上司の方へ部下との関わり
部下育成に役立つ心理学
先に答え
部下育成に役立つ心理学の知識は、部下を上司の思う方向に動かす技術として使うより、上司自身の見方や関わり方を見直す手がかりとして使うことをおすすめします。よく紹介されるのは、自分で選んだことは続けやすい、できたという経験が次への見通しになる、といった考え方です。KAKEAIの1万人調査では、面談をしている一番の理由が「成長のため」の人の40.0%が、面談が成長につながっていると感じていました。一番の理由が会社や上司に言われているためという人の9.4%を、大きく上回ります。取り組むことを本人と一緒に選び、終わったあとにできたことを具体的に伝えるところから始めるとよいでしょう。
数字で見る
KAKEAIが会社員1万人を対象に行った調査では、自分から選んだ理由で面談に臨んでいる人のほうが、面談が成長につながっていると感じる割合が高くなっていました。面談で話したことが行動につながっている人にも、同じ傾向があります。
- 40.0%
- 1万人調査
- 上司との面談をしている一番の理由が「成長のため」の人のうち、面談が成長につながっていると感じている人の割合
- 一番の理由が、会社や上司から実施するように言われているためという人では9.4%、回答者全体では26.7%でした。自分から選んだ理由で面談に臨んでいる人ほど、成長を実感している割合が高いということです。
- 68.1%
- 1万人調査
- 上司との面談がそのあとの行動に「毎回そうなっている」人のうち、面談が成長につながっていると感じている人の割合
- 「全くそうなっていない」人では5.2%でした。面談で話したことが行動につながっている人ほど、面談が成長につながっていると感じているということです。
どちらの数字も上司との定期的な面談について尋ねたもので、心理学の考え方を試した結果や、育成のやり方ごとの違いを示すものではありません。
出典:株式会社KAKEAI「1on1実態調査」(N=10,000、2026年5月実施、インターネット調査)
この調査は、上司と定期的に面談をしている会社員1万人に、面談を受ける立場での実感を尋ねたものです。
部下育成に役立つ心理学は、 部下を動かす技術ではなく、 上司の関わり方を見直す手がかり
育成に役立つとして紹介される心理学の考え方には、本人が自分で選んだことは続けやすい、できたという経験が次への見通しになる、といったものがあります。こうした知識は、部下を上司の思う方向に動かす技術として使うより、上司自身の見方や関わり方を見直す手がかりとして使うことをおすすめします。動かす技術として使うと、本人が自分で選ぶ余地をかえって狭めてしまうと考えられるからです。
KAKEAIが会社員1万人を対象に行った調査では、上司との面談をしている一番の理由が「成長のため」の人のうち、面談が成長につながっていると感じている人は40.0%でした。一番の理由が「会社または所属組織または上司から実施するように言われているため」の人では9.4%です。つまり、自分から選んだ理由で面談に臨んでいる人のほうが、成長を実感している割合が高いということです。
同じ調査で、面談がそのあとの行動に「毎回そうなっている」人のうち、面談が成長につながっていると感じている人は68.1%でした。「全くそうなっていない」人では5.2%です。面談で話したことが行動につながっている人ほど、成長を実感していることがわかります。
面談についての数字ですが、育成の場面でも、本人が自分で理由を持って取り組めているか、話したことを実際の仕事で試せているかに目を向けてみてください。心理学の知識は、その2つを支えるために使うと役に立ちます。
よく紹介される心理学の考え方と、 育成の場面での使い方
よく紹介される心理学の考え方を5つ選び、育成の場面での使い方と、避けたい使い方を並べました。どれも、部下を分類したり操ったりするためではなく、二人の仕事の進め方を考えるための手がかりです。
| よく紹介される心理学の考え方 | 育成の場面での使い方 | 避けたい使い方 |
|---|---|---|
| 自分で | 取り組むことや | 上司が |
