目次
心理的安全性とは何か?
心理的安全性(psychological safety)とは、1999年にハーバード大学のエイミー・C・エドモンドソン教授によって提唱された概念です。
組織行動学を研究するエドモンドソン教授は、心理的安全性を「チームの他のメンバーが自分の発言を拒絶したり、罰したりしないと確信できる状態」と定義しています。
心理的安全性の高い企業では、自分の考えや気持ちをみんなが安心して話せます。
この概念の重要性は様々な研究によって裏付けられています。
「社員が自分の率直な意見を述べる」ことは簡単なように見えて、調和を重んじる日本の組織や社会の中で実行するのはとても難しいことです。
例えば会議の内容に違和感があっても『ベテランの○○さんがこう言っているんだし』と目をつむったり、企画会議で『自分のような新人のアイデアなんて取り上げてもらえないだろう』と考えて口をつぐんだりした経験が多くの人にあるかもしれません。
このように自分の考えを率直に言えないという環境は、イノベーションが生まれにくかったり、問題が見過ごされたりするといった組織のマイナス要因になります。
社員一人ひとりのポテンシャルを最大限に発揮するためには、心理的安全性を高めることが非常に重要なポイントになります。
Googleの心理的安全性に関する研究の原典は?
心理的安全性に関する調査のうち、大変有名なのはGoogleが行った「プロジェクト・アリストテレス(Project Aristotle)」と呼ばれる社内研究プロジェクトです。
この研究は2012年に開始され、約4年間にわたって行われました。
プロジェクト・アリストテレスの主な目的は「効果的なチームとは何か」を明らかにすることです。
Googleの研究者たちは180以上のチームを調査し、200以上の要因を分析しました。
その結果チームに影響する5つの因子のうち、圧倒的に重要なのが心理的安全性だということがわかりました。
リサーチ結果によると「心理的安全性の高いチームのメンバーは離職率が低く、他のチームメンバーが発案した多様なアイデアをうまく利用でき、収益性が高く、効果的に働くとマネジャーから評価される機会が2倍多い」という特徴があります。
この研究の結果は2015年に社内で共有され、2016年に一般に公開されました。
研究の詳細な内容は、Googleの「re:Work」というウェブサイトで公開されています。
このサイトでは、「プロジェクト・アリストテレス」の概要や主な発見事項、チームの効果性を高めるためのツールやリソースが提供され、その結果は多くの学術研究や書籍で引用されています。
VUCAの時代こそ心理的安全性が必要になる
心理的安全性が重要視されている背景には時代の変化があります。
高度経済成長期のように「作れば売れる」時代はある程度の正解が存在したため、トップダウンで効率的に動く軍隊式のアプローチが有効でした。
しかし新型コロナウイルスの蔓延を経て、我々はVUCA(変動性・不確実性・複雑性・曖昧性)の時代に突入しています。
こうした予測困難な環境では、多様な視点を取り入れて柔軟に対応できるチームが競争優位を築けるようになります。
そのためにはチーム全員が自由に意見を述べ、挑戦できる心理的安全性の確保が重要なのです。
心理的安全性はイノベーションを促進し、困難な状況を乗り越える力を育む鍵となることでしょう。
心理的安全性を高めるメリット
心理的安全性の向上は様々なメリットを組織にもたらします。
エドモンドソン教授の著書によると、チ・チェン・ハン氏とピン・チェン・ジアン氏は、台湾のテクノロジー企業数社の60の研究開発チームから調査データを収集し、心理的に安全なチームのほうがパフォーマンスが高いことを突きとめました。
また米国のギャラップ社の2017年の調査によると、「自分の意見は職場で価値を持っている」という項目に対して「非常にそう思う」と答えた従業員の割合は10人中3人でした。
