにおいては、「CAINZアカデミアポータル」という自己学習のプラットフォームを設け、会社からの指示ではなく、従業員自身が学ぶテーマを選んで取り組めるようにしています。このように自律を促した結果、カインズでは、現場社員が自律的に顧客ニーズを把握し、商品やサービス改革を進めていく風土が醸成されていきました。

従業員の有能感を高めるインセンティブ制度の設計

有能感を高める方法として、インセンティブ制度や社内MVPなどの表彰制度も有効です。ただしインセンティブは目標達成への動機づけではなく、従業員の貢献に報いる制度として活用しましょう。動機づけを目的としない運用をすることで、内発的動機づけの低下を防ぎ、有能感を高めることができます。

上司から部下へ:三つの基本的欲求を満たす1on1

1on1やMBO(目標管理制度)は、三つの欲求を同時に満たす仕組みです。

1on1は、上司が部下への理解を深め、承認し、部下にとって目標がどのような意味を持つかを一緒に考える機会となります。対話を重ねて上司との関係が深まることで、部下の関係性への欲求も満たされます。

MBOを運用する際は、部下自身に目標を設定させ、進捗も自分で把握できるようにしましょう。自らの力量に見合った挑戦に取り組むことで、部下の有能感が育っていきます。

📂 1on1で「自律性・有能感・関係性」を育てるために

三つの基本的欲求を同時に満たす機会になる1on1。下記の資料では、1on1の準備・実施・振り返りの進め方に加え、メンバーの言葉を引き出す質問テンプレートを6カテゴリーで紹介しています。

📘 マネジャーのための1on1完全ガイド

上司から部下へ:業務の進め方や目標設定の支援

部下の自律性を高める方法の一つは、意思決定の場に部下を参加させることです。機密事項を扱う場合や、意思決定そのものの難易度が高い場合は、その遂行の方法を部下に委ねるのも一つの手です。部下自身がやり方を決めることで自律性が保たれますし、上司一人で考えるよりも効率的な方法が見つかることもあります。

半期や一年ごとに実施される目標設定の場面では、いま自分がすべきことや、将来達成すべきこと、想定される課題・障壁などを部下自身に考えてもらいましょう。マネジャーは情報提供やヒントを出すことに徹します。部下は自分の仕事を振り返りながら自分のレベルに合った目標を考え、次のステージに向けた挑戦意欲を持てるようになります。あわせて達成度や実績を測る指標も決めておけば、部下は自分の到達度を確認でき、成長の手応えを通じて有能感も育っていきます。

📂 「部下の視点」を引き出す問いかけのバリエーション

部下に意思決定や目標設定を委ねる場面では、相手の状況に合わせた問いかけが対話の質を左右します。下記の資料では、部下のタイプ別に特徴・コミュニケーション方針・具体的な質問例をまとめています。

📘 マネジャー向け1on1質問集

注意点1:メンバーの自律性と組織の「許容範囲」を両立させる

自律性を重んじても、組織として成立するためには制限が必要な場合もあります。どこまで自由に選んで良いか、という「許容範囲」を設定する際は、以下の三点を押さえましょう。

  • できるだけ許容範囲を広く設定して多くの選択肢を残す
  • 制限する理由を部下に明示する
  • 許容範囲を逸脱した際に生じ得るネガティブな結果について説明しておく

部下の価値観や内発的動機に寄り添いながら、組織としての許容範囲を丁寧に伝え、部下自身にも納得してもらうことが大切です。

注意点2:マネジャー自身が自律性を持つ

「やらされ感」を持っているマネジャーは、部下の自律性を支援できないことが研究から示されています。そのため、マネジャー自身の自律性を高め、内発的動機づけを強化することは、非常に重要な取り組みです。

デシは書籍で、自身のコンサルティングを通じてマネジャー層が変化した過程を紹介しています。それまで指示待ちで不満の多かったマネジャー層が、互いにコミュニケーションの機会を増やすことで協力関係が築かれ、トップに要望を出すようになりました。すると、マネジャー自身が部下の自律性を支えられるようになったといいます。マネジャー自ら選択肢を持ち、自律性を感じることで、上司・同僚・部下とのコミュニケーションが変わり、互いに自律性を支援する風土が生まれたのです。

内発的動機づけが重視される背景

内発的動機づけが重視される背景には、変化の激しい時代におけるイノベーション創出の必要性や人的資本経営、キャリア自律の要請などがあります。

市場環境や社会課題が複雑化し変化が早い現代では、従来の指示待ち型ではなく、自ら問いを設計し、柔軟な発想で従来にはない課題解決策を見出せる人材が求められています。部下の内発的動機づけを高めれば、部下は自社の課題や市場について深く理解し、創造的かつ柔軟に解決策を考えるようになるため、組織としてイノベーションを生み出しやすくなります。

また、終身雇用が崩壊し人材の流動性が高まると、より良い条件の企業を求めて従業員が転職するリスクが高まります。従業員の内発的動機づけを高めれば、自社の仕事に対して意味を感じ、仕事への満足度や組織に対するエンゲージメントが向上します。その結果、離職率の低下や定着率の向上が期待でき、人的資本経営の観点からも内発的動機づけの重要性が高まっています。

個人のキャリア形成においても、内発的動機づけは重要な役割を果たします。仕事に対する内発的動機づけが高い人は、自ら仕事に必要な知識を学び、自身の価値観と合致する仕事に手を挙げ、主体的にキャリア形成に取り組みます。キャリア自律を促進するという点でも、内発的動機づけへの注目が高まっています。

まとめ

内発的動機づけが高い状態では、人は活動すること自体に楽しみややりがいを感じ、自由な発想でより質の高いアウトプットを出すことができます。行動を引き出すための報酬や罰の提示は内発的動機づけを弱めます。部下の意欲を引き出すためには、「内発的動機づけが高まる条件をどう整えるか」という視点が重要です。

具体的には、部下が自ら行動を選択し、環境に適切に働きかけているという自律性と有能感を感じられる仕組みを作りましょう。内発的動機は人によって異なります。対話をして部下の価値観を理解し、部下の視点に立って承認や仕事の意味づけをおこなうことが必要不可欠です。

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執筆者
1on1総研編集部

1on1のノウハウや組織課題、組織を活性化させるためのキーワードなどを掘り下げる記事を提供します。

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