
マネジメントスキルとは? 管理職に必要な七つのスキルと高め方を図解
「組織のパフォーマンスが上がらない」「部下が育たない」といった悩みを抱える管理職の方は多いのではないでしょうか。
組織のパフォーマンスを最大化し、成長していくためにはマネジメントスキルが欠かせません。本記事では、マネジメントスキルの意味と構成要素から、マネジメントスキルの伸ばし方まで実践的に解説します。
まずは、マネジャーの仕事の流れを「四つのステージ」で捉え、次にスキルの種類を「三つの分類」で整理します。そのうえで、日々の業務で磨ける「七つの具体的なスキル」に落とし込みます。この構造を押さえておくと、自分がいま何を磨くべきかが見えやすくなります。
管理職として成果が出ずに悩んでいる方、マネジメントスキルを伸ばしたい方はぜひ参考にしてください。
を見る
を閉じる
マネジメントスキルとは何か
マネジメントスキル(マネジメント能力)とは「管理能力」のことで、ビジネスにおいては、組織が目標達成に向けて成果を最大化するために、人材や資金、情報、時間などのさまざまな経営資源を管理する力を意味します。
プレイヤーから管理職へと役割が変わると、大きく二つの点で仕事に求められることが変わります。一つ目は、他者を通じて業績を出すことです。自ら動いて成果を出したプレイヤー時代と異なり、管理職は、部下に仕事を任せ、部下が高い成果を出せるよう取り組むことが求められます。
二つ目は短期業績と中長期の業績をバランスよく達成することです。管理職になると、今期の目標達成だけでなく、人材育成や組織の生産性向上など、数年先を見据えた動きも求められます。
こうした役割の変化に対応するため、管理職には自社や組織の状況を俯瞰し、経営資源を管理していくマネジメントスキルが求められるようになります。
マネジメントスキルとリーダーシップの違い
マネジメントスキルと「リーダーシップ」は似ている言葉ですが、その対象や求められる行動は異なります。マネジメントスキルは管理が中核となる一方、リーダーシップは、目標達成に向けてメンバーを鼓舞しチームを牽引することを意味します。
マネジメント業務とは? ジョブ・アサインメントモデルが示す四つのステージ
「ジョブ・アサインメントモデル」とは、「チームの業績を最大化しつつ部下の成長も実現するためにミドルマネジャーが身につけるべき行動を体系化したもの」です(出典:大久保幸夫『マネジメントスキル実践講座 部下を育て、業績を高める』)。
管理職は短期的な業績目標の達成と、人材育成やイノベーションの創出といった中長期の成果を両立することが求められます。業績を達成しながら人材育成を行うためには、「ジョブ・アサイメント」の実現が核となります。
ジョブ・アサインメントモデルでは、管理職の日常業務が「目標設定」、「職務分担」、「達成支援」、「仕上げ検証」という循環する四つのステージに分けられます。
ステージ1:目標設定
事業や自社、自組織が置かれている状況を俯瞰し、目標を自分の言葉で設定します。また、組織として取り組む業務を書き出して必要な行動を取捨選択し、目標達成に向けた障害の想定や関連部署との協力体制の構築などの下地づくりをします。
ステージ2:職務分担
タスクを分解して職務を再編し、部下に割り振っていきます。その際、部下の適性や志向を踏まえたマッチングや、部下の成長度合いに合わせたストレッチ目標を設定します。業務を分担する際は、目標や業務の意味づけや、自発性を促す手上げの誘導、権限委譲などをうまく取り入れましょう。
ステージ3:達成支援
部下に仕事を任せ、側面支援を行います。部下を見守り、フィードバックを行いながら、進捗上の課題を予測し、必要な支援や軌道修正を実行します。部下の手に負えなくなった際は、部下から業務を引き取ることもあります。
ステージ4:仕上げ検証
最後は次の目標設定へ繋げる段階です。もう1段仕事の質が高まるよう、最後の加筆修正を行い、完了を確認したら、質や成果の評価検証を行います。部下の素晴らしい成果は積極的に周囲に発信し、改善が必要な部分は改善指導をします。後工程の関係者からのフィードバックを伝えると部下は自分の仕事の影響力を感じられます。また管理職自身が内省や振り返りの機会を設けることも重要です。
この四つのステージは、マネジメントスキルを「いつ・どの場面で使うか」を示す地図にあたります。次に、スキルそのものを「種類」の面から整理した枠組みである、カッツのモデルを見てみましょう。
