実施率100%の先へ。新規事業開発組織が取り組む「成果につながる1on1」(仮)

実施率100%の先へ。新規事業開発組織が取り組む「成果につながる1on1」(仮)

社名
大日本印刷株式会社
業界
従業員規模
1001~3000人
タイプ
ご利用ユーザーの声
導入目的
パフォーマンス向上
組織風土・コミュニケーション改善

大日本印刷(DNP)の新規事業開発部門「ABセンター」。事業の種を育て、軌道に乗ればセンターから独立する。抜けた穴には、次の種を蒔く人材が社内外から集まる。約250人という規模の中で人が常に入れ替わる、流動性が高い組織です。

R&D部門と事業開発部門。新規事業の知見を求めて採用された中途社員と、DNPの文化で育ってきたプロパー社員。

仕事の姿勢やカルチャーが異なるメンバーが集う組織で、早期に関係を築き、挑戦を支える土台をどうつくるか。そこで同社が注力しているのが1on1です。

2022年に全社で1on1が義務化され、2023年1月にはKakeaiを導入。ABセンターでは月1回の1on1実施率が当初から90%に達し、現在はほぼ100%を維持しています。推進担当の佐藤英吾さんに、定着までの工夫と次の展望をうかがいました。

課題
成果

NTERVIEW

Q:ABセンターはどのような組織ですか?

ICT領域の新規事業を創出し、育て、送り出す組織

ABセンターは2014年に設立された、ICT領域の新規事業開発部門です。実在する街や施設をバーチャル空間化して地域創生に活用する「XRコミュニケーション」や、生成AIが情報を正確に読み取れるようデータの整備をサポートする「AI-Ready Data」など、様々な事業を輩出してきました。

組織の特徴は、R&D機能と事業開発機能の両方を持っていることです。研究開発から事業化、そして一定規模に育ったら事業部として独立させます。事業のオーナーやメンバーも一緒に独立し、新たな事業創出のために社内外から人が入ってくるため、人材の流動性が非常に高い。また、新規事業開発の知見を求めて中途採用も進めており、DNP全体で見ても中途入社組の比率が高い部門です。

事業が独立していく分、常に新しい種を生み出し続ける必要があります。そのための仕組みとして、2024年度から「OneABスタジオ」という事業開発プログラムを立ち上げました。ABセンターの全社員を対象に年間500以上のアイデアを募り、審査を通過した発案者がプロジェクトオーナーとなってチームを組成。本業と並行しながら検証を進め、年間数件の事業創出を目指しています。

Q:1on1に取り組み始めたきっかけを教えてください。

人事制度改定を機に、まずは実施率100%を目指した

2022年に全社で1on1が義務化され、2023年1月にはKakeaiが導入されました。このタイミングで1on1を本格始動させています。

ABセンターは多様なメンバーが混在する組織です。正確性を重視し、長い時間軸で考えるR&D部門と、不確実が高くともアイデアを前に進める事業開発部門。この両者の相互理解を進めないまま議論すると、「話が噛み合わない」という摩擦が起きやすい。早期に関係性を築くことが不可欠でした。

そこで、まずは月1回の1on1実施率100%を目指すことにしました。1対1で話せば必ずポジティブな結果が生まれるという確信があったので、最初は自由に話してもらうことから始め、関係性の質を高めることに注力しました。

Q:ABセンターでは導入当初から1on1の実施率が高く、90%を記録していたとうかがいました。その高さの要因は?

トップメッセージと丁寧な導入設計

要因はいくつかあります。まず、弊社社長の北島(義斉)が、年頭方針や期初方針などで「対話が大事である」と繰り返し発信していたことです。大事なことは何度も伝えてこそ届くもの。社員が「また言っているよ」と思うくらい言い続けることで、意識が浸透していきました。

そうした土壌があった上で、導入時には1on1の目的や意義をしっかり説明しました。「制度だからやる」ではなく、「組織が大事にしている対話を促進する取り組みとして1on1がある」というアプローチで現場の理解を得ました。

対話が生まれやすい環境づくりにも取り組んでいます。DNP全体ではリモートワークを認めており、出社日数の定めはありません。しかしABセンター長は独自に「週の過半以上は出社する」という方針を打ち出しました。仕事のスピード感、セレンディピティ的なアイデア、相互理解の深まり。リアルな対話から生まれるそうした価値を、センター長が丁寧に説明したことも大きかったと思います。

私自身、休憩室で総務部長と立ち話をしたのがきっかけで事業アイデアが生まれ、今POCに取り組んでいます。「会社に来て、対話するといいことあるよ」と、自分の体験として言えます。

Q:1on1推進者から見てKakeaiはどういう存在ですか。

「100%実施」を目指す上で、必要な機能が揃っている

Kakeaiは、実施率100%という目標を達成するために必要な機能が揃っていました。TeamsやOutlookと連携したスケジュール設定、事前のテーマ選択、対話内容の文字起こしなど、準備から実施までの支援がフルスペックで整っている。一つひとつは複雑な機能ではありませんが、1on1をやるために必要なことが全部揃っていて、かゆいところに手が届く存在です。

HR系のツールは、導入してみると使いにくかったり、マニュアルを読んで覚えるのが大変だったり、かえって負担が増えてしまうこともあると聞きます。Kakeaiは非常に直感的で使いやすく、現場の負担感がなかった。それが高い実施率につながった要因の一つだと思います。

Q:Kakeaiの機能で、特に役立っているものは?

