ホーム
組織を動かす
ぬるい職場の脱し方。チームに「熱」を取り戻す方法
ぬるい職場の脱し方。チームに「熱」を取り戻す方法

ぬるい職場の脱し方。チームに「熱」を取り戻す方法

「うちの職場、なんか“ぬるい”な……」と思ったことはないだろうか。和気あいあいとしたチームづくりには成功している。でも、メンバー同士が切磋琢磨するような場面はほとんどない。それでも一見、問題はないように見える。部下は上司に叱られず、チーム内の衝突もなく、心地よい関係性が保たれているからだ。

だが、その“心地よさ”こそが、チームの熱を奪っているかもしれない。今回は、そんな「ぬるい職場」に悩むマネジャーに向けて、心理的安全性の本質を取り戻し、チームを再び動かすヒントを考える。

目次

「ぬるい職場」の正体

いわゆる「ぬるい職場」には、大きく分けて三つのパターンがある。

まず一つは、目標設定のぬるさだ。形だけの数値目標はあるものの、達成の有無にかかわらず評価が変わらないといった目標設定のあいまいさや、ミスを指摘する人もおらず、緊張感がないなどの特徴がある。そうした環境では、メンバーは波風を立てないように行動する。

二つ目は、マネジメントのぬるさだ。基本的に年功序列で、成果よりも在籍年数や人間関係が評価につながる。また、マネジャー層が部下に嫌われたくないため、厳しい指導を避ける。メンバーとしては、成果を出す必要性を感じなくなり、挑戦の意欲が失われていく。

三つ目は、カルチャーのぬるさだ。メンバーは外部の刺激を求めておらず、スキルアップへの意欲も低下。加えて、失敗や停滞について、だれも責任を取らず、責任を問われることもない。「ここにいれば大丈夫」という惰性的な安心感が組織内を覆っているため、退屈さはあるが、現状を変える動機が生まれない。

以上の三つが、複合的に発生していることも多い。環境の変化が少しずつ進む中で危機に気づかず、結果的に致命的な状況に陥る、いわゆる「ゆでガエル」状態だといえよう。いずれのパターンにおいても、組織を包むぬるさの正体は「関係性の現状維持を望む心」だ。

はき違えた「心理的安全性」が組織をむしばむ

「うちは心理的安全性の高い職場を目指している」。ストレスを感じないような心地よい環境作りに取り組むマネジャーもいる。昨今、この「心理的安全性」が、“心が安全を感じられる心地よい状態”だと勘違いしている人も多く、それが「ぬるい職場」を生み出しているという懸念もある。

実際のところ、定義通りの「心理的安全性」がある職場が、ぬるくなるはずがない。具体的に説明しよう。

心理的安全性とは、「このチームでは、失敗や疑問を口にしたり、意見を述べても非難されたり恥をかくことはない」とメンバーが対人リスクを安心して取れる状態を指す。「仲が良い」「遠慮して批判しない」ではない。むしろ、人間関係の摩擦を避け、相手へのフィードバックを回避するような組織は、心理的安全性が“低い”のである。

心理的安全性が“高い”組織は、自由に意見を出し合い、本音でぶつかることができる関係性を持っている。

まず、マネジャーが「ぬるい職場」に気づいたら、「心理的安全性」を取り違えた組織作りをしていないかを見直そう。本来の心理的安全性は、安心の中に“緊張感ある対話”を生み出すものだ。そこに立ち返ることが、ぬるさからの脱却の第一歩である。

「ぬるい職場」簡単チェックリスト

自分の職場のぬるさを確認する簡単なテストとして、以下のような場面がなかったか思い出してみよう。マネジャーの場合は「そういうシーンを見かけた」「メンバーにはそう見えるようにしている」、メンバーの場合は「自分がしている」「そう思う」ことをチェックしてほしい。

一つでもチェックがつけば、「ぬるい職場」に足を踏み入れていると考えてよいだろう。どの項目も、「言うべきことを言わない」というシーンであり、心理的安全性が下がっているサインである。

なお、こうした「ぬるい職場」は、業務の性質や職種によっても陥りやすさが異なる。

ぬるい職場になりにくい職種として、まずは営業職が挙げられる。営業の仕事のように、定量的に成果を測れる仕事や、メーカーのように工程やプロセスが標準化されている仕事は、チームの成果や目標がはっきりしているからだ。

他方、バックオフィス業務のように、仕事が標準化されているように見えても、実際には個々の判断や調整が多い組織は、成果が見えづらい。そのため評価基準も曖昧になりやすく、互いに切磋琢磨する組織にはなりにくい。また、標準化されている職場でも、異動がなく、何年もチームのメンバーが変わらないような場合もまた、ぬるくなりやすくなる。

職場が「熱」を取り戻すためには

実際のところ、「ぬるい職場」からの脱却は難しい。組織全体が現状維持を願っている中で、そこから抜け出そうという考えを持つきっかけがないからだ。

抜け出すチャンスは、職場の危機に訪れやすい。現状を否定する要因が、チームに発生するからである。とはいえ、コロナ禍のような社会全体の危機や、会社にとっての危機、コンプライアンス違反がチームで起きたといった深刻な危機が起きてからでは遅い。

一つの提案だが、まずはマネジャーがプチ事件を作ってみるといい。仮にマネジャーが「会議に『遠慮禁止』制度を導入します!」と宣言した場合、ぬるい職場のメンバーにとってそれは“事件”である。上長の力を借りられるなら、「『最近君のチームはたるんでいる』と本部長からお叱りを受けた」と、メンバーに報告してみるのもアリだ。

大切なのは、チーム内の意識を「関係性」の維持から「コト」へと変えることだ。

プチ事件の後には、マネジャーは部下にその組織の「あるべき姿」と現在のギャップを伝えよう。言葉足らずになりがちなので、ストーリーとして伝えるのが望ましい。「私たちはお互いの気持ちを大切にして、あまり批判し合わないようにしていた。その結果、言うべきことさえ言いづらくなり、今回本部長から叱責を受ける原因が生まれた。なんでも言い合える関係を作りたいので、みんなにも賛同してほしい」といった具合で合意形成するのだ。

さらに、1on1の場では、チームのありかたは否定しても個人を否定するわけではないことを説明し、「より良くする方向性はこうだよね。過去にあなたがこんなことをしてくれていたことはまさにそういうことだから、今後そこに力を入れてみてほしい」と部下が納得するポイントを見つけよう。

「ぬるさ」から抜け出すというのは、厳しい職場へと転じることではなく、本音を交わす勇気を取り戻すことである。その勇気が、職場に再び“熱”を灯すだろう。

(参考記事)

 📕心理的安全性を高める組織づくりと1on1の実践

「ぬるい職場」の正体

いわゆる「ぬるい職場」には、大きく分けて三つのパターンがある。

まず一つは、目標設定のぬるさだ。形だけの数値目標はあるものの、達成の有無にかかわらず評価が変わらないといった目標設定のあいまいさや、ミスを指摘する人もおらず、緊張感がないなどの特徴がある。そうした環境では、メンバーは波風を立てないように行動する。

二つ目は、マネジメントのぬるさだ。基本的に年功序列で、成果よりも在籍年数や人間関係が評価につながる。また、マネジャー層が部下に嫌われたくないため、厳しい指導を避ける。メンバーとしては、成果を出す必要性を感じなくなり、挑戦の意欲が失われていく。

三つ目は、カルチャーのぬるさだ。メンバーは外部の刺激を求めておらず、スキルアップへの意欲も低下。加えて、失敗や停滞について、だれも責任を取らず、責任を問われることもない。「ここにいれば大丈夫」という惰性的な安心感が組織内を覆っているため、退屈さはあるが、現状を変える動機が生まれない。

以上の三つが、複合的に発生していることも多い。環境の変化が少しずつ進む中で危機に気づかず、結果的に致命的な状況に陥る、いわゆる「ゆでガエル」状態だといえよう。いずれのパターンにおいても、組織を包むぬるさの正体は「関係性の現状維持を望む心」だ。

はき違えた「心理的安全性」が組織をむしばむ

「うちは心理的安全性の高い職場を目指している」。ストレスを感じないような心地よい環境作りに取り組むマネジャーもいる。昨今、この「心理的安全性」が、“心が安全を感じられる心地よい状態”だと勘違いしている人も多く、それが「ぬるい職場」を生み出しているという懸念もある。

実際のところ、定義通りの「心理的安全性」がある職場が、ぬるくなるはずがない。具体的に説明しよう。

心理的安全性とは、「このチームでは、失敗や疑問を口にしたり、意見を述べても非難されたり恥をかくことはない」とメンバーが対人リスクを安心して取れる状態を指す。「仲が良い」「遠慮して批判しない」ではない。むしろ、人間関係の摩擦を避け、相手へのフィードバックを回避するような組織は、心理的安全性が“低い”のである。

心理的安全性が“高い”組織は、自由に意見を出し合い、本音でぶつかることができる関係性を持っている。

まず、マネジャーが「ぬるい職場」に気づいたら、「心理的安全性」を取り違えた組織作りをしていないかを見直そう。本来の心理的安全性は、安心の中に“緊張感ある対話”を生み出すものだ。そこに立ち返ることが、ぬるさからの脱却の第一歩である。

「ぬるい職場」簡単チェックリスト

自分の職場のぬるさを確認する簡単なテストとして、以下のような場面がなかったか思い出してみよう。マネジャーの場合は「そういうシーンを見かけた」「メンバーにはそう見えるようにしている」、メンバーの場合は「自分がしている」「そう思う」ことをチェックしてほしい。

一つでもチェックがつけば、「ぬるい職場」に足を踏み入れていると考えてよいだろう。どの項目も、「言うべきことを言わない」というシーンであり、心理的安全性が下がっているサインである。

なお、こうした「ぬるい職場」は、業務の性質や職種によっても陥りやすさが異なる。

ぬるい職場になりにくい職種として、まずは営業職が挙げられる。営業の仕事のように、定量的に成果を測れる仕事や、メーカーのように工程やプロセスが標準化されている仕事は、チームの成果や目標がはっきりしているからだ。

他方、バックオフィス業務のように、仕事が標準化されているように見えても、実際には個々の判断や調整が多い組織は、成果が見えづらい。そのため評価基準も曖昧になりやすく、互いに切磋琢磨する組織にはなりにくい。また、標準化されている職場でも、異動がなく、何年もチームのメンバーが変わらないような場合もまた、ぬるくなりやすくなる。

職場が「熱」を取り戻すためには

実際のところ、「ぬるい職場」からの脱却は難しい。組織全体が現状維持を願っている中で、そこから抜け出そうという考えを持つきっかけがないからだ。

抜け出すチャンスは、職場の危機に訪れやすい。現状を否定する要因が、チームに発生するからである。とはいえ、コロナ禍のような社会全体の危機や、会社にとっての危機、コンプライアンス違反がチームで起きたといった深刻な危機が起きてからでは遅い。

一つの提案だが、まずはマネジャーがプチ事件を作ってみるといい。仮にマネジャーが「会議に『遠慮禁止』制度を導入します!」と宣言した場合、ぬるい職場のメンバーにとってそれは“事件”である。上長の力を借りられるなら、「『最近君のチームはたるんでいる』と本部長からお叱りを受けた」と、メンバーに報告してみるのもアリだ。

大切なのは、チーム内の意識を「関係性」の維持から「コト」へと変えることだ。

プチ事件の後には、マネジャーは部下にその組織の「あるべき姿」と現在のギャップを伝えよう。言葉足らずになりがちなので、ストーリーとして伝えるのが望ましい。「私たちはお互いの気持ちを大切にして、あまり批判し合わないようにしていた。その結果、言うべきことさえ言いづらくなり、今回本部長から叱責を受ける原因が生まれた。なんでも言い合える関係を作りたいので、みんなにも賛同してほしい」といった具合で合意形成するのだ。

さらに、1on1の場では、チームのありかたは否定しても個人を否定するわけではないことを説明し、「より良くする方向性はこうだよね。過去にあなたがこんなことをしてくれていたことはまさにそういうことだから、今後そこに力を入れてみてほしい」と部下が納得するポイントを見つけよう。

「ぬるさ」から抜け出すというのは、厳しい職場へと転じることではなく、本音を交わす勇気を取り戻すことである。その勇気が、職場に再び“熱”を灯すだろう。

(参考記事)

 📕心理的安全性を高める組織づくりと1on1の実践

Kakeai資料3点セットダウンロード バナーKakeai資料3点セットダウンロード バナー
執筆者
相馬留美

2002年にダイヤモンド社に入社し、「週刊ダイヤモンド」編集部で記者となる。その後、フリーランスに転向。雑誌「プレジデントウーマン」や「週刊ダイヤモンド」などの経済メディアでフリーランス記者・編集者として携わる。また、複数の企業・NPOでオウンドメディアの編集長を務める。2024年12月に起業し、執筆活動をするとともに、事業会社のクリエイティブに関わる。空気は読めないけれど、人が好き。

記事一覧
LINE アイコンX アイコンfacebool アイコン

関連記事