マネジメントスキルの全体像:カッツのモデル
カッツモデルとは、1950年代にアメリカの経営学者ロバート・L・カッツ氏が提唱した理論です。マネジメントに必要なスキルを、テクニカルスキル、ヒューマンスキル、コンセプチュアルスキルに分類しました。さらに管理職を三つの階層に分け、階層ごとに求められるスキルの割合が変化することを主張しています。
テクニカルスキル(業務遂行能力)
テクニカルスキルは、業務に必要な専門知識や実践的なスキルのことです。プレイングマネジャーや、部下の業務指導を行う現場寄りのマネジャーに強く求められます。
ヒューマンスキル(対人関係能力)
ヒューマンスキルは、コミュニケーション能力に代表される良好な人間関係を築く能力です。管理職は、部下や自分の上司、取引先や関連部署など、さまざまな立場の関係者と信頼関係を築くことが求められます。このスキルはどの階層でも重要ですが、部課長などのミドルマネジャーで特に重要となります。
コンセプチュアルスキル(概念化能力)
コンセプチュアルスキルは、物事の本質を見極め、複雑な問題を解決していくスキルです。組織をより良い方向に導くための目標設定や課題発見、戦略立案などの場面で必要となります。特に経営層に必要とされる能力です。
参考記事:「マネジメントに不可欠なコンセプチュアルスキルとは? その要素や伸ばし方を知ろう」

ここで注意したいのは、カッツモデルの3分類は、あくまでスキルの「大枠」を示したものだということです。「ヒューマンスキルを磨きましょう」と言われても、明日から何をすればよいかは分かりません。そこで次のセクションでは、この三つの分類それぞれに、実際に磨ける具体的なスキルを当てはめて紹介します。
管理職に必要なマネジメントスキル一覧
管理職に求められるスキルは多岐にわたりますが、ここでは七つのスキルを紹介します。
ちなみに次の図は、七つのスキルを「種類×使う場面」で並べた一覧です。種類はカッツモデルの3分類、場面はジョブ・アサインメントの4ステージです。
自分がいまつまずいている局面の列を見てください。たとえば任せ方に悩んでいるなら、「職務分担」の列です。そこにバーが通っているスキル(=コミュニケーション、目標伝達、コーチング、アセスメント)が、あなたが優先して磨くべき候補です。

❶分析力と問題解決力
分析力はデータや事実に基づいて現状を分析する力、問題解決力は分析結果から見出された問題に対し、解決への道筋を論理的に組み立て行動する力を指します。いずれも「コンセプチュアルスキル」に該当し、組織目標の設定や部下の達成支援、仕上げ検証のステージで必要なスキルです。
分析力が高いと、自社が置かれている環境や、自組織が果たす役割、現場の状況などを多角的に捉え、本質的な課題や問題点を見出せます。そのため、業務上の問題を速やかに解決できます。また、組織の実情に合った難易度の目標を設定し、振り返りにおける来期に向けた改善施策を立てられるため、組織や部下の成長を促すことができます。
❷アセスメントスキル
アセスメントスキルは、部下の特性や能力などを把握して客観的に評価するスキルです。業務の難易度や内容を理解し、部下との対話を通じた価値観や性格の把握が必要になるため、ヒューマンスキルとも、テクニカルスキルとも考えられるスキルです。アセスメントスキルは、職務分担や達成支援で特に使われます。
部下を正しく評価できると、それぞれの部下の能力を最大限に生かせる業務分担ができ、組織全体の生産性を高めやすくなります。また、部下の能力やモチベーションに合わせた目標設定と指導が可能になり、人材育成にも役立ちます。部下にとっても「きちんと自分を評価してくれる」上司になり、信頼関係を築きやすくなるでしょう。
❸目標伝達のスキル
目標伝達のスキルは、組織目標と部下一人ひとりの目標を関係者や部下自身に適切に伝える力です。ヒューマンスキルに分類されますが、目標を意味づけて翻訳するコンセプチュアルスキルの側面も含まれているでしょう。目標の伝達は、関係者との期待値調整(目標設定)や部下への落とし込み(職務分担)の際に発揮されます。
関係者の期待値調整を行う際は、論理的に組織目標を伝えることで、協力を得やすくなるでしょう。また目標を部下に伝える時には、部下が納得感を持って主体的に仕事に取り組めるよう中長期的な視点も踏まえた目標の意味づけを行うことが重要です。その結果、部下は仕事の意味や目標の意味を理解し、モチベーション高く仕事に取り組めるようになります。
