
【完全網羅】GROWモデルとは? 4ステップ・質問例・テンプレートを解説
部下との1on1で、「何か困っていることはある?」と聞いたものの、その先の会話が続かない。話を聞いているうちに、結局「だったら、こうすればいい」と上司が答えを出してしまう。
そんなとき、対話の道筋を整理する助けになるのがGROWモデルです。
GROWモデルは、「何を実現したいのか」「今どうなっているのか」「どんな選択肢があるのか」「では何をするのか」という順に考える、コーチングの代表的なフレームワークです。
シンプルな型ですが、使い方を間違えると、質問を順番に読み上げるだけの「尋問」にもなりかねません。
本記事では、GROWモデルの共同開発者であるジョン・ウィットモアらの公式資料をもとに、四つのステップの意味から質問例、テンプレート、1on1での具体的な使い方まで解説します。
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GROWモデルとは? 四つのステップを簡単に解説
GROWモデルとは、目標を明確にし、現状を把握し、選択肢を広げ、具体的な行動を決めるためのコーチング・問題解決のフレームワークです。
GROWは次の四つの言葉の頭文字から取られています。
共同開発元のPerformance Consultantsも、GROWモデルをこの4段階で説明しています。ジョン・ウィットモアと同僚たちによって1980年代後半から1990年代初頭に形づくられ、ウィットモアの著書『Coaching for Performance』を通じて広く知られるようになりました。
ただし、実際の対話で必ず「G→R→O→W」と一方向に進むわけではありません。Realityを話す中で目標そのものを見直したり、Optionsを考えている途中で現状認識に戻ったりすることもあります。Performance Consultantsも、GROWは必要に応じて段階を行き来する柔軟なフレームワークだと説明しています。
つまりGROWモデルは、会話を縛る台本ではなく、対話の現在地を見失わないための地図と考えると分かりやすいでしょう。
🔹 コーチングそのものの意味や、ティーチングとの違い、傾聴・質問などの基本スキルについては、コーチングとは? 意味・基本スキル・やり方をわかりやすく解説 で詳しく解説しています。
GROWモデルの4ステップと質問例
ここからは、四つのステップを実際の1on1でどのように使うのかを見ていきます。

G:Goal|何を実現したいのかを明確にする
最初のGは、Goal / Goals(目標)です。
ここでは「何を実現したいのか」「今回の対話をどこに着地させたいのか」を明確にします。
Performance Consultantsは、Goalとして扱うものには、業績目標だけでなく、行動変容、学習目標、中長期的な目標なども含まれるとしています。また、有効な目標には、明確で具体的であること、本人にとって意味があること、現実的な期間で実現可能であること、組織の目的とも整合していることなどが重要だとしています。
したがってGROWモデルのGoalは、「売上を120%にする」といったKPIだけではありません。
たとえば1on1なら、以下のようなものでも構いません。
- 次回の提案に向けて改善点を決めたい
- チームメンバーとの関係をどう立て直すか整理したい
- 今後半年のキャリアについて方向性を決めたい
🔹 Goalで使える質問例
💬 今日、一番考えたいことは何ですか?
💬 この時間が終わったとき、何が整理されていたらよさそうですか?
💬 最終的には、どのような状態にしたいですか?
💬 それが実現したと、何を見れば分かりますか?
💬 いつ頃までに実現したいですか?
💬 その目標は、あなたにとってなぜ重要ですか?
💬 それが実現すると、仕事や周囲にどんな変化がありますか?
ここで注意したいのは、上司が勝手にGoalを決めないことです。
上司は「営業数字の改善について話したい」と思っていても、部下は「顧客との関係に自信を失っていること」を整理したいのかもしれません。
最初に「何について考える時間なのか」を合わせることで、その後の対話がずれにくくなります。
R:Reality|現在地を正確に把握する
RはReality(現状)です。
Goalが「行きたい場所」なら、Realityは「現在地」にあたります。
現在の行動や結果、すでにうまくいっていること、使える強みや資源、障害、事実やデータなどを確認します。Performance Consultantsも、Realityで確認する要素として、現在の行動・結果、強みや資源、制約、関連する事実やデータを挙げています。
ここで重要なのは、すぐに解決策へ飛ばないことです。
たとえば部下が「顧客とうまくいっていません」と言ったとします。
そこで「訪問回数を増やした方がいいよ」と答える前に、このように聞きます。
💬「具体的には、何が起きている?」
💬「以前と何が変わった?」
💬「顧客から実際に何と言われた?」
すると、「関係が悪くなった」のではなく、担当者が変わって意思決定プロセスが分からなくなったことが本当の問題かもしれません。
問題を解く前に、問題を正しく捉える。 Realityはそのためのステップです。
🔹Realityで使える質問例
💬 今、具体的に何が起きていますか?
💬 事実として確認できていることは何ですか?
💬 あなた自身は、その状況をどう捉えていますか?
💬 これまでに何を試しましたか?
💬 うまくいっている部分はありますか?
💬 一番大きな障害は何ですか?
💬 今、使えそうな人・情報・経験はありますか?
💬 自分の思い込みかもしれない部分はありますか?
特に有効なのが、「事実」と「解釈」を分けることです。
「上司は自分を評価していない」は解釈です。「前回の会議で、自分の提案についてコメントがなかった」は事実です。
この二つを分けると、Realityをより正確に捉えやすくなります。
「R=Resource」ではないのか?
