多忙な営業組織で「週1回・30分」を徹底。マネジャーの育成力を高める1on1
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株式会社ウィル 東京支社 流通営業グループ グループマネジャー 次長 日坂美由希さん(左)/株式会社ウィル 取締役 東京支社 支社長 神野正和さん
不動産売買を起点に、リフォームや買取、保険までワンストップで提供する株式会社ウィル。同社の流通営業部門では2024年に「Kakeai」を導入し、「週1回・30分」の高い頻度で1on1を実施しています。
その理由は、単に上司と部下のコミュニケーションを増やすためではありません。同社がマネジャーに求めるのは、売上をつくることだけでなく、メンバーを育て、組織の文化を次の世代へつなぐこと。その役割を果たすうえで、信頼関係の土台を築く1on1は不可欠だといいます。
では、対話は実際のマネジメントや人材育成にどう生かされているのか。1on1を推進する取締役の神野正和さんと、東京圏8店舗の店長を統括する日坂美由希さんに聞きました。
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<神野さんインタビュー>
Q:流通営業部門の体制や職場環境について教えてください。
営業所ごとにチームマネジャーが5〜7名のメンバーを率いる体制
流通営業部門は、関西、中部、東京にそれぞれ複数の営業所を構えています。各営業所は、いわゆる店長にあたるチームマネジャーと、正社員5〜7名ほどのメンバーで構成されています。その上に、複数の営業所を束ねるグループマネジャーがいて、さらにその上に私がいます。
1on1は主に、階層ごとに実施しています。メンバーとチームマネジャー、チームマネジャーとグループマネジャー、そしてグループマネジャーと私。すべてのラインで、週1回30分の1on1を回しています。
この体制の中で、マネジャーが背負うのは、売上管理だけではありません。我々は「組織文化の伝承・継承」「メンバー育成」「数字」の三つを、マネジャーの重要な役割として位置づけています。
流通営業部門は中途採用者がおらず、新卒入社の社員だけでつくってきた組織です。メンバーを育てること、そして大切にしてきた価値観や文化を次世代へつなぐことも、マネジャーの大切な仕事なのです。
この役割を担うための土台となるのが、部下との信頼関係です。同じことを言うにしても、信頼している上司の言葉と、そうでない上司の言葉とでは、部下への届き方がまるで違います。言葉が響く関係をつくるためには、1on1が欠かせません。

Q:流通営業部門では、1on1を段階的に広げてきたと伺いました。その過程は順調でしたか。
1on1をやらない管理職もいて、対話を組織に定着させることが課題だった
僕自身は2018年から1on1を始め、試行錯誤しながら自分なりのやり方を固めてきました。その後、営業所が増えていく中で、新任のチームマネジャーたちにも1on1の必要性ややり方を伝え、組織に広げていきました。
ところが、実施の頻度も中身も、なかなか揃いませんでした。チームマネジャーらは「1on1、やっています」と言うものの、詳しく聞くと、デスクで少し長めに業務の話をしただけだったり、食事に行ったことを1on1と捉えていたり。月1回の者もいれば、四半期に1回の者もいる。中にはやっていない者もいました。
これは問題だと思いました。業務中に問題が起きたときに背景を調べてみると、その上司と部下の間で普段から対話が十分にできていないケースが散見されたからです。
1on1ですべての問題を防げるわけではありませんが、日頃から対話を重ねていれば、事が大きくなる前に悪い兆しに気づくこともあるでしょう。何より、部下としっかり向き合ってきた中で問題が起きたのならば、私自身も納得できます。
だからこそ、1on1は希望者だけがやるのではなく、部門全体でやり続けることが必要だと考えています。
Q:2024年からはKakeaiを利用しています。その経緯を教えてください。
名古屋の現場から始まり、東京、関西と流通営業グループ全体に拡大
最初にKakeaiを使い始めたのは僕ではないんです。名古屋のチームマネジャーがKakeaiを申し込んで、名古屋の営業所で広がっていきました。
僕はその頃東京に赴任していましたが、Kakeaiの話を聞いて「これはいいな」と思い、東京の店舗が増えたタイミングで導入しました。その後、人事異動などを通じて関西にも知られるようになり、最終的に流通営業グループ全体へと広がっていきました。
導入に際しては、他のサービスとも比較しましたが、Kakeai以外は業務管理に近いものが多かった。私の中では1on1と業務管理は別物です。自分たちがやりたい1on1に一番合っていたのがKakeaiでした。

Kakeai導入後は、1on1の運用負荷がかなり減りました。
それまで日程調整は「いつやる?」と口頭で調整していましたが、今では部下が私のカレンダーを見て、空いてるところに自由に予定を入れてくれます。
準備の仕方も変わりました。以前は上司側が「今日は何を話そう」「どういう流れで進めよう」と、毎回テーマを考えていました。
今はメンバーが、Kakeaiで事前に話したいテーマを選びます。マネジャーは複数の部下と1on1をするので、一人ひとりに毎回テーマを用意するのは、かなりの負担です。そこを部下側に委ねられるようになったことで、ずいぶん楽になりました。
部下がテーマを選んでなかったときは、「テキトーに1on1に臨んでない?」と指摘することもあります(笑)。そうすると、次からちゃんと準備してくれます。
Q:1on1の組織定着という点で、Kakeaiは効果を発揮しましたか。
1on1の組織定着が加速した。加えて「カケアイ」が社内の共通言語になった
Kakeaiを導入して大きく変わったのは、「誰がやっていて、誰がやっていないか」が分かるようになったことです。私は冗談で、「1on1をやらん奴がバレる仕組み」と言っています(笑)。

「大事だからやってね」と言うだけでは、1on1は続きません。実施状況を可視化し、1on1の予定を入れてこない部下には、しっかり注意する。そういう積み重ねの中で、流通営業部門では、やっていない人がいると目立つほどに1on1が定着しています。
対話文化の浸透という意味では、面白い変化も起きています。社内で「カケアイ」という言葉が、自然に飛び交うようになったことです。
ツールを使っていなかった頃は、日常的に1on1のことを話題にする文化はありませんでした。今は「部下とのカケアイでこんな相談が出た」といった会話が自然に出てきます。1on1より「カケアイ」の方が口にしやすいのでしょうね。
共通言語ができたことが、対話を組織に根づかせるきっかけになったと思います。
Q:「週1回・30分」を1on1の運用方針としています。比較的高頻度ですが、その理由は?
メンバーの状態の変化を細かく観察するのに適した頻度だから
「週1回・30分」は、いろいろ試した末にたどり着いた形です。2週間に1回にしたり、15分や60分を試した上で、最終的にこの頻度と時間に落ち着きました。
私は、1on1は頻度が大事だと考えます。部下の状態は毎週変わるので、短いスパンで定点観測する必要があるためです。一度に長く話して次の週を飛ばすくらいなら、多少話し足りなくても「時間切れ、また来週」の方がいい。マネジャー陣には、「1on1では30分以上しゃべらないでほしい」と伝えています。
部下から突然「ちょっといいですか」と声をかけられる頃には、すでに結構重たい話になっていることもありますよね。月1回や2週間に1回では拾いきれない変化を、毎週話すことで拾っていく。そのための「週1回・30分」です。
Q:1on1では、どのようなテーマを話すことを推奨していますか。
日常業務では後回しになりがちな「急ぎではないけれど重要なこと」を話す
1on1を始めた頃から、急ぎではないけれど重要なことを話す場にしようと考えていました。
当社は普段からコミュニケーションが多い会社です。案件の進捗や接客の相談など、業務上必要なことは営業所の中で日常的に話しています。そうした話を場所だけ変えてやっているのでは意味がありません。

1on1では、目標の置き方や中長期的な課題への向き合い方、スキルアップ、本人が何を動機に働いているのかといった、普段の業務では後回しになりがちな話をしてほしいと思っています。中でも最近マネジャーに伝えているのは、「動機の握り合い」の重要性です。部下が何を大事にしていて、何を力に働いているのか。それは育成に欠かせない情報だからです。
とはいえ究極的には、信頼関係づくりにつながり、部下自身にとって意味のある時間になるのであれば、何を話してもいいと思っています。
私の場合、例えば20分ほどで話し終わったときには、残りの時間でKakeaiの「サイコロトーク」を使うこともあります。普段なら出てこない話題から、部下の考え方や価値観が見えてくることもありますから。
Q:1on1が組織に定着したことで、マネジャー陣に変化はありましたか。
A:現場の状況が見えやすくなり、育成について具体的に話せるようになった
私とグループマネジャーとの1on1では、彼らが見ている店長たちの話が中心になります。以前は漠然とした話になることも少なくありませんでしたが、今はグループマネジャーの方から、「直近のカケアイで○○店長からこういう話が出た。本人はこう考えているようだが、どう育成すればいいか」と、具体的な相談が上がってくるようになりました。
私自身が、すべての部下を直接見ることはできませんが、それぞれのマネジャーが部下の状態を把握して、それを私に相談してくれる。そこに私が答えることで、直接は会わないメンバーの育成にも関われるようになったことは大きな変化だと思います。

「話して終わり」にしないことも意識しています。例えば、グループマネジャーとの1on1で、彼らの組織課題が話題に上がることもあります。
そういうときは、その場で一緒に原因を掘り下げ、対策を考え、次の1on1までに実際に試せる具体的な一手まで落とし込みます。「次の定例会議では、部下にこう声をかけて、こういう進め方をしてみてください」といった具合です。
そして次の1on1で、やってみてどうだったかを聞く。そこからまた次の一手を考える。そうやって、一つのテーマを何カ月も追いかけていくこともあります。
対話を重ねながら、少しずつでも現場を前に進めていく。1on1は、そのための時間だとも思っています。
<日坂さんインタビュー>
Q:日々の1on1では、どのようなことを意識していますか。
店長の部下に対する理解が深まるような対話を心がけている
2025年から東京圏のグループマネジャーを務めています。現在は8店舗、8人の店長(チームマネジャー)が直属の部下です。私はそのうちの1店舗に常駐しており、残り7人の店長とは日常的に顔を合わせるわけではありません。各店舗の状況を把握するうえで、店長との1on1はとても重要な時間になっています。
1on1の時間は、10分程度を業務の話、残りの20分程度を育成の話に充てることが多いです。「このメンバーをどう見ているのか」「どんな声かけや育成が必要か」と、その店長の先にいるメンバーについて一緒に考えます。
私が8店舗すべてのメンバーを直接見ることには限界があります。だからこそ、店長がメンバーとの1on1で得た情報を共有してもらい、私もその人の状態を把握する。同時に、店長自身にも「自分はこの部下をどう見ているのか」を言葉にしてもらうことで、メンバーへの理解を深めてもらっています。

Q:現場のメンバーの状態を把握するうえで、気をつけていることはありますか。
店長が話題にしないメンバーについて、あえて尋ねる
1on1の場で名前が挙がりやすいのは、活躍している人か、問題を抱えている人です。目立った成果もトラブルもない人は、「特に問題はない」と判断され、話題に上らないことが珍しくありませんが、実際にそうとは限りません。本人の中では悩みが膨らんでいても、周りからは見えないまま、ということは起こり得ます。
だからこそ、しばらく名前を聞かないメンバーがいたら、私の方から「最近、○○さんの名前を聞かないけど、1on1ではどんな話をしているの?」と尋ねるようにしています。
そう聞かれた店長は、直近の1on1を思い返して答えてくれますし、その中に、気になる兆しが見つかることもあります。何か起きてから把握するのでは遅いので、その手前で気づくために意識してやっていることです。
Q:Kakeaiを導入して、1on1の進め方はどのように変わりましたか。
実施頻度が安定し、相手が話したいことを起点にする対話へ変わった
Kakeaiを導入する前から1on1はしていましたが、完全に我流でした。自分でスプレッドシートをつくり、「前回何を話したか」「次に何を伝えるか」を記録しながら進めていたんです。
ただ、仕事が忙しくなると後回しにしてしまい、継続が難しくなることもありました。話す内容も私自身が用意していたので、どうしても指示やアドバイスが中心になりがちでしたね。

Kakeaiを使い始めてからは、「週1回・30分」が習慣として定着しました。予定が先に入っているので、忙しさを理由に実施が見送られることはありません。
もう一つ大きいのが、部下自身が事前に話したいテーマを選べることです。部下が今どこに困っているのか、何を一緒に考えてほしいのかを起点に対話ができる。それによって、30分の使い方が大きく変わりました。
Q:8店舗をマネジメントするうえで、Kakeaiが役立っていることはありますか。
店長ごとの実施状況が見えるので、1on1が途切れそうなときに働きかけられる
特に役立っているのは、店長ごとの1on1の実施状況が見えることです。Kakeai上に「誰といつ実施したか」という記録が残るので、普段顔を合わせていない店長が、自分のメンバーと継続的に1on1をできているかどうかも把握できます。
滞っている店長がいれば、私から「週1回は入れるように」と声をかけています。私自身、8人の店長のうち半数以上とは、あらかじめ曜日と時間を固定してしまっています。空いた時間にやろうとすると、続かないので。
Q:1on1を続けることで、組織に変化はありましたか。
日常業務では表に出にくい悩みを拾い、組織の学びにつなげられるようになった
1on1を続けていると、「こういうことで困っている」「もっとスキルアップしたいけれど、どうすればいいか分からない」といった相談が出てきます。急ぎではないぶん、普段の業務の中では後回しになりがちな話です。
こうした悩みを把握できると、打てる手が広がります。私がすべて答えるのではなく、その分野を得意としている別の店長に話を聞いてもらう。同じ課題を抱える人が多ければ、勉強会を開く。
そうやって、一人の店長の悩みを、別の店長の経験や組織全体の学びにつなげられるようになりました。店長自身のスキルアップだけでなく、現場のマネジメントや営業活動の改善、ひいては売上にも少なからず寄与していると感じています。

Q:今後、1on1をどのように組織の育成につなげていきたいですか。
一人ひとりの店長が部下への深い理解を通じて育成できる環境を整えていく
今後は、1on1を「やらなければならないもの」ではなく、マネジメントの中で当たり前のものとして定着させたいと思っています。各店長には「自分の部下のことは自分が一番理解している」と言えるくらい、一人ひとりを見られるようになってほしいですね。
人によって、モチベーションも性格も、得意・不得意も違います。その違いを理解し、相手に合った育成ができる店長を増やしていくことが、私の役割だと思っています。
拠点が増えても、異動する人が増えても、属人的な経験や勘だけに頼らずに人を育てられる組織にしていくことが大きな目標です。