❹進捗管理スキル
進捗管理スキルは、部下の目標達成を支援する際に特に重要なスキルです。ヒューマンスキルとテクニカルスキルの両方を併せ持つスキルと言えるでしょう。
進捗管理スキルが高い上司は、部下に仕事を丸投げせず、定期的に状況を確認し、適切な働きかけをしています。さらに、今後生じうる課題を想定し、事前の対策も怠りません。状況確認においては、部下から「報告・連絡・相談」ができるような雰囲気作りを行うとともに、管理職からも能動的に確認を行います。その上で、部下の特性や能力に応じた軌道修正や情報提供、フィードバックや見守りを行います。
❺コーチングスキル
コーチングスキルは、対話を通じて自発的な行動を引き出し成長を支援する力で、ヒューマンスキルに含まれます。コーチングによって部下が自ら考え、自律して職務を遂行できるようになれば、組織全体の生産性向上が期待できます。
特にコーチングの重要な要素であるフィードバックは、部下の達成支援や振り返り(仕上げ検証)において有用です。部下の業務に対しリアルタイムでフィードバックを行えば、部下は安心して業務に集中できます。また振り返りの際に適切なフィードバックを行うことで、部下のモチベーションを高め、主体的に行動できる人材へと成長を促すことができます。
フィードバックの方法についてはこちらの記事もご参考ください。
📘「フィードバックとは? 響かない原因と「部下が変わる伝え方」を徹底解説」
❻業務遂行スキル
業務遂行スキルは、実務を進めるために必要な専門スキルのことで、プレイングマネジャーでなくても身につけておきたいスキルです。たとえ業務から離れたとしても、適切な目標設定や部下への指導、問題解決においては、業務遂行スキルが必要になるからです。
業務遂行スキルが高い上司は、現場目線での判断・対応ができ、部下から信頼を得やすくなります。目標設定の場面では、業務を深く理解した上で、適切な難易度の目標を設定し、組織で取り組むべき業務の仕分けができます。達成支援や人材育成においては、実践的かつ具体的な助言や指導ができ、問題発生時も、状況の理解と実効性のある改善策の立案がしやすくなります。部下の業務を速やかに引き取ることも容易いでしょう。
❼コミュニケーションスキル
コミュニケーションスキルは、あらゆる業務で求められる、ヒューマンスキルの代表格です。上の図で唯一、ステージ全てにバーが通っているように、他の六つのスキルを支える土台にあたります。
コミュニケーションスキルの高い管理職は、部下や利害関係者と良好な関係を築き、業績達成や中長期の成果作り、人材育成のあらゆる面で協力体制を作っていくことができるようになります。
コミュニケーションスキルが高いと、部下に対して指導や激励、傾聴など、場面に応じて多様なコミュニケーションスタイルを使い分けられるようになります。その結果、部下の性格や能力、業務状況の理解を深め、良好な関係を築けるようになります。他部署や経営層、顧客などと良好な関係を築ければ、目標に対する期待値調整ができたり、業績達成に向けて協力を要請したりすることで、成果を作りやすい環境を作っていけるでしょう。
マネジメントスキルが高い人・低い人の違い
マネジメントスキルの高い人と低い人は、日々の行動が大きく異なります。次の比較表をもとに、自分がどちらの行動を取りやすいかを振り返ってみましょう。磨くべきスキルが見えてくるはずです。
マネジメントスキルが低い人の特徴
マネジメントスキルが低い人はコミュニケーションが苦手なことが多く、役割分担、進捗管理、意思決定の三つの側面で困難を抱えやすくなります。
目標設定や業務分担においては、部下の能力や性格などを踏まえずに決めてしまい、部下の力を十分に引き出せない傾向があります。反対に、部下に仕事を任せることができず、自分で業務を抱え込んでしまう管理職もいるでしょう。いずれの場合も、組織としてのパフォーマンスが低下し、成果を残すことが難しくなります。
進捗管理においては、進捗の遅延や大きなトラブルが発生しやすくなります。背景には、部下に仕事を丸投げしたり、部下が話しかけづらく「報告・連絡・相談」ができずに問題を一人で抱え込んだりすることが考えられます。さらに、マネジメントスキルが低い管理職は意思決定力も弱いために対応方針を迅速に決められず、トラブル発生時に対応の遅れや現場の混乱を招くことがあります。
