1on1は相手の考えを知る、これ以上ない機会
言葉にして伝え、お互いの理解を深めながら「熱量のある組織」を
日野自動車株式会社
TS統括部 部長
望月貴司さん
Q.日野自動車における人・組織の課題について、どのようにお考えですか?
「ぬるい雰囲気で熱量を帯びていない」私が考える今の日野自動車の大部分における人・組織の課題はこの一言に尽きます。ほとんどの部署で良好な人間関係が築けているからこそ、「成果や成長に向けた熱量を帯びている関係性」がこれからの日野自動車には必要だと考えています。
今の部署では2月の人事異動でほとんどの方と初対面。心理的安全性の確保を優先して取り組んできた結果、「居心地は良いが、熱量が低い職場」、いわゆる「ぬるい職場」になっている感覚があります。これは、エンゲージメントサーベイの結果をみても明らかで、また、この傾向は日野自動車全体の結果にも出ており、全社的な課題だと感じています。
もちろんこれは、マネジャー・メンバーだけの問題ではありません。
例えば、昨今メディアで言われているパワハラを気にして、マネジャーからメンバーに指導しにくい言葉を投げかけにくいこともあるでしょう。また、組織として対策が打てているかというと、不十分です。
・“ぬるい雰囲気”になった原因は具体的に何か?
・マネジャーからメンバーに、どのような気付きを与えたら良いのか?
・メンバーからは、マネジャーの何を引き出すべきなのか?
こうしたことを組織として明らかにし、「この雰囲気をどうすれば変えられるのか?」について指針や策を打ち出さないといけません。そのためには、いまの組織で何が起きているのかについて深く理解する必要があります。そこからマネジャー・メンバーそれぞれが何をすれば良いか?について、自分たちで考えて動けるよう、働きかけが必要だと感じています。
Q. 人・組織の課題解決に向けて、1on1 をどのように捉え、何を意識して実践されていますか?
1on1 は 4-5 年ほど続けていますが、部員全員との 1on1 は非常に意味があります。相手の考えを把握するためには、1on1 以上の機会はありません。
また、1on1 でこだわっているのは、相手からもらった要望やアクションに対して「絶対に無視をしない」「必ず何かを返す」ことです。これを繰り返すことで、最初は「イベント的に 1on1 が始まったな」と思われていても、徐々に色々な話をしてくれます。
あとは、業務報告をする場は 1on1 とは別に設けています。そうすることで、1on1 で普段話せないような話題に集中できます。ですが、1on1 において仕事の話を NG にしているわけではありません。自分のロールモデルや仕事を通じてやりたいこと等、業務報告の場で話しにくいトピックについては、仕事関連でも OK としています。
部員一人ひとりが何を考えているのかについて、私自身だけでなく組織全体でお互いに把握することで、組織として何が起きているのかが見えてきます。今の雰囲気を少しずつ変えていくためにも、1on1 は継続・推進していきたいと思います。
Q. どのような経験から 1on1 の重要性を感じるようになりましたか?
振り返ってみると、人間関係における過去の失敗経験からだと思います。
私は入社してから、バスやトラックなどのサスペンションの設計を 20 年ほど続けていました。そこで入社 2 年目頃から専属でついてくださった派遣社員の方に対して、自分の価値観/やり方を押し付ける、いわゆる“悪い上司”から自分のマネジメントキャリアはスタートしました。
そこで学んだことは、人と人なので価値観が合わない場面があるのは当たり前で、だからこそコミュニケーションが重要だということです。また、話したことに対して真摯にアクションを取らないと、本音は話してくれません。こうした失敗の中で、自分のマネジメントスタイルが形成されたと思います。
また、初めてプロパー社員を部下として持たせてもらったとき、当時の上司から「この人が困ったら 100%お前の責任だからな」とはっきり釘を刺されたことがあります。言葉で伝えられたことで、自分のマネジャーが何を考えて仕事をしていたかが分かり、自分の役割を改めて認識できたことも、大きな分岐点だったなと思いますね。
Q. Kakeai の 1on1 を始めて、これまでの 1on1 と変わったことはありますか?
15 分/1 回の 1on1 をしている中で、これまではアイスブレイクに 10 分くらい掛かっていました。
しかし、今はKakeaiで事前にトピック設定をしているので、最初から剛速球で本当に話したい話題に入れています。
トピックを事前設定することで、部下側の 1on1 に対する姿勢が変わったように感じます。例えば、前回の1on1 ではそんな素振りすらなかった方が、Kakeai導入後最初の 1on1 では「普段は言えなかったのですが、こんなことを考えていました。会社の改善について、こんな取り組みはどうですか?」と資料を用意して切り出してくれました。これはすごい変化ですよね。関連するグループ長を集めて打ち合わせをし、資料はこのまま提案をしようと考えています。こうした変化はすごく嬉しかったですね。
また、これまでも 1on1 はしていたので、話したいことは十分話せていると思っていました。ですが、例えば「将来について一緒に考えてほしい」といったことは、アイスブレイクからの繋がりがないと話しにくかったのかなと思います。Kakeaiは事前にトピックが並んでいるので、部下側が「こんなことも話して良いんだ」と気付き、これまで話せていなかった話題で盛り上がるようになっています。
Q. 最後に、自組織のマネジャーとメンバーに対する期待を教えてください
「自分の考えていることを言語化する」ことは、私自身も含めて組織全体の課題だと思っています。例えば、マネジャー側では、「背中を見て学びなさい」とメンバーに接する人がまだまだいます。また、メンバー側では「メールを入れているんだから何をして欲しいか感じ取ってほしい」と思っている人が多いです。言葉にすることで様々な場面のストレスが無くなりますよね。1on1 は言葉で自分の考えを相手に伝える良い機会です。練習と思って言語化することにチャレンジしていきたいです。
『1on1 はあくまで手段と捉えてください。1on1 を通じて目指すところは人間関係や組織の基盤を醸成することであり、それを土台とした「熱量のある関係性」の構築です。』と伝えています。マネジャー・メンバーに関わらず、この点を忘れないで1on1 に取り組んでいきたいですね。
※上記事例に記載された内容は、2024年1月取材当時のものです。閲覧時点では変更されている可能性があります。ご了承ください。