もしも10人中6人になれば組織の離職率が27%下がり、労災事故を40%減らし、生産性を27%アップさせるという調査結果がありました。(参照:恐れのない組織――「心理的安全性」が学習・イノベーション・成長をもたらす より)
前述したGoogleの「プロジェクト・アリストテレス」の研究結果でも、心理的安全性が高いチームはより効果的に協力し、革新的なアイデアを生み出す傾向があることがわかりました。
ずば抜けて優秀で有能なGoogleの社員ですら、ポテンシャルを十分に発揮するためには心理的に安全な環境が必要だということです。
現代のビジネス環境において心理的安全性を高めることは、組織の競争力を維持・向上させるための重要な戦略となっています。
心理的安全性は、従業員満足度・エンゲージメントにも作用する
心理的安全性とエンゲージメントには密接な関連性があります。
心理的安全性が高い環境では、自分の意見やアイデアを従業員が遠慮なく共有できるため、問題解決や意思決定プロセスに積極的に参加するようになります。
これにより仕事への当事者意識が高まり、エンゲージメントが向上します。
上司の顔色を伺うことなく自己表現や挑戦する機会が増えることで個人の成長と能力開発が促進されます。
これは職務満足度を高め、長期的なキャリアコミットメントにつながります。
また心理的安全性が高いと、業務上の不安やネガティブな感情を溜め込まずに伝えられるため職場でのストレスが軽減されます。
結果的に従業員の心身の健康の改善にも役立ちます。
これらの要素が相互に作用することで従業員は仕事により深く関与し、組織の目標達成に向けてより強いモチベーションを持つようになります。
結果として全体的なエンゲージメントレベルが向上し、組織のパフォーマンスと生産性の向上につながるのです。
チームの心理的安全性とは?
エドモンドソン教授は「チームの心理的安全性とは、チームの中で対人関係におけるリスクをとっても大丈夫だ、というチームメンバーに共有される信念」と定義しています。
チームの心理的安全性の高い職場では、多くの人が同じ会社で働く仲間を信頼し尊敬しているので、わからないことがあったら率直に質問できます。
『こんなことも知らないのか』と言われて恥をかかされることも無視をされることもありません。
ミスをした場合にも速やかに報告するので、チームで助け合いながら軌道修正ができます。
時にはグループの垣根を越えて団結し、驚くようなイノベーションが生まれることもあります。
しかし多くの職場では、対人関係のリスクが自然に発生した結果、心理的安全性が損なわれがちです。
心理的安全性が低下する「対人関係」の4つのリスク
「対人関係のリスク」を感じる場面は職場において数多く存在します。
エドモンドソン教授は、個人の成長や組織の発展を阻害しうる要因を4つのカテゴリーに分類しました。
1. 「無知」だと思われたくない
知識不足を露呈することを恐れ、質問や確認を躊躇する状態です。
2. 「無能」だと思われたくない
失敗を恐れるあまり、新しい挑戦や責任ある仕事を避ける傾向があります。
3. 「邪魔」だと思われたくない
チームの和を乱すことを懸念し、重要な指摘や異論を控えてしまいます。
4. 「否定的」だと思われたくない
問題点を指摘することで嫌われることを恐れ、課題を隠蔽しがちです。
これらは誰もが多かれ少なかれ持っている感情です。
リスクに対する恐れが強い職場では、本当に必要な行動や発言をメンバーが控えるようになります。
仮に重大な問題を発見しても報告を躊躇したり、革新的なアイデアがあっても提案を控えたりするでしょう。
このような状況が続くと組織は停滞し、イノベーションが阻害されます。
さらに深刻な場合、重大な失敗や事故を引き起こす可能性さえあります。
心理的安全性が低い職場が招く悲劇
心理的安全性の低い職場では重大な問題が見過ごされる危険性があります。
米国のスペースシャトル・コロンビア号の事故はその典型例です。