このように業務上のマネジメントが上手くいかないと、部下との信頼関係が築きにくくなります。さらに、感情的になって部下を叱責してしまえば人材育成にも悪影響をもたらします。
マネジメントスキルが高い人の特徴
マネジメントスキルが高い管理職は、高いコミュニケーション力で部下と信頼関係を築き、適材適所の業務分担で組織の力を最大化します。
マネジメントスキルが高い管理職は、日頃から部下とコミュニケーションを取り、部下の状況や考えを傾聴しています。そのため、部下の強みや能力を踏まえた適切な目標を設定し、一人ひとりに合わせた支援を行うことができます。進捗管理においても、問題の発見が早く、迅速に問題解決に取り組むことができます。そのため、組織としてのモチベーションや生産性が高まり、目標達成に近づくでしょう。
結果として、組織の生産性が上がり、人材の育成が進むため、中長期的な成果にも繋げやすくなります。
マネジメントスキルの高め方
マネジメントに必要な考え方は、書籍や動画、社内外の研修で学ぶことができます。
経営学などを学んで自身の視座を高める、問題解決や目標設定に関するフレームワークを学んで論理的思考力を伸ばす、マネジメント論やコミュニケーションスキルを学ぶなど、そのアプローチはさまざまあります。
以下に参考図書・動画例を挙げておきますので、学び方に悩んだ時はぜひ活用してみてください。
『マネジメント[エッセンシャル版] - 基本と原則』
ピーター・F・ドラッカー (著), ダイヤモンド社
『マネジメントスキル実践講座-部下を育て、業績を高める』
大久保幸夫 (著) 経団連出版
『部下をもったらいちばん最初に読む本』
橋本拓也 (著) アチーブメント出版
『マネジャーの教科書――ハーバード・ビジネス・レビュー マネジャー論文ベスト11』
ハーバード・ビジネス・レビュー編集部 (編集) ダイヤモンド社
マネジメントスキルの向上には、知識の吸収に加え、それを現場で生かすことが不可欠です。
例えば、SMARTの法則で部署の目標設定をしてみる、傾聴スキルを学んで1on1の場で実践してみる、など小さなところから実践してみましょう。学びが自分のものとして使えるようになり、自然とマネジメントスキルが向上しているはずです。
また、コミュニケーションスキルを高める際には、実際に自らコーチングを受けてみるといった体験学習も有効です。
ぜひ、今日から一つずつマネジメントスキルを学び、積極的な実践を心がけてみてください。
マネジメントスキルとは何か
マネジメントスキル(マネジメント能力)とは「管理能力」のことで、ビジネスにおいては、組織が目標達成に向けて成果を最大化するために、人材や資金、情報、時間などのさまざまな経営資源を管理する力を意味します。
プレイヤーから管理職へと役割が変わると、大きく二つの点で仕事に求められることが変わります。一つ目は、他者を通じて業績を出すことです。自ら動いて成果を出したプレイヤー時代と異なり、管理職は、部下に仕事を任せ、部下が高い成果を出せるよう取り組むことが求められます。
二つ目は短期業績と中長期の業績をバランスよく達成することです。管理職になると、今期の目標達成だけでなく、人材育成や組織の生産性向上など、数年先を見据えた動きも求められます。
こうした役割の変化に対応するため、管理職には自社や組織の状況を俯瞰し、経営資源を管理していくマネジメントスキルが求められるようになります。
マネジメントスキルとリーダーシップの違い
マネジメントスキルと「リーダーシップ」は似ている言葉ですが、その対象や求められる行動は異なります。マネジメントスキルは管理が中核となる一方、リーダーシップは、目標達成に向けてメンバーを鼓舞しチームを牽引することを意味します。
マネジメント業務とは? ジョブ・アサインメントモデルが示す四つのステージ
「ジョブ・アサインメントモデル」とは、「チームの業績を最大化しつつ部下の成長も実現するためにミドルマネジャーが身につけるべき行動を体系化したもの」です(出典:大久保幸夫『マネジメントスキル実践講座 部下を育て、業績を高める』)。
管理職は短期的な業績目標の達成と、人材育成やイノベーションの創出といった中長期の成果を両立することが求められます。業績を達成しながら人材育成を行うためには、「ジョブ・アサイメント」の実現が核となります。
