
もう誰も“飲みたくて”集まっていない。「飲み会」をアップデートせよ
「飲み会離れ」は進んでいますが、組織において飲み会が果たしていた役割や機能もあります。では、飲み会におけるコミュニケーションの代替は必要ないのでしょうか。もし必要だとすれば、どのように再設計すべきなのでしょうか。
本稿ではその問いを軸に、飲み会の再定義を試みます。
飲み会は“ニーズがない”
年末年始と言えば、お酒の場が増えるものです。しかし近年、忘・新年会の実施率は低空飛行。東京商工リサーチの調査によると、2025年の忘・新年会の実施率は57.2%と、コロナ禍前の水準(78.4%)から21ポイント減少しました。
見送る理由は、「開催ニーズが高くないから」が最多です。職場の飲み会の代名詞とも言える行事に対して、会社側が"ニーズがない"と判断するようになったことは、大きな変化といえそうです。
もっとも、飲み会のニーズは人それぞれです。カオナビHRテクノロジー総研が行った、職場の飲み会の実態調査(2025)によると、週1回以上飲み会に参加している人(全体の3.7%)のうちの約68%は、理想の頻度も現状維持の「週1回以上」を選んでいました。頻繁に飲み会がある人ほど、飲み会への抵抗感が少ないことがわかります。
飲み会が減ったことへの受け止め方には、立場による違いも見られます。カオナビの2022年の調査によると、基本的には職位が高いほど、飲み会が減っていることに寂しさを感じている傾向が見られました。部長相当では25.3%と、およそ4人に1人の割合で「寂しい」と感じています。
また、部下の人数が増えるほど「寂しさ」を感じる傾向も見られます。業務中にひとりひとりと接する時間は限られるため、「飲み会」という補助的な場で、部下の様子の把握や、信頼関係の構築をおこなってきた可能性が考えられます。
とはいえ、飲み会への参加が当然とされた時代から、状況は変わり、今は「選べる」時代です。Freasy(フリージー)の調べによると、では、新入社員(新卒1年目)が「会社の飲み会に参加しない」ことを「許せる」人が64.5%と多数でした。この結果からは、飲み会の欠席が問題視されない風潮の広がりがうかがえます。
参加の決め手は誰が誘ったかではなく、誰がいるか
カオナビ2025年調査では、上司・同僚・部下それぞれから誘われることをどう感じるかも聞いています。上司から「誘われたい」と答えた人は11.2%。「誘われたくない」が過半数を占めました。同僚(20.4%)や部下(16.4%)からの誘いも、さほど歓迎されていないことがわかります。
では、参加の決め手になるのは何かというと、「メンバー」の要素が大きいようです。誰から声をかけられたか以上に重要なのはメンバー構成で、それ次第で出欠を決めるという状況がデータから読み取れます。
この「メンバー重視」の背景にはさまざまな意図があると考えられます。例えば、普段接点の少ない人との関係構築を目的に参加する人もいれば、気を許せる相手がいることを条件に参加を決める人もいます。
心理的安全性の高さを重視する傾向も見られ、「気を使わなくて済む相手と過ごせるかどうか」が判断基準になるケースもあるでしょう。

「コミュニケーションを深める場」としての飲み会
「ホットペッパーグルメ外食総研」の職場の飲み会のイメージと参加実態に関するアンケートによると、職場の飲み会のポジティブなイメージとしては、「普段会話しない人と会話できる」(30.4%)、「上司、同僚、部下の人物理解が進む」(25.2%)など、人間関係に紐づく点が上位に挙がりました。
他方、ネガティブなイメージには「気を使い、くつろげない」(36.3%)、「かえってストレスがたまる」(29.2%)、「プライベートな時間が削られる」など、精神的な負担をあげる声が強くありました。

現代の飲み会は、忘年会など半ば自動的に設定される場と任意の場が混在しています。重要なのは、そうした場をどのように活用すれば、参加者が意義を感じられるかという観点です。
