「人の集まり」ではなく、「組織」を創る
過去の否定も辞さない変革期だからこそ1on1が必要
パーソルクロステクノロジー株式会社
ITエンジニアリング本部
本部長 大久保さん
Q:御社の特徴を教えてください。
2023年1月、パーソルグループ内の3社が合併して設立された会社です。主にはIT領域、クロス領域、ものづくり領域の3つそれぞれをコンサルティング領域と掛け合わせながら、技術のプロフェッショナル集団として多種多様な領域の技術課題と向き合っています。グループビジョンである「はたらいて、笑おう。」をより体現すべく、グループ内における新たな事業収益の柱であるTechnology SBUの中核会社として位置付けられています。
Q:本部として1on1に取り組む背景を教えてください。
変革期において、マネジメント層へのサポートは十分なのか?
エンジニアを抱える組織特性を踏まえた体制は整えられているのか?
パーソルグループはM&Aや事業再編を繰り返しながら新たな事業・組織を創り続けてきた歴史があります。当社は特にその色が強く、例えば今年の4月から当本部内だけでもマネジャー職以上が20名ほど増えました。この変化のスピードは、現場からするとかなりの緊張感を持ちながら順応する必要があります。
こうした状況において部長・マネジャーを十分にサポートできているのか、という課題を常々感じていました。もちろんマネジャー登用前後には研修がありますが、その他のサポートは各本部に任されています。業績成長・組織運営・人材育成を担えるマネジャーへの成長を研修だけで担保することは難しいです。本部長が部長を、部長がマネジャーを、という付き添いの成長支援が必要な場面は必ず出てきます。その機会の1つとして1on1を活用できたらと思っています。
また、当本部はエンジニアが多く所属する組織です。基本的にはメンバーがお客様先に常駐して仕事を任せて頂いています。この環境ですと、上司・部下のコミュニケーションが限定的であったとしても仕事自体はある程度進んでいきます。ただ、それは「組織」というよりは単なる「人の集まり」です。私が過去に在籍していた営業組織と比べても、意図的に対話の機会を設けなければ組織の一員であるという認識が希薄化してしまうことを強く感じます。「人の集まり」では、いまの変革期を乗り越えることはできません。こうした背景からも、1on1の機会を重要視しています。
Q:事業・組織が大きく変わっている最中において、1on1に着目した経緯を教えてください。
1対1だから吐露できる不安がある。
それを共有するからこそ、正面から逃げずに変化に向き合える。
昨年の合併以来、組織を大きく変えながら事業を進めている中で、特に今年4月は多くの発信を本部内に行ってきました。「これまでと比べても大きな転換をしていく」といった趣旨の発信です。実際にマネジメント層とは、全体会議の中でそれなりに厳しいコミュニケーションを迫られる場面が少なからずありました。こうした発信・コミュニケーションを続ける中で、変化に対する不安は生まれるだろうと思っていましたし、だからこそ、一人ひとりと向き合って話し合う時間が必要でした。
KAKEAIさんとこれまでの1on1の実績を振り返る中で、組織が大きく変わった4月以降の私の1on1において「ほっとしました」という感想を部長・マネジャーから多く受け取っていることが分かりました。1on1の中では意識して不安に感じていることを聞いていたので、その結果だと思います。失敗してもいいよ、といったことも直接伝えていました。1対1だからこそ話せる不安を少しずつ解消することで、本気で対峙すべき場面において正面から逃げずにコミュニケーションを取ることができます。
また、私自身の経験も大きいかなと思います。パーソルという会社は人材ビジネスが根幹にあるため”人”を大切にしている会社です。そのため「自身が成長を実感した場面」について、これまで何度も考え、書き起こす機会がありました。その機会で振り返ってみると、その時の上司に「考えや視点を引き上げてもらった」「内省する時間を一緒に作ってくれた」ということが多くあり、場面としては1on1の時間でした。1on1には個々人のポテンシャルや可能性を変える力があると、こうした経験を経て実感しています。大きな変化が起こると受け身になりがちですが、この変化を自身の力に変えながら進んでいくための機会としても1on1を捉えています。
Q:こうした背景・経緯がある中で、Kakeaiをどのように活用しているか教えてください。
Kakeaiのデータから組織・個人の状態に対して仮説を立てることができる。
そこからマネジャー自身の内省機会を作るなど、次の一手の意思決定に繋がる。
Kakeaiのデータを見ながら、組織運営や部下との接し方を考える上で大変重宝しています。
当本部では1on1の対話内容を縛っていません。そのため、例えばこの方針・戦略を発信したとき、どのような対話が現場で行われているのか、またそれに対して部下がどのように感じているのか、といったことを可視化できたらいいなと思っていました。
また、統合を繰り返して組織が大きくなると多様なタレントが増えてきます。会社として、また私個人としても、個々のこだわりや想いは尊重したいと思っています。ただ、組織として同じ方向性で動くべきところは押さえる必要があります。1on1は足並み揃えて取り組む施策の1つです。
Kakeaiでは1on1のメモといった対話の内容までは見えませんが、例えば現場はどのようなテーマに関心があるのか、部下側がどれくらい満足して1on1を行っているのかを匿名で見ることができます。こうした組織内の対話の概要を見ていると、各部署や役職間で何に困っているのか仮説を立て、組織内のどこからどのような打ち手を取るべきかについて意思決定することができるため、とても助かっています。これは現場の上司・部下間でも同様です。
Q:最後に、1on1を通じて本部内一人ひとりのどのような姿を期待していますか?
「厳しさ」と「すこやかさ」 健全な振り幅が持てる上司・部下の関係性を。
1on1には大きく2つの目的を込めています。1つは、会社から期待している部署・個人のミッションに対してのズレや不足を相互認識すること。もう1つは、特に部下側の「すこやかさ」を確認することです。「すこやかさ」は健康状態、プライベートの状況、キャリア・成長に対する考え方などを指します。どちらの側面もあって初めて、当グループの理念である「はたらいて、笑おう。」に会社・個人が一体となって進める状態になります。1on1はその根底となる取り組みです。
綺麗ごとかもしれませんが、この目的の中で部下にとっての1番近くの理解者が上司となり、「遠くの親戚より近くの他人」のような関係性になれたら理想です。その関係性は業務の進捗管理だけでは作れません。それだけの1on1になるなら別途会議体を設けるべきです。
Kakeai導入以降、業績数字だけの会話から確実にテーマの幅が広がってきました。極論を言うと、自分が本当にやりたいことのために転職相談を上司とする、くらいの幅があっても正直良いと思っています。上司を信頼して幅広く話をしたいと部下が思える関係性が、1on1を通じてさらに増えることを期待しています。
また、語弊を恐れず言うと上司と部下が「仲良くなること」を求めているわけではありません。
上司としては、部下が悩んでいる時に「大変だね」で終わらせず、適切なアドバイスをしたり、時には厳しい言葉を掛けたりすることは必要です。関係性がない中だと厳しい言葉も響かないですよね。「この人が言うから頑張ってみよう」と部下側が思ってもらえる関係性の土台を1on1で作っていきたいと考えています。
※上記事例に記載された内容は、2024年7月取材当時のものです。閲覧時点では変更されている可能性があります。ご了承ください。