【1on1 Days イベントレポート】
8月3〜5日の3日間、1on1における現実の工夫や挑戦を共有するオンラインイベント、1on1 Daysを開催し、組織と一人ひとりの今とこれからに向き合う企業とマネジャーに登壇いただきました。このセッションでは、「スキルや力の向上について」の1on1でPeople Success Awardを受賞された直井英樹氏をお招きして、現場における1on1実践の場で、どのような工夫や挑戦をされているのかをお話しいただき、今後のマネジメント進化についてのヒントを探りました。
Profile
ゲスト
直井英樹氏
株式会社JTBコミュニケーションデザイン
コーポレートソリューション部 プロデュース局  マーケティング課
モデレーター
本田英貴
株式会社KAKEAI 代表取締役社長 兼 CEO
Q:Awardを受賞された昨年半年は、どのような位置付けで1on1を実施していましたか?
直井氏:会社として1on1を推進していく前から、1対1で話す時間を作っていました。昨年の部署はメンバーが9名いましたが、週に1回〜多いメンバーは週2回の頻度で1on1の時間を作り、近況報告や進捗を話していました。
1on1以外にも、週に1回、みんなで円になり、立ちながら話すStand up Meetingをやっていました。今週何をやっていくか、先週何をやったか、不平不満はないか等を、メンバーに1人1分で話してもらう場です。コロナになる前まで3〜4年は続けていました。
本田:全体ミーティングもちゃんとやりながら、個別の1on1もされていたんですね。そんな中で、会社としても今年の1月ぐらいから1on1を強化していこうとなりました。全体ミーティングと比べて、1on1の意味合いはどのように捉えていましたか?
直井氏:ミーティングはみんなが集まる場なので、個別の話はできません。1on1の時は、仕事の話は1割ぐらいです。9割は、最近の話や、頑張っていること、仕事やプライベートで悩んでいることをメンバー各自から引き出しながら、アドバイスをするようにしていました。仕事の話はあまりしていません。
本田:直井さんは「スキルや力の向上について」の1on1において、満足度がトップでした。その点で意識されていることはありますか?
直井氏:特に入社2-3年目のメンバーたちは、自分が仕事でうまく成長できているのか不安に思っていることが多いです。チーム全体で、若手メンバーの悩みをキャッチするようにしていました。他のメンバーから「あの子こういうこと困っているらしいですよ」と聞きつけ、本人との雑談の中で敢えてこちらからその話を投げかけ、本人から悩みを引き出すような動きをとっていました。悩んでいるところがどこなのかが分かれば、適切なアドバイスもできます。
本田:1on1の場なのに、メンバーが選ぶ話題が具体的な業務の話に終始すると悩んでいらっしゃる上司の方も多いです。マネジャーとしてはプライベートな話やメンバーの悩みを引き出したいものの、なかなか上手くいかない、と。その点で直井さんが意識されていることはありますか?
直井氏:1on1の場で突然悩みを引き出そうとしても、なかなか上手くいきません。たとえ嫌なことがあっても、マネジャーがいつもニコニコしてメンバーが話しかけやすい雰囲気をつくっていると、相手も力が入らなくなり、色々な話をしてくれるようになります。私はあまり上下関係も作らないし、メンバーにこまめに声をかけるようにもしています。メンバーが身構えずにコミュニケーションできるように普段から心がけること。そういう自分を作るしかありません。
本田:直井さんは、メンバーの方が素直に話す土壌が日常的にできているように思います。中には「この人、なかなか本音で話してくれないなぁ」と思うメンバーの方もいらっしゃいますか?
直井氏:あまりいないですね。この子なんか隠してるなぁと思うと、顔にも言葉にも出ます。普段からあまり嫌いな人を作らないようには意識しています。仕事柄、どんな方とも仲良くなって関係性を作っていく必要がありますが、メンバーとも関係性を作っていくところから始めようと思いました。関係性を作るためには、何よりも信頼が大事です。まず最初に、自分がメンバーを信頼するところから始めました。そうすると、メンバーも自分を信頼してくれます。
Q:1on1という時間を設定するようになって、変わったことは?(自分自身/メンバー)
直井氏:1on1があったからこそ、メンバー同士が仲間を大切にするようになってきました。みんなでコミュニケーションを取りたいと思うメンバーが多く、みんなで集まる楽しさ、みんなで話す楽しさを感じていました。他の局や課にはないような、メンバー間の横のつながりができてきました。オンライン飲み会をやったりもしていました。
本田:直井さんとの1対1の対話が、チームのメンバー同士の関係に影響を与えるステップをもう少し詳しく教えてください。
直井氏:チーム制にしていたので、チーム長にはチーム内のメンバーの状況を先に聞くようにしていました。そうすると、チーム長も自然とメンバーのコンディションをいつも気遣うようになります。そして、チーム長から聞いた話をもとに、私がそのチームメンバーと1on1をすると、メンバーも「あ、私のこと、気にかけてもらってるんだな」と思ってくれます。それを続けていくことで、チーム全体に「仲間を大切にしようとする気持ち」が徐々に醸成されていった気がします。
本田:一人ひとりを理解するスタンスがチーム全体に広がったことで、横のつながりもでき、「仲間を大切にしようとする気持ち」がチーム全体に醸成されたということですね。素晴らしいです。
直井氏:あとは、女性同士・男性同士でしか言えないこともあると思うので、女性メンバーには女性メンバーが、男性メンバーには男性メンバーが、できる限り話を聞き出してあげられるような環境も作っていました。そうなると、メンバーが一人で貯め込むことなく、メンバーから自発的に相談してもらえるシチュエーションを作ることができます。
Q:1on1の難しさや、それに対する工夫は?