たとえば、Job総研の「2025年 忘年会意識調査」では、20代では忘年会を「出世のチャンス」と捉えている人が74%と多数を占めています。
これは「酒席で上司に気に入られることが出世につながる」という昭和的な発想ではなく、「普段話せない人と話す機会」「自分を知ってもらえる場」として、ネットワーキングの一環と捉えている若手が多いとされています。数時間で適切に自己開示し、人間関係を構築する手段として、飲み会を合理的に活用している世代とも言えるでしょう。
数時間で自分を理解してもらう情報を適切な人に伝えられると考えれば、「タイパ」がいいのかもしれませんね。
飲み会の機能を分解すると……
ここまでのデータから読み解くと、飲み会は三つの機能を担っていると考えられます。
①関係資本の初期構築
飲み会の効果として最も多く挙げられたのは「話がしやすくなった」でした。配属や異動直後に開催される歓迎会などは、お酒を伴う「業務外」の場として相手を知る心理的ハードルを下げ、その後の関係構築につながっていると考えられます。
②非公式情報のキャッチアップ
飲み会は、「オフレコ」の雰囲気やアルコールの作用で、悩みや本音が出やすい場です。部下の人数が多い管理職ほど飲み会が減ったことに寂しさを感じていたのは、こうした場を信頼構築や部下のコンディションの把握に用いてきたからかもしれません。
③部署横断の弱い紐帯
会議やオフィスでの会話とは異なり、飲み会は職位や職種を越えて人が集まる場。結果として、「社内ネットワークが広がった」という効果につながる場面も多いのでしょう。
もちろん、これらは「飲み会でなければ得られないメリット」ではありません。しかし、飲み会という場がそれらを比較的得やすくしていたことは確かでしょう。つまり、飲み会は組織の関係構築やチームビルディングに効率的に貢献していた可能性があります。
では、こうした機能を、飲み会以外の手段でどう再設計していけばよいのでしょうか。

①関係資本の初期構築
💡ウェルカムランチ
→普段のランチとは違う「業務外」のイベントに
②非公式情報のキャッチアップ
💡1on1の再設計
→悩みや本音を語り合う場へ
③部署横断の弱い紐帯
💡勉強会、趣味コミュニティ
→部署横断の業務外活動で横のつながりを作る
④心理的距離の短縮
💡「雑談タイム」の設置
→短時間でもよいので、雑談ができる場を持つ
任意参加時代に飲み会を設計するポイント
もし職場の飲み会を、コミュニケーション手段として効果的に使いたいと考えるなら、“参加前の納得感”の設計が重要になります。
<職場の飲み会の五大原則>
🍺幹事・主催者の思いの伝達
「歓送迎会」「プロジェクト完了」「社内交流」など“どんな思いでこの会を開こうとしているのか”という幹事や主催者の思いをあらかじめ伝え、納得感・共感を持って参加できるようにする。
🍺メンバーの厳選
最も重要なのは参加者選び。誰と誰をつなぐための場なのかを明確にし、慎重に参加者を決める。
🍺任意参加の徹底
参加者を選抜し、「この人に来てもらいたい」と考えても、無理に参加させるような形には絶対にしないこと。その人が参加したくなるような場づくりを行い、任意でも出席してもらえる工夫をする。
🍺費用と時間の透明性
コスパ・タイパを意識し、目的が果たせるのであれば1時間に収めるなど、合理的に設計するようにする。また、参加費の明確な設計も欠かせない。会社負担か自己負担か、一人あたりいくらになるよう設定するか、お酒を飲む人と飲まない人、年次が上か下かなどで参加費に傾斜をつけるのかなどを事前に決め、あらかじめ周知する。
🍺アルコールを前提にしない
目的を果たすために、アルコールが必須とは限らない。ノンアル飲料のある店や、食事やデザート中心でも楽しめる店を選ぶなどの工夫も重要。
