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勉強会の時間が激減、でも学習の質は上がった——ChatGPT×NotebookLMで変わるインプット型の社内研修
勉強会の時間が激減、でも学習の質は上がった——ChatGPT×NotebookLMで変わるインプット型の社内研修

勉強会の時間が激減、でも学習の質は上がった——ChatGPT×NotebookLMで変わるインプット型の社内研修

人事図書館館長・吉田洋介さんによる連載第8回。今回のテーマは「社内研修設計へのAI活用」です。

設計の工数、教える側の負担、知識のばらつき、短期間での戦力化——。社内研修に立ちはだかる様々な壁を、ChatGPTとNotebookLMで乗り越えつつある専門教育サービス企業の事例を紹介します。

🔹連載の過去記事はこちら


目次

社内研修設計の難しさ

人事が社内研修をやってくれると助かる。たしかにその通りです。外部研修に比べて金銭コストを抑えられますし、自社の業務や価値観に合わせて内容を設計できるのは大きな魅力です。

一度自社に合った教育の型を作れれば、毎回ゼロから作り直す必要がなくなります。品質が安定し、アップデートも容易になり、教育時間そのものを圧縮しやすくなります。

一方で、現実に研修を社内実施しようとすると難しさもあります。現場の協力を得にくいなどの環境要因だけでなく、人材開発の専門部門が存在しない会社も多く、研修の経験が少ない人事が「設計から実施まで」を担うのは、かなりの困難を伴います。

社内での研修設計の主な壁

 ⚫︎ 研修設計には一定の技能が必要
   → 目的設計、対象者理解、学習プロセス設計、評価設計など

 ⚫︎ 概要設計と詳細設計で求められる力が異なる
   → 研修の全体像を描く力と、教材・ワークを作る力

 ⚫︎ 設計と作成に手間がかかる
   → 情報収集、構成作り、資料化、演習設計、配布物作成など

 ⚫︎ 当日の運営もファシリテーションスキルが必要
   → 場の設計、問いの投げ方、参加者の温度感の調整など

この設計と運用の両方が要求されるのが社内研修実施の難しさとなっています。

専門教育サービス企業A社の取り組みと成果

インプット型の社内研修設計の質と量を向上させた事例として、専門技能の教育サービスを提供するベンチャー企業A社の取り組みをご紹介します。

A社は社員数の増加に伴い、社員教育に大きな課題を抱えていました。新入社員には、特定領域の知識を短期間で身につけ、プロダクト開発・営業・CS業務で発揮してもらう必要があります。しかも学ぶべきは社内固有の暗黙知ではなく外部の専門知識であり、情報は常に更新されます。こうした条件が重なり、研修設計を難しくさせていました。

🟥 問題意識

A社が直面していた具体的な課題は、次のようなものです。

 🔻 人が増えるにつれて、詳しい先輩・上司の研修、勉強会やOJTの負担が膨らむ
 🔻 チームごとに教え方が違い、知識のばらつきが生まれる
 🔻 短期間で戦力化したいが、研修を都度作ると設計・資料作成の工数が重い
 🔻 必要な知識が外部情報中心で、情報収集から教材化までに時間がかかる

つまり「教える人」に依存した状態から抜け出し、誰が入社しても短期間で一定水準まで到達でき、継続して知識を更新できる学習体験を、少ない工数で継続運用したいという状況でした。

🟦 取り組んだこと

A社では元々、新入社員は研修や勉強会で知識を身につけていましたが、インプットはAIを活用した自己学習に切り替え、先輩や上司との時間は質疑応答や議論に充てる形に変更しました。

具体的には、リサーチに強いChatGPT ProNotebookLMを組み合わせ、学習コンテンツの作成と運用を型化しました。ポイントは、研修を単発のインプットで終わらせず、自己学習が回る状態を作ったことです。

具体的には、次の3段階で自己学習できる仕組みにしました。

①インプット用サマリ(理解の土台づくり)

ChatGPTで調査した情報をもとに、学習対象領域の要点を整理します。それをNotebookLMのマインドマップ機能で視覚化し、サマリー資料として活用します。いきなり詳細に入らず、まず全体像をつかむことで、学習の入口を揃えることがポイントです。

② クイズ形式でチェック(理解の可視化)

引き続きNotebookLMを使って、サマリ内容に基づいた理解度確認クイズを作成します。 ここで「分かったつもり」を減らし、主体的に考えるきっかけをつくっています。なお、A社では個別のテストの点数チェックまではしていません。