日本のGROWモデル解説では、Rを「Reality / Resource」と説明しているものもあります。
ただし、Performance Consultantsが現在公開している公式のGROWモデルでは、RはRealityです。その中で「Strengths and resources(強みや資源)」を確認するという整理になっています。
したがって本記事では、R=Reality(現状)とし、人脈、経験、スキルなどの「Resources」はRealityを把握する際に確認する要素の一つとして扱います。
O:Options|できるだけ多くの選択肢を考える
Oは、Options(選択肢)です。
GoalとRealityが見えたら、「では、何ができるだろうか」を考えます。
ここで重要なのは、最初に出た案ですぐ決めないことです。Performance Consultantsも、Optionsでは決まった答えを与えるのではなく、判断を急がずに新しい可能性を広げることを重視しています。
たとえば「顧客との関係を改善する」というテーマなら、「訪問回数を増やす」だけでなく、次のような複数の選択肢を出してみます。
- 先方に期待を直接確認する
- 利用データから課題仮説をつくる
- 別部署の担当者にも話を聞く
- 上司に同行してもらう
🔹Optionsで使える質問例
💬 どんな方法が考えられますか?
💬 他には何ができそうですか?
💬 まったく違う方法を取るとしたら?
💬 制約がなければ、何をしてみたいですか?
💬 過去に似た問題を解決したときは、何をしましたか?
💬 誰かの力を借りるとしたら、誰に頼めそうですか?
💬 同僚が同じ状況なら、どんな案を提案しますか?
💬 それぞれの案には、どんなメリットとリスクがありますか?
上司にもよいアイデアが浮かぶことはあります。その場合、黙っている必要はありません。
ただし「こうした方がいい」と答えを与えるのではなく、「一つ案があるけど、出してもいい?」と確認し、本人が考えた選択肢と同じテーブルに一案として置く方が、本人の思考を奪いにくくなります。
W:Will / Way Forward|次に何をするのか決める
最後のWは、Will / Way Forward(意志・次の行動)です。
ここではOptionsで考えた案から、「結局、自分は何をするのか」を決めます。
Performance Consultantsでは、具体的な行動、期限、進捗の確認方法、本人が責任を持って実行するための仕組みなどを明確にする段階とされています。
コーチングでは、いい気づきが生まれただけで終わってしまうことがあります。
「なるほど。自分は顧客の期待をきちんと確認していなかったんですね」で終われば、現実はまだ変わりません。「明日の定例で顧客に三つ質問する」まで決めて、初めて行動につながります。
🔹Willで使える質問例
💬 出てきた案のうち、どれをやってみますか?
💬 最初の一歩は何ですか?
💬 いつ実行しますか?
💬 どこまでできたら「進んだ」と判断しますか?
💬 実行を邪魔しそうなことはありますか?
💬 それが起きた場合、どう対応しますか?
💬 誰かの協力が必要ですか?
💬 1〜10でいうと、実行する意思はどのくらいありますか?
「頑張ります」で終わらせず、何を・いつ・どこまでやるのかまで具体化するのがポイントです。
GROWモデルの質問一覧|1on1ですぐ使える質問
ここまでの質問を、1on1ですぐ使えるようにまとめます。
すべての質問を使う必要はありません。むしろ、質問リストを消化しようとすると対話は不自然になります。
相手の話を聞きながら、「今はGoalが曖昧なのか」「Realityが整理できていないのか」「Optionsを広げる必要があるのか」を判断し、必要な問いだけ使います。
国際コーチング連盟(ICF)も、質の高いコーチングに必要な要素として、質問することだけでなく、信頼と安全をつくること、積極的に傾聴すること、気づきを促すことなどを挙げています。
【そのまま使える】GROWモデルのテンプレート
GROWモデルを実際に使う際は、次のような4項目に書き出すと整理しやすくなります。
GROWモデルの書き方
たとえば、「会議で自分の提案がなかなか通らない」という課題なら、次のように書けます。
G:Goal
×「提案力を上げたい」では少し曖昧です。
○「次回の企画会議で、自分の提案について意思決定してもらえる状態をつくる」まで具体化します。
R:Reality
×「説明が下手」だけでは原因が分かりません。
○「直近3回の会議で『結局、何を決めたいのか分からない』という指摘を2回受けた」と、できるだけ事実に近づけます。
O:Options
一つに決めず、次のように複数出します。
- 冒頭に結論を書く
- 1ページ目に意思決定事項を書く
- 会議前に上司へレビューを依頼する
- 過去に通った提案書を分析する
- 説明時間を半分にする
W:Will
最後に「水曜日までに提案書を1ページにまとめ、木曜日に上司からレビューをもらう」のように具体的な行動へ落とします。
ここでのポイントは以下の通りです。
- Goalを曖昧な願望で終わらせない
- Realityを感想だけにしない
- Optionsを一つで終わらせない
- Willを「頑張る」で終わらせない
GROWモデルの具体例|1on1ではどう使う?
実際の1on1での会話を見てみましょう。部下から「最近、仕事が多すぎて、うまく回せていません」という相談を受けたケースです。
Goal
上司:今日は何が整理できるとよさそう?
