DX人材を輩出するための育成プログラム、成長を加速させる4種類の1on1、1on1の文化醸成・推進の取り組み実例。

【1on1 Days イベントレポート】
1on1における現場の工夫や挑戦を共有するオンラインイベント、1on1 Daysを8月3〜5日の3日間に渡って開催しました。組織と一人ひとりの今とこれからに向き合う企業として、本セッションでは、NTTコミュニケーションズ株式会社 ビジネスソリューション本部 事業推進部 事業戦略部門 主査 坪田翔悟氏、主査 澤美香氏にご登壇いただきました。
「事業変革のための成長支援1on1〜次世代を担うDX人材の生み出し方〜」をテーマにお話しいただいたセッションをご紹介します。
Profile
ゲスト
NTTコミュニケーションズ株式会社
ビジネスソリューション本部
事業推進部 事業戦略部門
主査 坪田翔悟 氏
主査 澤美香 氏
モデレーター
皆川恵美
株式会社KAKEAI 取締役 共同創業者
Q:事業ビジョンと事業変革を推し進める育成プログラムとは
坪田氏:当社ではRe-connect Xという事業ビジョンを掲げ、リモートワールドにおける価値の再定義に挑戦しています。
具体的には、Smart CityやSmart Factoryのような「Smart World」と呼ぶ世界観をお客さまと共に実現することを目指しています。またそれを推進するデータ利活用のプラットフォームサービスとして「Smart Data Platform」を2019年から提供開始しました。一方で、お客さまのDXを実現する存在であるために、そもそも当社が「自らのDX」を実現することが必要です。
「自らのDX」と一言で言っても、「データドリブン経営の実現」「With/After COVID-19の 働き方改革への取り組み」など様々なテーマがあります。その中で、人材のDX、つまりお客さまの事業発展に貢献できる「DX人材の輩出」について本日お話しします。
澤氏:当社には、「個人」と「事業」の成長循環を実現するための「ODYSSEY」という人材育成プログラムがあります。事業視点での「会社の事業成長を支える 人材開発の仕組み」と個人視点での「社員のエンプロイアビリティを高める仕組み」を連携させ、事業と個人双方のPDCAを循環させるプラットフォームになっています。事業の視点では戦略上必要な人材を定義し、個人の視点ではキャリア開発の第一歩として「自身の経験やスキル、得意領域」を棚卸し、更には新天地に自らチャレンジできるような機能も搭載しています。
「ODYSSEY」のプラットフォームとしてのポイントは3つあります。1つ目は、【Talent】で、従業員が目指したくなる魅力的な47タレントと193のスキルが公開されています。2つ目は、タレント・スキルのオープン化で 個人と個人をつなぐ【Open】です。これによって、個人は自分が目指すタレントのロールモデルを探すことができます。「ODYSSEY」の個人画面ではプロフィールや職歴・社外スキル等を公開されているので、誰でもその情報を閲覧できます。また、蓄積されたそれらのデータをもとに組織内の現在の育成状況とKPIとのギャップ等を可視化し、課題を明らかにして次の施策に活かすなど、人材開発もデータドリブンに行っています。
3つ目としては【Active】で、新規プロジェクトのオーナーは公開された個人のスキルや経験を参考にプロジェクトメンバー候補者へオファーを出す仕組みもあります。人事異動だけではない、個人の活躍の機会が広がり続けています。
皆川:今後の事業成長に準じたタレント要件が、従業員の皆さんに公開され、それを確認しながら、個人が今後の得意領域を伸ばす方向性を考えられるようになっているということですね。また、所謂、可視化の意味合いでのタレントマネジメントだけではなく、実際に個人や新規事業のプロジェクトオーナーの方が相互にオファーしあえる事で、事業と個人のニーズをマッチさせる仕組みも内包されておられるのですね。
Q:DX人材をいかに輩出し続けるか
坪田氏:DX人材、特にその中でもコンサルタントやビジネスインキュベーターは、エンジニアの技術スキル習得のように体系化された育成がなかなかなく、育成が難しい人材と認識しています。そんな中で、社内外の有識者とディスカッションした結果、もちろん知識・手法の習得は重要なものの、一番は経験の積み重ねである、ということです。
そこで、これらのDX人材の育成を加速するために、経験学習・OJTを支援する仕組みとしての1on1を週単位で回しています。例えば、ICTコンサルタント育成の場合、「コンサル活動そのものに関するレビュー」だけではなく「コンサル活動における当人の行動・コンピテンシーについての振り返り・フィードバック」もこの1on1のテーマになります。
坪田氏:さらに、成長を加速させるための1on1を実現するために、実はケースによって3種類の1on1を実施しています。1つは、同じチームの熟練者との1on1で、実際に共にプロジェクトを遂行している先輩(≠上長)だからこそ、リアルなフィードバックができると考えています。2つ目は他部署の先駆者との1on1で、例えばコンサルタントの熟練者がコーチになって、セールスの若手と1on1をするイメージです。それによって、セールスメンバーのコンサルスキルを磨いたり、視座を高めたりということを狙っています。最後に3つ目として、社内にこだわらず、他社や業界の有識者との1on1も行っています。他社でビジネスプロデューサーとして活躍している方に、いかにビジネスをゼロから生み出していくか、そのメンタリングをして頂けることが貴重な成長機会になっています。