③ 補助的に動画視聴(補強・復習・定着)

文章だけでは掴みにくい箇所や補足が必要な箇所は、NotebookLMの動画解説と音声解説で補強します。一度学んだ内容の復習にも使えるため、知識を積み上げやすくなります。


🟨 成果、反応

取り組みの結果、上司や先輩が知識のインプットのための勉強会を開催する時間は大きく圧縮されました。その分、内容に関する質疑応答や、現場でどう使うかのディスカッションに時間を使えるようになりました。

また、学習体験としても手応えがありました。

 🟡 ほぼ全員の知識レベルを一定以上に引き上げられるようになった
 🟡 クイズ形式が「面白い」「正解すると覚えられている実感が持てる」と好評
 🟡 後からの復習がしやすい、という声が上がった

以上の通り、A社の取り組みは学習の質と量を同時に改善した事例といえます。

🟩 今後に向けて

A社の次のテーマは、仕組みを「一度作って終わり」にしないことです。専門知識は更新されますし、業務で必要な観点も変化します。

そのため今後は、次のような方向で取り組みを発展させることが考えられます。

 ⚫︎ 学習コンテンツの更新サイクルを回し、最新版を保つ運用にする
 ⚫︎ クイズ結果や現場のつまずきからサマリや教材を改善するなど、改善のループを作る
 ⚫︎ 対象領域を拡張し、プロダクト開発・営業・CSそれぞれに必要な学習を、役割別に最適化していく
 ⚫︎ 自己学習と対面の時間配分を見直し、学習体験の最適化を進める
 ⚫︎ NotebookLM等の進化にあわせて学び方をアップデートする

社内研修の内製は、コストを抑える手段であると同時に、会社の成長速度を左右する仕組みづくりでもあります。

A社のように、AIを使ってリサーチと教材化を型にし、自己学習と対話の時間を分けるだけでも、研修設計の質量は大きく改善できます。

AI活用プロンプト例

以下は○○○○○○○○○○○○○○プロンプトです。

使い方

  1. ○○○○○○○○○○○○○○
  2. ○○○○○○○○○○○○○○
  3. ○○○○○○○○○○○○○○
  4. ○○○○○○○○○○○○○○

※○○○○○○○○○○○○○○

社内研修設計の難しさ

人事が社内研修をやってくれると助かる。たしかにその通りです。外部研修に比べて金銭コストを抑えられますし、自社の業務や価値観に合わせて内容を設計できるのは大きな魅力です。

一度自社に合った教育の型を作れれば、毎回ゼロから作り直す必要がなくなります。品質が安定し、アップデートも容易になり、教育時間そのものを圧縮しやすくなります。

一方で、現実に研修を社内実施しようとすると難しさもあります。現場の協力を得にくいなどの環境要因だけでなく、人材開発の専門部門が存在しない会社も多く、研修の経験が少ない人事が「設計から実施まで」を担うのは、かなりの困難を伴います。

社内での研修設計の主な壁

 ⚫︎ 研修設計には一定の技能が必要
   → 目的設計、対象者理解、学習プロセス設計、評価設計など

 ⚫︎ 概要設計と詳細設計で求められる力が異なる
   → 研修の全体像を描く力と、教材・ワークを作る力

 ⚫︎ 設計と作成に手間がかかる
   → 情報収集、構成作り、資料化、演習設計、配布物作成など

 ⚫︎ 当日の運営もファシリテーションスキルが必要
   → 場の設計、問いの投げ方、参加者の温度感の調整など

この設計と運用の両方が要求されるのが社内研修実施の難しさとなっています。

専門教育サービス企業A社の取り組みと成果

インプット型の社内研修設計の質と量を向上させた事例として、専門技能の教育サービスを提供するベンチャー企業A社の取り組みをご紹介します。

A社は社員数の増加に伴い、社員教育に大きな課題を抱えていました。新入社員には、特定領域の知識を短期間で身につけ、プロダクト開発・営業・CS業務で発揮してもらう必要があります。しかも学ぶべきは社内固有の暗黙知ではなく外部の専門知識であり、情報は常に更新されます。こうした条件が重なり、研修設計を難しくさせていました。