部下:仕事をどう減らすか決めたいです。
上司:理想的には、どんな状態になっていたい?
部下:残業せずに、重要な仕事に集中できる状態ですね。
ここで、「仕事を減らす」ではなく「重要な仕事に集中できる状態」までGoalが具体化しました。
Reality
上司:今、一番時間を取られているものは何?
部下:問い合わせ対応です。毎日10件以上あります。
上司:その10件は全部、あなたが答える必要がある?
部下:いや……半分くらいは他の人でも答えられますね。
上司:それでも今は全部あなたに来ている?
部下:そうです。以前から私が対応していたので、そのままになっています。
ここで問題が、「仕事が多すぎる」から「本人が対応しなくてもよい問い合わせまで本人に集中している」へ具体化しました。
Options
上司:だとすると、どんな方法が考えられそう?
部下:FAQを作る、チームで当番制にする、問い合わせ先を分ける……。
上司:他には?
部下:よくある質問なら、回答テンプレートを作って渡せそうです。
上司:どれが一番現実的?
部下:まず問い合わせの内容を分類するところからですかね。
ここでは上司が「FAQを作りなさい」と答えを与えていません。本人が複数の方法を比較し、次の行動候補を考えています。
Will
上司:では、最初に何をする?
部下:直近1カ月の問い合わせを分類します。
上司:いつまでに?
部下:今週金曜までです。
上司:次の1on1では何を確認しようか?
部下:分類結果を見て、FAQ化するものと他のメンバーに渡せるものを決めたいです。
これで、「仕事が多くて困っている」という漠然とした相談が、「金曜日までに問い合わせを分類する」という具体的な行動に変わりました。
これがGROWモデルの基本的な使い方です。
GROWモデルを1on1で使う四つのポイント
GROWモデルは1対1のコーチング、キャリア対話、パフォーマンスレビュー、問題解決、チームコーチングなど、さまざまな場面で利用できるとされています。特に、本人がすでに「考えたい課題・目標・意思決定」を持っている場面に適しています。
ただし、1on1で使う場合には四つのポイントがあります。
1. 毎回Gから始めなくてもいい
部下が「A案とB案のどちらにするか迷っています」と相談してきたなら、GoalとRealityはある程度整理されています。
無理に「あなたの目標は何ですか?」から始める必要はありません。OptionsやWillを中心に対話すれば十分です。
GROWモデルは、ステップ間を行き来しながら使う柔軟なモデルです。
2. Realityを急がない
上司は経験があるほど、「原因はたぶんこれだ」とすぐ分かってしまいます。
しかし、上司が正解を急ぐと、部下自身が状況を整理する機会を奪います。特に「何が起きたのか」と「それをどう解釈しているのか」を丁寧に分けることが重要です。
3. Optionsで上司の正解へ誘導しない
「上司に相談した方がいいと思わない?」「もっと早く動くべきだったんじゃない?」は、疑問文ではありますが、実質的には上司の意見です。
本人が考えるためには、「どんな方法が考えられる?」「他には?」と、答えが決まっていない問いを使います。
4. 最後は必ず行動まで落とす
よい対話をして「勉強になりました」で終わらせない。
Willでは、何を・いつ・どこまでやるかを本人が決めます。Performance Consultantsも、期限や進捗指標、実行責任まで具体化することをWの重要な要素として挙げています。
GROWモデルでよくある5つの失敗
GROWモデルはシンプルですが、使い方次第では機能しません。
Performance Consultantsも、代表的な失敗として「すぐ解決策へ行く」「順番に固執する」「本人を誘導する」「目標が曖昧」「実行責任を明確にしない」ことを挙げています。
1. すぐOptionsへ行く
「困っています」と聞いて、「じゃあ、こうしたら?」と解決策へ飛ぶケースです。
Realityが正しく整理されていなければ、解決策そのものがずれている可能性があります。
2. G→R→O→Wを絶対の順番だと思う
GROWはチェックリストではありません。
Optionsを考えていて「そもそも目標が違ったかもしれない」と気づけばGoalへ戻って構いません。
3. 質問の形をした誘導になる
「A案の方がいいんじゃない?」では、本人に考えさせているようで、実際には上司が答えを示しています。
4. Goalが曖昧なまま進む
「もっと成長したい」「仕事をうまくやりたい」だけでは、RealityもOptionsも曖昧になります。
「何ができるようになれば成長したと言えるのか」まで具体化します。
5. Willが「頑張ります」で終わる
行動、期限、確認方法が決まっていなければ、対話の翌日から何も変わらない可能性があります。
GROWモデルは本当に効果がある?
ここは、他のGROWモデル解説記事と区別しておきたい重要なポイントです。
「GROWモデルを使えば成果が上がる」と単純に断定することはできません。
職場コーチング全般については、研究によって一定の効果が確認されています。
2022年に『Journal of Work-Applied Management』に掲載されたWangらのメタ分析は、20研究・957人のデータを統合したものです。
ここでは、心理学的な枠組みに基づくコーチングが、目標達成(効果量 g = 1.29)と自己効力感(g = 0.59)に有意なプラス効果を示しました。また、本人の自己評価よりも、360度評価など第三者による評価のパフォーマンスに対して、より大きな効果が確認されています。
ただし研究者らは、広く使われているコーチング手法の間に、統計的に有意な差は見られなかったとも述べています。個別のフレームワーク同士を十分に比較できるほど、研究数も多くありません。
つまり、「コーチングには一定の実証的な支持がある」ことと、「GROWモデルそのものが他の方法より優れている」ことは別です。
GROWモデルの強みは、研究によって「最強の手法」と証明されていることではなく、目標→現状→選択肢→行動という複雑な対話を、覚えやすい4段階に整理できることにあります。
GROWモデルはどんな場面に向いている?
GROWモデルは、本人がすでに何らかの課題や目標を持っていて、自分自身で考える材料がある場面に向いています。Performance Consultantsも、1対1のコーチング、キャリア開発、パフォーマンスレビュー、問題解決、セルフコーチングなどを活用場面として挙げています。
職場なら、たとえば次のようなケースです。
- 次の営業提案をどう改善するか考えたい
- 新しい役割でどのように成果を出すか整理したい
- キャリアの方向性を考えたい
- チーム内の問題への対処法を考えたい
- 失敗を振り返り、次の行動を決めたい
- 目標達成に向けて打ち手を整理したい
一方で、本人が必要な知識を持っていない場面では、質問だけでは前に進みません。
たとえば、新入社員に初めて使う社内システムの操作を教える場合、「あなたならどう操作する?」と質問するより、まず使い方を教えた方が適切です。
GROWモデルは、すべての育成場面でティーチングの代わりになるものではありません。
GROWモデルについてよくある質問
Q:GROWモデルとは、簡単に言うと何ですか?
目標→現状→選択肢→行動という4段階で対話を整理するフレームワークです。
Goal / Goals、Reality、Options、Will / Way Forward の頭文字からGROWと呼ばれています。
Q:GROWモデルの四つのステップは?
次の四つです。
G:Goal / Goals=目標 R:Reality=現状 O:Options=選択肢 W:Will / Way Forward=意志・次の行動
Q:Growth ModelとGROWモデルは同じですか?
コーチングで広く使われている名称はGROW Modelです。
「成長」を意味する英語のgrowthから名づけられたわけではなく、Goal / Goals、Reality、Options、Will / Way Forward の頭文字を組み合わせた名称です。
Q:GROWモデルを作ったのは誰ですか?
ジョン・ウィットモア一人が発明した、と説明するのは正確ではありません。
共同開発元のPerformance Consultantsは、Sir John Whitmoreと同僚たちによって1980年代後半から1990年代初頭に開発されたと説明しています。その後、ウィットモアの著書『Coaching for Performance』を通じて広く普及しました。
Q:GROWモデルのWは「Will」と「Way Forward」のどちらですか?
どちらの表現も使われています。Performance Consultantsの現在の公式ガイドではWill / Way Forwardと表記されており、選択肢を考えるだけで終わらず、実際に何をするかを決める段階として説明されています。
Q:GROWモデルを学ぶなら、どの本ですか?
原典に近い位置づけにあるのが、Sir John Whitmore の『Coaching for Performance』です。
同書によってGROWモデルは世界的に知られるようになりました。現在は第6版まで刊行されており、第6版は2024年9月に、Sir John Whitmore と Performance Consultants CEO の Tiffany Gaskell の共著として刊行されています。
日本では原著第3版の邦訳として、『はじめのコーチング――本物の「やる気」を引き出すコミュニケーションスキル』(清川幸美訳、ソフトバンクパブリッシング、2003年)が刊行されています。
Q:GROWモデル以外のコーチングモデルもありますか?
あります。たとえばTGROW、OSKAR、CLEARなど、さまざまなフレームワークがあります。Performance Consultantsも、熟練したコーチは相手や状況に応じて複数のフレームワークを使い分けると説明しています。
GROWだけを唯一の正解と考える必要はありません。
GROWモデルは「質問の型」ではなく「思考を前に進める地図」
GROWモデルは、以下の四つのステップで、目標達成や問題解決のための対話を整理するフレームワークです。
Goal / Goals(目標)→ Reality(現状)→ Options(選択肢)→ Will / Way Forward(行動)
マネジャーにとって特に役立つのは、部下から相談を受けたとき、「ではこうしよう」とすぐ答えを出す前に、次の順番に考える余地をつくれることです。
- 何を実現したいのか
- 今はどうなっているのか
- 他にどんな方法があるのか
- 本人は何をするのか
ただし、GROWの質問を上から順番に読み上げれば、よいコーチングになるわけではありません。
相手の話を聞く。必要なら前のステップへ戻る。上司の答えへ誘導しない。そして最後は本人が行動を決める。
GROWはコーチングそのものではなく、コーチングを支える「型」です。
型に相手を当てはめるのではなく、相手の思考を前へ進めるために型を使う。それがGROWモデルを実践で生かすポイントです。
🔹 コーチングの基本スキルや、ティーチング・カウンセリングとの違いについては、コーチングとは? 意味・基本スキル・やり方をわかりやすく解説 をご覧ください。
参考文献・出典
- Performance Consultants「The GROW Model」(GROWモデル共同開発元の公式解説)
- Wang, Q., Lai, Y.-L., Xu, X. & McDowall, A. (2022) "The effectiveness of workplace coaching: a meta-analysis of contemporary psychologically informed coaching approaches," Journal of Work-Applied Management, 14(1), pp.77-101 https://doi.org/10.1108/JWAM-04-2021-0030
