社員がいきいきと誇りを持って働き、お客様から感謝される顧客価値企業を目指す。研修・E-learning・KAKEAIを活用した1on1実践事例。

【1on1 Days イベントレポート】
8月3〜5日の3日間、1on1における現実の工夫や挑戦を共有するオンラインイベント、1on1 Daysを開催し、組織と一人ひとりの今とこれからに向き合う企業とマネジャーに登壇いただきました。
このセッションでは、「自律型人材への変化を促す1on1〜社内浸透策含めた5年間の実践知〜」をテーマに、リコージャパン株式会社 人財本部 人財開発室 共通教育グループ 兼 HR・EDTechサポートグループ リーダー 高須彰一 氏と1on1全社推進担当を担う大江薫 氏にご登壇いただきました。
Profile
ゲスト
リコージャパン株式会社
人財本部 人財開発室
共通教育グループ 兼 HR・EDTechサポートグループ リーダー 高須彰一 氏
1on1全社推進担当 大江薫 氏
モデレーター
皆川恵美
株式会社KAKEAI 取締役 共同創業者
Q:1on1対話強化の取り組みの背景とは?
高須氏:当社は、「社員がいきいきと誇りを持って働き、お客様から感謝される顧客価値企業」を目指しています。特に「明るく風通しの良い健全な職場(言いたいことが言えてやりたいことがやれる)」、「顧客起点で自ら考えチャレンジする風土」、「多様な人財が集まり活躍できる環境」、「自己成長を実感できるキャリア形成」といった観点で「社員がいきいきと誇りを持って働く」状態のためには、「人づくり」と「組織づくり」が必要になります。その状態の把握として、社員の満足度調査をエンゲージメントサーベイとして定期的に実施しています。
また、多様な社員が活き活きと働き、成長できる人事制度改革も進めてきました。多様な人々が自律的に活き活きと働き、チームとして結集して高い顧客価値を提供するには、「個人の力を引き出し、チーム力を高める変革・共創型のリーダーシップの強化」も求められます。そうした新しいリーダーシップの実戦のためにも1on1に着目をしました。
Q:2016年から5年間の1on1の展開の軌跡
皆川:リコージャパン様では、2016年からまずはSEの方から、そして全社へと1on1を拡大しながら推進されてきたと伺っています。この5年間どのように施策を展開してこられたのでしょうか?
大江氏:まず、2016年に体制変更を契機として本部長主体で1on1を推進することを決定しました。その翌年には、統括部門長クラス、組織職(部下を持つ管理職)層に1on1に特化した研修を実施しました。また、研修を行うだけではなかなか定着しにくいと考えたことから、1on1が当たり前の風土を情勢していくことを狙って1on1の実施回数を評価の対象としていくこととなりました。それによって組織全体にも1on1の重要性が浸透していったのではないかと考えています。ある一定の水準に達したと判断しましたので、2020年には、1on1の実施回数を組織職の評価から除外しました。
また、一方で1on1の質を高めていくには、組織職側のみにアプローチしているだけでは不十分だと考え、2020年からメンバー向けに1on1の目的の再周知や時間をどう活用してもらうのかという研修もスタートしています。そして、この年には、KAKEAIの試行もスタートしました。
高須氏:当社では、SE部門での展開の状況も把握しながら、全社展開での施策を設計してきました。例えば、メンバー向けの1on1研修は大江からの提案でしたが、全社での展開に向けてE-learningのコンテンツの準備を開始したのが、2020年あたりです。
大江氏:2021年に入ってからE-learningの第一弾を公開しましたが、「もっと手軽に学びたい」との声も受けて短縮版の第二弾も公開しました。全従業員がこのE-learningでいつでもどこでも隙間時間に学べる環境が整備できてきました。新任組織職(課長クラス)には、そのE-learning の受講に加えて、より実践的な内容をZoomを使って研修を行っております。
Q:全社取り組みの全体像は?
皆川:この5年間の中で、SEの皆さんの部署で試行をしながら、そこでの知見も活かして全社への展開を進めてこられたということですね。研修以外にも1on1の実施をサポートする情報をご提供されていると伺っています。具体的にはどのような内容を展開されているのでしょうか?
高須氏:社内の掲示板に1on1に関連した案内を出している他、ラーニングマネジメントシステムに学習コンテンツを展開しています。そのため、関心が高まった時にいつでも学習できる環境が整っています。弊社社長の坂主のメッセージや、人財本部長の山田のメッセージもいつでも閲覧できるようになっています。また、先ほどお話したE-learningのフルコンテンツ版と短縮版の動画も1つのサイトにまとまっているので、従業員も必要な情報を確認しやすいかと思います。
大江氏:また、Teams内に「1on1社員コミュニティ」を開設して、従業員同士で情報交換や勉強会、事例紹介や質問ができる場も用意しています。先日は、キックオフとしE-learningの動画を視聴した感想交換やその後の変化をシェアする時間もとりました。1on1をより良いものにしていきたいと考える人同士がつながる事で、自然と意識も高まっていくのではないかと期待しています。
Q:1on1支援ツールとしてのKAKEAIの有効性をどうお感じですか?
大江氏:私はメンバーとしてKAKEAIを使っていますが、まず1番に良いなと感じたのはメンバー側が事前に1on1で話したいトピックと相手に期待する対応を選べるところです。選ぶだけで事前準備が完結できるというのも利点ですし、改まって伝えにくいこともシステムを通じて先に上長に知らせることができるので実際の対話もスムーズに進んでいると感じています。
高須氏:弊社はテレワークを推奨していますので、まだ数回しか対面で会っていないメンバーもいますが、KAKEAIを使って1on1をやっています。画面共有しながら共同でメモが取れるので、メンバーが言っていることをひたすらメモに残しつつ、時々質問を入れています。メモがないと全ては覚えていられませんし、KAKEAI以外でやろうとすると管理も面倒ですし、履歴がずっと残っているのはいいですね。
気づいたところは後でアドバイスを送ったりして、1on1をやっている時はなるべく聞き役に徹するようにしています。メンバー側から「報告したい」とか「話を聞いてほしい」という対応が選ばれるのも参考になります。まだ共感領域が作れていないメンバーや新しいメンバーだと、一体何をテーマにするのかすごく関心があります。報告なのか、教えて欲しいのか、アドバイスが欲しいのか、求められている対応が分かることで心づもりができます。やはりメンバーがせっかく設定してくれたテーマから外れたらダメだと思います。上司としては、違う話をしたい時でもそこはぐっと我慢して、まずはメンバーが設定してくれたテーマの枠内で対話することは大切にしています。
Q:今後の展開のご想定を教えてください。
大江氏:弊社もこれまで5年間ほど1on1の取り組みを進めてきましたが、まだまだ発展途上だと思っています。ぜひ、他社の方とも今後も情報交換させていただきながら皆さんでより良い形を模索していければと思います。
高須氏:チームのパフォーマンスを高める要素は、チーム間での学習や相互の協力、目標の共通の要素などがありますが、ベースはコミュニケーションだと考えています。心理的な安全性が確保されて、心理的な対人不安なしに遠慮なく会話・議論できるコミュニケーションが土台となるようこれからも対話の質の向上に引き続き取り組んでいきたいと思います。