イベントレポート:東洋経済新報社セミナー基調講演
「DX時代に必要な人材マネジメントのあり方」
不確実性の高い時代に、自社の経営戦略の実現に向けて、どのような人事戦略を描き、組織変革を起こしていくのか。DX時代に必要な人材マネジメントのあり方とは。株式会社KAKEAI インタラクションラボの所長であり、前アクセンチュア執行役員人事本部長の武井章敏氏が登壇した、東洋経済新報社セミナー「会社と従業員をつなぐ人材マネジメントとは 〜不確実な時代に強い組織になるために〜(2021年9月30日開催)」の基調講演についてのイベントレポートです。
Profile
武井章敏氏
株式会社インタラクションプロ 代表取締役
株式会社KAKEAI インタラクションラボ所長
前アクセンチュア執行役員人事本部長 兼 グローバルHRマネジメントコミッティメンバー
Q:デジタルとアナログ、どちらが大切か?
愚問ですが、デジタルとアナログはどちらも素晴らしく、得意領域・不得意領域があります。デジタルは、一瞬一瞬の時間や量を細かく正確に表示できます。アナログは、大きな流れの中で時間や量の変容を掴んでいける良さがあります。
DX(デジタルトランスフォーメーション)とは、「デジタルテクノロジー」と「アナログ(=ヒューマンスキル)」を掛け合わせることによって、人や組織、社会の課題を解決するイノベーションです。本日は、イノベーションを起こしていくために、「アナログ=ヒューマンスキル」をどう活用していかなければならないのかについてお話しします。
Q:強い組織になるために、本気で意識すべき3つのこと
【1】時代はVolume to Valueへ(組織ニーズ・マネジメントの変化)
大前提として、Volumeの時代からValueの時代に変わりつつあり、マネジメントの価値観も大きく変化しています。
マネジメントの拠り所は、「経験や成功体験に基づく前例主義(=確実性重視)」から、「物事の本質に目を向け、既存のやり方を疑い変化を恐れない(=創造的破壊者)」ように変わることが必要だと言われていますが、実際に日々のマネジメントではどれぐらいシフトできているでしょうか。
組織体系は、ピラミッド型の「固定的なヒエラルキー」から、様々な知識や知恵が循環し、一人ひとりが有機的に繋がって1+1が2以上の効果を生んでいく「循環型の有機的なつながり」に変わっているでしょうか。まだまだ旧態依然とした組織体系の中で、なんとかして変革を起こそう、新しいアイデアを生み出そうとしていることはないでしょうか。
成功要因は、「論理的に筋が通っているか、儲かるのか」ということから、「正解が分からない中で、まずはやってみる。自分自身の感性や本当の想い・願いに立脚して、一人ひとりが自立分散的な行動を取る」ことに変わっていますが、果たしてそうなっているでしょうか?
マネジメントスタイルは、「指示型」から「共創型」に変わっているでしょうか。自分自身をドライブするものは、「与えられた役割・立場・責任」から「自ら生み出す理念・目的・共感・共鳴」に変わっているでしょうか。
このテーマの出発点はここになります。これらができていれば、自然とトランスフォーメーション、イノベーションというものが生まれてくると思います。
【2】個人知を集団知に変える、“Direction” to “Interaction”
人材マネジメント変革に取り組むにあたっては、2つの成功要因があります。
一つ目は「なぜ(Why)」を追求することです。兎角「何を(What)」「どうするか(How)」という議論は数多く行われますが、自分自身、上司・リーダー、ステークホルダーにとって「なぜその仕事をするのか?」という意味を問い、そしてそれを繋げていくことが非常に重要になってきます。これは、ピラミッド型の組織でも同心円型の組織でも共通です。What・Howより、Whyに注力していくことが、経営の想いと従業員の想いを繋げる一つ目の成功要因ではないかと思います。
二つ目は「Interaction Model」です。正解のない世界では、一人ひとりの発言・想い・願いに耳を傾けて繋げていかないと、そこに新しいチャレンジは生まれていきません。全てを同心円型に変えていくことは非常に大きなチャレンジになりますが、今までにないものを創造していく、一人では解決できないことをみんなの知恵を集めて取り組んでいくためには、どのようにして同心円型・共創型の組織にシフトしていくのかが非常に重要なテーマになってきます。
では、同心円型・共創型の組織にシフトしていくためにはどうしたらよいかというと、3つの提言があります。