- International Coaching Federation「ICF Core Competencies」
- John Whitmore & Tiffany Gaskell, Coaching for Performance, 6th edition, Nicholas Brealey Publishing, 2024
- ジョン・ウィットモア著、清川幸美訳『はじめのコーチング――本物の「やる気」を引き出すコミュニケーションスキル』ソフトバンクパブリッシング、2003年
GROWモデルとは? 四つのステップを簡単に解説
GROWモデルとは、目標を明確にし、現状を把握し、選択肢を広げ、具体的な行動を決めるためのコーチング・問題解決のフレームワークです。
GROWは次の四つの言葉の頭文字から取られています。
共同開発元のPerformance Consultantsも、GROWモデルをこの4段階で説明しています。ジョン・ウィットモアと同僚たちによって1980年代後半から1990年代初頭に形づくられ、ウィットモアの著書『Coaching for Performance』を通じて広く知られるようになりました。
ただし、実際の対話で必ず「G→R→O→W」と一方向に進むわけではありません。Realityを話す中で目標そのものを見直したり、Optionsを考えている途中で現状認識に戻ったりすることもあります。Performance Consultantsも、GROWは必要に応じて段階を行き来する柔軟なフレームワークだと説明しています。
つまりGROWモデルは、会話を縛る台本ではなく、対話の現在地を見失わないための地図と考えると分かりやすいでしょう。
🔹 コーチングそのものの意味や、ティーチングとの違い、傾聴・質問などの基本スキルについては、コーチングとは? 意味・基本スキル・やり方をわかりやすく解説 で詳しく解説しています。
GROWモデルの4ステップと質問例
ここからは、四つのステップを実際の1on1でどのように使うのかを見ていきます。

G:Goal|何を実現したいのかを明確にする
最初のGは、Goal / Goals(目標)です。
ここでは「何を実現したいのか」「今回の対話をどこに着地させたいのか」を明確にします。
Performance Consultantsは、Goalとして扱うものには、業績目標だけでなく、行動変容、学習目標、中長期的な目標なども含まれるとしています。また、有効な目標には、明確で具体的であること、本人にとって意味があること、現実的な期間で実現可能であること、組織の目的とも整合していることなどが重要だとしています。
したがってGROWモデルのGoalは、「売上を120%にする」といったKPIだけではありません。
たとえば1on1なら、以下のようなものでも構いません。
- 次回の提案に向けて改善点を決めたい
- チームメンバーとの関係をどう立て直すか整理したい
- 今後半年のキャリアについて方向性を決めたい
🔹 Goalで使える質問例
💬 今日、一番考えたいことは何ですか?
💬 この時間が終わったとき、何が整理されていたらよさそうですか?
💬 最終的には、どのような状態にしたいですか?
💬 それが実現したと、何を見れば分かりますか?
💬 いつ頃までに実現したいですか?
💬 その目標は、あなたにとってなぜ重要ですか?
💬 それが実現すると、仕事や周囲にどんな変化がありますか?
ここで注意したいのは、上司が勝手にGoalを決めないことです。
上司は「営業数字の改善について話したい」と思っていても、部下は「顧客との関係に自信を失っていること」を整理したいのかもしれません。
最初に「何について考える時間なのか」を合わせることで、その後の対話がずれにくくなります。
R:Reality|現在地を正確に把握する
RはReality(現状)です。
Goalが「行きたい場所」なら、Realityは「現在地」にあたります。
現在の行動や結果、すでにうまくいっていること、使える強みや資源、障害、事実やデータなどを確認します。Performance Consultantsも、Realityで確認する要素として、現在の行動・結果、強みや資源、制約、関連する事実やデータを挙げています。
ここで重要なのは、すぐに解決策へ飛ばないことです。
たとえば部下が「顧客とうまくいっていません」と言ったとします。
そこで「訪問回数を増やした方がいいよ」と答える前に、このように聞きます。
💬「具体的には、何が起きている?」
💬「以前と何が変わった?」
💬「顧客から実際に何と言われた?」
すると、「関係が悪くなった」のではなく、担当者が変わって意思決定プロセスが分からなくなったことが本当の問題かもしれません。
問題を解く前に、問題を正しく捉える。 Realityはそのためのステップです。
🔹Realityで使える質問例
💬 今、具体的に何が起きていますか?
💬 事実として確認できていることは何ですか?
💬 あなた自身は、その状況をどう捉えていますか?
💬 これまでに何を試しましたか?
💬 うまくいっている部分はありますか?
💬 一番大きな障害は何ですか?
💬 今、使えそうな人・情報・経験はありますか?
💬 自分の思い込みかもしれない部分はありますか?
特に有効なのが、「事実」と「解釈」を分けることです。
「上司は自分を評価していない」は解釈です。「前回の会議で、自分の提案についてコメントがなかった」は事実です。
この二つを分けると、Realityをより正確に捉えやすくなります。
「R=Resource」ではないのか?
