やり方は、現場が決めていい。多様な人材をつなぐSMFLの1on1
三井住友ファイナンス&リース株式会社 人事部 副部長 兼 ダイバーシティ経営推進室 副室長 北田 渉さん

リースを源流に、航空機や不動産、環境エネルギーなど多様な分野へ事業を広げてきた三井住友ファイナンス&リース(SMFL)。同社ではコロナ以降に1on1が広がり、人事部がその質の向上を支えてきました。2023年から1on1支援ツール「Kakeai」のトライアル利用を開始し、2025年度に全社導入。利用は手挙げ制とし、現場の判断に委ねています。その狙いと、1on1を通じて目指す組織像をうかがいました。
- 上司による、1on1の質のばらつき
- 信頼関係の構築と自律型人材の育成
- 話の糸口の創出や事前準備の悩みの解消による、対話の質の向上
- 若手の活性化と、自らキャリアを切り開く動きの広がり
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INTERVIEW
Q:御社では、1on1はどのように広がっていきましたか。
現場の自発性に任せ、研修で後押し
1on1は、全社で号令をかけて始めたものではなく、コロナ以降、事業環境の変化を背景に、各現場で自然に広がっていきました。
ただ、1on1が広がる一方で、対話の進め方や話題設定に悩む声も聞かれました。また、短時間で終わってしまうケースもあり、より充実した対話に向けた工夫の余地があることが見えてきました。

そこで2023年に人事部が「1on1実践力向上プログラム」を立ち上げ、研修に加え、対話の要点をまとめた冊子を配布し、上司の1on1スキルの底上げを図りました。
研修は現在も継続しており、受講者からは「うまくいかなかった理由に気づいた」「1on1の重要性を再認識した」といった声をいただいています。
Q:どのような目的で1on1を推進していますか。
信頼関係の構築と自律型人材の育成
目的は「信頼関係の構築」と「自律型人材の育成」です。信頼関係が不十分で、心理的安全性が確保されないままだと、メンバーは本音を口にしづらくなる。結果として、対話は表面的になり、次の行動にもつながりません。メンバーが上司の言葉を前向きに受け止めるためには、信頼という土台を築くことが不可欠です。
また、メンバーが自分で動けるようになることも大切です。当社の事業はリース・ファイナンスを源流に、いまや航空機、不動産、DX、海外での環境ビジネスなど広がりを続けています。上司自身も経験したことのない領域では、確信を持ってメンバーに答えを示せません。だからこそ、メンバー一人ひとりが自ら考え、信頼できる相手と壁打ちしながら答えを見いだしていくことが重要になります。

この二つは、人材戦略とも地続きです。当社の人材戦略は、「事業変革を支える人員確保・配置」「チャレンジを促すキャリア形成支援」「成長の土台となるWell beingの向上」の三つを柱としています。適切な人員配置も、キャリア形成・成長の支援も、上司が部下一人ひとりの状態や、やりたいことを理解していなければ、実現できません。そして、その理解が生まれるのが、1on1という対話の場です。
Q:2023年12月に1on1支援ツール「Kakeai」のトライアルを開始し、2025年度から全社で利用できるようにしました。利用は希望者の挙手制を採用していますが、その理由は?
形だけの導入にしないために
当社の社員はバックグラウンドも価値観もさまざまで、1on1への取り組み方も現場ごとに異なります。やり方まで一律に決めてしまうと、現場に根づきにくくなる可能性があります。そこで、人事は対話の質を高める支援策を用意し、現場が考え、必要に応じて取り入れる形で、現場ごとの1on1を後押ししています。Kakeaiもその一つで、必要性を感じた部店長などが利用しています。
Kakeaiの導入は、現場の実態に合わせて段階的に進んでいきます。まずは部店長が直属の部下との1on1で使ってみて、手応えがあればチーム全体へ広げる、といったケースも少なくありません。
Q:Kakeaiに期待したことと、実際の使われ方を教えてください。
話題に困らず、相手の反応も見えること
期待していたのは、話すきっかけや話題づくりのつまずきを和らげることでした。「今日は何を話そうか」「部下は何か書いてくれているだろうか」。上司が抱えるそうした入り口の迷いを、軽くしてくれるのではないか、と。実際、話題が決まっていない日のアイスブレイクとして「サイコロトーク」はよく使われています。
また、事前にトークテーマを選んだり、アジェンダを書き留めたりしておく仕組みも役立っています。メンバーが何を話したいかを把握したうえで、上司が1on1に臨めるからです。
個人的に気に入っているのは、Kakeaiを開いたときに画面で弾けるクラッカーの演出です。あの演出によって気持ちを切り替えてから1on1に入れるのがいいですよね。

もう一つ、使っていて心地良さを感じるのは、お互いの画面をリアルタイムで共有していることです。話したそばから、上司または部下がその場でメモを書き込んでいくのが見える。自分の言葉が書き留められていくのがわかると、お互いにちゃんと聞いてくれているのだと安心できます。
履歴が残るのもありがたいですね。以前は一人ひとり別々に1on1ノートをつくっていましたが、Kakeaiなら、前回いつ何を話したかが一目でわかります。
Q:1on1が活発化することで、組織に変化は起きていますか。
「1on1」が、社内の共通言語になった
最も大きな変化は、「1on1」という言葉が社内の共通言語になってきたことです。違う部署の仲間と食事に行くと、「この前1on1でこう言われてさ」「Kakeaiでサイコロやっているよ」といった話が、自然に出てくるようになっています。
若手の様子も変わってきました。上司とちゃんと対話ができている人は、表情が明るい。1on1があるかどうかで、若手の状態にはっきり差が出ているのを感じます。

キャリアの面でも、具体的な動きが出ています。当社には「キャリアチャレンジ」という社内公募制度があり、手を挙げる社員が増えてきました。
上司との1on1で、それまで考えていなかった道に気づき、「こういうキャリアもあるのか」と視野が広がる。実際に、キャリアの選択肢を広げるきっかけになったケースもあります。
Q:人事として、1on1の効果を測るための定量的な目標は設けていますか。
エンゲージメントスコアの変化を注視している
対話を通じて信頼関係づくりや成長支援が進めば、エンゲージメントは自然と上向くと考えています。
そこで注視しているのが、エンゲージメントサーベイの変化です。かつては年に1回でしたが、現在は毎月のパルスサーベイも活用しながら変化を確認しています。
あわせて見ているのが、サーベイの自由記述です。「上司が話を聞いてくれない」「1対1で話す機会がない」といった声は、現場の実感そのもの。数値の裏にあるこうした声も、丁寧に拾いながら、組織の変化を捉えていこうとしています。

Q:これから目指す組織像を聞かせてください。
出会ったことのない相手とも、信頼を結べる組織へ
SMFLは、いくつもの会社が一つになってできた組織です。たとえばGEキャピタルとの統合では、今までSMFLにはなかった文化も加わりました。現在では、キャリア採用者も増え、人材の多様化が一層進んでいます。
これからは、価値観や経験の異なる上司と部下が、同じチームで働く場面が増えていきます。これまで出会ったことのない相手と、どう信頼関係を築くか。その手段になるのが、1on1です。立場や価値観が異なっても、対話を重ねて信頼を育てていく。そうして、一人ひとりが個性と能力を存分に発揮できる組織にしていきたいと考えています。
※上記事例に記載された内容は、2026年6月取材当時のものです。閲覧時点では変更されている可能性があります。ご了承ください。






