人と知見を繋ぎ、個々人のポテンシャルを開花させる1on1を

独立行政法人 国際協力機構(JICA)
人事部 人事課長 川淵 貴代さん(中央)
人事部 山上 千秋さん(左) 竹村 雄一さん(右)

1.1on1に着目された背景を教えてください。

「信頼で世界をつなぐ」ために「信頼で組織をつなぐ」~心理的安全性を高めたい~

コロナ禍によるコミュニケーションの在り方の変化が、直接的なきっかけです。リモートワークが導入され、対面でのコミュニケーションが減りました。チャット等でいつでも連絡が取れるインフラは整っても、気軽にチャットできる関係性が出来ているとは限りません。すると分からないことがあっても聞くことを躊躇してしまう、そういう経験が多くの人に訪れました。そこで、最低限の心理的な安全性を高めていく必要性を認識しました

また、2021年度から人事制度改革に着手しました。世の中の不確実性が高まっていく中で、JICAの役割が求め続けられるために、一人ひとりのポテンシャルをいかに開花させていくかが大きな命題でした。メンバーの声を聞く機会も設けてきましたが、基本的な質問や業務以外の相談を同僚や上司に相談できず、自分で抱えている人が多いことを実感しました。JICAのビジョンは「信頼で世界をつなぐ」です。あらゆる国、あらゆる課題と日々向き合い、課題解決に向けて汗をかくことが我々の使命です。ただ、それを達成するために、もっと社内の人同士のつながりを作り、「信頼で組織をつなぐ」取り組みも必要だという原点に立ち返りました

ですから、1on1によって組織内の人の繋がりを強化し、業務に関係ある無しに関わらず、相談しやすい環境を作ることを狙いとしています。1on1で「お互いの人となり」がわかると、ちょっとした雑談から思いがけなく関係が深まることも、新しい業務のアイディアが生まれることもあります。

定期的な1on1を進めることで、コミュニケーションの質が向上し、チームワークの質にも、チームとして生み出すインパクトの増大にもつながると考えています。

2. 1on1の推進にどのような期待がありますか。

1on1で「信頼で組織をつないだ」、その先に、能動的に動く後押しを。

今回の人事制度改革の根幹に一人ひとりの「キャリア自律」を据えています。途上国の開発課題は多岐に渡り、また時々刻々と変化している時代です。従って、我々は常にアンテナを高くはり、時代の変化に臨機応変に対応していくことが求められます。ただ、情報過多のこの時代、自分の強みや自身のキャリアの軸は何か、見失いがちです。活躍している先輩や上司が「どのようなキャリアを歩み、どのようにスキルを身に付けたのか」を知り、自分のキャリアを見つめる。そういうロールモデルと縦・横・ナナメ問わず1on1を行うことで、一人ひとりが、受身の状態ではなく自分が何をしたいのか、そのためにどう成長したいのかを考えられることを目指しています。

今、組織内の公募ポストを増やしており、メンバーが「手を挙げてポストを獲得する」機会を拡充しています。仕事に対する向き合い方も「やらなきゃいけない」ではなく「これをやりたい、どう進めようか」という能動的な姿勢を醸成していきたいです。上司や先輩との1on1を通じてそのようなスタンスが培われ、上司側はその背中を後押しする。『Kakeai』は「成長を後押しする」組織文化を浸透させる仕掛けになると期待しています。

3.『Kakeai』を導入いただいた理由とご期待を教えてください。

対話の活性化と質の向上、そして管理職を手助けするプラットフォームに

「1on1をやりましょう」と発信するだけでは、多くの管理職は迷える子羊になりますし(笑)、何か管理職への支援を提供したいと思い、『Kakeai』の試験的導入を決めました。『Kakeai』は、仕掛けの多さが魅力的です。アイスブレイクやメモのリアルタイムの可視化は毎回の対話を活性化しますし、メモの履歴を蓄積できることも効率的な振り返りを手助けします。

1on1のTipsやすっきり度合いのフィードバックなどは、1on1の質の改善にもつながり、それは管理職の成長をも支援すると思っています。

4.1on1と組織の活性化に向けて今後の展開をどのように想定されていますか。

『Kakeai』をベースに一人一人のポテンシャルと知見をつなぐ

上司と部下という関係性での1on1は推進しつつ、部署の垣根を超えたメンターとメンティの関係が広まっていってほしいと思っています。JICAが向き合う国、人、課題は多種多様で、所属するメンバーも実に多様かつ多才です。それぞれが持つポテンシャルや知見、ネットワークが『Kakeai』をベースにつながり、広がっていったら組織は格段に活性化するでしょう。お互いがつながりやすくなるよう、JICA内における互いのキャリアの可視化を進めたり、1on1の好事例を組織内で共有することを通じて、1on1文化を醸成していきたいです。

また、JICAは96か国で様々な事業を推進している多種多様な組織です。各在外事務所では、言葉も文化も歩んできた歴史も違う現地スタッフと日本人スタッフがチームとなって、その国の課題解決に取り組んでいます。いわばJICAの業務の現場最前線なわけですが、そのような場において1on1を推奨すると、現地スタッフと日本人スタッフ、現地スタッフ同士のコミュニケーションの質や関係性がどのように変わっていくのかも見ていきたいと考えています。

※上記事例に記載された内容は取材当時のものです。