1on1を通じて2人で新しい解を見出す。その経験が営業力や商談力の向上に繋がる

住友商事株式会社
モビリティ事業第二本部長 北原 顕さん

Q:1on1の必要性を感じたきっかけを教えてください。
メンバーの皆さんの状況について手触り感をもって把握したい

  コロナによるWork from homeがスタートした当初、私は部長職でしたが、「直接顔を合わせる機会が急激に少なくなったことで、メンバーの皆さんの状況や気持ちが把握しにくくなった」という実感がありました。
ちょうどその頃、人事部主催の研修でテレワーク環境にどう向き合うべきかを学ぶ機会があり、1on1が効果的だと知りました。まずは自分の部署(約50人)で始めてみると、飲み会等でもなかなか聞けなかった話や知らなかった皆さんの一面を把握することができました。成果を出し皆さんの成長機会を作っていくためにも、組織として1on1を積極的にやっていきたいと思い、今に至っています。

Q:1on1を通じてどのような組織を目指されていますか。
「自分がやってみたい仕事を掴みにいく」Job for jobを実践しよう

  本部の目標として昨年から「業務の再定義」と「キャリアの再設計」を掲げています。中でも特に重要なのが「キャリアの再設計」です。「キャリアの再設計」の意味することは、一人ひとりが「いつ、どのような仕事に取り組みたいかを具体的にイメージし、それを上司と共有しながら一緒に考え、そのために今の仕事を活かしていくこと」です。

  住友商事では2年前からPay for job/Pay for performanceの考え方が導入されていますが、Pay for jobの本質は、Job for jobだと私は考えています。成果に応じて報酬があるのではなく、今の仕事の成果に対する報酬は「次のもっと面白い仕事!」という意味合いです。今の仕事を通じてレベルアップしていきながら、徐々に自分のやりたい仕事に繋がっていくというJob for jobの考えをぜひ皆さんにもしっかり受け止めていただきたいです。

  当然ながら、事業環境や組織状態の変化もありますが、そうした中でも自分が面白いと感じる仕事を掴みにいくことを意識してほしいですね。「自分がやってみたい仕事を掴みにいく」というサイクルが当たり前の状態こそJob for jobであり、住友商事のあるべき姿だと思います。

Q:1on1で特に対話を深めてほしいトピックは何ですか。
お互いが向き合って話し合う「対話」を通じてキャリアの再設計を

  私が若い頃は「業務は天から降りてくる」もの。自分の意志など上司に伝えようものなら・・・というのが一般的な感覚でした。しかし、今はそんな時代ではありません。組織として、今ここで働く皆さんが何を目指し実現したいのかを受け止めることが組織と個人の成長において非常に重要になっています。

  だからこそ、1on1ではキャリアについてしっかり話をしてもらいたい。
去年の10月に社員の皆さんが書いたキャリアアセスメントを読ませていただきましたが、明確に書けている人は全体の2-3割だと感じました。「海外で働きたい」「経営に携わりたい」といった抽象度では曖昧すぎて、対話が進みにくく、効果的な1on1は難しいですよね。

  例えば「○○グループ会社の●●さんが担っている仕事を、□年■月までに自分がやってみたい」といったレベルで明確にすると、自分がその仕事をするには何が足りなくて、それ迄に今から何をすべきなのかについて深めることができます。

  1on1でこうした世界観を作るのは、言葉を双方でやりとりする「会話」ではなく、お互いが向き合って話し合う「対話」です。1on1を通じて上司と対話をしながら、「いつまでに、どのような仕事ができるようになりたいのか」「そのために現状とどのようなギャップがあるのか」「そのギャップを埋めるために何を意識し、日々行動していくのか」をより明確にすることを期待しています。また、この世界観は1回の1on1では絶対に作れません。キャリアの再設計を1つの対話の機会として捉えて、1on1を継続していってほしいと思っています。

Q:ご自身として1on1で意識していることはありますか。
問い掛けず、うなずきながら、相手に話してもらい対話を深める

  1on1は部下側が話したいことを喋ってもらう場なので、自分から話さないようにしています。黙っていると「圧が強い」と感じさせることも多いようで、難しいですけどね(笑)

  こちらから質問をすると相手の意見を誘導してしまうので、「ふーん、なるほど。そうだよね」といってうなずきながら、相手に話してもらうようにしています。

  上司の皆さんは、もしかしたら相手のことを知ろうと、質問し過ぎているところがあるかもしれません。これは、一生懸命向き合おうとするからこそ起こり得ます。時々、部下側の気持ちを経験してみると、自然とアプローチが変わってくるはずです。

  ただ、特に長年一緒に働いているメンバーや、普段は喧々諤々の議論をしている相手に対して、「ふーん、なるほど。そうだよね」と返してしまうと、相手もびっくりし、お互い恥ずかしくなってしまいますので、年上の部下の方や年代の近い方とは自然体で話す方がよい場合もあるかと思います。

  最初は恥ずかしいと思いますが、徐々に慣れて乗り越えることで、1on1の楽しさに出会えるはずです。私も恥ずかしいと思う場面はありますが、「お互いに向き合って対話する」1on1の楽しさを知っているだけに、意識して1on1に臨んでいます。

  また、部下側も業務モードや普段の関係性から切り替えて1on1に臨むことが難しい場面があると思います。「3-5回に1回くらいは、上司からトピックを提案してほしい」という部下側の声もあると聞きました。たまには「今日は●●●の話をしようよ」と上司側から投げかけて、切り替えを促すことも、より対話を深める上で有効だと思います。

Q:1on1を通じて皆さんに体験してほしいことはありますか。
対話を通じて2人で新しい解を見出す。その経験が営業力や商談力の向上に繋がる

  部長・課長の皆さんからは「1on1によって部下の新たな一面に気付くことができた」等、前向きなフィードバックをもらっています。しかし、まだまだレベルアップしていけると思っています。

  私も上司として1on1をしている時に、対話が深まり、共感し合い、「うわー、来た!」と感じる瞬間があります。自分からあまり話していないのに、相手が何かを見出して、「頑張ります!」と言って、自律的に動き始め、そこから得た気付きを次回1on1で共有してくれます。

  これまでこうした瞬間を何度となく経験しましたが、そのときは純粋に楽しかったです。この瞬間を経験するためには、1on1を継続する必要がありますし、上司側から内省を促す技術も必要になります。部下側には内省を繰り返しながら、自分の本当にやりたいことを見つけてもらいたいと思っています。

  また、副次的な効果ですが、1on1を続けていると営業力・商談力が高まります。皆さんは様々なステークホルダーとの日々の円滑なコミュニケーション力は備わっていると思います。しかし、交渉や本気の商談の場面では、相手個人に対峙しきる力が求められます。相手との真剣勝負の折衝における土台を高めていくためにも、1on1を通じて自分自身と相手に向き合うことを意識すると良いと思います。

Q:社員個々人にどのようなことを期待されていますか。
志を持って、自分を主語にビジネスを動かそう

  年代や立場によらず、「自分の志を持つ」こと。幕末の思想家、佐藤一斎の言葉を借りれば、「志有る士は、利刃の如し」。
これに尽きます。ビジネスも自分のキャリアも、自ら切り開いて、自分を主語に考える癖を付けてほしいと思っています。

  ビジネスが複雑化し、関連部署・関係者が増えてはいますが、周囲に合わせてビジネスを進めている場面が多すぎると感じています。例えば「上位職○○さんの好みはこういうテイストだから、こんな情報を集めて、資料にまとめておこう」というような進め方です。これでは、他人が主語の仕事になってしまいます。

  「自分はこのビジネスをどうしたいのか」、「そのためには何が必要か」と自分を主語に考えて、動いて体感し、試行錯誤を積み重ねなければ個人の成長はありません。これは難しいことだとは思っていますが「カケル営業(話し掛ける、笑い掛ける、問い掛ける)」のように、自分からプロアクティブに働きかけて動いていけば、自ずと仕事が面白くなるはずです。皆さんの周囲で仕事を面白そうに感じていない人を思い浮かべると、自分が主語になっていないケースが多くないでしょうか。

  商社は士農工商の「商」に当たります。商社は何も持っていないので、自ら動かないと世の中から見捨てられる存在です。各々がバッターボックスに立つ機会をもっと増やせば、間違いなくまだまだ飛躍的に成長すると思っています。ぜひ志を持って、自分を主語にビジネスを動かしていってほしいですね。


※上記事例に記載された内容は、2023年12月取材当時のものです。閲覧時点では変更されている可能性があります。ご了承ください。