日本のGROWモデル解説では、Rを「Reality / Resource」と説明しているものもあります。
ただし、Performance Consultantsが現在公開している公式のGROWモデルでは、RはRealityです。その中で「Strengths and resources(強みや資源)」を確認するという整理になっています。
したがって本記事では、R=Reality(現状)とし、人脈、経験、スキルなどの「Resources」はRealityを把握する際に確認する要素の一つとして扱います。
O:Options|できるだけ多くの選択肢を考える
Oは、Options(選択肢)です。
GoalとRealityが見えたら、「では、何ができるだろうか」を考えます。
ここで重要なのは、最初に出た案ですぐ決めないことです。Performance Consultantsも、Optionsでは決まった答えを与えるのではなく、判断を急がずに新しい可能性を広げることを重視しています。
たとえば「顧客との関係を改善する」というテーマなら、「訪問回数を増やす」だけでなく、次のような複数の選択肢を出してみます。
- 先方に期待を直接確認する
- 利用データから課題仮説をつくる
- 別部署の担当者にも話を聞く
- 上司に同行してもらう
🔹Optionsで使える質問例
💬 どんな方法が考えられますか?
💬 他には何ができそうですか?
💬 まったく違う方法を取るとしたら?
💬 制約がなければ、何をしてみたいですか?
💬 過去に似た問題を解決したときは、何をしましたか?
💬 誰かの力を借りるとしたら、誰に頼めそうですか?
💬 同僚が同じ状況なら、どんな案を提案しますか?
💬 それぞれの案には、どんなメリットとリスクがありますか?
上司にもよいアイデアが浮かぶことはあります。その場合、黙っている必要はありません。
ただし「こうした方がいい」と答えを与えるのではなく、「一つ案があるけど、出してもいい?」と確認し、本人が考えた選択肢と同じテーブルに一案として置く方が、本人の思考を奪いにくくなります。
W:Will / Way Forward|次に何をするのか決める
最後のWは、Will / Way Forward(意志・次の行動)です。
ここではOptionsで考えた案から、「結局、自分は何をするのか」を決めます。
Performance Consultantsでは、具体的な行動、期限、進捗の確認方法、本人が責任を持って実行するための仕組みなどを明確にする段階とされています。
コーチングでは、いい気づきが生まれただけで終わってしまうことがあります。
「なるほど。自分は顧客の期待をきちんと確認していなかったんですね」で終われば、現実はまだ変わりません。「明日の定例で顧客に三つ質問する」まで決めて、初めて行動につながります。
🔹Willで使える質問例
💬 出てきた案のうち、どれをやってみますか?
💬 最初の一歩は何ですか?
💬 いつ実行しますか?
💬 どこまでできたら「進んだ」と判断しますか?
💬 実行を邪魔しそうなことはありますか?
💬 それが起きた場合、どう対応しますか?
💬 誰かの協力が必要ですか?
💬 1〜10でいうと、実行する意思はどのくらいありますか?
「頑張ります」で終わらせず、何を・いつ・どこまでやるのかまで具体化するのがポイントです。
GROWモデルの質問一覧|1on1ですぐ使える質問
ここまでの質問を、1on1ですぐ使えるようにまとめます。
すべての質問を使う必要はありません。むしろ、質問リストを消化しようとすると対話は不自然になります。
相手の話を聞きながら、「今はGoalが曖昧なのか」「Realityが整理できていないのか」「Optionsを広げる必要があるのか」を判断し、必要な問いだけ使います。
国際コーチング連盟(ICF)も、質の高いコーチングに必要な要素として、質問することだけでなく、信頼と安全をつくること、積極的に傾聴すること、気づきを促すことなどを挙げています。
【そのまま使える】GROWモデルのテンプレート
GROWモデルを実際に使う際は、次のような4項目に書き出すと整理しやすくなります。
GROWモデルの書き方
たとえば、「会議で自分の提案がなかなか通らない」という課題なら、次のように書けます。
G:Goal
×「提案力を上げたい」では少し曖昧です。
○「次回の企画会議で、自分の提案について意思決定してもらえる状態をつくる」まで具体化します。
R:Reality
×「説明が下手」だけでは原因が分かりません。
○「直近3回の会議で『結局、何を決めたいのか分からない』という指摘を2回受けた」と、できるだけ事実に近づけます。
O:Options
一つに決めず、次のように複数出します。
- 冒頭に結論を書く
- 1ページ目に意思決定事項を書く
- 会議前に上司へレビューを依頼する
- 過去に通った提案書を分析する
- 説明時間を半分にする
W:Will
最後に「水曜日までに提案書を1ページにまとめ、木曜日に上司からレビューをもらう」のように具体的な行動へ落とします。
ここでのポイントは以下の通りです。
- Goalを曖昧な願望で終わらせない
- Realityを感想だけにしない
- Optionsを一つで終わらせない
- Willを「頑張る」で終わらせない
GROWモデルの具体例|1on1ではどう使う?
実際の1on1での会話を見てみましょう。部下から「最近、仕事が多すぎて、うまく回せていません」という相談を受けたケースです。
Goal
上司:今日は何が整理できるとよさそう?
部下:仕事をどう減らすか決めたいです。
上司:理想的には、どんな状態になっていたい?
部下:残業せずに、重要な仕事に集中できる状態ですね。
ここで、「仕事を減らす」ではなく「重要な仕事に集中できる状態」までGoalが具体化しました。
Reality
上司:今、一番時間を取られているものは何?
部下:問い合わせ対応です。毎日10件以上あります。
上司:その10件は全部、あなたが答える必要がある?
部下:いや……半分くらいは他の人でも答えられますね。
上司:それでも今は全部あなたに来ている?
部下:そうです。以前から私が対応していたので、そのままになっています。
ここで問題が、「仕事が多すぎる」から「本人が対応しなくてもよい問い合わせまで本人に集中している」へ具体化しました。
Options
上司:だとすると、どんな方法が考えられそう?
部下:FAQを作る、チームで当番制にする、問い合わせ先を分ける……。
上司:他には?
部下:よくある質問なら、回答テンプレートを作って渡せそうです。
上司:どれが一番現実的?
部下:まず問い合わせの内容を分類するところからですかね。
ここでは上司が「FAQを作りなさい」と答えを与えていません。本人が複数の方法を比較し、次の行動候補を考えています。
Will
上司:では、最初に何をする?
部下:直近1カ月の問い合わせを分類します。
上司:いつまでに?
部下:今週金曜までです。
上司:次の1on1では何を確認しようか?
部下:分類結果を見て、FAQ化するものと他のメンバーに渡せるものを決めたいです。
これで、「仕事が多くて困っている」という漠然とした相談が、「金曜日までに問い合わせを分類する」という具体的な行動に変わりました。
これがGROWモデルの基本的な使い方です。
GROWモデルを1on1で使う四つのポイント
GROWモデルは1対1のコーチング、キャリア対話、パフォーマンスレビュー、問題解決、チームコーチングなど、さまざまな場面で利用できるとされています。特に、本人がすでに「考えたい課題・目標・意思決定」を持っている場面に適しています。
ただし、1on1で使う場合には四つのポイントがあります。
1. 毎回Gから始めなくてもいい
部下が「A案とB案のどちらにするか迷っています」と相談してきたなら、GoalとRealityはある程度整理されています。
無理に「あなたの目標は何ですか?」から始める必要はありません。OptionsやWillを中心に対話すれば十分です。
GROWモデルは、ステップ間を行き来しながら使う柔軟なモデルです。
2. Realityを急がない
上司は経験があるほど、「原因はたぶんこれだ」とすぐ分かってしまいます。
しかし、上司が正解を急ぐと、部下自身が状況を整理する機会を奪います。特に「何が起きたのか」と「それをどう解釈しているのか」を丁寧に分けることが重要です。
3. Optionsで上司の正解へ誘導しない
「上司に相談した方がいいと思わない?」「もっと早く動くべきだったんじゃない?」は、疑問文ではありますが、実質的には上司の意見です。
本人が考えるためには、「どんな方法が考えられる?」「他には?」と、答えが決まっていない問いを使います。
4. 最後は必ず行動まで落とす
よい対話をして「勉強になりました」で終わらせない。
Willでは、何を・いつ・どこまでやるかを本人が決めます。Performance Consultantsも、期限や進捗指標、実行責任まで具体化することをWの重要な要素として挙げています。
GROWモデルでよくある5つの失敗
GROWモデルはシンプルですが、使い方次第では機能しません。
Performance Consultantsも、代表的な失敗として「すぐ解決策へ行く」「順番に固執する」「本人を誘導する」「目標が曖昧」「実行責任を明確にしない」ことを挙げています。
1. すぐOptionsへ行く
「困っています」と聞いて、「じゃあ、こうしたら?」と解決策へ飛ぶケースです。
Realityが正しく整理されていなければ、解決策そのものがずれている可能性があります。
2. G→R→O→Wを絶対の順番だと思う
GROWはチェックリストではありません。
Optionsを考えていて「そもそも目標が違ったかもしれない」と気づけばGoalへ戻って構いません。
3. 質問の形をした誘導になる
「A案の方がいいんじゃない?」では、本人に考えさせているようで、実際には上司が答えを示しています。
4. Goalが曖昧なまま進む
「もっと成長したい」「仕事をうまくやりたい」だけでは、RealityもOptionsも曖昧になります。
「何ができるようになれば成長したと言えるのか」まで具体化します。
5. Willが「頑張ります」で終わる
行動、期限、確認方法が決まっていなければ、対話の翌日から何も変わらない可能性があります。
GROWモデルは本当に効果がある?
ここは、他のGROWモデル解説記事と区別しておきたい重要なポイントです。
「GROWモデルを使えば成果が上がる」と単純に断定することはできません。
職場コーチング全般については、研究によって一定の効果が確認されています。
2022年に『Journal of Work-Applied Management』に掲載されたWangらのメタ分析は、20研究・957人のデータを統合したものです。
ここでは、心理学的な枠組みに基づくコーチングが、目標達成(効果量 g = 1.29)と自己効力感(g = 0.59)に有意なプラス効果を示しました。また、本人の自己評価よりも、360度評価など第三者による評価のパフォーマンスに対して、より大きな効果が確認されています。
ただし研究者らは、広く使われているコーチング手法の間に、統計的に有意な差は見られなかったとも述べています。個別のフレームワーク同士を十分に比較できるほど、研究数も多くありません。
つまり、「コーチングには一定の実証的な支持がある」ことと、「GROWモデルそのものが他の方法より優れている」ことは別です。
GROWモデルの強みは、研究によって「最強の手法」と証明されていることではなく、目標→現状→選択肢→行動という複雑な対話を、覚えやすい4段階に整理できることにあります。
GROWモデルはどんな場面に向いている?
GROWモデルは、本人がすでに何らかの課題や目標を持っていて、自分自身で考える材料がある場面に向いています。Performance Consultantsも、1対1のコーチング、キャリア開発、パフォーマンスレビュー、問題解決、セルフコーチングなどを活用場面として挙げています。
職場なら、たとえば次のようなケースです。
- 次の営業提案をどう改善するか考えたい
- 新しい役割でどのように成果を出すか整理したい
- キャリアの方向性を考えたい
- チーム内の問題への対処法を考えたい
- 失敗を振り返り、次の行動を決めたい
- 目標達成に向けて打ち手を整理したい
一方で、本人が必要な知識を持っていない場面では、質問だけでは前に進みません。
たとえば、新入社員に初めて使う社内システムの操作を教える場合、「あなたならどう操作する?」と質問するより、まず使い方を教えた方が適切です。
GROWモデルは、すべての育成場面でティーチングの代わりになるものではありません。
GROWモデルについてよくある質問
Q:GROWモデルとは、簡単に言うと何ですか?
目標→現状→選択肢→行動という4段階で対話を整理するフレームワークです。
Goal / Goals、Reality、Options、Will / Way Forward の頭文字からGROWと呼ばれています。
Q:GROWモデルの四つのステップは?
次の四つです。
G:Goal / Goals=目標 R:Reality=現状 O:Options=選択肢 W:Will / Way Forward=意志・次の行動
Q:Growth ModelとGROWモデルは同じですか?
コーチングで広く使われている名称はGROW Modelです。
「成長」を意味する英語のgrowthから名づけられたわけではなく、Goal / Goals、Reality、Options、Will / Way Forward の頭文字を組み合わせた名称です。
Q:GROWモデルを作ったのは誰ですか?
ジョン・ウィットモア一人が発明した、と説明するのは正確ではありません。
共同開発元のPerformance Consultantsは、Sir John Whitmoreと同僚たちによって1980年代後半から1990年代初頭に開発されたと説明しています。その後、ウィットモアの著書『Coaching for Performance』を通じて広く普及しました。
Q:GROWモデルのWは「Will」と「Way Forward」のどちらですか?
どちらの表現も使われています。Performance Consultantsの現在の公式ガイドではWill / Way Forwardと表記されており、選択肢を考えるだけで終わらず、実際に何をするかを決める段階として説明されています。
Q:GROWモデルを学ぶなら、どの本ですか?
原典に近い位置づけにあるのが、Sir John Whitmore の『Coaching for Performance』です。
同書によってGROWモデルは世界的に知られるようになりました。現在は第6版まで刊行されており、第6版は2024年9月に、Sir John Whitmore と Performance Consultants CEO の Tiffany Gaskell の共著として刊行されています。
日本では原著第3版の邦訳として、『はじめのコーチング――本物の「やる気」を引き出すコミュニケーションスキル』(清川幸美訳、ソフトバンクパブリッシング、2003年)が刊行されています。
Q:GROWモデル以外のコーチングモデルもありますか?
あります。たとえばTGROW、OSKAR、CLEARなど、さまざまなフレームワークがあります。Performance Consultantsも、熟練したコーチは相手や状況に応じて複数のフレームワークを使い分けると説明しています。
GROWだけを唯一の正解と考える必要はありません。
GROWモデルは「質問の型」ではなく「思考を前に進める地図」
GROWモデルは、以下の四つのステップで、目標達成や問題解決のための対話を整理するフレームワークです。
Goal / Goals(目標)→ Reality(現状)→ Options(選択肢)→ Will / Way Forward(行動)
マネジャーにとって特に役立つのは、部下から相談を受けたとき、「ではこうしよう」とすぐ答えを出す前に、次の順番に考える余地をつくれることです。
- 何を実現したいのか
- 今はどうなっているのか
- 他にどんな方法があるのか
- 本人は何をするのか
ただし、GROWの質問を上から順番に読み上げれば、よいコーチングになるわけではありません。
相手の話を聞く。必要なら前のステップへ戻る。上司の答えへ誘導しない。そして最後は本人が行動を決める。
GROWはコーチングそのものではなく、コーチングを支える「型」です。
型に相手を当てはめるのではなく、相手の思考を前へ進めるために型を使う。それがGROWモデルを実践で生かすポイントです。
🔹 コーチングの基本スキルや、ティーチング・カウンセリングとの違いについては、コーチングとは? 意味・基本スキル・やり方をわかりやすく解説 をご覧ください。
参考文献・出典
- Performance Consultants「The GROW Model」(GROWモデル共同開発元の公式解説)
- Wang, Q., Lai, Y.-L., Xu, X. & McDowall, A. (2022) "The effectiveness of workplace coaching: a meta-analysis of contemporary psychologically informed coaching approaches," Journal of Work-Applied Management, 14(1), pp.77-101 https://doi.org/10.1108/JWAM-04-2021-0030
- International Coaching Federation「ICF Core Competencies」
- John Whitmore & Tiffany Gaskell, Coaching for Performance, 6th edition, Nicholas Brealey Publishing, 2024
- ジョン・ウィットモア著、清川幸美訳『はじめのコーチング――本物の「やる気」を引き出すコミュニケーションスキル』ソフトバンクパブリッシング、2003年