ジョブ・アサインメントモデルでは、管理職の日常業務が「目標設定」、「職務分担」、「達成支援」、「仕上げ検証」という循環する四つのステージに分けられます。
ステージ1:目標設定
事業や自社、自組織が置かれている状況を俯瞰し、目標を自分の言葉で設定します。また、組織として取り組む業務を書き出して必要な行動を取捨選択し、目標達成に向けた障害の想定や関連部署との協力体制の構築などの下地づくりをします。
ステージ2:職務分担
タスクを分解して職務を再編し、部下に割り振っていきます。その際、部下の適性や志向を踏まえたマッチングや、部下の成長度合いに合わせたストレッチ目標を設定します。業務を分担する際は、目標や業務の意味づけや、自発性を促す手上げの誘導、権限委譲などをうまく取り入れましょう。
ステージ3:達成支援
部下に仕事を任せ、側面支援を行います。部下を見守り、フィードバックを行いながら、進捗上の課題を予測し、必要な支援や軌道修正を実行します。部下の手に負えなくなった際は、部下から業務を引き取ることもあります。
ステージ4:仕上げ検証
最後は次の目標設定へ繋げる段階です。もう1段仕事の質が高まるよう、最後の加筆修正を行い、完了を確認したら、質や成果の評価検証を行います。部下の素晴らしい成果は積極的に周囲に発信し、改善が必要な部分は改善指導をします。後工程の関係者からのフィードバックを伝えると部下は自分の仕事の影響力を感じられます。また管理職自身が内省や振り返りの機会を設けることも重要です。
この四つのステージは、マネジメントスキルを「いつ・どの場面で使うか」を示す地図にあたります。次に、スキルそのものを「種類」の面から整理した枠組みである、カッツのモデルを見てみましょう。
マネジメントスキルの全体像:カッツのモデル
カッツモデルとは、1950年代にアメリカの経営学者ロバート・L・カッツ氏が提唱した理論です。マネジメントに必要なスキルを、テクニカルスキル、ヒューマンスキル、コンセプチュアルスキルに分類しました。さらに管理職を三つの階層に分け、階層ごとに求められるスキルの割合が変化することを主張しています。
テクニカルスキル(業務遂行能力)
テクニカルスキルは、業務に必要な専門知識や実践的なスキルのことです。プレイングマネジャーや、部下の業務指導を行う現場寄りのマネジャーに強く求められます。
ヒューマンスキル(対人関係能力)
ヒューマンスキルは、コミュニケーション能力に代表される良好な人間関係を築く能力です。管理職は、部下や自分の上司、取引先や関連部署など、さまざまな立場の関係者と信頼関係を築くことが求められます。このスキルはどの階層でも重要ですが、部課長などのミドルマネジャーで特に重要となります。
コンセプチュアルスキル(概念化能力)
コンセプチュアルスキルは、物事の本質を見極め、複雑な問題を解決していくスキルです。組織をより良い方向に導くための目標設定や課題発見、戦略立案などの場面で必要となります。特に経営層に必要とされる能力です。
参考記事:「マネジメントに不可欠なコンセプチュアルスキルとは? その要素や伸ばし方を知ろう」

ここで注意したいのは、カッツモデルの3分類は、あくまでスキルの「大枠」を示したものだということです。「ヒューマンスキルを磨きましょう」と言われても、明日から何をすればよいかは分かりません。そこで次のセクションでは、この三つの分類それぞれに、実際に磨ける具体的なスキルを当てはめて紹介します。
管理職に必要なマネジメントスキル一覧
管理職に求められるスキルは多岐にわたりますが、ここでは七つのスキルを紹介します。
ちなみに次の図は、七つのスキルを「種類×使う場面」で並べた一覧です。種類はカッツモデルの3分類、場面はジョブ・アサインメントの4ステージです。
自分がいまつまずいている局面の列を見てください。たとえば任せ方に悩んでいるなら、「職務分担」の列です。そこにバーが通っているスキル(=コミュニケーション、目標伝達、コーチング、アセスメント)が、あなたが優先して磨くべき候補です。

❶分析力と問題解決力
分析力はデータや事実に基づいて現状を分析する力、問題解決力は分析結果から見出された問題に対し、解決への道筋を論理的に組み立て行動する力を指します。いずれも「コンセプチュアルスキル」に該当し、組織目標の設定や部下の達成支援、仕上げ検証のステージで必要なスキルです。