一つ目の提言は、新しいものを生み出していく時に、誰と関わるところから始めるのか、という観点です。多くの組織では、他部門やお客様などの「ステークホルダー」と関わるところから始めることが多いと思いますが、まずは「自分自身」と関わるところから始めることを提案します。自分の想いや願い、価値観、自分がそこで何を成し遂げたいのか、どうしてその仕事に取り組んでいるのか。ここにしっかりと目を向けていかないと、ステークホルダーはもちろん、上司と密に関わることも難しいのではないかと思います。次のステップは、実行フェーズでの上司との関わりです。上司と部下は組織の最小単位なので、対話を通して想いを繋ぎ、上司としっかりと握ることです。そうしないと、ステークホルダーとぶつかった時に玉砕します。上司の方は、メンバーと一緒に動いてステークホルダーを巻き込んでいく「共創のスタイル」が重要になります。まずは自分、そして上司・リーダーの巻き込み、最後がステークホルダーへの働きかけ、という順番で進めることが、勝利の方程式に繋がるのではないかと思います。
二つ目の提言は、変革への取り組みを文化風土に変えていくためには、変革の習慣化サイクルをまわしていく必要があるということです。コロナ禍になり、みなさん非常に多くのことを学んでいらっしゃると思います。そして実践の部分も、日々多くの時間を使っていらっしゃると思います。ただし変革の習慣化サイクルをまわすためには、2つのポイントがあります。まず、学んだことをそのまま実践するのではなく、自分ごと化する時間を取り入れることです。学んだことは自分にとってどういう意味があるのか、組織やお客様や社会にとってどういう意味があるのかをしっかりとセンシングし、自分が主体者として取り組む理由(Why?)を明確にする時間です。もう一つは、実践した後にしっかりと振り返り、上司やステークホルダーからフィードバックをもらう時間を取り入れることです。様々な見方からフィードバックをもらうことによって、自分の取り組みを客観的に見ることができ、次に繋げていくこともできるようになります。この「自分ごと化」と「振り返り・フィードバック」の時間をしっかり取ることが、様々な変革への取り組みを習慣化していくサイクルに繋がるのではないかと思います。
三つ目の提言は、企業あるいは部署として、そういった個人を応援する、コミュニケーションが活発な共創型の組織にしていく必要があるということです。現在は、一人ひとりが非常に多忙で、様々なことを抱えて困っている状態です。個人の役割・ミッションをしっかりと定義し、必要な人を巻き込みリードしながら、共に新しいこと・大きなことを成し遂げていく。そこに労力を惜しまない組織に変えていくために、一つひとつ積み重ねていくことが重要です。
【3】企業価値を生み出し続ける共創型組織へのPIVOT
マネジメント・組織が「決められたことを指示通りやる、Direction型」から「無から有を生み出す、Interaction型」にピボットすることによって、今の事業を未来の事業に変えていくことができます。新しい事業もいずれはコモディティ化していくので、Interaction型の組織体制を継続しながら、イノベーションを繰り返し共創していく必要があります。
IDEO社のCEO、Tim Brownの言葉に「いかなる個人よりも、全員の方が賢い 」というものがあります。この不確かな時代、過去の経験や成功体験からは新しいものが生み出せなくなっている中では、一人でどれだけ考えていてもなかなか次の一歩が踏み出せません。一人ひとりの力を引き出して個人の知恵を出し合い、個人知を集合知化して、全員の力をもって企業運営をしていくことが重要です。
Q:組織の力を最大化する人事・リーダーの役割
株式会社KAKEAIのインタラクションラボでは、組織の力を最大化する人事・リーダーの役割について、対話を通してこの時代の最善策を共に考えていく場を設けています。
たとえば
・会社の価値観に共感する人材を、幅広く採用し育てる
・個性を尊重し、多様性を認め合いながら団結させる
・社員が自ら学び、共創する環境作りに本気で取り組む
・多様性の受容こそ、変化を乗り越える源と信じて行動する
・聖域なきコンプライアンス遵守が企業の存続を左右する
・仕事の価値観を変えることから、働き方が変わる
といったテーマについて、各社の取り組みも交えながら議論を深めていきます。
ご興味のある方は是非インタラクションラボにご登録をお願いします。みなさんと一緒に議論を重ねながら、この時代の最善策を共に考えていけたらと思っています。