1on1定着率95%超──。3000人超の組織を動かす「育成」と「フォロー」の仕組み

KDDI Sonic-Falcon株式会社
経営管理本部 人事部 人財マネジメントG
根井 裕之さん

Q:1on1を推進している背景を教えてください。

「育成」と「フォロー」の両輪で、社員の成長と定着を実現するため

1on1には二つの重要な役割があります。社員の成長を促す「育成」と、退職を防ぐための「フォロー」です。

副社長の島田が掲げる通り、組織の持続的な成長には人材育成が不可欠であり、その成否を握るのがマネジャーの力量です。

「1on1という決まりきった場があってこそ、上司と本音で話せる」。こうした現場の声は、定期的な対話の機会がもたらす価値を端的に示しています。

メンバー層の中には、自ら意見を発信できる者がいる一方で、そうでない者も相当数存在します。1on1という公式の対話の場がなければ、後者に対するフォローや育成の機会は失われかねません。

Q:組織の特性に応じて、1on1はどのように運用されていますか。

マネジメントラインごとに1on1の目的を明確化し、効果的な対話を実現

当社では主に次の二つのラインで1on1を実施しています。
1. 管理職 × 営業メンバー
2. 営業メンバー × 店舗スタッフ

全国に店舗を展開する当社では、店舗スタッフの新陳代謝が激しく、毎月のように入れ替わりがあります。この状況を改善し、店舗スタッフの定着率を高めるため、日常的に接点のある営業メンバーが1on1を通じたフォロー役を担う体制を整えました。管理職が直接行うには対象人数が多すぎることも、この判断の理由の一つです。

1on1の運用方法はラインごとに変えています。管理職×営業メンバーの場合、「業務進捗」「キャリア」「困りごと」など、メンバーが話したいトピックを自由に選択できる形を取っています。一方、営業メンバー×店舗スタッフの場合は、「業務上の不安解消」にトピックを絞っています。

この使い分けは、各層の役割とスキルセットを踏まえた判断です。マネジメント経験を持つ管理職は、キャリア形成支援から日常業務の課題解決まで、幅広いテーマでの対話が可能です。

一方、営業メンバーにはスキルの個人差があるため、「業務不安の解消」という明確なテーマに絞り、すべての店舗スタッフに対して同レベルのケアを提供することを優先しています。

Q:1on1推進において、Kakeaiにどんな期待がありますか。

「徹底」から「質の向上」へ、データに基づく1on1推進を実現

人事部門としてKakeaiに期待するのは、「組織全体への1on1の徹底的な浸透」と「対話の質の向上」です。

実施状況の管理においては、Kakeaiで得られるデータと社内の様々な組織サーベイを組み合わせることで、有益な知見が得られています。

当社ではエンゲージメントサーベイを組織の「通信簿」として位置付けていますが、1on1の満足度が低い部門ではエンゲージメントが低いといった相関関係が明らかになりました。

特に注目すべきは、エンゲージメントサーベイの主要指標である「人間関係」「承認」「支援」の三項目と、Kakeaiの満足度との間に強い相関が見られたこと。このようなデータの裏付けは、1on1推進の強力な後ろ盾となっています。

現在、全社の1on1実施率は現在95、6%に達し、「組織への浸透」という当初の目標はほぼ達成できました。次なる目標である「質の向上」においては、Kakeaiのメモ機能が重要な役割を果たしています。

対話内容を記録として残すことで、個々の1on1は単発の面談ではなく、継続的な対話として積み重なっていきます。上司からの具体的なフィードバックも記録に残ることで、部下の成長やモチベーション向上につながっています。

Q:1on1の定着に向けて、どのように推進されましたか。

トップダウンの徹底と現場の声の反映で、高い実施率を実現

新しい施策への抵抗感は付きものです。しかし、一度実践してみないと良さは分かりません。そこで初年度は、全社での「徹底実施」を最優先課題としました。

島田副社長が期初の方針説明で1on1の重要性を強調し、その実施を組織のKPIに設定。毎月の営業部長会議でも進捗状況を確認する体制を整えました。

さらに、1on1での対話内容を経営層と人事部門が定期的に確認する方針も打ち出しました。以前は「特になし」「ありがとうございました」といった形式的な1on1のメモが散見されましたが、経営層が1on1の実態を注視する姿勢を強めたことで、マネジャー層の取り組みは着実に深化しています。

一方で、トップダウンだけでは本質的な定着は難しいと考え、現場の声にも丁寧に耳を傾けています。2年目からは管理職向けにKakeaiの活用法を学ぶ勉強会を実施し、理解促進のための動画コンテンツやQ&Aを整備しました。
私自身も、フロアでの立ち話や研修の場で積極的に現場の声を集め、施策に反映するよう心がけています。現場の実態を知る努力なしには、どんな取り組みも机上の空論に終わってしまいますから。

Q:現場のマネジャー、メンバー、人事部にとってKakeaiはどのように役立っていますか。

それぞれの立場で異なる価値を見出し、組織全体の対話力が向上

導入から2年を経て、Kakeaiは各層で異なる価値を発揮しています。

メンバーにとっては「記録に残る上司からのフィードバック」が、何より大きな意味を持ちます。私自身、あるメンバーがKakeaiで褒められた内容を見返している場面に遭遇しましたが、こうした記録は日々の励みとなり、着実な成長を後押ししています。

マネジャーからは文字起こし機能への評価が特に高く、会話内容がリアルタイムで文字化され要約されることで、メモを取る負担から解放されました。過去の対話内容を振り返れるようになったことで「前回の話を覚えていない」といった不信感も解消され、より継続的な対話が実現。さらに1on1スキルを自己分析する機能により、当社全体として「アドバイス」は得意な一方で「傾聴」に課題があることも見えてきました。

人事部門としては、毎月100%実施を目標に掲げる中、全社の進捗を細かく把握できる点が貴重です。月末には「今月の実施状況を教えてください」という問い合わせが休日でも飛び交うほど、組織への定着も進んでいます。
これらの機能をより効果的に活用できるよう、Kakeaiのカスタマーサクセスチームは、私たちの要望に柔軟に応えてくれます。たとえシステム対応が難しい場合でも、目的に即した代替案を示してくれる。このサポート体制が、1on1の継続的な進化を支えています。


※上記事例に記載された内容は、2025年2月取材当時のものです。閲覧時点では変更されている可能性があります。ご了承ください。