上司の方へ部下との関わり
部下の言葉遣いをどう指導するか
先に答え
部下の言葉遣いを指導するときは、「言葉遣いがなっていない」と礼儀や人柄の話にせず、直す言葉を1つに絞ることをおすすめします。そのうえで、代わりの言い方と、相手にどう受け取られるかという仕事の理由を一緒に伝えます。お客様へのメールや電話の敬語の誤りは、本人を直す前に、課で使う文例をそろえると角が立ちません。社内でのくだけた言葉は、相手と場面を限って二人のときに伝えます。「大丈夫です」のような曖昧な言葉は、言葉を直すより中身を尋ねます。部下は上司の言い方を手本にすることが多いので、上司自身の言葉遣いから先にそろえてください。
部下の言葉遣いの指導は、 礼儀ではなく仕事の言葉を教えること
部下の言葉遣いが気になるとき、上司が言いにくいのは、「言葉遣いを直してほしい」という話が、人柄や育ちの話に聞こえるからではないでしょうか。ただ、仕事で使う言葉遣いは、礼儀の問題というより、仕事の技術の1つです。お客様へのメールの敬語や他部署への依頼の書き方は、学校でも入社のときにもまとめて教わる機会が少なく、それでも「知っているはず」とされています。教わっていないことができていないだけなら、教えればよいのです。
角が立つのは、言葉遣いを「なっていない」とまとめて注意するときです。まとめて言われた部下は、どの言葉をどう変えればよいのかがわからず、注意された印象だけが残ります。そのため、直す言葉を1つに絞ってください。そして、代わりの言い方と、その言い方だと相手にどう受け取られるかという仕事の理由を一緒に伝えます。
なお、二人だけのときのくだけた話し方や周りへのきつい言い方は、言葉遣いの誤りとは別の話なので、ここでは扱いません。以下では、お客様からの問い合わせにメールと電話で答える仕事を例にします。
部下の言葉遣いで直す対象は、 3つに分ける
言葉遣いと一言で言っても、中身は3つに分かれます。どれに当たるかで、伝え方も急ぐ度合いも変わります。
| 言葉遣いの中身 | 例 | 伝え方 |
|---|---|---|
| お客様への | 「ご苦労さまです」 | 本人を |
| 社内での | 他部署への | 相手と |
| 曖昧な言葉 | 「大丈夫です」 | 言葉を |
お客様への敬語の誤りは、お客様の受け取り方に関わるので、早めに教えます。社内でのくだけた言葉は、相手と場面によって急ぐ度合いが変わります。曖昧な言葉は、言葉遣いの誤りではないので、直すのではなく中身を尋ねます。
お客様へのメールや電話の敬語の誤りは、 文例をそろえて教える
お客様へのメールの敬語の誤りは、本人の問題として指導する前に、課で使う文例があるかを見直してください。問い合わせへの返事の書き出しや、お待たせしたときのお詫びのように、よく使う文が決まっていれば、新しく入った人も迷いません。文例がないまま個人を直すと、人によって言葉がばらつき、直された人だけが注意された形になります。
- 問い合わせの返事で使う文を、課でそろえようと思っています。○○さんが今よく使っている書き出しを、いくつか見せてもらえますか。
- 文例は、私が一度たたき台を作ります。使いにくいところがあれば、遠慮なく言ってください。
- 文例は共有の場所に置いておきます。迷ったときは、そのまま使って大丈夫です。
送る前に上司が目を通して誤りに気づいたときは、1か所に絞って、代わりの言い方と理由を伝えます。
- 返事の文、要点が整っていて読みやすいです。1か所だけ、「おっしゃられた」は敬語が二重になるので「おっしゃった」にしましょう。
- 「ご苦労さまです」は、目上の方には使わない言い方とされています。お客様への書き出しは「お世話になっております」にすると安心です。
- この言い方は、私も入社した頃に教わるまで知りませんでした。
送ったあとに気づいたときは、お客様への影響の大きさで対応を決めます。意味が伝わっていて失礼にも当たらない誤りなら、次から直せば十分です。
- 昨日の返信は、お客様に問題なく伝わっているので、そのままで大丈夫です。次に同じ文を書くときに、「お送りさせていただきます」を「お送りします」にすると、すっきりします。
電話の言葉も同じです。お客様に自社の人のことを話すときは敬称を付けない、という決まりを知らずに「課長はいらっしゃいません」と言ってしまう人には、決まりと理由を教えます。
- 私のことは、社外の方には「□□は席を外しております」と、役職も「さん」も付けずに言って大丈夫です。身内を高めないという決まりで、○○さんの話し方が悪いわけではありません。
社内のくだけた言葉と曖昧な言葉は、 相手と中身で分けて伝える
他部署へのチャットや会議でのくだけた言葉