2003年2月1日、NASAのスペースシャトル「コロンビア」が大気圏に突入する際に空中分解し、7名の宇宙飛行士全員が死亡する惨事が発生しました。
この事故の原因は、外部燃料タンクの発泡断熱材がシャトル発射後に剥離し、左側主翼の耐熱保護パネルに直撃したことです。
エンジニアたちは、安全性に関する懸念を発射直後から抱いていましたが、上司からの批判や異論を恐れて指摘を控えた結果、最悪の悲劇を招いてしまいました。
日本企業においても、罰を恐れるあまり重大なクレームや欠陥を隠蔽してしまい大問題になることが珍しくありません。
心理的安全性の欠如は重大なリスクや事故につながる可能性があるだけでなく、組織の生産性やセキュリティ面にも悪影響を及ぼします。
職場での意見交換や懸念の表明をためらわずに行える環境を整えることが組織の健全な運営にとって不可欠です。
心理的安全性=「甘やかし」「馴れ合い?」
心理的安全性という言葉が広く知られるようになる一方で誤解も生まれています。
心理的安全性はしばしば「甘やかし」や「馴れ合い」と混同されますが、これらとは全く異なるものです。
「甘やかし」とは、相手の要求や行動を過度に受け入れ、必要な指導や批評を避けることを意味します。
それに対して心理的安全性は、メンバーが率直に意見を交わし、建設的なフィードバックを行える環境を整えることです。
むしろ心理的安全性は、正しい指導や批評をより効果的に行うために欠かせない要素です。
また「馴れ合い」は、仕事の場での人間関係が過度に親密になり、仕事の質や客観性を損なうことを指します。
一方で心理的安全性は、プロフェッショナルな関係を保ちながら、誰もが自由に意見を言い合えるコミュニケーションを促進するものです。
心理的安全性は単なる「甘やかし」や「馴れ合い」とは違い、挑戦しながら共に成長するための土壌なのです。
心理的安全性と業績基準の関連性
心理的安全性と業績基準といった2つの要素の高低によって4つの異なる組織状態が生まれます。
下記は、エドモンドソン教授が提唱する「心理的安全性と業績基準」のマトリクスです。

「学習ゾーン」
まず図の右上をご覧ください。
心理的安全性と業績基準の両方が高い状態を「学習ゾーン」と呼びます。
この状態ではチームメンバーは自由に意見を述べられ、失敗を恐れずに新しい挑戦に取り組みます。
さらに仲間と協力しながら高い目標に向かって努力する中で積極的に学習し、イノベーションが生まれやすくなります。
「学習ゾーン」にあるチームは、誰もが意見を出しやすい雰囲気があります。
互いにフィードバックを行うことで問題を迅速に解決し、持続的に成長できます。
高い業績基準に向けた努力と自由な意見交換が両立するため、チーム全体のパフォーマンスが向上する組織にとって理想的な状態です。
「不安ゾーン」
次にその下です。
業績基準が高くても心理的安全性が低い状態は「不安ゾーン」と呼ばれます。
この状態では、厳しい目標を達成するために社員は懸命に努力しますが、その結果ストレスが高まり燃え尽き症候群に陥る危険があります。
また人間関係のリスクや失敗を恐れるため、新しいアイデアを提案することにメンバーが躊躇しがちです。
不安ゾーンでは、表面的には高い業績が維持されているように見えますが、チームの内部には緊張感が漂い、イノベーションが停滞します。
失敗や批判を避けるために現状を維持することを社員は優先し、自由に意見を言いづらい雰囲気が形成されます。
このような環境では短期的な成果は得られても、長期的にはチームの持続可能な成長や革新的な発展が困難になります。
不安ゾーンを脱却して高い業績を保つためには、心理的安全性を向上させ、社員が自由に意見を述べられる環境を整えることが必要です。
そうすることでチームは新たな挑戦に恐れずに取り組め、真の意味で高いパフォーマンスを実現できます。
「快適ゾーン」
心理的安全性は高いが業績基準が低い状態は「快適ゾーン」と呼ばれます。
人間関係は良好で、メンバーは居心地の良い雰囲気の中で仕事をしています。