分析力が高いと、自社が置かれている環境や、自組織が果たす役割、現場の状況などを多角的に捉え、本質的な課題や問題点を見出せます。そのため、業務上の問題を速やかに解決できます。また、組織の実情に合った難易度の目標を設定し、振り返りにおける来期に向けた改善施策を立てられるため、組織や部下の成長を促すことができます。
❷アセスメントスキル
アセスメントスキルは、部下の特性や能力などを把握して客観的に評価するスキルです。業務の難易度や内容を理解し、部下との対話を通じた価値観や性格の把握が必要になるため、ヒューマンスキルとも、テクニカルスキルとも考えられるスキルです。アセスメントスキルは、職務分担や達成支援で特に使われます。
部下を正しく評価できると、それぞれの部下の能力を最大限に生かせる業務分担ができ、組織全体の生産性を高めやすくなります。また、部下の能力やモチベーションに合わせた目標設定と指導が可能になり、人材育成にも役立ちます。部下にとっても「きちんと自分を評価してくれる」上司になり、信頼関係を築きやすくなるでしょう。
❸目標伝達のスキル
目標伝達のスキルは、組織目標と部下一人ひとりの目標を関係者や部下自身に適切に伝える力です。ヒューマンスキルに分類されますが、目標を意味づけて翻訳するコンセプチュアルスキルの側面も含まれているでしょう。目標の伝達は、関係者との期待値調整(目標設定)や部下への落とし込み(職務分担)の際に発揮されます。
関係者の期待値調整を行う際は、論理的に組織目標を伝えることで、協力を得やすくなるでしょう。また目標を部下に伝える時には、部下が納得感を持って主体的に仕事に取り組めるよう中長期的な視点も踏まえた目標の意味づけを行うことが重要です。その結果、部下は仕事の意味や目標の意味を理解し、モチベーション高く仕事に取り組めるようになります。
❹進捗管理スキル
進捗管理スキルは、部下の目標達成を支援する際に特に重要なスキルです。ヒューマンスキルとテクニカルスキルの両方を併せ持つスキルと言えるでしょう。
進捗管理スキルが高い上司は、部下に仕事を丸投げせず、定期的に状況を確認し、適切な働きかけをしています。さらに、今後生じうる課題を想定し、事前の対策も怠りません。状況確認においては、部下から「報告・連絡・相談」ができるような雰囲気作りを行うとともに、管理職からも能動的に確認を行います。その上で、部下の特性や能力に応じた軌道修正や情報提供、フィードバックや見守りを行います。
❺コーチングスキル
コーチングスキルは、対話を通じて自発的な行動を引き出し成長を支援する力で、ヒューマンスキルに含まれます。コーチングによって部下が自ら考え、自律して職務を遂行できるようになれば、組織全体の生産性向上が期待できます。
特にコーチングの重要な要素であるフィードバックは、部下の達成支援や振り返り(仕上げ検証)において有用です。部下の業務に対しリアルタイムでフィードバックを行えば、部下は安心して業務に集中できます。また振り返りの際に適切なフィードバックを行うことで、部下のモチベーションを高め、主体的に行動できる人材へと成長を促すことができます。
フィードバックの方法についてはこちらの記事もご参考ください。
📘「フィードバックとは? 響かない原因と「部下が変わる伝え方」を徹底解説」
❻業務遂行スキル
業務遂行スキルは、実務を進めるために必要な専門スキルのことで、プレイングマネジャーでなくても身につけておきたいスキルです。たとえ業務から離れたとしても、適切な目標設定や部下への指導、問題解決においては、業務遂行スキルが必要になるからです。
業務遂行スキルが高い上司は、現場目線での判断・対応ができ、部下から信頼を得やすくなります。目標設定の場面では、業務を深く理解した上で、適切な難易度の目標を設定し、組織で取り組むべき業務の仕分けができます。達成支援や人材育成においては、実践的かつ具体的な助言や指導ができ、問題発生時も、状況の理解と実効性のある改善策の立案がしやすくなります。部下の業務を速やかに引き取ることも容易いでしょう。
❼コミュニケーションスキル
コミュニケーションスキルは、あらゆる業務で求められる、ヒューマンスキルの代表格です。上の図で唯一、ステージ全てにバーが通っているように、他の六つのスキルを支える土台にあたります。