社内でのくだけた言葉は、二人の間では問題にならなくても、他部署の人や会議の場では、相手に軽く受け取られて仕事が進みにくくなることがあります。伝えるときは、相手と場面を限り、言いたかった中身は正しかったと先に伝えます。
- 製品部へのチャットで「了解っす」と返していましたね。相手は他部署の課長なので、「承知しました」のほうが、次の依頼もしやすいと思います。
- 会議で「それは無理です」と言ったとき、言いたいことは正しかったと思います。「今の人数では難しいので、期限を1週間延ばせませんか」のように、理由と代わりの案まで言うと、相手も受け取りやすいです。
- ○○さんなら、どんな言い方がやりやすいですか。無理のない言い方を一緒に考えたいです。
- 私のほうも、製品部へのチャットは「承知しました」にそろえます。
「大丈夫です」「たぶん間に合います」のような曖昧な言葉
曖昧な言葉は、言葉遣いの誤りではありません。ただ、「大丈夫です」が「終わりました」なのか「何とかします」なのかで、上司の次の動きが変わります。言葉を直してもらうより、中身を尋ねます。
- 「大丈夫です」というのは、返事はもう送ったということですか。それとも、今日中に送れそうということですか。
- 「たぶん間に合います」と聞くと、私はどこまで手を打てばいいか迷います。間に合わないかもしれない要素があれば、今教えてもらえますか。
- 急かしたいわけではないんです。状況がわかれば、お客様に待っていただく時間を私から伝えられます。
- 私のほうも、「なるべく早く」のような曖昧な頼み方をしていたと思います。これからは日時で言うようにします。
曖昧な言い方が続くときは、言葉より先に、本人が見通しを持てない事情がないかを尋ねてください。情報が足りない、ほかの仕事が重なっているといった事情があれば、言葉を直しても見通しは立ちません。
部下の言葉遣いの指導で、 避けたいこと
- 「言葉遣いがなっていない」とまとめて注意すること。何をどう変えればよいかが部下に伝わりません。言葉を1つに絞ってください。
- 人前で直すこと。お客様や同僚の前で言葉遣いを直されると、恥ずかしさが先に残り、直したい言葉そのものが頭に入りにくくなります。その場では上司が丁寧な言葉で話を引き取り、あとで二人のときに伝えます。
- 上司自身の言葉遣いをそのままにすること。部下は上司の言い方を手本にすることが多いものです。部下に「承知しました」を求めるなら、上司も他部署への返事をそろえてください。
- 世代や育ちの話にすること。「今の若い人は」と言われた時点で、部下は仕事の話として聞きにくくなります。
- 関係が崩れるのを恐れて、何も言わないこと。KAKEAIは、上司と部下の関係は、仕事の話を前に進める中でできるものだと考えています。言葉遣いの話を、信頼関係ができるまで先送りすることは、KAKEAIはおすすめしません。ただし、関係には段階があります。まだ身構えている段階なら、お客様への言葉のように仕事に直接関わるものに絞って伝えるとよいでしょう。
言葉遣いについて伝えたあと、 二人のやり取りを振り返る
言葉遣いの話がうまく伝わったかどうかは、その場の返事ではなく、次に同じ場面が来たときのやり取りで見ます。
- 伝えたのが1つの言葉と代わりの言い方だったなら、次に同じ場面が来たときのやり取りが、以前より進めやすくなっていれば、話は届いています。同じことをもう一度伝えることになったら、言い方を増やすより、伝えた理由が仕事の理由になっていたかを見直してください。
- 課の文例をそろえたなら、新しく入った人が最初の1週間で迷わずに返事を書けているかが、文例の出来を見る目安になります。
- 言葉遣いの話をしたあとも、部下から質問や相談が続いているなら、話は仕事の話として届いていると考えられます。相談が減ったと感じたら、上司の伝え方に人柄の話が混ざっていなかったかを振り返ってみてください。
言葉遣いは、一度教えればすぐに変わるものではありません。1つずつ理由と一緒に教えることを数か月かけて続けるものだと考えておくと、上司の側も焦らずに済みます。
この場面で、Kakeai AI 1on1 でできること
Kakeai AI 1on1 は、上司と部下の1on1の準備・会話・ふりかえり、そして日常の仕事の場面で、お二人のこれまでの1on1を踏まえた具体的な支援を届ける AI です。
会社の決まりに沿った対応や人事への相談を先にしたうえで、1on1で本人にどう伝え、どう話を聞くかを準備するときに、Kakeai AI 1on1では次のことができます。
1on1の前に、「メンバーに伝えたいこと」に入力して。
決まりについて伝えたいことを、 どの話題の流れで切り出すかを、 1on1の前に考えておけます。
マネジャー権限でご自身のメンバーと行う1on1では、「予定・履歴」の次の1on1のカードの「メンバーに伝えたいこと」に、切り出したいことを入力できます。保存すると「1on1前のAIアドバイス」が書き直され、どの話題の流れの中で切り出すと自然かが示されます。入力した内容は部下には表示されず、ご自身向けのアドバイスにだけ使われます。
