■INTERACTION LAB.マネージャーに求められる役割とは

■INTERACTION LAB.マネージャーに求められる役割とは

Profile
■登壇者
株式会社インタラクションプロ 代表取締役
株式会社KAKEAIインタラクションラボ所長前アクセンチュア執行役員人事本部長
兼 グローバルHRマネジメントコミッティーメンバー
武井章敏 氏
■モデレーター
株式会社KAKEAI 取締役 共同創業者
皆川恵美
マネージャーに求められる役割とは
皆川:今回は「マネージャーに求められる役割とは。」ということについて皆さんとディスカッションしていきたいと思います。
武井さん、本日のテーマ解説をお願いします。
武井さん:今日は1on1についての締めくくりの回にできたらと思っております。
1on1の話の枠を越えて上司、リーダーのあり方というところまで踏み込んだ内容になるかもしれません。
そもそも1on1の価値を高めていくためにはリーダーがどういった役割を求められているのかというようなところを議論できたらと思っております。
皆川:KAKEAIでは1on1をマネジメントフローの中でも「人」の部分とりわけ「メンバーの情報把握」や「アサイン」「動機付け」などのために使っていくことをご案内することがあります。
今回は「マネジャーが全部抱え込んでいないか?」「マネジャーに全部任せていないか?」に要点を絞ってディスカッションを進めていきます。
武井さん:
実は「1on1がうまくいかないんです。」という相談をよくいただきます。
そういった企業には共通項があって、まさに今日の議題でもあるなんでもマネジャーに任せているという状況です。
よくコロナになったのでと聞きますが、実はコロナの前からマネジャーたちは大変な状況にあったということが浮き彫りになってきています。
その背景に何があるのかというと変化の激しい時代ということになるんじゃないかと思います。
自分の経験やノウハウがすぐに使えなくなってしまうという現状の中でメンバーと一緒に悩み考え答えを出し支援していくということが必要になってきています。
1on1がうまくいっていない企業の現状として、マネジャーの業務がメンバーの仕事の支援をする、悩みの相談を受ける、キャリアの支援をする、場合によっては、心身・健康上の悩みや家族の悩み、スキルの悩みをもったメンバーのケアをするなど多岐に渡っていることが多いです。
マネジャーが1人で抱え切れないほどのことを任せていないか、どうしたらマネジャーがメンバーに対して責任を果たせるかということに目を向けていけたらと思っています。
Q:マネジャーが全部抱え込んでいないか?
マネジャーAさん:会社は、マネージャー「任せている」という面はあると思います。私の場合は、自分の担当も持ちつつ、部下のケアもしつつという状況で、正直 「いっぱい、いっぱい」な時が続いているんですね。これをどう解決したらいいのか考えているのが、私が部下と1on1を行うのはもちろんですけど、私が上司の部長ともっと短期スパンで定期的に1on1をやっていければ良いと思っています。
現状は、そこまで 出来てないので、私がもっと働きかけて行かなくてはいけないとは思っています。時間の制約もあるとは思いますが、1番の要因は、やっぱり部長はマネージャーに任せたいと思ってるんですよね。その期待もある中で、しっかりと進めていく上では、解消したい考えのすれ違いはあるかもしれません。
Q:マネジャーに全部任せていないか?
部長Bさん:例えば、マネジメント対象となる人数は何人ぐらいが適正なのかなど、マネージャーに対しての適正なマネジメント負荷というのが非常に難しいところです。
弊社の場合マネージャー自身が、プレイヤーとして営業としての業績を出さなくてはいけないので、現場を知るという意味になっている点はあるものの、メンバースキル面の育成、アシスタント管理、チームとしての短期業績の構築、中長期での組織計画も任せている状況です。正直、任せすぎなのだろうなと思っているのですが、しかし、現在の上位職はその経験を経ていますし、メンバーの人数を減らしても「では他に誰がマネジメントするのか」という話になります。無理して任せても個人にも組織にも良いことになりませんので、解はまだ見出せていないというのが率直な状況です。
部長Cさん:今は、部長をやらせていただいていますが、皆さんのお話をお伺いしながら、課長時代の自分も振り返っていました。今の課長を見ていて、何が大変かと思ったときに、私の部署には4名のマネジャーがいますが、「任せてしまえば、どんどん進める方」「こまめに報告して、確認をする方」「若手管理職のため私がサポートしなければならない方」と全くタイプが異なります。
その中でも課長が一番困るのが「自分で決められない時」だと感じています。決められない時に、1番負担と時間、労力がかかっているのかなと。私としては、個々のタイプに応じて、その人に合わせて環境を作って整えることで、私も楽になりますし(笑)本人の成長にも繋がるのかなと考えています。私が任せる、ということは課長に任せるだけではなく、課長は係長や主任に任せる、主任はメンバーに任せるという流れになっていくと皆が楽になるし、良い経験ができるのではないかと。理想かもしれませんが、そのような任せる流れを作れたらと思っています。
事業部人事Dさん:私個人的には、まず構造的な問題があると思っています。会社によって違うとは思いますが、日本全体として役職に就くというキャリアパスにしか行きにくい状況にはあるのではないかと。もちろんノンマネジメントというキャリアパスは用意されていても基本的には「ない」という状況が歴史的にあるように思います。
当然、担当としてパフォーマンスを上げて評価された人が、課長や部長になるとメンタルモデルとしても「自分が部下より物事を知っていなきゃいけない」「仕事が出来ないといけない」という思い込みが当然発生します。良し悪しでは無く、むしろ責任感があるからこそ、「決して部下に恥ずかしい姿を見せられない」「部下に相談するなんて情けない」と抱え込まざるを得なくなっているというのが 実情だと思います。
弊社ではKAKEAIも使いながら、私も事業部人事としてデータも活用しながら後方支援をしています。データから「大変そうな状況になっていそうですけれど、大丈夫ですか」と声をかけサポートすることで マネジャー1人が全部やらなくても済むようにできればと考えています。分散型の支援策の構築とあのキャリアパスの多様化をやらないと構造的には解消できないような気がしています。
本社人事Eさん:皆さん任せられている部長さんや、素晴らしい事業部人事の活動だなと思って伺っていました。マネジャーは全部抱え込んでいないか?という質問に戻ると組織の上からもメンバーからも「マネジャーが悪い」という声が聞こえてくるので、おっしゃる通り抱え込んでいるのだろうなと感じています。本社人事では、ともすると「マネジメント力強化」などという恐ろしい言葉で出てきますが、「目的は強化ではなくて、支援」ではないかと。
最近、1on1をやっていて特に、ちゃんと任せられる人、成功循環モデルの関係の質を高めれば成果が上がると信じられる人というのは、ご自身もそうしてもらってきたという人が多いということを改めて感じています。そういった意味では、マネジャーが自分の役割をどう捉えるのかというのが、今日のテーマだと思いますが、マネジャーが成果を出すことは、もちろん大事です。しかし、「成果を出すために関係の質を作ることが自分のミッションだ」と思えるかどうかが、負の連鎖から抜け出す大事な鍵になるのではないかと思います。
ところが、マネジャーの中にも掘っても掘っても、原体験が出てこない方がやはりいますが、その方の中の何か一点を見出して、「自分が、成果を出すためにメンバーと関わってやっていくのだ」ということに気付いてもらうというような支援も必要かと思います。「そうは言っても成果でしょ」となりがちなマネジャーの意識も変えていかないと1on1の導入もうまくいかないので、任せていらっしゃる方の心持ちや経験をシェアしていくことも大切だと感じました。
〜今回のInteraction Labのまとめ〜
武井さんから皆さんへのメッセージ
第1回目に関係の質をまず高めて行いくというお話がありながらも「何のために関係の質を高めるのでしたっけ?」ということに立ち戻ると、それは「メンバーに考えてもらうため」。では、「メンバーに考えてもらえばいいんでしたっけ?」というと「いやいや、考えたら行動してもらわないといけませんよね」と。さらには、「行動するだけでいいのか?」というと「結果を出してもらわなくてはならない」と。組織の成功循環モデルは、非常によく出来たモデルですが、これを実践するときには、関係の質だけではなくて、いかにメンバーに考えてもらい、いかに行動して結果を出すかの一連で捉えていくことの重要性を改めて感じます。
この話をしていると山本五十六さんの顔がふっと頭に浮かびますが、関わり方、インタラクションの好循環を回していくということができれば、全メンバーが自ら考え行動し、そしてその結果の大小に関わらず、何らかアウトプットを出していくことができると思います。「今回は60点でした」ということであれば、「じゃあ、次は何点目指そうか」とサイクルを回していくということです。今日、エンパワーメントのお話をされた方もおられましたが、任せる循環を回していくことによって、そのメンバーの方が、次第に良い結果が生み出せ、経験・キャリアを積むことに繋がると有益なエンパワーメントになるのかと感じました。
このサイクルをうまく回されている企業では、様々なスキルや得意技を持った管理職の方を生かして、リソースをマルチな場面で活用されています。もちろん、皆さん忙しい中ではありますが、逆に全部抱え込む必要はなくて、自分の得意な領域で貢献して、会社全体で価値を生み出していくことができるのではないでしょうか。
あえて過激なことをお伝えすると、評価の高いメンバーには仕事をあえて頼まず、価値の高い仕事をしてもらう。よくあるケースが、仕事ができるメンバーに多くの仕事を依頼して仕事を回すものの本来の期待の価値が発揮できていないということです。マネジャーはそのメンバーに対しては支援を求められたときだけ対応すれば良いとする。では、マネジャーは一体何をするのかというと、困っているメンバーがたくさんいますよね。その方の育成支援にマネジャーは時間を使っていかないと、なかなか全体としてチームがうまく回っていきません。野球チームでも4番のピッチャーばかりに目をかけていてもチームは絶対に強くなりません。
環境変化の大きな時期には、メンバーの中に答えを求めるだけでも解決しないことも多々あります。だからこそ、マネジャー1人に任せっきりにしない仕組み、必要なときは誰かにできる相談できるような支援とメンバー本人の力の発揮の両方があってこそ個人と組織の進化があるのではないかと思います。
今後もこのようなセミナーを開催予定です。ご興味ご関心のある方は、ぜひ以下よりエントリーください
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