一人ひとりを深く知る特別な時間 1on1が結果を生む
Profile
三井住友DSアセットマネジメント 執行役員 シンガポール現地法人担当
Sumitomo Mitsui DS Asset Management(Singapore)Pte.Ltd. CEO
久米隆史さん
Q:マネジメントにおいて、1対1の対話をどのように捉えていらっしゃいますか?
マネジメントの前提。一人ひとりを深く知る特別な時間
マネジメントにおいては「従業員の方の能力を活かしていくこと」が非常に大事な仕事の1つです。従業員の方々が「何ができるのか」「何をやりたいと考えるのか」を今と将来の視点で把握していくこと。そして、力を発揮する環境を整えて、その中で適切な業務を担当してもらうこと。「今の仕事は、あなたのこういう目標に対して役に立つから」という動機付けをしながら業務をアレンジしていくことが大事です。ですから、何よりも個人を知ることが重要です。特に日常業務ではなくて「これから先に、何をしたいのか」「今、取り組んでいることをどう思っているのか」をしっかり話すことが大切です。だからこそ、特別に用意した「この時間は、あなたのための時間」という場を持つことの意味は大きいと思います。
先のイメージを持つことによって、今の仕事が充実する
私は今、Sumitomo Mitsui DS Asset Management(Singapore)のCEOという立場ですが、この会社は2つの現地法人が2020年6月に合併してできた会社です。コロナの影響で社員が出社できない中でのスタートでしたから、積極的にメンバーとコミュニケーションを取らなければいけない状況でした。そのような背景もあって、KAKEAIの導入による1on1の開始は非常にタイミングが良かったのです。
当社は資産運用会社ですので、メンバーはアナリストやファンドマネジャーの運用フロントと「運用以外」に分かれますが、求められるアウトプットが明確で合併による変化が少ない運用フロントのメンバーとの面談は、現在は 半年に一度にとどめています。1on1は「運用以外」のミドルオフィスや総務経理、マーケティング、コンプライアンスのメンバーを中心に行っており、「この先、何をやっていきたいのか」「どういう知識、技術を得ていきたいのか」という話をするようにしています。やはり、先のイメージを持つことによって、今の仕事が充実してくると思いますので、同じような意識を従業員にも持ってもらえるように心掛けています。
Q:マネジメントを担う側として、メンバーの将来のイメージを率直に聞くことに躊躇される方もいるようです。久米さんは、メンバーのリクエストにどう対応されていますか?
約束できることを明確にすることで、信頼を積み重ねる
相手の将来のイメージを聞いていけば、当然、多様なリクエストが出てきます。それに対して、出来ることには 当然対応する。しかし、対応が難しいことは「できると約束はできない」と言うようにしています。その場しのぎの応答をしても、後で「言っていることと、やっていることが違う」となると、逆に信頼関係を毀損しかねません。結果にコミットできないことに対しては「約束できるのは、私が努力すること」と伝えています。
Q:シンガポールでは、ロックダウン以降、出社制限をされているというお話がありました。テレワークになって、マネジメントの難易度が上がっているとも言われます。久米さんはどのようにお感じでしょうか?
テレワークだからこそ、対話を通じて将来を見据えたマネジメントを
「今、どういう状態で仕事をしているのか?」つまり、その従業員が「1年後にどのくらいの戦力として育っていくのか」もしくは「嫌だと感じて辞めてしまいそうなのか」を管理できないと困ります。では、どうするのか?と言えば、特別なことはなく、コミュニケーションを取って対話していくことが唯一の道だと考えています。
テレワークでも、成果は管理できますが、「従業員がどういう気持ちで仕事をしていて、何がしたくて、何に困っているのか」という情報を得にくいことが、難しさにつながっているのではないでしょうか。席で軽く「あれ、どうなった?」と聞くことや、ランチを一緒に食べながら聞いていた話などの、普段の何気ないやり取りの中から得られていた情報は減っています。今、求められているアウトプットが出せていたとしも、その従業員が「やりがいが無くなってきたな」とか、「この辺りが不満だな」という声を捉えにくくなっています。
アウトプットの管理を行うという観点からは、難易度はあまり変わらないかもしれませんが、広い意味で難易度は上がったと思います。
Q.メンバーとの対話の中では、どのようなことを重視されていますか?
Yes. Yes. But, で聴く
話をするときに、相手が緊張しないように心掛けています。相手に緊張させずに柔らかく接しながら、「遠慮して言わない」ということがないように気をつけています。やはり、こちらの立場だけで緊張してしまう人もいます。相手の目線に合わせて話をしていくことで、心を開いてくれるようになっていくと思います。
例えば、あるスタッフの方は、最初「そんな!CEOと1対1で話をするなんて・・」という感じでした。今はすっかり打ち解けてきて、飼っている犬のことまで、わざわざ声をかけて話をしてくれるようになりました。そうなってくると、言いたいことが言えるようになります。最初は緊張していて壁があった人が、いろんな話をしにきてくれるようになったのは大きな進歩です。
怖い上司には、言いたいことを言えないですよね。引き出すというのは、壁を作らない、怖く思わせない、こんなこといったら何か言われないか?と思わせないということです。心掛けているのは、まず相手の話を聴くこと。私は生命保険会社の支社で社会人をスタートしましたが、入社1年目に上司から教えられた「Yes, Yes, But. で聴け」という言葉を今でも意識しています。「まずは全て受け止めて、その上で必要なら諭してゆく」。常にその姿勢でいることを心掛けています。
Q:もし、日本のメンバーと海外拠点のメンバーと対話をする際の違いや留意されていることがあればご教示ください。
メンバーの力を高めて、どう今の会社で活かしてもらえるか
日本では、「この会社でチーフになるために、課長になるために、部長になるために」という話が多いかもしれませんが、海外では転職も前提としたステップアップを考えている人ばかりです。ローカルスタッフとの対話では「気持ちよく仕事をしてもらって、会社に貢献してもらうこと」をより意識しています。
一方で、50代に近い方で新たに部下を持つことになった方もいます。本人自身が自分を高めていくために「目標設定としてどうなりたいか」というイメージを共有しながら「これから先の10年を考えたときに、このトレーニングを受けてみようか」など本人にとって役立てるようにしています。
また、最近チーフになったメンバーは非常に若いです。本人には、「リーダーとしての経験を積んでいくことが、人としての成長機会にもなる。ちょっと大変だとは思うけれど、挑戦していこう」という会話をしてリーダーとしてのスタートを切ってもらいました。その後は、毎月状況を共有しながらやっています。将来的にステップアップすることも想定はされますが、数年後を見ながら、今この会社で力を発揮してもらうために話をしています。
例えば、30代のあるメンバーは、給与水準だけで比較すれば、将来的に他社へ転職する可能性があります。対話する中で掴んだのは、本人が今求めているのは、できる限り広範な職務を経験するということでした。「運用会社で経験しておくべき業務について一通り経験をしたい、新しいことに挑戦したい」という本人の中のモチベーションも対話の中で分かっています。ですから、本人のやりたいことを踏まえて、新しい職務に挑戦できるような機会を与えるようにしています。
だからこそ、踏み込んで「将来はどうしたいのか」「どういう仕事を極めたいのか」「ステップアップをどのように将来的に実現していきたいか」を確認しながら、「今、うちの会社でできることは、こういうことだよね」ということを話すようにしています。
シンガポールの現地法人では、当然シンガポール人の方々も働いています。年齢にもよりますが、若手の従業員は、ずっとこの会社で働いていることを前提としている確率は低いです。マネジメント側である私たちが考えなければならないのは「メンバーに成長してもらいながら、この会社のために頑張りたい」と思える環境をいかに創り出すかです。当然、私の立場では、できるだけ長くこの会社で活躍してほしいです。怖いのは突然に「辞めたい」と言われてしまう状況です。
Q:最後に、経営や事業運営の視点で対話の重要性をどのように捉えていらっしゃるかを教えてください。
ピープルマネジメント、1対1の対話が結果を生む
東京で運用のフロントメンバーと仕事をしていたときには、「わざわざ、対話の時間をとる必要があるのか」と思っていた面もありました。しかし、シンガポールでミドルオフィスやバックオフィスのメンバーと話をしていく中で、改めてその重要性を認識しました。今後はフロントのメンバーとの対話の時間も増やしていきたいと思っています。
その環境とは物理的な物だけではなくて精神的なものが大きいですから、ピープルマネジメントが結果を生みます。ですから、相手をよく知り、何を考えているのかを知る1対1の対話は重要な機会です。
ピープルマネジメントは、経営・事業の根幹だと考えています。成果を出してくれるのは、人です。従業員の皆さんが持っている力をしっかり発揮してくれることが大事です。もっと言えば、成果を出している人が辞めてしまえば、会社にとっての損失になります。成果を出せる人にもっと成果を出せるような環境を提供し続けていかなくてはなりません。
一人ひとりを深く知る特別な時間 1on1が結果を生む
Profile
三井住友DSアセットマネジメント 執行役員 シンガポール現地法人担当
Sumitomo Mitsui DS Asset Management(Singapore)Pte.Ltd. CEO
久米隆史さん
Q:マネジメントにおいて、1対1の対話をどのように捉えていらっしゃいますか?
先のイメージを持つことによって、今の仕事が充実する
当社は資産運用会社ですので、メンバーはアナリストやファンドマネジャーの運用フロントと「運用以外」に分かれますが、求められるアウトプットが明確で合併による変化が少ない運用フロントのメンバーとの面談は、現在は 半年に一度にとどめています。1on1は「運用以外」のミドルオフィスや総務経理、マーケティング、コンプライアンスのメンバーを中心に行っており、「この先、何をやっていきたいのか」「どういう知識、技術を得ていきたいのか」という話をするようにしています。やはり、先のイメージを持つことによって、今の仕事が充実してくると思いますので、同じような意識を従業員にも持ってもらえるように心掛けています。
私は今、Sumitomo Mitsui DS Asset Management(Singapore)のCEOという立場ですが、この会社は2つの現地法人が2020年6月に合併してできた会社です。コロナの影響で社員が出社できない中でのスタートでしたから、積極的にメンバーとコミュニケーションを取らなければいけない状況でした。そのような背景もあって、KAKEAIの導入による1on1の開始は非常にタイミングが良かったのです。
マネジメントの前提。一人ひとりを深く知る特別な時間
ですから、何よりも個人を知ることが重要です。特に日常業務ではなくて「これから先に、何をしたいのか」「今、取り組んでいることをどう思っているのか」をしっかり話すことが大切です。だからこそ、特別に用意した「この時間は、あなたのための時間」という場を持つことの意味は大きいと思います。
マネジメントにおいては「従業員の方の能力を活かしていくこと」が非常に大事な仕事の1つです。従業員の方々が「何ができるのか」「何をやりたいと考えるのか」を今と将来の視点で把握していくこと。そして、力を発揮する環境を整えて、その中で適切な業務を担当してもらうこと。「今の仕事は、あなたのこういう目標に対して役に立つから」という動機付けをしながら業務をアレンジしていくことが大事です。
Q:マネジメントを担う側として、メンバーの将来のイメージを率直に聞くことに躊躇される方もいるようです。久米さんは、メンバーのリクエストにどう対応されていますか?
約束できることを明確にすることで、信頼を積み重ねる
相手の将来のイメージを聞いていけば、当然、多様なリクエストが出てきます。それに対して、出来ることには 当然対応する。しかし、対応が難しいことは「できると約束はできない」と言うようにしています。その場しのぎの応答をしても、後で「言っていることと、やっていることが違う」となると、逆に信頼関係を毀損しかねません。結果にコミットできないことに対しては「約束できるのは、私が努力すること」と伝えています。
Q:シンガポールでは、ロックダウン以降、出社制限をされているというお話がありました。テレワークになって、マネジメントの難易度が上がっているとも言われます。久米さんはどのようにお感じでしょうか?
テレワークだからこそ、対話を通じて将来を見据えたマネジメントを
「今、どういう状態で仕事をしているのか?」つまり、その従業員が「1年後にどのくらいの戦力として育っていくのか」もしくは「嫌だと感じて辞めてしまいそうなのか」を管理できないと困ります。では、どうするのか?と言えば、特別なことはなく、コミュニケーションを取って対話していくことが唯一の道だと考えています。
テレワークでも、成果は管理できますが、「従業員がどういう気持ちで仕事をしていて、何がしたくて、何に困っているのか」という情報を得にくいことが、難しさにつながっているのではないでしょうか。席で軽く「あれ、どうなった?」と聞くことや、ランチを一緒に食べながら聞いていた話などの、普段の何気ないやり取りの中から得られていた情報は減っています。今、求められているアウトプットが出せていたとしも、その従業員が「やりがいが無くなってきたな」とか、「この辺りが不満だな」という声を捉えにくくなっています。
アウトプットの管理を行うという観点からは、難易度はあまり変わらないかもしれませんが、広い意味で難易度は上がったと思います。
Q.メンバーとの対話の中では、どのようなことを重視されていますか?
Yes. Yes. But, で聴く
怖い上司には、言いたいことを言えないですよね。引き出すというのは、壁を作らない、怖く思わせない、こんなこといったら何か言われないか?と思わせないということです。心掛けているのは、まず相手の話を聴くこと。私は生命保険会社の支社で社会人をスタートしましたが、入社1年目に上司から教えられた「Yes, Yes, But. で聴け」という言葉を今でも意識しています。「まずは全て受け止めて、その上で必要なら諭してゆく」。常にその姿勢でいることを心掛けています。
例えば、あるスタッフの方は、最初「そんな!CEOと1対1で話をするなんて・・」という感じでした。今はすっかり打ち解けてきて、飼っている犬のことまで、わざわざ声をかけて話をしてくれるようになりました。そうなってくると、言いたいことが言えるようになります。最初は緊張していて壁があった人が、いろんな話をしにきてくれるようになったのは大きな進歩です。
話をするときに、相手が緊張しないように心掛けています。相手に緊張させずに柔らかく接しながら、「遠慮して言わない」ということがないように気をつけています。やはり、こちらの立場だけで緊張してしまう人もいます。相手の目線に合わせて話をしていくことで、心を開いてくれるようになっていくと思います。
Q:もし、日本のメンバーと海外拠点のメンバーと対話をする際の違いや留意されていることがあればご教示ください。
メンバーの力を高めて、どう今の会社で活かしてもらえるか
日本では、「この会社でチーフになるために、課長になるために、部長になるために」という話が多いかもしれませんが、海外では転職も前提としたステップアップを考えている人ばかりです。ローカルスタッフとの対話では「気持ちよく仕事をしてもらって、会社に貢献してもらうこと」をより意識しています。
一方で、50代に近い方で新たに部下を持つことになった方もいます。本人自身が自分を高めていくために「目標設定としてどうなりたいか」というイメージを共有しながら「これから先の10年を考えたときに、このトレーニングを受けてみようか」など本人にとって役立てるようにしています。
また、最近チーフになったメンバーは非常に若いです。本人には、「リーダーとしての経験を積んでいくことが、人としての成長機会にもなる。ちょっと大変だとは思うけれど、挑戦していこう」という会話をしてリーダーとしてのスタートを切ってもらいました。その後は、毎月状況を共有しながらやっています。将来的にステップアップすることも想定はされますが、数年後を見ながら、今この会社で力を発揮してもらうために話をしています。
例えば、30代のあるメンバーは、給与水準だけで比較すれば、将来的に他社へ転職する可能性があります。対話する中で掴んだのは、本人が今求めているのは、できる限り広範な職務を経験するということでした。「運用会社で経験しておくべき業務について一通り経験をしたい、新しいことに挑戦したい」という本人の中のモチベーションも対話の中で分かっています。ですから、本人のやりたいことを踏まえて、新しい職務に挑戦できるような機会を与えるようにしています。
だからこそ、踏み込んで「将来はどうしたいのか」「どういう仕事を極めたいのか」「ステップアップをどのように将来的に実現していきたいか」を確認しながら、「今、うちの会社でできることは、こういうことだよね」ということを話すようにしています。
シンガポールの現地法人では、当然シンガポール人の方々も働いています。年齢にもよりますが、若手の従業員は、ずっとこの会社で働いていることを前提としている確率は低いです。マネジメント側である私たちが考えなければならないのは「メンバーに成長してもらいながら、この会社のために頑張りたい」と思える環境をいかに創り出すかです。当然、私の立場では、できるだけ長くこの会社で活躍してほしいです。怖いのは突然に「辞めたい」と言われてしまう状況です。
Q:最後に、経営や事業運営の視点で対話の重要性をどのように捉えていらっしゃるかを教えてください。
ピープルマネジメント、1対1の対話が結果を生む
東京で運用のフロントメンバーと仕事をしていたときには、「わざわざ、対話の時間をとる必要があるのか」と思っていた面もありました。しかし、シンガポールでミドルオフィスやバックオフィスのメンバーと話をしていく中で、改めてその重要性を認識しました。今後はフロントのメンバーとの対話の時間も増やしていきたいと思っています。
その環境とは物理的な物だけではなくて精神的なものが大きいですから、ピープルマネジメントが結果を生みます。ですから、相手をよく知り、何を考えているのかを知る1対1の対話は重要な機会です。
ピープルマネジメントは、経営・事業の根幹だと考えています。成果を出してくれるのは、人です。従業員の皆さんが持っている力をしっかり発揮してくれることが大事です。もっと言えば、成果を出している人が辞めてしまえば、会社にとっての損失になります。成果を出せる人にもっと成果を出せるような環境を提供し続けていかなくてはなりません。