こうしたポイントを押さえれば、飲み会は今でも「関係構築」や「相互理解」のための有効な手段になりうる。“飲みニケーション”のその先には、個人の納得感と目的を重視した新しい関係構築の姿があるのかもしれません。
飲み会は“ニーズがない”
年末年始と言えば、お酒の場が増えるものです。しかし近年、忘・新年会の実施率は低空飛行。東京商工リサーチの調査によると、2025年の忘・新年会の実施率は57.2%と、コロナ禍前の水準(78.4%)から21ポイント減少しました。
見送る理由は、「開催ニーズが高くないから」が最多です。職場の飲み会の代名詞とも言える行事に対して、会社側が"ニーズがない"と判断するようになったことは、大きな変化といえそうです。
もっとも、飲み会のニーズは人それぞれです。カオナビHRテクノロジー総研が行った、職場の飲み会の実態調査(2025)によると、週1回以上飲み会に参加している人(全体の3.7%)のうちの約68%は、理想の頻度も現状維持の「週1回以上」を選んでいました。頻繁に飲み会がある人ほど、飲み会への抵抗感が少ないことがわかります。
飲み会が減ったことへの受け止め方には、立場による違いも見られます。カオナビの2022年の調査によると、基本的には職位が高いほど、飲み会が減っていることに寂しさを感じている傾向が見られました。部長相当では25.3%と、およそ4人に1人の割合で「寂しい」と感じています。
また、部下の人数が増えるほど「寂しさ」を感じる傾向も見られます。業務中にひとりひとりと接する時間は限られるため、「飲み会」という補助的な場で、部下の様子の把握や、信頼関係の構築をおこなってきた可能性が考えられます。
とはいえ、飲み会への参加が当然とされた時代から、状況は変わり、今は「選べる」時代です。Freasy(フリージー)の調べによると、では、新入社員(新卒1年目)が「会社の飲み会に参加しない」ことを「許せる」人が64.5%と多数でした。この結果からは、飲み会の欠席が問題視されない風潮の広がりがうかがえます。
参加の決め手は誰が誘ったかではなく、誰がいるか
カオナビ2025年調査では、上司・同僚・部下それぞれから誘われることをどう感じるかも聞いています。上司から「誘われたい」と答えた人は11.2%。「誘われたくない」が過半数を占めました。同僚(20.4%)や部下(16.4%)からの誘いも、さほど歓迎されていないことがわかります。
では、参加の決め手になるのは何かというと、「メンバー」の要素が大きいようです。誰から声をかけられたか以上に重要なのはメンバー構成で、それ次第で出欠を決めるという状況がデータから読み取れます。
この「メンバー重視」の背景にはさまざまな意図があると考えられます。例えば、普段接点の少ない人との関係構築を目的に参加する人もいれば、気を許せる相手がいることを条件に参加を決める人もいます。
心理的安全性の高さを重視する傾向も見られ、「気を使わなくて済む相手と過ごせるかどうか」が判断基準になるケースもあるでしょう。

「コミュニケーションを深める場」としての飲み会
「ホットペッパーグルメ外食総研」の職場の飲み会のイメージと参加実態に関するアンケートによると、職場の飲み会のポジティブなイメージとしては、「普段会話しない人と会話できる」(30.4%)、「上司、同僚、部下の人物理解が進む」(25.2%)など、人間関係に紐づく点が上位に挙がりました。
他方、ネガティブなイメージには「気を使い、くつろげない」(36.3%)、「かえってストレスがたまる」(29.2%)、「プライベートな時間が削られる」など、精神的な負担をあげる声が強くありました。

現代の飲み会は、忘年会など半ば自動的に設定される場と任意の場が混在しています。重要なのは、そうした場をどのように活用すれば、参加者が意義を感じられるかという観点です。
たとえば、Job総研の「2025年 忘年会意識調査」では、20代では忘年会を「出世のチャンス」と捉えている人が74%と多数を占めています。