話す1on1の前に、「1on1前のAIアドバイス」で。
伝えたいことを先に示したうえで、 部下の事情を聞く一言を用意して1on1に臨めます。
Kakeai AI が、選ばれたテーマと、部下が選んだ期待する対応、これまでの1on1をもとに、今回どう切り出すとよいかと、最初の一言の案を書きます。ご自身向けの内容で、部下には別の内容が表示されます。
6月5日の定例で分担の大枠は決まりましたが、今日はその線引きをもう少し具体的に決めてしまいたいと思っています。小野寺さんの担当範囲で、今どこが一番動かしにくいですか。
1on1の終了後に、「次の1on1や日常へ向けて」で。
注意したあとも、 部下の事情を聞き直すきっかけを次の1on1に持てます。
部下の返事が短いまま次の話に移った場面があると、次の1on1でどう声をかけ直すかの一言の案が書かれることがあります。ご自身向けの内容です。
次回、業務の確認に入る前に「最近、どう?」と一言置いてみると、小野寺さんが自分から話す余地が生まれます。
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よくある質問
部下の言葉遣いが悪いとき、 どう注意すればよいですか。
部下の言葉遣いが気になるときは、「言葉遣いが悪い」とまとめて注意せず、直してほしい言葉を1つに絞って伝えてください。あわせて、代わりの言い方と、その言い方だと相手にどう受け取られるかという仕事の理由を添えます。たとえば「『おっしゃられた』は敬語が二重になるので、『おっしゃった』にしましょう」のように言います。人前では直さず、二人で話せるときに伝えてください。
部下の敬語の間違いは、 気づくたびに直すべきですか。
部下の敬語の間違いは、気づくたびにすべて直す必要はありません。お客様に向けた言葉で、相手の受け取り方に関わるものを優先し、1回に1つずつ伝えます。意味が伝わっていて失礼にも当たらない誤りは、次に同じ文を書くときに直せば十分です。お客様への返事のようによく使う文は、課で文例をそろえておくと、個人を直す回数そのものが減ります。
年上の部下や経験の長い部下の言葉遣いを、 指導してもよいですか。
年上の部下や経験の長い部下にも、お客様や他部署との仕事に関わる言葉遣いであれば伝えてかまいません。ただし、礼儀の話ではなく、相手にどう受け取られるかという仕事の話として1つに絞って伝えます。「前の職場ではこの言い方で問題になりませんでした」と言われたら、その職場での慣習を否定せず、この会社のお客様や相手部署での受け取り方の違いとして説明してください。
言葉遣いを指摘したら、 部下が落ち込んでしまいました。 どうすればよいですか。
言葉遣いを指摘されて部下が落ち込んだときは、仕事の中身は正しかったことと、直してほしいのは言葉1つだけであることを、改めて伝えてください。「返事の要点は整っていました。変えてほしいのは書き出しの1文だけです」のように言います。あわせて、その言い方を自分も教わるまで知らなかったことや、上司自身も言葉遣いをそろえることを伝えると、人柄の話ではないと伝わりやすくなります。
部下の言葉遣いの指導に、 ビジネスマナーの研修や本を使ってもよいですか。
部下の言葉遣いを教えるときに、ビジネスマナーの研修や本を使ってもかまいません。ただし、本や研修で学んだ言い方が、自分の職場のお客様や相手部署に合うかは、職場ごとに違います。使うなら、上司が内容を見て、この職場でそのまま使える言い方と使わない言い方を分けて伝えてください。課で使う文例として残しておくと、本人だけでなく、あとから入った人にも役立ちます。
関連するページ
出典と、この数字を引用するときの書き方
出典:株式会社KAKEAI「1on1実態調査」(N=10,000、2026年5月実施、インターネット調査)
引用する際は、「出典:株式会社KAKEAI『1on1実態調査』(2026年)」と、このページのURLを明記してください。
このページのURL:https://kakeai.co.jp/guide/guiding-subordinate-word-choice-and-keigo
作成者と運営者
KAKEAIでは普段、「上司」「部下」という言葉を使っていません。このページでは、多くの方に伝わりやすいよう、一般的な呼び方として「上司」「部下」と書いています。
このページは、Kakeai AI 1on1 を提供する株式会社KAKEAIが、自社で実施した1万人調査と Kakeai AI 1on1 の利用データの集計をもとに作成したものです。
運営者:株式会社KAKEAI(会社概要) 更新日: