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人事への問い合わせを1/3に減らす——NotebookLMで自己解決を促したIT企業
人事への問い合わせを1/3に減らす——NotebookLMで自己解決を促したIT企業

人事への問い合わせを1/3に減らす——NotebookLMで自己解決を促したIT企業

人事図書館館長・吉田洋介さんによる連載第9回。今回のテーマは「社内ルール・人事制度の問い合わせ対応へのAI活用」です。

調べれば分かる問い合わせ、割り込みによる業務中断、誤回答のリスク、精神的な負荷——。問い合わせ対応に立ちはだかる様々な壁を、NotebookLMで乗り越えつつあるIT企業の事例を紹介します。

目次

社内ルール、人事制度等の問い合わせ対応

人事を担当している方ならば、「現場からの問い合わせを何とか減らせないか……」と考えたことは1度や2度ではないはずです。

就業規則に始まり、休暇申請や休職の相談、評価プロセス、福利厚生の内容など、問い合わせは日々あがってきます。工数としての重たさ以上に厄介なのが、業務を中断して確認・対応を求められる割り込みです。

集中が途切れ、全体としての業務効率が落ち、気持ちとしても落ち着かない状態が続きます。

「ルールを共有する」「目につきやすいよう整理する」「ビジュアルとして分かりやすくする」「FAQを作る」など、工夫してきた会社は多いでしょう。

それでも、なぜか直接の問い合わせが減らない。むしろ「FAQがあるのに聞いてくる」状態が続いてしまう。そんな悩みを抱えているケースも少なくありません。

たとえルールやFAQが存在していても、

  • どこに書いてあるか分からない
  • 見つけたが、自分のケースに当てはまるか自信がない
  • 例外や前提条件がありそうで不安
  • 人に聞いた方が早いという行動が定着している

といった理由で、現場は問い合わせてきます。

そして、人事側は「丁寧に調べて、正確に答える」ことが求められます。この丁寧さが積み重なるほど、精神的な負荷は増えていきます。

問い合わせ対応業務の特性

問い合わせ対応は簡単なように見えて、難しい特性を持っています。

1) ルールが更新され、誤回答が起きやすい

担当外の領域でルールが更新されたり、変更を把握できていなかったりして、間違って伝えてしまうことが起こりえます。

2) あいまいな質問を、あいまいなまま答えてはいけない

「介護休職したい」「6月入社のメンバーの有休ってどうなりますか?」のように、質問は大抵あいまいです。雇用形態、勤続年数、事由、申請タイミングなどで回答が変わる場合もあります。ここを雑に答えると、トラブルの火種になります。

3) 探せば分かるのに、探し方で不満が生まれる

人事がルールやFAQを整備していても、現場からは「調べても分からなかった」「どこに書いてあるか分からない」とクレームになることもあります。

4) 誤回答時の影響が大きい

人事制度は、社員の生活や評価に直結します。誤った説明は、信頼低下だけでなく、労務リスクにもつながります。

IT企業A社の取り組みと成果

ここで、300人規模のITベンチャー企業A社の取り組みをご紹介します。
A社は、社内ルール・人事制度・手続き情報を一元化し、NotebookLMを使い「限定された資料からの回答」に強い仕組みを作ることで、問い合わせ対応の質と量を改善しました。

🟥 問題意識

A社では企業規模の拡大とともに社内問い合わせが増えていました。人事は責任者を含め5人。ただし、採用担当3人は終日多忙で手が回りにくく、労務担当も月末月初など立て込む時期には、問い合わせ対応が溜まりがちでした。

その結果、

  • 返信が遅れて現場からクレームになる
  • 問い合わせ対応の量に偏りが出て、人事内に不平不満が出る
  • 割り込み対応が増え、主要業務が進まない

という状態に陥ってしまいました。

🟦 取り組んだこと

期初にそれまでの問い合わせをレビューしたところ、8割以上が「ルールや資料を読めば解決する」レベルの内容でした。そこでA社は、「問い合わせを人事が捌く」のではなく、各社員が自己解決できる仕組みを先に整える方針に切り替えました。

具体的には次の流れです。

  1. 問い合わせが来ていた内容を、ドキュメントとして補強
    • 書いてあるのに読まれないではなく、読めば分かる状態になっていない部分を埋める
    • 例外条件、判断のポイント、手続き手順などを追記する