これは「酒席で上司に気に入られることが出世につながる」という昭和的な発想ではなく、「普段話せない人と話す機会」「自分を知ってもらえる場」として、ネットワーキングの一環と捉えている若手が多いとされています。数時間で適切に自己開示し、人間関係を構築する手段として、飲み会を合理的に活用している世代とも言えるでしょう。
数時間で自分を理解してもらう情報を適切な人に伝えられると考えれば、「タイパ」がいいのかもしれませんね。
飲み会の機能を分解すると……
ここまでのデータから読み解くと、飲み会は三つの機能を担っていると考えられます。
①関係資本の初期構築
飲み会の効果として最も多く挙げられたのは「話がしやすくなった」でした。配属や異動直後に開催される歓迎会などは、お酒を伴う「業務外」の場として相手を知る心理的ハードルを下げ、その後の関係構築につながっていると考えられます。
②非公式情報のキャッチアップ
飲み会は、「オフレコ」の雰囲気やアルコールの作用で、悩みや本音が出やすい場です。部下の人数が多い管理職ほど飲み会が減ったことに寂しさを感じていたのは、こうした場を信頼構築や部下のコンディションの把握に用いてきたからかもしれません。
③部署横断の弱い紐帯
会議やオフィスでの会話とは異なり、飲み会は職位や職種を越えて人が集まる場。結果として、「社内ネットワークが広がった」という効果につながる場面も多いのでしょう。
もちろん、これらは「飲み会でなければ得られないメリット」ではありません。しかし、飲み会という場がそれらを比較的得やすくしていたことは確かでしょう。つまり、飲み会は組織の関係構築やチームビルディングに効率的に貢献していた可能性があります。
では、こうした機能を、飲み会以外の手段でどう再設計していけばよいのでしょうか。

①関係資本の初期構築
💡ウェルカムランチ
→普段のランチとは違う「業務外」のイベントに
②非公式情報のキャッチアップ
💡1on1の再設計
→悩みや本音を語り合う場へ
③部署横断の弱い紐帯
💡勉強会、趣味コミュニティ
→部署横断の業務外活動で横のつながりを作る
④心理的距離の短縮
💡「雑談タイム」の設置
→短時間でもよいので、雑談ができる場を持つ
任意参加時代に飲み会を設計するポイント
もし職場の飲み会を、コミュニケーション手段として効果的に使いたいと考えるなら、“参加前の納得感”の設計が重要になります。
<職場の飲み会の五大原則>
🍺幹事・主催者の思いの伝達
「歓送迎会」「プロジェクト完了」「社内交流」など“どんな思いでこの会を開こうとしているのか”という幹事や主催者の思いをあらかじめ伝え、納得感・共感を持って参加できるようにする。
🍺メンバーの厳選
最も重要なのは参加者選び。誰と誰をつなぐための場なのかを明確にし、慎重に参加者を決める。
🍺任意参加の徹底
参加者を選抜し、「この人に来てもらいたい」と考えても、無理に参加させるような形には絶対にしないこと。その人が参加したくなるような場づくりを行い、任意でも出席してもらえる工夫をする。
🍺費用と時間の透明性
コスパ・タイパを意識し、目的が果たせるのであれば1時間に収めるなど、合理的に設計するようにする。また、参加費の明確な設計も欠かせない。会社負担か自己負担か、一人あたりいくらになるよう設定するか、お酒を飲む人と飲まない人、年次が上か下かなどで参加費に傾斜をつけるのかなどを事前に決め、あらかじめ周知する。
🍺アルコールを前提にしない
目的を果たすために、アルコールが必須とは限らない。ノンアル飲料のある店や、食事やデザート中心でも楽しめる店を選ぶなどの工夫も重要。
こうしたポイントを押さえれば、飲み会は今でも「関係構築」や「相互理解」のための有効な手段になりうる。“飲みニケーション”のその先には、個人の納得感と目的を重視した新しい関係構築の姿があるのかもしれません。