しかし仕事の基準が低いため、納期が遅れたりクオリティが低かったりすることがあります。
目標が達成されなくても特に問題視されず、怒られることが少ないため挑戦や成長が不足しがちです。
いわゆる「ぬるま湯」と呼ばれる状態です。
快適ゾーンでは、チームメンバーは安心して働ける環境を享受していますが、仕事に対する緊張感やチャレンジが不足しているため、長期的には組織全体の停滞を招く恐れがあります。
新しいアイデアの創出や目標達成へのモチベーションが低くなるため、イノベーションが生まれにくく競争力が弱まります。
快適ゾーンから脱却し、よりバランスの取れた成長を実現するためには、心理的安全性を維持しつつ業績基準を引き上げることが重要です。
これにより安心して挑戦できる環境が整い、より高い目標に向けて協力し合いながらチームが成長できるようになります。
「無気力ゾーン」
心理的安全性と業績基準が共に低い右下に位置する状態は「無気力ゾーン」と呼ばれ、組織にとって最も有害な状態です。
この状態では、チームメンバーの間で協力し合って仕事を進める意欲が低く、結果としてチーム全体の成果が低下します。
心理的安全性が低いため、新しいことに挑戦したり学んだりすることへの意欲が低くなり、事なかれ主義や無関心が蔓延します。
チームメンバー間での意見の対立が無気力ゾーンでは生まれず、建設的な議論や改善の提案が行われにくくなります。
これにより組織の成長やイノベーションが阻害され、生産性が低下する傾向があります。
この状態に不満を抱いている社員が転職を考えている場合も少なくありません。
持続可能な成長を組織が遂げるためには、心理的安全性と業績基準の両方を向上させる必要があります。
心理的安全性を高めるために組織がやるべき事は?
心理的安全性を向上させる上で重要な経営者の役割は、組織全体の方向性を定め、必要な環境を整えることです。
エイミー・エドモンドソン教授とGoogleの研究に基づいた、心理的安全性を高めるために経営者がとるべき行動は以下のとおりです。
1.ビジョンと価値観の明確化
心理的安全性を組織の核心的価値観として位置づけ、その重要性を明確に伝えます。
2.組織文化の形成
オープンなコミュニケーション・失敗からの学習・イノベーションを奨励する文化を醸成します。
3.リソースの配分
心理的安全性を高めるための取り組みに必要な時間・予算・人材を確保します。
4.模範を示す
自己開示を促すために自身も弱みを見せたり、失敗を認めたり、学習する姿勢を示したりすることで組織全体に影響を与えます。
5.評価システムの構築
心理的安全性を促進する行動を評価し、報酬システムに組み込みます。
6.長期的視点の維持
短期的な結果だけでなく、持続可能な成長のために心理的安全性の重要性も強調します。
経営者は、コミュニケーションと失敗からの学習を奨励する環境をこれらの行動を通じて作り出し、心理的安全性と高い業績基準の両立を目指すことが重要です。
心理的安全性を向上させるためのマネジャーの役割
マネジャーは経営者の方針に基づき、日々の業務の中で心理的安全性を実践し、チームレベルでその浸透を図る重要な役割を担います。
チーム内の信頼関係構築・オープンな対話の促進・建設的なフィードバックの提供など具体的な行動を通じて心理的安全性を高めます。
個々のメンバーを理解し、適切な支援と挑戦の機会の提供も欠かせません。
1.チーム内の信頼関係構築
公平性を保ち、メンバー間の相互理解と尊重を促進します。
2.オープンな対話の促進
全メンバーが意見を言いやすい環境を作り、積極的に意見を求めます。
3.建設的なフィードバック
批判ではなく、成長を促すフィードバックを提供します。
4.失敗への適切な対応
失敗を責めるのではなく学びの機会として扱い、チームで学びを共有します。
5.個々のメンバーの支援
各メンバーの強みと弱みを理解し、適切なサポートと挑戦の機会を提供します。
6.多様性の尊重
異なる背景や視点を持つメンバーの意見を積極的に求め、活用します。
7.明確な期待値の設定
チームの目標と各メンバーの役割を明確にし、主体的に動けるように適切な裁量権を与えます。
経営者は組織全体の方向性と環境を整える役割を担い、マネジャーはその方針に基づいて日々の実践の中で心理的安全性を具現化する役割を担います。
両者が協力して取り組むことで組織全体の心理的安全性を効果的に向上させられます。
心理的安全性を高めた企業の成功例
世界中の多くの企業が心理的安全性を高めるための取り組みを行っています。
その一部をご紹介します。
ピクサー・アニメーション・スタジオ
「トイ・ストーリー」シリーズなどで知られるピクサー・アニメーション・スタジオは心理的安全性を重視した企業文化で知られています。
彼らは「ブレイントラスト」と呼ばれる会議システムを採用しており、制作の早い段階で積極的な批評をすることを奨励しています。
具体的には、未完成の作品を社内で上映し、全社員が自由に意見を述べる機会を設けています。
この過程で出された厳しい意見や批判は単なる「ダメ出し」や「粗探し」ではなく、作品をより良くするための建設的なフィードバックとして受け止められます。
ピクサーは「社員が恐怖を感じない環境」を作ることでクリエイティブな挑戦を促しているのです。
Google(グーグル)
Googleは、「プロジェクト・アリストテレス」という大規模な研究結果を基に、社内の心理的安全性向上に取り組んでいます。
例えば「Googlegeist」という年次社員調査を実施し、心理的安全性を含む職場環境の評価を年に一度行っています。
またマネジャーに対し、心理的安全性を高めるためのトレーニングを提供しています。
参照:Google「re:Work」
さらに失敗を学びの機会として捉える「ポストモーテム(事後分析)」の文化を推進しています。
プロジェクトの成功や失敗にかかわらず、その過程を振り返り、学びを共有する習慣が根付いています。
Bridgewater Associates
世界最大のヘッジファンドの1つであるBridgewater Associatesは、「透明性」と「意思決定の民主化」を重視しています。
例えば全ての会議が録画され、他の会議の録画を社員は自由に視聴できます。
「痛みを伴う真実」を語ることが奨励され、経営陣を含む全ての社員が率直なフィードバックを互いに行います。
さらに「イシュー・ログ(問題の記録)」というツールを導入しています。
全ての従業員が失敗した時に、それを必ず書き留めることで問題を目に見える形にし、他の人にも学びを共有しています。
これらの取り組みにより、Bridgewater Associatesは高度な透明性と心理的安全性を実現し、業界トップの運用実績を上げています。
参照:公式サイト「BRIDGEWATER」
BUSINESS INSIDER「透明性の確保、失敗を記録する…ヘッジファンドの帝王が44年のキャリアで得た教訓」
「心理的安全性」を高めるポイントと具体的な行動
エドモンドソン教授は、心理的安全性を計測する7つの質問を発表しています。
しかし日本と米国では、文化や社会構成などの前提が大きく異なります。
心理的安全性研究の第一人者である石井遼介氏は、日本の心理的安全性には下記の「4つの因子(フォーカスポイント)」があると述べています。
1. 話しやすさ
「話しやすさ」は、4つの中で最も重要な因子です。
チーム内で自由に意見を述べたり、多様な視点から質問したりできる雰囲気が醸成されていればイノベーションが促進されやすくなります。
またネガティブな報告が速やかに伝えられる環境作りがとても大切です。
2. 助け合い
「助け合い」は、トラブルや緊急時にメンバー同士が迅速にサポートし合う文化のことです。
助け合い因子があるとチームは、トラブルや行き詰まったメンバーに対して自発的に手を差し伸べたり、知識やスキルを惜しみなく共有したりします。