直井氏:人間、調子が良い時も悪い時もあります。メンバーのコンディションが悪い時は、何を話しても前を向けない話になることもあります。そういう時は、違う話をしたり、悩んでることないの?と投げかけたりして、「なぜ気持ちが沈んでいるのか?」に気付いてあげられるようになりたいものの、これがなかなか難しいです。1on1の難しさというよりも、そのタイミングでのコミュニケーションの難しさだと思います。
本田:そのタイミングでのコミュニケーションはなかなか難しいですよね。そんな時に工夫されていた点はありますか?
直井氏:人を変えてアプローチして、そのメンバーが「なぜ悩んでいるのか?」を引き出すようにはしていました。局長に相談して局長から話をしてもらったり、他のメンバーから連絡してもらって相談にのってもらったりはしていました。
本田:上司の方との関係もちゃんとしてないと、メンバーとの間で何かあった時も、相談しにくかったり、ちゃんと伝わらなかったりします。直井さんの場合はおそらく上の方とのコミュニケーションもうまくいっている気がします。メンバーのコンディションについても上司の方に共有されたりしていましたか?
直井氏:局長とも定期的に話をする機会は設けていたので、その時間に共有するようにはしていました。局長にも週1・週2の会議に一緒に入ってもらったりしていました。
本田:現場でマネジメントを担っているマネジャーのみなさんが、どんどん孤独になっているという話もよく言われたりします。メンバーからどう思われているのか、上司からどう思われているのか、等。そういったマネジメント側の気持ちの弱りを感じられたりすることはありますか?
直井氏:確かに私の愚痴を聞いてくれる場所はなかったです。メンバーには冗談で「みんな愚痴を言ってくれるけど、俺の愚痴は誰も聞いてくれないからさぁ」と話していたりはしていました。そういった意味でも、1on1をお互いが楽しくなれるような場にするのは大事だと思います。
Q:現在は、どのように1on1を行っていますか?
直井氏:実は、4月に新しい部署に異動になり、第1四半期は正直ミーティングどころではなかったので、1on1をお休みしていました。18年間携わっていたプロモーションの分野から、全く畑が違う企業ミーティング・イベントを扱う部署への異動です。私以外は元々いたメンバーで、仕事のやり方も全然違います。直属のメンバーも18人と倍に増え、今までほとんど話したことがないメンバーばかりです。この状況を克服してからでないと、1on1を始めるのは難しいと思いました。
3ヶ月経ち、ようやく仕事にもある程度慣れてきたので、7月から新しい部署でも1on1を始めることにしました。一人ひとりのメンバーがどういう方なのかもなんとなく分かってきたので、1on1を始めるにはいいタイミングだと思います。
本田:それは大変な状況でしたね。ちなみに、新しい部署で全員がリアルに集まって顔を合わせるような機会はあるのですか?
直井氏:ないですね。現在「リモートワーク」を基本とする働き方となっているので、全員がリアルで顔を合わせる機会はありません。出社しない方も半分くらいいます。私自身も週1〜2回の出社です。出社する日も、子供が小学校から帰ってくるので、3時くらいには会社を出て、家でリモートワークをしています。
本田:いいお父さんですね、 そんな一面もあるんですね。ちなみに、3月までいらっしゃった以前の部署と、現在の部署とでは、1on1のやり方は変えられますか?
直井氏:3月までやってきたことはよかったと思っているので、同じようなことを新しい部署のメンバーにもやってあげたいと思っています。仕事の話はあまりせず、プライベートの話や悩んでいることを引き出したり、こうした方がいいと思っていることがあればちゃんと改善して、チームとしてやっていきたいです。ただし、メンバー数が倍になったので、物理的なネックはあります。会社からは月2回は1on1をやってくださいと言われているので、1人10分でもよいので、定期的に1対1で話せる機会を作っていけたらと思っています。
Q:1on1とは?
本田:最後に改めて「1on1とは何か?」という問いを立てると、どうお答えになりますか?
直井氏:1on1は「信頼関係を構築し、チーム全体の横のつながりを紡ぐ場」だと思っています。実は、自分の息子の名前も「信頼」と名付けました。人から信頼される人間になってほしい、というのが命名の背景です。