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叱るのをためらう上司、傷つかずに成長したい若手——すれ違いを埋めるネガティブ・フィードバックの技術
叱るのをためらう上司、傷つかずに成長したい若手——すれ違いを埋めるネガティブ・フィードバックの技術

叱るのをためらう上司、傷つかずに成長したい若手——すれ違いを埋めるネガティブ・フィードバックの技術

ハラスメントと捉えられることを恐れ、部下に対する指導の仕方に悩んでいませんか?

ある調査では、上司の8割以上が「ミスをしてもあまり厳しく叱咤しない」と回答しています。その一方で、上司からのフィードバックの少なさに物足りなさを感じている部下も少なくありません。

最近は「褒める」「認める」といったポジティブ・フィードバックの重要性が強調されることが多いですが、それと同時に、ミスや望ましくない行動を是正するためのネガティブ・フィードバックも必要不可欠です。しかし、指摘の仕方によっては相手が過度に落ち込んだり反発したりして逆効果になる可能性もあり、より難しさを感じているマネジャーも多いのではないでしょうか。

そこで、ネガティブ・フィードバックに関する現状や研究結果を確認しつつ、若手の成長につながる指導の仕方を探っていきます。

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目次

部下に遠慮するマネジャーと、言うべきことを言ってほしい部下

パーソル総合研究所が2022年に実施した「職場のハラスメントについての定量調査」によると、「飲み会やランチに誘わないようにしている」が75.3%、「ミスをしてもあまり厳しく叱咤しない」が81.7%、「必要以上にコミュニケーションをとらない」が60.3%など、多くの上司が部下とのコミュニケーションに消極的な姿勢を示しています。「部下にフィードバックするのが難しい」、「自分のマネジメントがハラスメントになるのではないかと気を使う」という回答が4割を超えていることから、自分の言動がハラスメントになることを避けようとするあまり、部下との接触に及び腰になっていることが推測されます。

一方で部下の方は、「上司からのフィードバックが少ないと感じる」、「上司は自分を育てる気がないと感じる」が「あてはまる」とする回答者が3割以上います。特に40代では「上司からのフィードバックが少ないと感じる」が4割に達するなど、上司からの関わりに物足りなさを感じている人が少なくありません。

また、リクルートマネジメントソリューションズの「新入社員意識調査2026」では、新入社員が上司に期待することとして「一人ひとりに対して丁寧に指導すること」が過去最高で初のトップになりました。また、6位の「言うべきことは言い、厳しく指導すること」は3年連続で上昇しています。この点について同社は、「仕事についていけるか」という不安の高まりを背景に、「何も言われず成長しないことの方がリスク」と捉える新入社員が増えてきていると分析しています。

データが示す「最近の若者は打たれ弱い」の実態

上司の側はハラスメントになることを恐れてコミュニケーションを回避する一方で、部下の側はもっとフィードバックをしてほしいと期待している——あなたの職場でも、そんなすれ違いが生まれているかもしれません。

それなら、もっとビシバシ指導してやればいいのか……というと、それほど単純な話でもありません。前述の調査では、「一人ひとりに対して丁寧に指導すること」「相手の意見や考え方に耳を傾けること」が上司への期待として最も多く挙げられています。まずは部下それぞれの状況を自分なりに把握し、本人の言い分も傾聴した上で、相手の成長につながる助言や支援を提供することが大切です。その際、いくら正しいことを言っても、相手がそれを受け止め、納得しなければ、それは機能しません。

パーソル総合研究所の「若手従業員のメンタルヘルス不調についての定量調査」では、若年層ほど「人目を気にする」「受け身の姿勢」「失敗への恐れ」「怒られたくない」「対立回避」の志向が強いという結果が出ています。これら「拒否回避志向」が強い若手は、「叱って育てるタイプの上司」と相対した時にメンタルヘルス不調のリスクが高まりやすいことも示されています。

「言うべきことは言おう」と昔ながらの方法で「叱る」と、若手は上司が想像する以上のストレスを感じ、パワハラだと受け取ったり、過度に責められていると感じて内容が耳に入らないという結果になりかねないのです。

