1on1を活用し、医療エラー防止へ。データによる検証を見据えた導入事例

業界:病院|従業員数:50名〜99名|導入目的:コミュニケーション機会の創出

神戸大学医学部附属病院 検査部
臨床検査技師長
今西 孝充 さん


業界課題:
・医療エラーの裏には、300件の軽微なミスが起こっていると言われている。また、軽微なミスの原因の一つに「コミュニケーション不足」も考えられる
・コロナ禍による様々な制約からコミュニケーションの場が減少

 

組織課題:
・上司側は「部下から相談がないから、問題ない」という意識が強い。部下側は「忙しそうで話しかけづらい」と感じている人が多く、コミュニケーションのきっかけが生まれにくい

 

解決策:
・コミュニケーションの機会および対話の質向上の場として1on1と『Kakeai』を導入
- 今後、1on1によるコミュニケーションの変化と医療エラーとの関連性等をデータ化し検証する予定

 

『Kakeai』を選んだ理由:
・インターフェースがとても見やすく、直感的に操作できる
・部下側が1on1でどのような対応を求めているかが分かるため、上司は「聞く姿勢」や「一緒に考えるスタンス」を身につけるきっかけになる


神戸大学医学部附属病院 検査部 臨床検査技師長である今西さんに、1on1支援ツール『Kakeai』の導入の背景や、目指す組織についてを伺いました。

ひとつの検査分野で一人前になるのに約10年。スキルが物を言う業界。

Q:検査部の役割や働き方について教えてください。

神戸大学医学部附属病院は、令和元年に創立150周年を迎えた病院です。
検査部は、約65年の歴史があり、現在65名の臨床検査技師が働いています

当院は大学病院なので、教育機関という意味合いも持っています。入職者の多くは有期雇用職員という形で任期があり、その期間中に数年ごとに異動しながら2つの検査分野に従事します。その後、無期雇用となった人は専門分野を絞りながら、40代後半までにはライフワークとする専門の検査領域を見つけてキャリアを形成していきます。
驚かれるかもしれませんが、一つの検査分野で一人前になるには約10年かかるとも言われています。検査機器の操作をマスターするのにはさほど時間を要しません。しかし、検査結果の数値を読む力や、検査結果を元に医師とディスカッションできるレベルになるまでは、相当な年数がかかります

こういったスキルを持った上司は、検査業務と同時に部下のマネジメントもしていかなければなりませんが、多くの上司は部下のマネジメントや部下育成に悩んでいます。その中で、上司と部下のコミュニケーションが重要になっている現在の医療現場において、このままでは多くの課題が生じると感じています。

コミュニケーション不足で起こる軽微なミスが、大きなトラブルにつながる

Q:現在の医療現場におけるコミュニケーションの重要性ついて教えてください。

1件の大きな医療事故の裏には、29件の小さな事故があり、さらにその背後には300件の軽微なミスがある(ハインリッヒの法則)と言われています。医療安全上では、重大なトラブルを防ぐためには、日々の軽微なミスを防ぐことが重要と言われています。そして、軽微なミスの背後には、システム的なエラーもありますが「人と人とのコミュニケーション」も原因の一つだと考えています。

そのような中で、現在の医療現場で、コミュニケーションがより重要視されているポイントを、一部ご紹介します。

 

・「チーム医療」体制によるコミュニケーション難易度の高さ
昔の医療では、臨床検査技師は検査だけをして結果を返せば良い、という形が一般的でした。しかし、現在は「チーム医療」が当たり前になっており、様々な医療従事者が協力し合い1人の患者さんと向き合うような体制に変化しています。チームである以上、他職種の方とのコミュニケーションが非常に重要になってきます。だからこそ、「伝わっているだろう」という思い込みを無くさなくてはなりません。「他人は私と同じ考えではないし、同じものを見ているわけじゃない」と気づく力が大切です。しかし、その気づく力は日頃のコミュニケーションを通してでしか磨けないと考えています。

 

・コロナ禍でのコミュニケーション制限
以前は、控室での雑談を通してコミュニケーションが生まれていました。ところがコロナ禍以降の約3年間、昼食も黙食で、業務以外の会話の機会は激減しました。また、現在も一定の会食制限がかかっています。医療従事者として当然の対応だとは思いますが、コミュニケーション不足を加速させている要因とも感じています。

「忙しそうで話しかけづらい」を解消する。気軽なコミュニケーションの場としての1on1

Q:1on1、そして『Kakeai』導入の経緯を教えてください。

医療の現場では、チームワークやコミュニケーションが不可欠です。関係性がよくない状態を放置していると、インシデントだけではなく、職員のメンタル不調に繋がります。

1on1を始める前に行った部内アンケートでは、
・50%の上司が「部下と気兼ねなく本音で会話できていない」
・60%の部下が「上司や同僚とは、仕事のことに限らず、お互いを深く理解するための時間を持てていない」と感じていました。

原因として、上司側は「部下から相談がないから、問題ない」、部下側は「上司が忙しそうで話しかけづらい」と感じている人が多いようです。気軽に相談できる機会を提供し、また「一人ひとりとの関係の質を良くしたい」という想いから、コミュニケーションをとる場として1on1の活用を始めました。

1on1の運用について、当初は紙での管理を考えていましたが、紙の記録では過去の内容がすぐに把握できません。そこで何か良いツールはないかと調べている中で『Kakeai』に出会いました。『Kakeai』はインターフェースがとても見やすく、取扱説明書がなくても、直感的に使えること、そして過去の内容の振り返りが容易であることが導入の決め手です。

 

医療現場において「医療スキルの高い人=その分野における上司」となる場合が多く、リーダーシップやマネジメントについて学ぶ機会がないまま、部下の育成や組織の成長を考える立場になってしまうので、不安を感じる人が多いです。だからこそ、上司側には1on1という場を通してマネジメントの基本である「聞く姿勢」や「一緒に考えるスタンス」を身につけてほしいです。『Kakeai』は、部下側が1on1でどのような対応を求めているか分かるため、上司の成長のきっかけになると感じています。

今後は、1on1によるコミュニケーションの変化と医療エラーとの関連性等をデータ化し検証していく予定です。


※上記事例に記載された内容は、2023年2月取材当時のものです。閲覧時点では変更されている可能性があります。ご了承ください。