■INTERACTION LAB.「関わりの質を高める」1on1とは
株式会社インタラクションプロ 代表取締役
株式会社KAKEAIインタラクションラボ所長前アクセンチュア執行役員人事本部長
兼 グローバルHRマネジメントコミッティーメンバー
武井章敏 氏
■モデレーター
株式会社KAKEAI 取締役 共同創業者
皆川恵美
皆川:今回は「関わりの質を高める」1on1とはということについてディスカッションをしていきます。
皆さんの中には1on1を推進する立場の方や、実際にマネージャーとして1on1をする立場の方がいらっしゃると思いますので双方向のご意見を伺えればと思っております。
武井さん:いろんな企業さんから1on1のご相談をいただきますがこれこそが1on1だという定義は出来上がっていないと思っています。
「まずは話をすることから始めているんです」「業務での成果をより良いものにしたい」「1on1はキャリアとかに限定しているんです」「話す内容はペアに委ねている」と企業によって取り組み方は様々です。
どんな話をするにも上司が話そうと思っていることや聞きたいと思っていることと、部下が話したいと思っていることや聞いてほしいと思っていることが噛み合っていないと1on1の時間がうまく機能しないかと思います。
1on1が有益になるようなルール決めや工夫についてアイディアを出し合う時間にしていけたらと思っています。
皆川:ここからは、参加いただいている皆さんとのディスカッション形式で進めてまいります。
Q:どのような目的で1on1をやっているのか?(どんな背景があるのか)
Aさん:マネジメント教育を担当している中で、全社導入を睨み300名程度で規模感で1on1にトライアルとして取り組んでいる。目的当初は、2つあり、1つ目として「信頼関係の構築」を1段階目とした。「コロナ禍で毀損されている面もある」という現場の声もあり、関係をもう一度作ろうということを挙げた。その上での成長支援。会話の質を高めていこうという2階段で説明している。
元々は新卒の多い組織であったが、キャリア入社が増え、コロナ禍の中であまり会ったことのない新人もいる。多様な働き方に対応する意味でも、職場でのコミュニケーションではない上司部下の関係性を作る上でも1on1の意義を感じている。
Bさん:4月にマネジャーに昇格し、KAKEAIも使いながらメンバーと週1回1on1を継続している。悩んでいるのは、会社から号令はかかったものの浸透していない中で、最近、管理職向けに実施ガイドが提示された。そこでは、「1on1でやることはメンバーの信頼関係の構築と成長支援、それから目標達成の支援と行動管理」とあった。
月1回の1on1で全てをやるのはすごく、難しいと感じた。上位職からのメッセージとしては「目標を管理する」というトーンが強いと受け止めている。
そこで、その補足として現場起点のガイドラインを作ろうとしている。もちろん、提示されたガイドで伝えたいことはわかるが、すごくレベルが高いことをやっていて、目標達成を1on1でやるというのは結構難しい。
結果的に1on1 が目標を管理する場にならないように、目的を分けたいと考えている。そこで、メンバーが自由にテーマ設定し、成長支援のための「コミュニケーション1on1」と目標の設定と振り返りの「リフレクション1on1」と2つに分けてあえて名前を変えて別で実施していようとしている。
自分の一存では、なかなか進められないこともあるが、何か現場からチャレンジしたいと思っている。
Cさん:ガテン系の仕事の中で現場長の厳しい言葉に耐えられず、若手が定着しない中で1on1が1つの打ち手になるのではないかということで関心を持った。上長側も「自分も教えてもらっていない」「背中を見てやってくれないと、教え方がわからない」という上司の声もある。理想ではあるが、1on1のような一見手間でも関係の構築していくことによって何とかしていきたい。
しかし、なかなか現場ではやりきれていないのが現状ではある。1回、2回やって続かないという状況だった。そこで、皆さんでできなくても、まずは私自身が1人でも継続してやっていいき突き詰めてやり切るしかないと思っている。その中で、関わった人がどのような変容をしたのかを現場に伝えることで次の手が打てるのではないかと考えている。
実感をとして思っているのは、対話に抵抗感を持っている人の底上げというのはとても難しい。とにかく、1人一人の声を吸い上げることによってこそ、次の手が見つかるのかなと思っている。直属ではなく、斜めならできるのではないかなど1つの成功例を作るために頑張っている状況です。
Dさん:型は準備していないが、業績構築や目標達成のために1on1ではなく「自己実現や自己改善」「人として、どうなりたいのか」「どんな影響力を発揮してどうなりたいのか」など能力開発面に特化した場としている。
メンバーが「何を目指しているのか」「この半年で何をやっていくか」を要素分解して、「半年後にこうなったら良い」「毎月うまくいっている点や詰まっている点」を1on1で棚卸ししている。
気持ちの問題なのか、何かスキルなのか、人間関係なのか、どこで詰まっているのかを整理して、前進している感覚をもってもらえるように進めている。1ヶ月のスモールステップを設定して、次回で振り返り、残りの余白を埋めるために何をするのかを繰り返している。コロナ禍での不安、悩みを何でも話してOKという場としている。
今後の課題でいくと聞くことはできているが、「経営層の考えが分からない」「方向性がわからない」という声が出てきているので、こちらから敢えて語る場を作っていくことも課題だと認識している。
Q:目指す1on1や1on1の型をどのように提示しているか?
Aさん:型という意味では、現状、「上司と話ができている人」と「普段上司と話ができていない人」とではかなり状態が異なることがわかってきた。上司との距離感を感じている人は、そもそも話をしたくない人もいる。
メンバー向けに上司と話をすることの意味合いやメリットを感じてもらう対話型のワークショップも実施した。2回目以降の話す内容が浮かばないという人も出てきたので、KAKEAIのトピックの選択肢に沿って話す対話ガイドを作った。
メンバーが1on1で話すテーマで考えを深めるための考え方、フレームワークを用意してメンバー側が準備しやすいためのサポートツールを作ってみた。喜ばれている面もありつつ、メンバーが自律的に考えてくれるためのジレンマを感じている状況ではある。最低月1回という目安を示しているが、週一でやる方もいれば、月1回でも多いという方もいる。
Q:やってよかったなという成功事例、大規模でのトライアルでの難しい点などは?
Aさん:人事として導入してすごいなと思ったのは、とある部門長から「部下に関わるスタンスが変わった」とおっしゃった方がいた。「意外と考えている」、「こういうことは飲み会でも聞けないという話が聞けた」などの声があった。部下に対するリスペクトが出てきて、聞く耳も持つことで、メンバーが元気になった部門も出てきていている。そこまで変化していくのかという部門が本当に出たのは驚きとして良かった。
人事としては、傾聴やコーチングをスキルとしてやって欲しいわけではなくマネジメントの意識変革をすることが裏の狙いでもある。「若手ってこんな考えているのか」、「現場の知恵を生かすともっといい仕事ができる」という意識変革が起きる期待があったが、模索する中で良い事例が出てきた。
課題は、コミュニケーションを取れていないところに1on1という施策を入れてもうまくいかない。何か有効な1クッションが必要だが、そこを見出していく必要があると考えている。
・回数頻度は、メンバーと1on1を何の目的にしているかによって、週1かもしれないし、月1かもしれない。テーマによっては、「このテーマは四半期1回話そう」「このテーマは月1回話そう」など話す頻度も増えていくのではないかと思います。予めこのテーマをどう話すのかをイメージしておけば、「今日はこれだよね」といって始めるとただ1時間経ってしまったということもなくなるはずです。話す内容と目的で、頻度は必然的に決まってくるのではないでしょうか。
・本日シェアいただいた中で、「変容を実感した」というお話もありました。今までどうして1on1をしなくても良かったのかというと、変化の少ない時代は、「それほど話をしなくてもお互いの変化に気づける」「なんとなく耳に入ってくる情報で判断がついた」など暗黙知が相互に効いていたからだと思います。
・また、経験者採用やビジネスの変化の激しさ、マーケットの状況が変わりやすいという中で、仕事が変われば、感情や思い、身体感覚も変わっていきます。そうなると「改めて話さないとわからない」など今までわかっていたものが、わからなくなっている。「あぁ、そうだったのか」「そんな風に見方が変わっていたのか」「今は、将来の目標がこう変化したのか」「身につけたいスキルが変わってきた」「家庭内の問題が生じ始めたなど」目に見えない部分、逆にいえば氷山の大部分の見えないところを共有していくことから始めていくと、その先に、マネジメントやメンバーの変容が生じていくのではないかと感じました。そのためにも何のために行うのかという1on1の「意図」を持って話をするのが成功への第一歩ではないかと思います。
・また、現場として取り組み方を見つけていくという素晴らしいと思いますし、現場からのQ&Aが上がってきて、人事がどう回答したのか、現場はどう対応したのかなどを様々なケースを共有しながら、自分はどうするのかを考える材料を提供・還流していくことがベストではないかと思います。
今後もこのようなセミナーを開催予定です。ご興味ご関心のある方は、ぜひ以下よりエントリーください