| できたという | 少し背伸びすれば | 簡単な |
| 期待を | 期待を、 | 「期待しているよ」と |
| 1つの | 任せる | 一度の |
| 押しつけられると、 | 意見を | 反発を |
KAKEAIは、300万回以上の1on1を支援してきた経験と1万人調査の結果から、万能のやり方はないと考えています。心理学の知識も、決まった手順として当てはめるものではありません。この部下とこの仕事ではどうかという仮説として試し、確かめて、直していくものです。
以下では、品質管理の部署で、お客様から届いた製品の不具合の申し出を調べ、報告書にまとめる仕事を部下に任せている場面を例にします。
自分で選ぶ感覚を生かす: 取り組むことと進め方を本人と一緒に決める
本人が自分で選んだことは続けやすい、という考え方は、取り組むことや進め方を決める場面で生かせます。上司が決めて伝えるより、選べる範囲を示したうえで、本人の考えを尋ねてみてください。
- 来月から、不具合の調査報告書を、○○さんに最初から最後までお願いしたいと考えています。どの製品のものから始めたいですか。
- 進め方は、○○さんのやりやすい順番でかまいません。途中で私に見せたい段階があれば、教えてください。
- お客様への回答の期限だけは守りたいので、そこは一緒に決めましょう。
本人に選んでもらうときに避けたいのは、上司の中で答えが決まっているのに、本人が決めたように見せることです。決まっていることは、決まっていると先に伝えたほうが、本人も残りの範囲で安心して選べます。
- 調査の手順は、会社の決まりで変えられません。報告書の組み立て方は、○○さんに決めてもらえると助かります。
できた経験と期待の伝え方: 任せた仕事のあとに、 何を言葉にするか
できたという経験が次もできそうだという見通しにつながる、という考え方は、仕事を任せたあとの言葉に生かせます。終わったあとは「よくできました」だけで終えず、何ができたのかを具体的に伝えてください。本人が自分の判断でしたことは、それがわかるように伝えます。
- 今回の報告書は、原因の候補を早めに絞ってから調べていたので、お客様への回答が予定より2日早くなりました。
- 部品の仕入先に直接問い合わせたのは、○○さんの判断でしたね。あの問い合わせで、原因がはっきりしました。
- 次は、2つの製品にまたがる申し出を、一緒に調べてみませんか。今回のやり方が、そのまま使えると思います。
任せる範囲は、簡単すぎても大きすぎても、できたという経験にはつながりにくいと考えられます。少し背伸びすれば届く範囲を、本人と相談して決めてください。
- 今回の範囲は、○○さんにとって大きすぎませんでしたか。次は、どこまで一人で進めてみたいですか。
期待を言葉にすることも、成長を支える手がかりになります。ただ、「期待しているよ」と繰り返すだけでは、何を期待されているのかがわからず、重荷に感じる人もいます。期待は、人柄ではなく、仕事の中身で具体的に伝えることをおすすめします。
- この報告書を、私の確認なしでお客様にお送りできるところまで、一緒に目指したいと考えています。
- そのために私がしたほうがよいことがあれば、遠慮なく言ってください。
思い込みと押しつけを避ける: 上司自身の見方と意見の伝え方を見直す
1つの印象がその人全体の見方に広がりやすい、という考え方は、部下ではなく上司自身に向けて使うものです。一度の大きな失敗や、配属されたときの印象で、任せる範囲を決めていないかを、最近の仕事をもとに見直してみてください。
- 最近の報告書を読み返したら、お客様にそのままお送りできるものが増えていました。任せる範囲を、私の思い込みで狭めていたかもしれません。
- 次の申し出から、お客様への回答の文面も○○さんに書いてもらえますか。送る前に、一緒に読みましょう。
押しつけられると、内容が正しくても受け入れにくい、という考え方もよく知られています。ただし、これを理由に意見を控えると、部下が意見やアドバイスを求めている回に応えられません。KAKEAIは、上司は意見を言わない、と決めておくことをおすすめしません。意見を求められたときは、まず本人の考えを尋ね、そのうえで理由と一緒に具体的に伝えるとよいでしょう。
