「仕事は楽しいですか?」メンバーと本音で語る豊田自動織機の1on1

碧南工場 エンジン事業部 生産技術部 碧南技術室 第11G グループマネジャー 野坂洋佑さん

- チームメンバーが抱える本音のキャッチアップ
- 多世代(30歳〜60歳超)にわたるメンバーのキャリア支援
- 1on1記録管理の煩雑さ
- メンバーの不安や課題の早期発見
- 年上部下を含む全メンバーとの信頼関係構築
- ベテラン層の具体的なキャリアプランニング支援
「仕事は楽しいですか?」。豊田自動織機でグループマネジャーを務める野坂洋佑さんは、メンバーとの1on1をこんな話から始めます。
チームの声を拾い上げるために定期的な対話を重ねて早2年。 1on1支援ツール「Kakeai」の導入により運用の効率化が進み、メンバーとのコミュニケーションが活発化しています。
幅広い年齢層のメンバーが在籍する生産技術部門に対話の文化はいかにして根付いたのでしょうか。
Q:1on1を始めたきっかけを教えてください。
組織の声を正しく拾い上げるために
私の部門(生産技術部)では2023年から1on1を開始していましたが、2024年7月にエンジン事業部内で運用を本格化させました。当時、「組織の風通し」が、全社的な課題としてクローズアップされていましたが、私には生産技術部の雰囲気が悪いとは思えませんでした。ただ、それは私の一方的な見方かもしれず、メンバーも同じ認識とは限りません。そこで、メンバー一人ひとりの声をしっかりと拾い上げようと思い、1on1をその場に位置付けました。業務中にはできない率直な対話の場が必要だと感じたのです。

Q:どのような頻度で1on1を実施していますか?
スケジュールはメンバー主導、頻度は柔軟に
昨年1年間は隔週で運用しましたが、メンバーから「もっと柔軟に」との声が寄せられました。現在はスケジュール設定をメンバー側に一任し、隔週や月1はもちろん、突発的な実施も認める柔軟な運用に変更しています。
場所は周りの目が気にならないようクローズドな会議室で、緊張を和らげるため斜めに座って実施するなど、話しやすい環境づくりを心がけています。
Q:1on1で特に工夫していることはありますか?
「楽しく働く」を軸にしたコミュニケーション
私が最も大切にしているのは「楽しく働く」こと。1on1は「仕事は楽しいですか?」から始めています。
うちの部は年齢層が高く、下は30歳から上は60歳超までベテランメンバーが集まっています。再雇用で働くメンバーには「あと5年、どうしたいですか」と率直に問いかけ、「どんな働き方を目指しますか」「どんな先輩のようになりたいですか」と具体的な話を持ちかけるようにしています。
以前は年齢に関わる話題を避けがちでしたが、一人ひとりが楽しく働ける環境を作るためには、本人の希望を知ることが何より大切だと気づきました。
このように1on1を通じてメンバーのキャリア形成を支援し、そこで出た意見を業務方針にも反映させています。個人の成長意欲と組織の方向性を一致させることが、組織全体の成果につながると考えます。

Q:1on1を続けることで、どのような効果が得られましたか?
不安の早期発見&「息抜き」の場として定着したこと
最大の効果はメンバーの抱える不安を早期に発見できることです。私の部署は生産準備や官庁届けなど、安全や法規に深く関わる業務が数多く、重要度の高い仕事であるとともに、設計部門からも製造現場からも期待値が高いシビアな環境でもあります。
そのような緊張感の中で、過度なプレッシャーを感じたまま業務に取り組むと周囲にも悪影響が及びかねません。1on1は、そうした不安を早期に察知する場であると同時に、メンバーが日常の緊張から離れて気持ちを切り替える時間としても機能しているのではないかと感じています。
1on1を重ねることで、私とメンバーの関係性も変化しています。
普段は堅い印象だったメンバーが、1on1で打ち解けてくると「実はテイラー・スウィフトが好きで」などと話してくれたり(笑)、「家族の体調がよくないから来週は早く帰らせてください」といったプライベートな相談も気軽に持ちかけてくれるようになりました。
こうした意外な一面を知ることで、お互いの理解が深まり、業務の調整もスムーズになっています。
Q:1on1がうまくいっている要因は何でしょうか?
日常的な信頼関係の構築とKakeaiの効果的活用
まず、信頼関係の土台がなければ本音の対話は生まれません。だからこそ、日頃から「ありがとう」とメンバーに感謝の言葉を伝えることを大切にしています。
グループ内で「今日は何回『ありがとう』と言いましたか」とゲーム感覚で呼びかけることもあります(笑)。習慣化するとMTGなどでも場が和み、活発な意見交換につながっていきます。

テーマ設定についても工夫を重ねてきました。1on1を始めた当初は自ら1on1について勉強し、「お話ナインボックス」というテーマ表を作成しました。「組織・個人・業務」と「過去・現在・未来」の軸を組み合わせた九つのカテゴリーで構成されており、会社の理念から個人のライフスタイル、キャリア、業務の振り返りまで幅広くカバーできます。しばらくの間はこの表を活用してトークテーマを決めていました。
また、メンバーごとにExcelファイルを作成し、日付ごとに1on1で話した内容をメモしていましたが、複数名分のファイルを個別にメンテナンスするのは正直煩雑でした。
Kakeai導入でこの課題が大きく改善されました。体系的なテーマが既に用意されており、履歴管理も自動化されるため、手作業でのファイル管理から解放されたのです。
最も印象的なのは、事前にテーマやコメントを書き込んでくれるメンバーがいることです。
事前に入力してもらえると、こちらも準備して臨めますし、履歴が残るので「この前こんな会話をしたけど、今どう?」という継続的な対話がスピーディーにできるようになりました。メンバーとの共有も簡単で、振り返りがとてもやりやすくなっています。
Q:今後の1on1の発展についてはいかがお考えですか?
組み合わせの多様化と組織横断的な展開
当部署における1on1はかなり成熟してきたと感じています。今後はグループマネジャーとメンバーの関係だけでなく、ワーキングリーダーとメンバーの1on1への拡大を視野に入れています。一部のメンバーからは「違うグループのマネジャーとやってみたい」といった声も挙がっています。異なるグループのマネジャーとメンバーといった「斜め」の1on1をやってみることで、さらに組織としての絆が深まっていくのではないかと考えています。
また、1対1にこだわらず、マネジャー1人×メンバー2人の「1on2」のニーズもありました。Kakeaiではペア設定が簡単にできるため、このような柔軟な運用も可能ではないでしょうか。
多様な対話の形式を取り入れることで、さらに多くのメンバーと関係が深まっていくことを期待しています。

※上記事例に記載された内容は、2025年05月取材当時のものです。閲覧時点では変更されている可能性があります。ご了承ください。