相手に届くネガティブ・フィードバックのコツ

ネガティブ・フィードバック、特に若手に対するそれは非常に難しいものである、という事実が見えてきました。しかし、部下の成長やチームの成果に責任を持つマネジャーとして、それを避けて通ることはできません。

相手のストレスを過度に高めたり、上司と部下の人間関係を悪化させることなく、効果的なネガティブ・フィードバックをするにはどうしたらよいのか、そのコツを紹介します。

🔹パワハラを避けるには

まず、多くのマネジャーが気になるであろう「指導のつもりがパワハラに」を避けるためのポイントをおさえておきましょう。

厚生労働省は「職場のパワーハラスメント」を以下のように定義しています。

“職場において行われる①優越的な関係を背景とした言動であって、②業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、③労働者の就業環境が害されるものであり、①から③までの3つの要素を全て満たすものをいいます。

なお、客観的にみて、業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な業務指示や指導については、職場におけるパワーハラスメントには該当しません。”

部下から「それはパワハラです」と言われても、直ちにパワハラと認定されるわけではありません。マネジャーという立場で部下を指導する場合「①優越的な関係を背景とした言動」には当てはまりますので、問題となるのは②と③に該当するかどうかです。

最初に理解しておきたいこととして、ネガティブ・フィードバックは「懲罰」ではありません。本人の成長や組織の生産性向上を目的とした働きかけです。そう考えれば、言葉や身体による暴力、他のメンバーの前で吊し上げ、無視、罰として仕事の内容を変えるといった、パワハラと認定されやすい行動は生まれにくいはずです。

また、必要な指導であっても、相手がそれを受け入れられる状況であるかどうかを確認しましょう。部下が精神的、肉体的に疲労困憊の状況であったり、健康でないときに指導するのは、パワハラになる可能性があります。

その上で、フィードバックの内容が業務の目的に照らして必要なものであるか、相手の人権を尊重した適切な言葉や態度であるか、指導の頻度やそのための拘束時間などが過度でないか、マネジャー側の考えを一方的に押し付けるのではなく相手の言い分にも耳を傾けているかなどに気をつければ、②や③に該当することはあまりないはずです。

それでも、周囲の人から見ると「細かく口を出しすぎでは」「上司のやり方に固執し過ぎでは」と感じられる指導もあるかもしれません。フィードバックのタイミングや内容を記録しておいて、第三者の意見を聞いてみるのも良いでしょう。

🔹適切な準備(六つのRight)

部下がミスや不適切な行動をした際、なるべくその場で指摘した方が伝わりやすいのですが、場所やタイミングがネガティブ・フィードバックに適さない場合もあります。

自らの経営経験をもとに「フィードバック経営」を提唱する三村真宗氏は、フィードバックに必要な準備として「六つのRight」を挙げています。

Right Occasion(適切な機会に) 
大きなイベントを切り抜けた後などは「頑張りを認めてほしい」「もっとうまくやる方法があれば知りたい」といった気持ちになりやすく、フィードバックを受け入れやすい。

Right Environment(適切な環境で)
 
他人のいる場所やメールやチャットツールは避け、口頭で(顔の見えるオンライン会議ツールも可)

Right Tone(適切なトーンで)
 
叱責ではなく、温かく、敬意を持って

Right Atmosphere(適切な雰囲気で)
 
突然のフィードバックに部下が面食らわないよう、普段からポジティブとネガティブが9対1くらいの割合で積極的にフィードバックする雰囲気をつくっておく

Right Relationship(適切な関係性で)
 
普段から信頼し尊敬し合える関係を築いておく

Right Motivation(適切な動機で)
 
「相手の成長」を心から願って行う

※詳細は『みんなのフィードバック大全』(三村真宗 光文社)参照

🔹よく観察し、事実に基づいてフィードバックする

事実に基づいてフィードバックをする、というのは当たり前のようでいて、とても注意しなければいけないポイントです。

不正確な伝聞情報や、「この人はだらしない」といった印象や思い込みを元にしたフィードバックは不信感や反発を生み、良い結果にはつながりません。

立教大学の中原淳教授による『増補改訂版 フィードバック入門 部下が成果を出すための最も効果が高い育成の技術』(PHP研究所)では、フィードバックを行う前に部下の行動をよく観察し、徹底的な情報収集をしなければならないと強調されています。

例えば、部下が積極的に営業に向かっていないと感じた場合、「最近やる気ないな」「もっと真剣にやれ」などと声をかけるのは効果的なフィードバックとは言えません。得意先への訪問回数やその結果起きている問題といった具体的な事実を噛み砕いて伝えないと、相手は納得しないでしょう。

そして、事前の情報収集においてはシチュエーション(Situation)、ビヘイビア(Behavior)、インパクト(Impact)の頭文字を取った「SBI情報」を意識すると良いというのが、中原教授のアドバイスです。

シチュエーション 
どのような状況で、どんな状況のときに
‍
ビヘイビア
 
部下のどんな振る舞い・行動が

インパクト
 
周囲やその仕事に対して、どんな影響をもたらしたのか。何がダメだったのか

なるべくたくさんのSBI情報を収集し、部下の問題行動を多角的に検証した上でフィードバックに臨むことで説得力も高まります。また、「この人は思い込みや決めつけではなく、自分のことをきちんと見た上で指摘をしてくれている」という信頼感にもつながります。

🔹相手の言い分を聞く

客観的な事実を伝えても、部下がすんなり納得するとは限りません。

「できなかったのには理由がある」、「そもそも与えられた目標に無理がある」、「上司の方にも問題がある」など、部下の側もいろいろ言いたいことがあるかもしれません。

まずは、話を最後まで聴きましょう。そして「あなたの事情は分かりました」と受け止めた上で、もう一度SBI情報を元に「それでも、この状況は問題がありますね」と、認識を一致させることを目指しましょう。

🔹内省を助け、解決策を考えさせ、事後のフォローもする

ミスや問題のある状況を部下が認識できたら、それが起きた原因を内省させ、解決策を考えてもらいます。

上司が「次からは◯◯するように」と一方的に命じるのではなく、どうしたら良いか自分で考えて自分の言葉で語ってもらうことで、部下自身の腹落ちとコミットメントにつながります。

ただし、「あとは自分で考えて」と丸投げするのではなく、マネジャーはそれをサポートする必要があります。『フィードバック入門』では、次の3つを部下に問いかけ、内省と解決策の検討を促すことを勧めています。

(1) What?(何が起こったのか?)
‍
(2) So What?(それは、なぜなのか?)

(3) Now What?(これからどうするのか?)

解決策まで明確になったら、「あなたならできる」「これからもっと成長できる」という期待を伝え、そのためにしっかりサポートすることを伝えます。そして、ここで決めたことがしっかり実行できているか、事後の観察とフォローも欠かせません。

🔹日頃から信頼関係をつくる

ここまでに挙げたポイントを実行し、機能させる土台になるのは信頼関係です。いくら事実を元に正しい指摘をしても、部下から信頼を得られていない状態では、素直に聞き入れてもらえません。

仕事の関係における信頼には大きく分けて2つ、「仕事の能力に対する信頼」と「人柄(誠実さや良心性)に対する信頼」があります。部下に対して日頃から的確な指示やアドバイス、ネガティブ・フィードバックをすることは「仕事の能力に対する信頼」を向上させることにつながります。また、いつも部下の様子をよく見て頻繁に褒めたりねぎらったり、メンバー一人ひとりを公平に扱ったりすることなどは、「人柄に対する信頼」を高める効果があります。

逆に、「この人は自分の保身のために部下を使おうとしている」「組織の論理に従わざるを得ないから指導している」などという印象は「人柄に対する信頼」を大きく下げてしまいます。フィードバックは何よりも相手の成長のために行うもの、という「Right  Motivation(適切な動機で)」を意識することがとても重要です。

マネジャーにも部下にもWin-Winなネガティブ・フィードバックを実践しよう

ミスを指摘したり行動の改善を促したりするネガティブ・フィードバックは、される方だけでなくする方も緊張するもので、できればやりたくないものです。しかし、それを避けていては本人のためにも、組織のためにもなりません。適切に行えば、「この人は自分のことをよく見てくれている。成長させてくれる」という部下のモチベーションアップにつながり、マネジャーへの信頼も醸成されます。

ハラスメントが問題になりやすく、否定的な評価に敏感な若手が少なくない状況だからこそ、真に機能するネガティブ・フィードバックのコツを知り、実践していきたいものです。

部下に遠慮するマネジャーと、言うべきことを言ってほしい部下

パーソル総合研究所が2022年に実施した「職場のハラスメントについての定量調査」によると、「飲み会やランチに誘わないようにしている」が75.3%、「ミスをしてもあまり厳しく叱咤しない」が81.7%、「必要以上にコミュニケーションをとらない」が60.3%など、多くの上司が部下とのコミュニケーションに消極的な姿勢を示しています。「部下にフィードバックするのが難しい」、「自分のマネジメントがハラスメントになるのではないかと気を使う」という回答が4割を超えていることから、自分の言動がハラスメントになることを避けようとするあまり、部下との接触に及び腰になっていることが推測されます。

一方で部下の方は、「上司からのフィードバックが少ないと感じる」、「上司は自分を育てる気がないと感じる」が「あてはまる」とする回答者が3割以上います。特に40代では「上司からのフィードバックが少ないと感じる」が4割に達するなど、上司からの関わりに物足りなさを感じている人が少なくありません。

また、リクルートマネジメントソリューションズの「新入社員意識調査2026」では、新入社員が上司に期待することとして「一人ひとりに対して丁寧に指導すること」が過去最高で初のトップになりました。また、6位の「言うべきことは言い、厳しく指導すること」は3年連続で上昇しています。この点について同社は、「仕事についていけるか」という不安の高まりを背景に、「何も言われず成長しないことの方がリスク」と捉える新入社員が増えてきていると分析しています。

データが示す「最近の若者は打たれ弱い」の実態

上司の側はハラスメントになることを恐れてコミュニケーションを回避する一方で、部下の側はもっとフィードバックをしてほしいと期待している——あなたの職場でも、そんなすれ違いが生まれているかもしれません。

それなら、もっとビシバシ指導してやればいいのか……というと、それほど単純な話でもありません。前述の調査では、「一人ひとりに対して丁寧に指導すること」「相手の意見や考え方に耳を傾けること」が上司への期待として最も多く挙げられています。まずは部下それぞれの状況を自分なりに把握し、本人の言い分も傾聴した上で、相手の成長につながる助言や支援を提供することが大切です。その際、いくら正しいことを言っても、相手がそれを受け止め、納得しなければ、それは機能しません。

パーソル総合研究所の「若手従業員のメンタルヘルス不調についての定量調査」では、若年層ほど「人目を気にする」「受け身の姿勢」「失敗への恐れ」「怒られたくない」「対立回避」の志向が強いという結果が出ています。これら「拒否回避志向」が強い若手は、「叱って育てるタイプの上司」と相対した時にメンタルヘルス不調のリスクが高まりやすいことも示されています。

「言うべきことは言おう」と昔ながらの方法で「叱る」と、若手は上司が想像する以上のストレスを感じ、パワハラだと受け取ったり、過度に責められていると感じて内容が耳に入らないという結果になりかねないのです。

相手に届くネガティブ・フィードバックのコツ

ネガティブ・フィードバック、特に若手に対するそれは非常に難しいものである、という事実が見えてきました。しかし、部下の成長やチームの成果に責任を持つマネジャーとして、それを避けて通ることはできません。

相手のストレスを過度に高めたり、上司と部下の人間関係を悪化させることなく、効果的なネガティブ・フィードバックをするにはどうしたらよいのか、そのコツを紹介します。

🔹パワハラを避けるには

まず、多くのマネジャーが気になるであろう「指導のつもりがパワハラに」を避けるためのポイントをおさえておきましょう。

厚生労働省は「職場のパワーハラスメント」を以下のように定義しています。

“職場において行われる①優越的な関係を背景とした言動であって、②業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、③労働者の就業環境が害されるものであり、①から③までの3つの要素を全て満たすものをいいます。

なお、客観的にみて、業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な業務指示や指導については、職場におけるパワーハラスメントには該当しません。”

部下から「それはパワハラです」と言われても、直ちにパワハラと認定されるわけではありません。マネジャーという立場で部下を指導する場合「①優越的な関係を背景とした言動」には当てはまりますので、問題となるのは②と③に該当するかどうかです。

最初に理解しておきたいこととして、ネガティブ・フィードバックは「懲罰」ではありません。本人の成長や組織の生産性向上を目的とした働きかけです。そう考えれば、言葉や身体による暴力、他のメンバーの前で吊し上げ、無視、罰として仕事の内容を変えるといった、パワハラと認定されやすい行動は生まれにくいはずです。

また、必要な指導であっても、相手がそれを受け入れられる状況であるかどうかを確認しましょう。部下が精神的、肉体的に疲労困憊の状況であったり、健康でないときに指導するのは、パワハラになる可能性があります。

その上で、フィードバックの内容が業務の目的に照らして必要なものであるか、相手の人権を尊重した適切な言葉や態度であるか、指導の頻度やそのための拘束時間などが過度でないか、マネジャー側の考えを一方的に押し付けるのではなく相手の言い分にも耳を傾けているかなどに気をつければ、②や③に該当することはあまりないはずです。

それでも、周囲の人から見ると「細かく口を出しすぎでは」「上司のやり方に固執し過ぎでは」と感じられる指導もあるかもしれません。フィードバックのタイミングや内容を記録しておいて、第三者の意見を聞いてみるのも良いでしょう。

🔹適切な準備(六つのRight)

部下がミスや不適切な行動をした際、なるべくその場で指摘した方が伝わりやすいのですが、場所やタイミングがネガティブ・フィードバックに適さない場合もあります。

自らの経営経験をもとに「フィードバック経営」を提唱する三村真宗氏は、フィードバックに必要な準備として「六つのRight」を挙げています。

Right Occasion(適切な機会に) 
大きなイベントを切り抜けた後などは「頑張りを認めてほしい」「もっとうまくやる方法があれば知りたい」といった気持ちになりやすく、フィードバックを受け入れやすい。

Right Environment(適切な環境で)
 
他人のいる場所やメールやチャットツールは避け、口頭で(顔の見えるオンライン会議ツールも可)

Right Tone(適切なトーンで)
 
叱責ではなく、温かく、敬意を持って

Right Atmosphere(適切な雰囲気で)
 
突然のフィードバックに部下が面食らわないよう、普段からポジティブとネガティブが9対1くらいの割合で積極的にフィードバックする雰囲気をつくっておく

Right Relationship(適切な関係性で)
 
普段から信頼し尊敬し合える関係を築いておく

Right Motivation(適切な動機で)
 
「相手の成長」を心から願って行う

※詳細は『みんなのフィードバック大全』(三村真宗 光文社)参照

🔹よく観察し、事実に基づいてフィードバックする

事実に基づいてフィードバックをする、というのは当たり前のようでいて、とても注意しなければいけないポイントです。

不正確な伝聞情報や、「この人はだらしない」といった印象や思い込みを元にしたフィードバックは不信感や反発を生み、良い結果にはつながりません。

立教大学の中原淳教授による『増補改訂版 フィードバック入門 部下が成果を出すための最も効果が高い育成の技術』(PHP研究所)では、フィードバックを行う前に部下の行動をよく観察し、徹底的な情報収集をしなければならないと強調されています。

例えば、部下が積極的に営業に向かっていないと感じた場合、「最近やる気ないな」「もっと真剣にやれ」などと声をかけるのは効果的なフィードバックとは言えません。得意先への訪問回数やその結果起きている問題といった具体的な事実を噛み砕いて伝えないと、相手は納得しないでしょう。

そして、事前の情報収集においてはシチュエーション(Situation)、ビヘイビア(Behavior)、インパクト(Impact)の頭文字を取った「SBI情報」を意識すると良いというのが、中原教授のアドバイスです。

シチュエーション 
どのような状況で、どんな状況のときに
‍
ビヘイビア
 
部下のどんな振る舞い・行動が

インパクト
 
周囲やその仕事に対して、どんな影響をもたらしたのか。何がダメだったのか

なるべくたくさんのSBI情報を収集し、部下の問題行動を多角的に検証した上でフィードバックに臨むことで説得力も高まります。また、「この人は思い込みや決めつけではなく、自分のことをきちんと見た上で指摘をしてくれている」という信頼感にもつながります。

🔹相手の言い分を聞く

客観的な事実を伝えても、部下がすんなり納得するとは限りません。

「できなかったのには理由がある」、「そもそも与えられた目標に無理がある」、「上司の方にも問題がある」など、部下の側もいろいろ言いたいことがあるかもしれません。

まずは、話を最後まで聴きましょう。そして「あなたの事情は分かりました」と受け止めた上で、もう一度SBI情報を元に「それでも、この状況は問題がありますね」と、認識を一致させることを目指しましょう。

🔹内省を助け、解決策を考えさせ、事後のフォローもする

ミスや問題のある状況を部下が認識できたら、それが起きた原因を内省させ、解決策を考えてもらいます。

上司が「次からは◯◯するように」と一方的に命じるのではなく、どうしたら良いか自分で考えて自分の言葉で語ってもらうことで、部下自身の腹落ちとコミットメントにつながります。

ただし、「あとは自分で考えて」と丸投げするのではなく、マネジャーはそれをサポートする必要があります。『フィードバック入門』では、次の3つを部下に問いかけ、内省と解決策の検討を促すことを勧めています。

(1) What?(何が起こったのか?)
‍
(2) So What?(それは、なぜなのか?)

(3) Now What?(これからどうするのか?)

解決策まで明確になったら、「あなたならできる」「これからもっと成長できる」という期待を伝え、そのためにしっかりサポートすることを伝えます。そして、ここで決めたことがしっかり実行できているか、事後の観察とフォローも欠かせません。

🔹日頃から信頼関係をつくる

ここまでに挙げたポイントを実行し、機能させる土台になるのは信頼関係です。いくら事実を元に正しい指摘をしても、部下から信頼を得られていない状態では、素直に聞き入れてもらえません。

仕事の関係における信頼には大きく分けて2つ、「仕事の能力に対する信頼」と「人柄(誠実さや良心性)に対する信頼」があります。部下に対して日頃から的確な指示やアドバイス、ネガティブ・フィードバックをすることは「仕事の能力に対する信頼」を向上させることにつながります。また、いつも部下の様子をよく見て頻繁に褒めたりねぎらったり、メンバー一人ひとりを公平に扱ったりすることなどは、「人柄に対する信頼」を高める効果があります。

逆に、「この人は自分の保身のために部下を使おうとしている」「組織の論理に従わざるを得ないから指導している」などという印象は「人柄に対する信頼」を大きく下げてしまいます。フィードバックは何よりも相手の成長のために行うもの、という「Right  Motivation(適切な動機で)」を意識することがとても重要です。

マネジャーにも部下にもWin-Winなネガティブ・フィードバックを実践しよう

ミスを指摘したり行動の改善を促したりするネガティブ・フィードバックは、される方だけでなくする方も緊張するもので、できればやりたくないものです。しかし、それを避けていては本人のためにも、組織のためにもなりません。適切に行えば、「この人は自分のことをよく見てくれている。成長させてくれる」という部下のモチベーションアップにつながり、マネジャーへの信頼も醸成されます。

ハラスメントが問題になりやすく、否定的な評価に敏感な若手が少なくない状況だからこそ、真に機能するネガティブ・フィードバックのコツを知り、実践していきたいものです。

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執筆者
やつづか えり

1999年一橋大学社会学部卒業。2009年デジタルハリウッド大学院修了。コクヨ、ベネッセコーポレーションで11年間勤務後、フリーランスに。2013年より組織に所属する個人の新しい働き方、暮らし方の取材を開始。各種ウェブメディアで働き方、組織、イノベーションなどをテーマとした記事を執筆中。2020年に東京から長野県佐久穂町に移住。町の活性化を目指した情報発信、地域創生戦略策定、ゼロカーボン戦略の策定などにも関わる。

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