  2. 就業規則・人事制度・各種手続き・過去のFAQを集約し、NotebookLMを活用し、自動回答を実現
    • 1で補強された就業規則や人事制度、手続き資料、FAQをNotebookLMに入れる
    • 全社員がアクセスできる形にし、あいまいな聞き方でも該当箇所から回答できるようにする
サンプル画像
  1. 問い合わせ頻度が高いものは、資料作成機能で分かりやすく再編集
    • 既存資料は読む人に優しくないことが多い
    • NotebookLMのスライド作成機能を使い、手間をかけずに要点整理や説明資料化を進め、自己解決率を引き上げる

問い合わせ内容をレビューしていたことで、特に重点的に整備しておく資料が明確になっており、作業が膨大にならずに済みました。

🟨 成果、反応

社員側の反応は前向きでした。これまでは「調べ方が分からない」「解釈に自信がない」ために問い合わせていたものが、あいまいな質問でも即座に答えが返ってくることで、自己解決しやすくなったと言います。

結果として、

  • 人事への問い合わせ数が以前の約1/3に減少
  • 調べたら分かる相談が大幅に減り、人事の判断が必要な相談に絞られるようになった
  • 人事担当の精神的負荷が減り、業務に集中できる時間が増える

という変化が起きました。

問い合わせがゼロになったわけではありませんが、人が対応すべき相談(個別事情・判断が必要なもの)に時間を使えるようになったことが大きな成果です。

🟩 今後に向けて

NotebookLMを活用するようになってから、A社では以前にも増してドキュメント化と情報更新に力を入れるようになっています。その理由は「AIによる自動回答」のためというより、「組織として情報を扱える状態にする」意識が高まったためだといいます。

今後の挑戦としては、次のような展開を検討しているとのことでした。

  • 各職種の情報をNotebookLMに追加し、求人票作成などを効率化する
  • オンボーディング関連資料を取り込み、分かりやすくビジュアライズする
  • テスト(クイズ等)で理解度を確認し、学習体験を改善する

社内ルールの一元管理と自動回答は、すぐに対応できる上、業務への影響も大きい取り組みです。環境が整っている企業ではぜひ取り組まれることをおすすめします。

社内ルール、人事制度等の問い合わせ対応

人事を担当している方ならば、「現場からの問い合わせを何とか減らせないか……」と考えたことは1度や2度ではないはずです。

就業規則に始まり、休暇申請や休職の相談、評価プロセス、福利厚生の内容など、問い合わせは日々あがってきます。工数としての重たさ以上に厄介なのが、業務を中断して確認・対応を求められる割り込みです。

集中が途切れ、全体としての業務効率が落ち、気持ちとしても落ち着かない状態が続きます。

「ルールを共有する」「目につきやすいよう整理する」「ビジュアルとして分かりやすくする」「FAQを作る」など、工夫してきた会社は多いでしょう。

それでも、なぜか直接の問い合わせが減らない。むしろ「FAQがあるのに聞いてくる」状態が続いてしまう。そんな悩みを抱えているケースも少なくありません。

たとえルールやFAQが存在していても、

  • どこに書いてあるか分からない
  • 見つけたが、自分のケースに当てはまるか自信がない
  • 例外や前提条件がありそうで不安
  • 人に聞いた方が早いという行動が定着している

といった理由で、現場は問い合わせてきます。

そして、人事側は「丁寧に調べて、正確に答える」ことが求められます。この丁寧さが積み重なるほど、精神的な負荷は増えていきます。

問い合わせ対応業務の特性

問い合わせ対応は簡単なように見えて、難しい特性を持っています。

1) ルールが更新され、誤回答が起きやすい

担当外の領域でルールが更新されたり、変更を把握できていなかったりして、間違って伝えてしまうことが起こりえます。

2) あいまいな質問を、あいまいなまま答えてはいけない

「介護休職したい」「6月入社のメンバーの有休ってどうなりますか?」のように、質問は大抵あいまいです。雇用形態、勤続年数、事由、申請タイミングなどで回答が変わる場合もあります。ここを雑に答えると、トラブルの火種になります。