- 原因の書き方について、私の意見を言う前に、○○さんの考えを教えてもらえますか。
- 私なら、お客様が最初に知りたい「同じ不具合がまた起きるかどうか」を、報告書の冒頭に置きます。読む方が判断しやすくなるからです。
- 今の意見は、役に立ちそうですか。違うと感じたら、遠慮なく言ってください。
「一緒に考えてほしい」と言われたときは、上司の案を先に出すより、何に困っていて、どうしたいのかを把握することから始めます。
- わかりました、一緒に考えましょう。どこまで調べられていて、どこで止まっていますか。
- お客様には、いつまでに、どこまでお伝えできればよいと考えていますか。
部下育成に心理学の知識を使うときに、 避けたいこと
避けたいのは、心理学の知識を、部下を分類したり上司の思う方向に動かしたりする道具にすることです。
- 部下の性格を、心理学の言葉で決めつける。「認められたい人だから」「打たれ弱いタイプだから」と分けて関わり方を決めると、同じ人でも仕事や時期によって違う面が見えなくなります。
- 相手を動かすための言い方の技術として使う。言い方の工夫だけで本人を動かそうとしていると気づかれたとき、上司の言葉そのものが信じてもらいにくくなるおそれがあります。
- ほめ言葉やごほうびで、取り組む理由を外から与え続ける。本人が自分で持っていた理由が、見えにくくなることがあると考えられます。ほめるときは、何ができたのかを具体的に伝えることを優先しましょう。
- 1つの考え方を、どの部下にも同じように当てはめる。同じ考え方でも、合う相手と合わない相手がいます。試してみて、合わなければやり方を変えてください。
心理学の知識が部下の成長に役立っているかを、 どう振り返るか
心理学の知識が役に立っているかどうかは、上司がどれだけ知っているかではなく、二人のやり取りがどう変わったかで振り返ります。
- 取り組むことや進め方を上司が決めてしまっていたら、次は、選べる範囲を示して本人の考えを尋ねてみてください。
- 任せた仕事のあとを「よくできました」だけで終えていたら、何ができたのかを具体的に言葉にして伝えます。
- 任せる範囲を印象で決めていたと気づいたら、最近の仕事をもとに、本人と相談して決め直しましょう。
- 1on1で話したことが次の仕事で試せる形になっていなければ、次の回は、何から試すかを二人で決めて終えます。
心理学の本や研修で学んだのに、二人のやり取りが前と変わっていないと感じるなら、次の1on1で、取り組むことを本人と一緒に選ぶところから始めてみてください。
この場面で、Kakeai AI 1on1 でできること
Kakeai AI 1on1 は、上司と部下の1on1の準備・会話・ふりかえり、そして日常の仕事の場面で、お二人のこれまでの1on1を踏まえた具体的な支援を届ける AI です。
本や研修で学んだ育成のやり方を、目の前の部下との会話にどう当てはめればよいか迷うときに、Kakeai AI 1on1では次のことができます。
部下との1on1の前に、「1on1前のAIアドバイス」で。
一般的なやり方をそのまま当てはめる前に、 その部下が今回何を期待しているかに合わせた入り方を考えられます。
Kakeai AI が、選ばれたテーマと、部下が選んだ期待する対応、これまでの1on1でのやり取りをもとに、今回どう関わるとよいかと、最初の一言の案を書きます。ご自身向けの内容で、部下には部下向けの別の内容が表示されます。
加藤さんは「一緒に考えてほしい」と言っているので、答えを渡すより、どこから手をつけるかを一緒に絞る関わりが今日の軸になります。
1on1の終了後に、「今回よかった点」で。
自分の関わり方のうち続けるとよいものを、 本の中の一般論ではなく、 実際の会話の場面で確かめられます。
「1on1後のAIアドバイス」の「今回よかった点」に、その回のどの場面で、ご自身のどの問いかけや返し方が部下の言葉につながったかが、実際の発言を引用して書かれます。ご自身向けの内容で、部下には別の内容が表示されます。
数字の報告を受け取るだけでなく、担当者がその数字をどう読んでいるかを問う形は、西村さんが自分の判断を持ち込む場を作りました。