🟥 問題意識

A社が直面していた具体的な課題は、次のようなものです。

 🔻 人が増えるにつれて、詳しい先輩・上司の研修、勉強会やOJTの負担が膨らむ
 🔻 チームごとに教え方が違い、知識のばらつきが生まれる
 🔻 短期間で戦力化したいが、研修を都度作ると設計・資料作成の工数が重い
 🔻 必要な知識が外部情報中心で、情報収集から教材化までに時間がかかる

つまり「教える人」に依存した状態から抜け出し、誰が入社しても短期間で一定水準まで到達でき、継続して知識を更新できる学習体験を、少ない工数で継続運用したいという状況でした。

🟦 取り組んだこと

A社では元々、新入社員は研修や勉強会で知識を身につけていましたが、インプットはAIを活用した自己学習に切り替え、先輩や上司との時間は質疑応答や議論に充てる形に変更しました。

具体的には、リサーチに強いChatGPT ProNotebookLMを組み合わせ、学習コンテンツの作成と運用を型化しました。ポイントは、研修を単発のインプットで終わらせず、自己学習が回る状態を作ったことです。

具体的には、次の3段階で自己学習できる仕組みにしました。

①インプット用サマリ(理解の土台づくり)

ChatGPTで調査した情報をもとに、学習対象領域の要点を整理します。それをNotebookLMのマインドマップ機能で視覚化し、サマリー資料として活用します。いきなり詳細に入らず、まず全体像をつかむことで、学習の入口を揃えることがポイントです。

② クイズ形式でチェック(理解の可視化)

引き続きNotebookLMを使って、サマリ内容に基づいた理解度確認クイズを作成します。 ここで「分かったつもり」を減らし、主体的に考えるきっかけをつくっています。なお、A社では個別のテストの点数チェックまではしていません。

③ 補助的に動画視聴(補強・復習・定着)

文章だけでは掴みにくい箇所や補足が必要な箇所は、NotebookLMの動画解説と音声解説で補強します。一度学んだ内容の復習にも使えるため、知識を積み上げやすくなります。


🟨 成果、反応

取り組みの結果、上司や先輩が知識のインプットのための勉強会を開催する時間は大きく圧縮されました。その分、内容に関する質疑応答や、現場でどう使うかのディスカッションに時間を使えるようになりました。

また、学習体験としても手応えがありました。

 🟡 ほぼ全員の知識レベルを一定以上に引き上げられるようになった
 🟡 クイズ形式が「面白い」「正解すると覚えられている実感が持てる」と好評
 🟡 後からの復習がしやすい、という声が上がった

以上の通り、A社の取り組みは学習の質と量を同時に改善した事例といえます。

🟩 今後に向けて

A社の次のテーマは、仕組みを「一度作って終わり」にしないことです。専門知識は更新されますし、業務で必要な観点も変化します。

そのため今後は、次のような方向で取り組みを発展させることが考えられます。

 ⚫︎ 学習コンテンツの更新サイクルを回し、最新版を保つ運用にする
 ⚫︎ クイズ結果や現場のつまずきからサマリや教材を改善するなど、改善のループを作る
 ⚫︎ 対象領域を拡張し、プロダクト開発・営業・CSそれぞれに必要な学習を、役割別に最適化していく
 ⚫︎ 自己学習と対面の時間配分を見直し、学習体験の最適化を進める
 ⚫︎ NotebookLM等の進化にあわせて学び方をアップデートする

社内研修の内製は、コストを抑える手段であると同時に、会社の成長速度を左右する仕組みづくりでもあります。

A社のように、AIを使ってリサーチと教材化を型にし、自己学習と対話の時間を分けるだけでも、研修設計の質量は大きく改善できます。

AI活用プロンプト例

以下は○○○○○○○○○○○○○○プロンプトです。

使い方

  1. ○○○○○○○○○○○○○○
  2. ○○○○○○○○○○○○○○
  3. ○○○○○○○○○○○○○○
  4. ○○○○○○○○○○○○○○

※○○○○○○○○○○○○○○

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執筆者
吉田 洋介

人事図書館 館長2007年立命館大学大学院政策科学研究科卒業。新卒でリクルートマネジメントソリューションズ入社。組織人事支援として国内外500社以上の採用、人材開発、組織開発、人事制度等に関わり、支社長・事業責任者等を歴任。2021年に独立し株式会社Trustyyleを設立。2024年4月に東京・人形町に1,000冊以上の人事関連書籍を備えた「人事図書館」をオープンし、現職。

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