実施状況の可視化と、満足度データの活用

推進担当として最も重宝しているのは、実施状況と満足度のデータです。

まず実施状況について。Kakeaiでは部門ごとの1on1実施率が把握できます。未実施者には月の中間と最終週にリマインドメールを送り、上長にも翌月初めにフィードバックしています。また、実施率は全体に公開しています。やっていない人が少数派になることで、「自分もやらなきゃ」という意識が自然に生まれる。これを続けたことで、90%からほぼ100%へと向上しました。

次に満足度について。Kakeaiではマネジャーごとの1on1満足度が計測でき、他社との比較も可能です。非財務領域の施策は「これ意味あるの?」と問われやすいものですが、満足度データがあれば「これだけ効果が出ている」と示せます。経営層への報告において重宝しています。

また、満足度の高いマネジャーに「どんな工夫をしているか」を発信してもらう取り組みも始めました。事務局が一方的に「こうしなさい」と言うより、うまくいっている人から学ぶ方が現場に響きます。

Q:1on1を本格導入してから組織に変化はありましたか?

関係性指標が着実に向上。一方で「対話の質」が二極化

月1回取っているエンゲージメントサーベイで、関係性を表す指標が着実に向上しました。2022年度と2025年度を比較すると、「上司との関係」「職務上の支援」は約5〜6%上昇。「仕事仲間との関係」「成果に対する承認」も改善しています。

一方で、課題も見えてきました。関係性指標はベンチマークを上回っていますが、「やりがい」「挑戦する風土」といった事業成果に直結する指標はベンチマークを下回っています。

Kakeaiでは1on1の前にメンバーがテーマを選択する仕組みになっており、どのテーマが選ばれているかを集計できます。これを分析すると、1on1の中身に二極化が起きていました。挑戦や成果につながる踏み込んだ対話ができている人がいる一方で、「進捗共有で終わってしまう」「普段の会話と変わらない」という人も一定数いる。関係性は良くなった。でも、その先に進めていない層がいる。次のフェーズでは、ここに手を打つ必要があると考えています。

Q:見えてきた課題に対して、どのような打ち手を講じていますか。

メッセージの転換と、外部の声を借りた発信

まず、メッセージを転換しました。これまでは「業務の話だけでなく、プライベートの話もしてください」と発信してきましたが、今は「成果につながる対話、一歩踏み込んだ真剣な対話をしてください」と伝えています。

この変化に現場には戸惑いもあると思います。納得感を高めるために、2025年11月にKAKEAIの皆川社長にワークショップを実施していただき、新たな方向性に込めたメッセージを発信していただきました。参加者の7〜8割が「満足した」と回答しており、理解は一定程度得られたと感じています。

ただ、ワークショップ直後は熱が高くても、時間とともに冷めていくものです。社長が対話の重要性を繰り返し発信しているように、新たな方針も定期的に伝え続けることが大切だと考えています。

Q:今後の展望を聞かせてください。

関係性の質を、成果へとつなげていく

 新規事業は「千三つ」の世界です。1000のアイデアから三つの事業が生まれればいい。だからこそ、失敗しても打席に立ち続ける挑戦を賞賛する風土が不可欠です。その風土をどうつくるか。

私たちはMIT組織学習センター共同創始者ダニエル・キム氏の「成功循環モデル」を参考にしてきました。関係性の質が高まれば、思考の質、行動の質、結果の質へと循環し、挑戦を支える土台になる。1on1を通じて関係性の質は高まりました。次はその先、思考や行動、そして成果へとつなげていくフェーズだと考えています。

ただ、上司部下によって関係性の段階にはばらつきがあります。信頼の土台ができている上司部下もいれば、まだこれからという上司部下もいる。後者に「成果につながる対話を」と言っても難しい。そこで今後はKAKEAIの「1on1関係性サーベイ*」を活用していく予定です。それぞれの上司部下がどの段階にあるのかを可視化し、その段階に応じたテーマや対話の仕方を選べるようにしていきます。

また、上司以外との1on1、いわゆる「斜めの1on1」を自主的に実施して効果を感じている人も出てきました。ワークショップをきっかけに「自分たちで何ができるか考えたい」という声も現場から上がっています。トップダウンで始まった1on1が、現場発で進化していく兆しが見えている。この流れを大事にしていきたいと思います。

1on1関係性サーベイ

KAKEAIが提供するサーベイ。270万回超の1on1データと500社超へのインタビューから、成果につながる1on1には明確な段階(上司部下関係の段階)があることを明らかにし、上司部下の関係性を16段階で可視化する。


※上記事例に記載された内容は、2026年1月取材当時のものです。閲覧時点では変更されている可能性があります。ご了承ください。

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