1on1の終了後に、「次の1on1や日常へ向けて」で。
本で読んだ問いかけではなく、 その部下との実際の会話から、 次の1on1で試す一言を持てます。
「1on1後のAIアドバイス」のご自身向けの欄に、その回の会話をもとに、次の1on1で部下に試せる一言の案が書かれます。部下には別の内容が表示されます。
次回、自動車系列や提案書の軸について藤本さんが実際に動いた結果を聞く場面で、「自動車系列、リストに入れてみてどうだった?」と一問返してみてはいかがでしょうか。
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よくある質問
部下育成に役立つ心理学には、 どんなものがありますか。
部下育成でよく紹介される心理学の考え方に、自分で選んだことは続けやすい、というものがあります。できたという経験が次もできそうだという見通しにつながる、期待を言葉にされると意識しやすい、という考え方も知られています。1つの印象がその人全体の見方に広がりやすいことや、押しつけられると受け入れにくいことも、よく挙げられます。どれも、部下を分類する道具ではなく、上司の関わり方を見直す手がかりとして使うと役に立ちます。
心理学のテクニックを使って、 部下のやる気を引き出してもよいですか。
心理学の知識を、部下を上司の思う方向に動かすテクニックとして使うことは、避けたいところです。言い方の工夫だけで動かそうとしていると気づかれたとき、上司の言葉が信じてもらいにくくなるおそれがあります。やる気を引き出したいときは、取り組むことや進め方を本人と一緒に選ぶところから始めることをおすすめします。自分で選んだことは続けやすい、という考え方を生かす使い方です。
部下の性格のタイプに合わせて、 心理学を使い分けるべきですか。
部下を性格のタイプに分けて関わり方を決めることは、おすすめしません。「認められたい人だから」「打たれ弱いタイプだから」と分けると、同じ人でも仕事や時期によって違う面が見えなくなるからです。心理学の考え方は、この部下とこの仕事ではどうかという仮説として試し、合わなければやり方を変えてください。任せる範囲や伝え方も、本人と話しながら決めていきます。
部下はほめると伸びるのでしょうか。
部下をほめることは、できたという経験を本人が自分の力として受け取る助けになります。ただし、「よくできました」と繰り返すだけでは、何がよかったのかが伝わりません。「原因の候補を早めに絞ってから調べていたので、回答が予定より早くなりました」のように、何ができたのかを具体的に言葉にしてみてください。本人が自分の判断でしたことは、それがわかるように伝えます。
部下に期待を伝えるときは、 どう言えばよいですか。
部下に期待を伝えるときは、人柄ではなく、仕事の中身で具体的に伝えるようにします。「期待しているよ」と繰り返すだけでは、何を期待されているのかがわからず、重荷に感じる人もいます。「この報告書を、私の確認なしでお客様にお送りできるところまで、一緒に目指したいと考えています」のように伝え、そのために上司がすることも尋ねるとよいでしょう。
関連するページ
出典と、この数字を引用するときの書き方
出典:株式会社KAKEAI「1on1実態調査」(N=10,000、2026年5月実施、インターネット調査)
引用する際は、「出典:株式会社KAKEAI『1on1実態調査』(2026年)」と、このページのURLを明記してください。
このページのURL:https://kakeai.co.jp/guide/psychology-for-developing-subordinates
作成者と運営者
KAKEAIでは普段、「上司」「部下」という言葉を使っていません。このページでは、多くの方に伝わりやすいよう、一般的な呼び方として「上司」「部下」と書いています。
このページは、Kakeai AI 1on1 を提供する株式会社KAKEAIが、自社で実施した1万人調査と Kakeai AI 1on1 の利用データの集計をもとに作成したものです。
運営者:株式会社KAKEAI(会社概要) 更新日: