エンジニアのキャリアに、対話で向き合う。管理職が、メンバーの本音に気づくための1on1
三井情報株式会社 技術推進本部 金田慶春さん(写真右)/ 同 技術戦略部 部長 本谷伸也さん

三井物産グループでシステム開発などを手掛ける三井情報。約1,100人の技術者を擁する技術部門では、社員が長く活躍できる組織づくりに力を入れています。その土台となるのが、室長(課長に相当)とメンバーの日々の対話です。
多くの役割を担う室長が、メンバー一人ひとりと向き合う時間をいかに確保し、対話を豊かにしていくか。その目標に向けた一手として、2026年5月に1on1支援ツール「Kakeai」を導入し、対話の質をさらに高めようとしています。
詳しい話を、技術部門の人材開発を担う金田慶春さんと、この3月まで現場を率いた本谷伸也さんにうかがいました。
・多くの役割を担う管理職が、メンバーと向き合う時間をどう生み出すか
・1on1を業務確認から「キャリアを語る対話」へと深めていくこと
・上司がメンバーの期待を理解して1on1に臨めるようになった
・マネジャーが自身の対話を振り返り、改善するための仕組みが整った
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<金田さんインタビュー>
Q:技術部門はどのような組織でしょうか。
1,100人の技術者組織。若手の定着と活躍に向けた対話の創出が組織テーマ
三井情報は、金融や製造、公共など幅広い業界に向けて、ITシステムの企画から運用、保守までを手がける企業です。私が人材開発を担当する技術部門には約1,100人が在籍し、その多くはSE(システムエンジニア)やプログラマーです。組織は本部、部、室という階層で、その最前線でメンバーと日々顔を合わせ、上位職との橋渡し役を担うのが、室長です。
私たちが力を入れているテーマの一つが、若手の定着です。多くの役割を担う室長が、一人ひとりともっと向き合えるようにしたい。日々の対話を充実させることが、若手の定着につながっていくのではないか。メンバーの声を丁寧に分析する中でたどり着いたのは、この仮説でした。特効薬はありません。地道な対話を重ねていくことが不可欠だと考えています。

Q:なぜ室長に、それほど多くの役割が集まるのでしょうか。
労務や承認といった組織運営の実務を、室長が一手に担うため
技術者のキャリアは、大きく二つあります。高い専門性を極めるスペシャリストの道と、組織をまとめるマネジメントの道。ただ、スペシャリストは選ばれた人が進むため、多くはマネジメント、つまり室長へと進んでいきます。
室長の職になると、担うものが一変します。メンバーの労務管理や、社内の各種申請、承認といった組織運営の実務が加わり、それらはすべて室長を通すため、扱う範囲が大きく広がります。また、室長は自らプロジェクトを抱えるプレイングマネジャーでもあり、大事な場面では自身が前に立ちます。
こうした経験を積みながら新米室長は大きく成長していきますが、実務に加え、プレイヤーとしての仕事、マネジメントの学びまで、多くを同時に担います。その中で、メンバーと向き合う時間をいかに生み出すかは、現場を率いる立場として大事なテーマといえます。
Q:室長がメンバーに向き合うことが、なぜ若手の定着につながるのでしょうか。
メンバー本人の希望と、任せている業務のすれ違いは、対話で埋められると考えたため
メンバーが職場を離れる背景を分析すると、大きく三つに分かれます。一つは、より良い条件を求めて新たな環境へ移っていくケース。もう一つは、家族の介護や自身の健康上の事情など、個人的なもの。この二つは、本人の選択を尊重すべきものです。

一方、対話で状況を前向きに変えていけるのが、本人の希望や適性と、現在の仕事との間に、すれ違いがうかがえるケースです。
そのままにしておくと、気持ちは次第に離れていきます。ここに、対話が生きる余地があります。上司が早いうちにその人の思いに気づき、キャリアを一緒に考える。そうすれば、本人が持ち味を発揮し、長く活躍していく道も開けます。だからこそ、多くの役割を担う室長にも、メンバーと向き合う時間は大切にしてほしいと考えてきました。
この対話は、会社が重視する「キャリアオーナーシップ」とも重なります。一人ひとりのキャリアを会社が認め、主体的に描けるよう支えていく。その方針を現場で形にするのが、室長とメンバーの1on1です。
ある社内調査で、若手社員に「上司に一番してほしいこと」を尋ねたところ、最も多かった答えが「自分の話を聞いてほしい」でした。1on1の時間を業務の確認や進捗報告だけでなく、キャリアや思いを語る真の対話へと育てていく。それが、私たちが数年来、力を注いでいるテーマです。
Q:対話の質の向上を目指す中、どのような経緯でKakeaiの導入に至ったのでしょうか。
信頼するパートナーの紹介、豊富な導入実績が決め手に
Kakeaiは、1on1を後押しする一手として導入しました。人材開発について継続的に相談している外部パートナーを通じてその存在を知り、導入実績の豊富さが決め手になりました。
惹かれた理由の一つが、対話の実態が見えることです。当社はもともと社内アンケートが多いのですが、Kakeaiは日々の1on1がそのままデータになるので、現場の手をわずらわせることなく状況を把握できます。
Kakeaiの利用は、全員に義務づけるのではなく、使いたい人が手を挙げる形にしました。前向きな気持ちで始めてもらうことを大切にしたかったからです。正直、最初は数人集まればと思っていたのですが、ふたを開けると24、25人。想定を超える数の手が挙がりました。しかもその多くが室長です。まずは前向きなスタートを切れたと受け止めています。

Q:Kakeaiを通じて、どんな変化が起きることを期待していますか。
チーム内の対話の活発化や上司の成長
期待しているのは、大きく二つです。一つは、対話が始めやすくなることです。すでに使っているメンバーに好評なのが、事前にトークテーマを選んでおける仕組みです。「何を話そうか」とその場で探り合うのではなく、話したいことを先に伝えられる。1on1の進め方も学べるので、これから始める人の入り口にもなります。話した内容は記録として残りますが、見られるのはその1on1をした二人だけ。ほかの人の目に触れないので、安心して話せます。
もう一つは、マネジャー自身の気づきです。Kakeaiでは、1on1のあとに部下がその時間の満足度を評価します。その評価が回を重ねるごとにデータとして積み重なり、可視化される。おかげでマネジャーは「自分は業務の話ばかりしていたな」「もう少し聞いたほうがいいかもしれない」などと、自分の対話を振り返ることができます。自らの傾向に気づけば、少しずつメンバーとの関わり方が変わっていく。そのようにして、マネジャー自身の成長の機会が生まれることも期待しています。
<本谷さんインタビュー>
Q:室長が一人ひとりのメンバーと向き合う時間を確保し、対話を豊かにしていくこと。これが御社の大事なテーマとうかがいましたが、本谷さんは、メンバーとどう向き合っていましたか。
時間をやりくりし、心の動きにいち早く気づける関係を目指した
私が率いていたのは、お客さま先に常駐するメンバーの多い部門です。本社とは働き方の条件が異なるため、 新たな環境を希望するメンバーもいます。だからこそ、室長が一人ひとりの思いにどう向き合うかが、現場では大切なテーマになっていました。
室長は自分の仕事を進めながら、複数のプロジェクトに目を配り、お客さま対応にも動きます。そのうえで、一人ひとりとじっくり話す時間を確保するには工夫が要りますが、その対話こそ、メンバーの心の変化に気づく手がかりになります。
新たな道へ進むメンバーの多くは、切り出す時点で、すでに次を決めています。ただ、その決断に至るまでに「このままでいいのかな」と考えた瞬間があったはずです。そのふとした心の動きに、少しでも早く気づいて、話せる場をつくりたい。そう思うことが、何度もありました。
Q:多くの役割を担いながら対話を継続するために工夫していたことはありますか。
自身が行う1on1のテーマはキャリアに限定、それ以外の1on1は中堅社員に委ねる
まず、私自身は限られた時間を有効に生かすために、上期と下期の年2回、テーマをキャリアに絞って話すことにしました。
その際、「何をやりたいか」と正面から聞くと、「別の部署に移りたい」という話になることもあります。それも大切な声ですが、預かっているメンバーには、このチームで力を発揮してほしい。だからこそ、 まずは本音に耳を傾けながら、「仕事で何を大事にしているか」を尋ね、その人の価値観の軸を一緒に確かめることを心がけました。
もう一つの工夫は、室長の一歩手前にいる中堅社員数人に、メンバーのメンター役を任せたことです。中堅社員にとっては、次に自分が1on1をする側(=室長)になるので、その練習にもなります。
メンバーの側にも利点があります。評価者である室長よりも、評価に関わらないフラットな先輩ほど、本音を打ち明けやすい。室長も1on1を無理なく続けられ、特に気にかけたいメンバーにしっかり向き合えます。メンターとメンバーの組み合わせは固定せず、数カ月ごとに入れ替えていました。

Q:1on1を続ける中で、大切にしていたことはありますか。
業務の話にとどめず、キャリアの話に対話を広げることに向き合ってきた
正直、1on1を始めたときは試行錯誤の連続でした。決まった型があるわけでもなく、場数を踏むなかで、聞くことに徹する、話しすぎない、無理に答えを出さなくてもいい、と少しずつやり方を身につけていきました。
大切にしていたのは、1on1の時間をいかに意味のあるものにするかです。話したいことを携えてくるメンバーもいれば、席に着いたまま言葉を探しているメンバーもいます。すると、「今どんな仕事をやっているの? 一緒に見ようか」と、目の前の業務に話が向かうこともあります。そのほうが、互いに話に入りやすいからです。でも、本当は数カ月先、数年先を見据えて話したい。どうすれば「今」の話から一歩先へ広げられるか。そこにずっと向き合ってきました。
Q:Kakeaiを使ってみて、どう感じましたか。
1on1で試行錯誤してきたことに、ひと通り答えてくれる
「1on1をどう進めればいいのか」と、試行錯誤しながらやってきましたが、その問いに答えてくれるものが、ひと通りそろっている。それが第一印象でした。

とくに助かるのが、事前にテーマを選べる仕組みです。上司はメンバーに伝えたいことがたくさんありますが、伝えたいことを一方的に並べるだけでは、対話になりません。かといって、その場でメンバーの話を引き出し、新たな発見につなげるのも、工夫が要ります。その点、事前にトークテーマが決まっていると、メンバーの期待を理解して臨めますし、話も軌道に載せやすくなります。サイコロトークのような機能も良いですね。「あなたが話す番です」と促されれば、自然なかたちで話を始められます。
記録の仕組みも、よく考えられています。1on1で話した内容が、回ごとに記録として残ります。おかげで、前回何を話したかをすぐに思い出せて、その続きから、新しい1on1を始められます。
終わり際に次回の日程調整を促してくれるのもありがたい仕組みです。あらかじめ次を決めておくことで対話にリズムが生まれ、「次は何を話そう」と自然に考えられるようになりますから。
Q:この4月からは、リモートの多い部署に移られたそうですね。オンラインでの1on1に、Kakeaiはどう役立っていますか。
対面に近い一体感を与えてくれる
私のかつての現場は全員出社が基本でした。1on1も対面実施に慣れていたため、オンラインでの対話には少し不安がありました。
ところが実際にやってみると、印象が変わりました。Kakeaiでは、二人で同じ画面を見ながら1on1を進めます。アイスブレイクのために、画面の中のサイコロを一緒に転がしたり、相手が動かすマウスがこちらの画面にも見えたり。同じ場で一緒に手を動かしている感覚があり、対面で得ていたつながりを補ってくれていると感じました。

室長のなかには、1on1の進め方を模索している人も少なくありません。そういう人こそ、先入観を持たず、一度使ってみるのが良いと思います。私自身、長年1on1に取り組んできて、自分なりのやり方が確立されていると思っていましたが、それでも実際にKakeaiに触れてみると、支えられる場面や、気づかされることがありましたから。
試行錯誤を重ねながら、対話が根づいていけば、やがては特別な仕組みがなくても、自然に言葉を交わせる職場になっていくはずです。Kakeaiには、その土台を築く役割を期待しています。
※上記事例に記載された内容は、2026年6月取材当時のものです。閲覧時点では変更されている可能性があります。ご了承ください。