コミュニケーションスキルの高い管理職は、部下や利害関係者と良好な関係を築き、業績達成や中長期の成果作り、人材育成のあらゆる面で協力体制を作っていくことができるようになります。
コミュニケーションスキルが高いと、部下に対して指導や激励、傾聴など、場面に応じて多様なコミュニケーションスタイルを使い分けられるようになります。その結果、部下の性格や能力、業務状況の理解を深め、良好な関係を築けるようになります。他部署や経営層、顧客などと良好な関係を築ければ、目標に対する期待値調整ができたり、業績達成に向けて協力を要請したりすることで、成果を作りやすい環境を作っていけるでしょう。
マネジメントスキルが高い人・低い人の違い
マネジメントスキルの高い人と低い人は、日々の行動が大きく異なります。次の比較表をもとに、自分がどちらの行動を取りやすいかを振り返ってみましょう。磨くべきスキルが見えてくるはずです。
マネジメントスキルが低い人の特徴
マネジメントスキルが低い人はコミュニケーションが苦手なことが多く、役割分担、進捗管理、意思決定の三つの側面で困難を抱えやすくなります。
目標設定や業務分担においては、部下の能力や性格などを踏まえずに決めてしまい、部下の力を十分に引き出せない傾向があります。反対に、部下に仕事を任せることができず、自分で業務を抱え込んでしまう管理職もいるでしょう。いずれの場合も、組織としてのパフォーマンスが低下し、成果を残すことが難しくなります。
進捗管理においては、進捗の遅延や大きなトラブルが発生しやすくなります。背景には、部下に仕事を丸投げしたり、部下が話しかけづらく「報告・連絡・相談」ができずに問題を一人で抱え込んだりすることが考えられます。さらに、マネジメントスキルが低い管理職は意思決定力も弱いために対応方針を迅速に決められず、トラブル発生時に対応の遅れや現場の混乱を招くことがあります。
このように業務上のマネジメントが上手くいかないと、部下との信頼関係が築きにくくなります。さらに、感情的になって部下を叱責してしまえば人材育成にも悪影響をもたらします。
マネジメントスキルが高い人の特徴
マネジメントスキルが高い管理職は、高いコミュニケーション力で部下と信頼関係を築き、適材適所の業務分担で組織の力を最大化します。
マネジメントスキルが高い管理職は、日頃から部下とコミュニケーションを取り、部下の状況や考えを傾聴しています。そのため、部下の強みや能力を踏まえた適切な目標を設定し、一人ひとりに合わせた支援を行うことができます。進捗管理においても、問題の発見が早く、迅速に問題解決に取り組むことができます。そのため、組織としてのモチベーションや生産性が高まり、目標達成に近づくでしょう。
結果として、組織の生産性が上がり、人材の育成が進むため、中長期的な成果にも繋げやすくなります。
マネジメントスキルの高め方
マネジメントに必要な考え方は、書籍や動画、社内外の研修で学ぶことができます。
経営学などを学んで自身の視座を高める、問題解決や目標設定に関するフレームワークを学んで論理的思考力を伸ばす、マネジメント論やコミュニケーションスキルを学ぶなど、そのアプローチはさまざまあります。
以下に参考図書・動画例を挙げておきますので、学び方に悩んだ時はぜひ活用してみてください。
『マネジメント[エッセンシャル版] - 基本と原則』
ピーター・F・ドラッカー (著), ダイヤモンド社
『マネジメントスキル実践講座-部下を育て、業績を高める』
大久保幸夫 (著) 経団連出版
『部下をもったらいちばん最初に読む本』
橋本拓也 (著) アチーブメント出版
『マネジャーの教科書――ハーバード・ビジネス・レビュー マネジャー論文ベスト11』
ハーバード・ビジネス・レビュー編集部 (編集) ダイヤモンド社
マネジメントスキルの向上には、知識の吸収に加え、それを現場で生かすことが不可欠です。
例えば、SMARTの法則で部署の目標設定をしてみる、傾聴スキルを学んで1on1の場で実践してみる、など小さなところから実践してみましょう。学びが自分のものとして使えるようになり、自然とマネジメントスキルが向上しているはずです。
また、コミュニケーションスキルを高める際には、実際に自らコーチングを受けてみるといった体験学習も有効です。
ぜひ、今日から一つずつマネジメントスキルを学び、積極的な実践を心がけてみてください。