3) 探せば分かるのに、探し方で不満が生まれる

人事がルールやFAQを整備していても、現場からは「調べても分からなかった」「どこに書いてあるか分からない」とクレームになることもあります。

4) 誤回答時の影響が大きい

人事制度は、社員の生活や評価に直結します。誤った説明は、信頼低下だけでなく、労務リスクにもつながります。

IT企業A社の取り組みと成果

ここで、300人規模のITベンチャー企業A社の取り組みをご紹介します。
A社は、社内ルール・人事制度・手続き情報を一元化し、NotebookLMを使い「限定された資料からの回答」に強い仕組みを作ることで、問い合わせ対応の質と量を改善しました。

🟥 問題意識

A社では企業規模の拡大とともに社内問い合わせが増えていました。人事は責任者を含め5人。ただし、採用担当3人は終日多忙で手が回りにくく、労務担当も月末月初など立て込む時期には、問い合わせ対応が溜まりがちでした。

その結果、

  • 返信が遅れて現場からクレームになる
  • 問い合わせ対応の量に偏りが出て、人事内に不平不満が出る
  • 割り込み対応が増え、主要業務が進まない

という状態に陥ってしまいました。

🟦 取り組んだこと

期初にそれまでの問い合わせをレビューしたところ、8割以上が「ルールや資料を読めば解決する」レベルの内容でした。そこでA社は、「問い合わせを人事が捌く」のではなく、各社員が自己解決できる仕組みを先に整える方針に切り替えました。

具体的には次の流れです。

  1. 問い合わせが来ていた内容を、ドキュメントとして補強
    • 書いてあるのに読まれないではなく、読めば分かる状態になっていない部分を埋める
    • 例外条件、判断のポイント、手続き手順などを追記する

  2. 就業規則・人事制度・各種手続き・過去のFAQを集約し、NotebookLMを活用し、自動回答を実現
    • 1で補強された就業規則や人事制度、手続き資料、FAQをNotebookLMに入れる
    • 全社員がアクセスできる形にし、あいまいな聞き方でも該当箇所から回答できるようにする
サンプル画像
  1. 問い合わせ頻度が高いものは、資料作成機能で分かりやすく再編集
    • 既存資料は読む人に優しくないことが多い
    • NotebookLMのスライド作成機能を使い、手間をかけずに要点整理や説明資料化を進め、自己解決率を引き上げる

問い合わせ内容をレビューしていたことで、特に重点的に整備しておく資料が明確になっており、作業が膨大にならずに済みました。

🟨 成果、反応

社員側の反応は前向きでした。これまでは「調べ方が分からない」「解釈に自信がない」ために問い合わせていたものが、あいまいな質問でも即座に答えが返ってくることで、自己解決しやすくなったと言います。

結果として、

  • 人事への問い合わせ数が以前の約1/3に減少
  • 調べたら分かる相談が大幅に減り、人事の判断が必要な相談に絞られるようになった
  • 人事担当の精神的負荷が減り、業務に集中できる時間が増える

という変化が起きました。

問い合わせがゼロになったわけではありませんが、人が対応すべき相談(個別事情・判断が必要なもの)に時間を使えるようになったことが大きな成果です。

🟩 今後に向けて

NotebookLMを活用するようになってから、A社では以前にも増してドキュメント化と情報更新に力を入れるようになっています。その理由は「AIによる自動回答」のためというより、「組織として情報を扱える状態にする」意識が高まったためだといいます。

今後の挑戦としては、次のような展開を検討しているとのことでした。

  • 各職種の情報をNotebookLMに追加し、求人票作成などを効率化する
  • オンボーディング関連資料を取り込み、分かりやすくビジュアライズする
  • テスト(クイズ等)で理解度を確認し、学習体験を改善する

社内ルールの一元管理と自動回答は、すぐに対応できる上、業務への影響も大きい取り組みです。環境が整っている企業ではぜひ取り組まれることをおすすめします。

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執筆者
吉田 洋介

人事図書館 館長2007年立命館大学大学院政策科学研究科卒業。新卒でリクルートマネジメントソリューションズ入社。組織人事支援として国内外500社以上の採用、人材開発、組織開発、人事制度等に関わり、支社長・事業責任者等を歴任。2021年に独立し株式会社Trustyyleを設立。2024年4月に東京・人形町に1,000冊以上の人事関連書籍を備えた「人事図書館」をオープンし、現職。

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