助け合うことでチーム全体の力が高まり、複雑な課題にも効果的に対処できるようになります。
3. 挑戦
「挑戦」は組織やチームに活気を与えます。
また時代の変化に柔軟に対応していくためにも重要な因子です。
ここでいう「挑戦」とは、チームによる模索や試行錯誤を指します。
新しいアイデアを試すための裁量を与えたり、失敗から学びを得て改善したりすることに集中します。
「挑戦」を支援するには、新しいことを積極的に発表したり、フィードバックを得て共に作り出したりするための環境を整えることが大切です。
4.新奇歓迎
学習する組織・チームであるためには、様々な意見を耳にすることが大切です。
そのため「新奇歓迎」では多様性を歓迎します。
大勢の社員を一律に扱うのではなく、メンバー一人ひとりに焦点を当て、個性や才能を発揮してもらうための重要な因子です。
リーダーは、自分らしさを最大限に発揮しながら会社への所属意識をメンバーが持てるように気を配らなければいけません。
これら4つの因子を日々の行動や施策に反映させることで心理的安全性の高いチーム作りを実現できます。
心理的安全性を高める研修・ツール・参考資料
自社に合わせてカスタマイズし、心理的安全性を高める社員研修は?
公益社団法人日本生産性本部「~D&I/DE&Iを実現する取り組み~心理的安全性の高いチームづくり」
「心理的安全性を高めるチーム構築研修」は、生産性の高い組織づくりを目指す従業員、特にチームリーダーや管理職を対象とした革新的なプログラムです。
本研修では、心理的安全性の概念理解から実践的なスキル習得にかけて包括的に学べます。
オンラインLIVE・eラーニング・集合型ワークショップなどの多様な形式で提供され、各組織のニーズに合わせたカスタマイズも可能です。
プログラムは、心理的安全性の基本概念・重要性・阻害要因・実現のためのポイントなど幅広いトピックをカバーしています。
特筆すべきは、ワークやアセスメントツールを活用した実践的なアプローチです。
参加者の主体的な学びを促進し、自身の気づきを深めることで職場での即時適用を可能にします。
さらに個人の心理的柔軟性にも焦点を当て、総合的な組織改革を支援します。
参照:公益社団法人日本生産性本部「~D&I/DE&Iを実現する取り組み~心理的安全性の高いチームづくり」
インソース「部下とのコミュニケーション実践研修~心理的安全性の高い職場を作る」
この研修は、心理的安全性の重要性を理解し、それを高める具体的なスキルの習得を目的としています。
管理職やリーダーを対象とした実践的なプログラムで、部下とのコミュニケーション方法を工夫することで、心理的安全性をどのように高めていくのかを習得します。
心理的安全性の基本概念の理解から始まり、アサーティブコミュニケーションの4ステップ・1対1面談の効果的な活用法・チーム全体の心理的安全性を向上させる方法などを幅広くカバーしています。
理論だけでなく実践的なワークやケーススタディを多く取り入れているのも特徴です。
自身の職場環境を参加者は振り返り、部下との効果的なコミュニケーション方法を具体的に学べます。
参照:インソース「部下とのコミュニケーション実践研修~心理的安全性の高い職場を作る」
エドモンドソン氏のインタビュー記事
心理的安全性の概念を提唱したハーバード大学のエドモンドソン教授へのインタビュー記事を紹介します。
教授は、単なる「居心地の良さ」ではない心理的安全性の本質を記事の中で解説し、現代のビジネス環境でその重要性が高まっている理由を明らかにしています。
日経BP:心理的安全性のエドモンドソン氏「『失敗は成功のもと』は、ずさんな経営」
心理的安全性の概念を唱えたエイミー・エドモンドソン教授が、失敗に対する適切な姿勢について語ります。
単に失敗を容認するだけでなく、それをどう活かすかが重要だと指摘し、経営者の責任ある対応の必要性を強調しています。
ダイヤモンド・オンライン:「心理的安全性」提唱のハーバード大教授が、著書「恐れのない組織」に込めた真意
心理的安全性の第一人者であるエイミー・エドモンドソン教授が、その概念の本質と実践方法について解説します。
組織の成功に不可欠な要素として心理的安全性を位置づけ、それを実現するためのリーダーシップの在り方を探ります。
DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー:心理的安全性とは何か、生みの親エイミー C. エドモンドソンに聞く
ハーバード・ビジネス・スクール教授のエイミー C. エドモンドソン教授に、心理的安全性とは何か、そしてチームの心理的安全性を高めるにはどうしたらよいかを尋ねるインタビュー記事です。
心理的安全性の定義とその重要性、そして実際の組織への適用方法など幅広い視点から概念の核心に迫ります。
「4つの因子」を計測するサーベイシステム「SAFETY ZONE」
心理的安全性を高めるために組織開発をしようと思ったら現状を可視化することが重要です。
心理的安全性は、パフォーマンスが上がる前の先行指標として捉えられます。
「SAFETY ZONE」は、チームの心理的安全性を計測するために設計された国内唯一のサーベイシステムです。
前述の「4つの因子」で計測し、組織・チームの課題を浮き彫りにします。
SAFETY ZONEは匿名性を確保しつつ、多様な質問項目を通じて個々のメンバーの意見や感情を収集します。
これによりチームリーダーや経営陣は組織の問題点を特定し、対策を講じるための根拠を得られます。
心理的安全性の向上に役立つ参考資料
英治出版「恐れのない組織―『心理的安全性』が学習・イノベーション・成長をもたらす」
ハーバード・ビジネススクール教授のエイミー・エドモンドソンによる心理的安全性に関する書籍です。
心理的安全性の概念が詳細に解説され、それが組織の学習能力やイノベーション、そして成長にいかに重要な役割を果たすかが示されています。
急速に変化するビジネス環境において、失敗を恐れず、オープンなコミュニケーションを促進し、継続的な学習と革新を実現する「恐れのない組織」の重要性が書かれています。
経営者・マネジャー・組織開発に関心のある全ての人への価値ある洞察と実践的なアドバイスに満ちた一冊です。
心理的安全性に関する書籍
心理的安全性に関する書籍を3つ紹介します。
心理的安全性 最強の教科書
ピョートル・フェリクス・グジバチ (著)
本書は、組織心理学の重要概念「心理的安全性」について、その理論から実践を包括的に解説しています。
著者の石井遼介氏は、Google社の研究結果を基に、日本企業における心理的安全性の重要性と実現方法を詳細に説明しています。
リーダーやマネージャーが、チームの生産性と創造性を高めるために必要な知識とスキルを学べる実践的な一冊です。
参照:Amazon「心理的安全性 最強の教科書」
4段階で実現する心理的安全性
ティモシー・R・クラーク (著)
本書は、心理的安全性を組織に導入・定着させるための実践的なガイドブックです。
著者は、心理的安全性を4つの段階に分けて解説しています。
各段階での具体的な実践方法や事例が豊富に紹介されており、理論だけでなく実務に直結する内容となっています。
『チーム全員がリーダーのように動く』『誰もが恐れず挑戦できる』組織づくりのロードマップとして活用できる一冊です。
参照:Amazon「4段階で実現する心理的安全性」
最高のチームはみんな使っている 心理的安全性をつくる言葉55
原田将嗣 (著)、石井遼介 (監修)
本書は、日常のコミュニケーションを通して心理的安全性を高める方法に焦点をあてています。
理論よりも実践に重点を置いており、読者がすぐに活用できる実用的なガイドブックとなっています。
いつもの一言を置き換えることでチームの安全性を高める55のヒントが詰まっています。
参照:Amazon「最高のチームはみんな使っている 心理的安全性をつくる言葉55」