皆川:斜めの部署の上長や先輩との1on1をやっているというお話は最近よくお伺いしますが、同じチーム内の先輩や社外の知見者などの1on1など多様な組み合わせで経験からの学びを得られるように設計・運用されているのは素晴らしいですね。
澤氏:中長期的な取り組みとしては、2020年10月に「キャリアデザイン室」を設立しました。人生100年時代、多様な働き方・生き方の選択肢の幅が広がる中で、仕事だけではなく「人生そのもの」をスコープにしながら、「何を選択したらいいのか?」とキャリアに悩んだ際に1on1の相談を申し込めます。複数のキャリアのプロたちが、専任アドバイザーとして1on1で対応してくれることで、自身の強みを発見し、そこからキャリアイメージを膨らませることや働き方を見直すきっかけに繋がっているようです。
坪田氏:また今後の取り組みとして、育成責任とプロジェクト運営責任を分離し、それぞれに注力ができるように、育成責任を担う 「ピープルマネージャー」を当社の一部エンジニア組織に導入していきます。エンジニア育成の強化と柔軟なリソースアロケーションの実現に向けて、旧来から根強く残っている「ライン」で繋がる組織から「ミッション」で繋がる組織への変革を進めています。そのために、個人の自律的なキャリア形成を支援し、育成責任を一手に担うピープルマネージャーを導入する戦略です。このピープルマネージャーの役割を遂行する上で、KAKEAIを1つの武器にしていこうと考えています。
Q:1on1の文化醸成・推進に向けて
澤氏:1on1の文化醸成と知識の習得の取り組みとしては、トップダウンとボトムアップの施策を組み合わせて展開しています。トップダウンの一つは、経営層から部門長、グループリーダーそして、チームリーダへと上位職から順番に研修を展開しています。研修は1on1の意義・効果を理解し、必要となるコミュニケーションスキルを習得できる内容ですが、上位職が先立って1on1の理解を深めることで、一番効果・負荷がかかるチームリーダがメンバーとの1on1を推進しやすくなる狙いもあります。一方で、ボトムアップの施策としては、1on1の勉強会や技術顧問による1on1のレクチャーなど、各職場での1on1事例の紹介や、マネージャー同士の悩みを相互シェアする時間も設けています。
また、弊社では基本テレワークでの勤務となっていることもあり、HRtechの活用も進めています。1つは、日々の業務の中で感じた感謝や称賛をカードにして”おくりあう”ことができる「PHONE APPLI THANKS」です。テレワークの場合は、コミュニケーション量も減少しがちなので、気軽に、かつ自然に横を繋げる・互いに褒め合う組織風土作りに繋がっています。
もう1つは1on1のサポートとしてのKAKEAIです。セルフアセスメントで上司と部下の特性を把握できて相互理解につながりますし、1on1を継続していく上での支援ツールとして活用しています。例えば、メンバー側では、「話したいことと、相手に期待する対応を選ぶだけで、シンプルに事前準備ができる」「1on1で自分の話したいことが話せるようになった」という声がありました。また、マネージャー側では「事前に話したいこと、求められる対応がわかるので、話がスムーズになった」「メモも使って継続することで対話の質の向上も感じる」という声も寄せられています。
また、これらのHRtechのツールは、導入することに留まらず、しっかりと活用していく風土を組織として醸成していくことも重要だと考えています。「PHONE APPLI THANKS」も「KAKEAI」も有効活用しているマネージャーをフィーチャーして、事務局からの感謝もこめて部長会議等で紹介・称賛したり、上手く活用するコツを共有してもらうことで組織全体の活性化に繋げています。
こうした取り組みのみでなく、弊社ではセールスプロセスの改革も進めています。例えば、法人営業におけるアプローチ手法のバラツキを解消し、組織的な共通認識のもとに活動できるようにAI等によるネクストアクションの示唆を営業担当者が入手できるようになっています。まだまだ試行的にスタートしたばかりの仕組みですが、これまでの営業データやノウハウをもとに、わざわざ上司が指示やアドバイスをせずとも、自動的にAIが示唆をしてくれるようになれば、過去からの学びや業務上必要なアクティビティの指示はAIが担う。一方で、新たなビジネス共創に関するディスカッションや部下のキャリア形成など、本来時間と知恵をかけるべき、創造的で未来志向な対話に時間が割かれるような、そんな世界観が実現できることを理想とし、施策を発展させていきたいと思います。
坪田氏:本日は様々お話をさせて頂きましたが、最も重要なことは「何のための1on1なのか」を各社様の目指す姿に向けて、研ぎ澄ますことと考えています。当社も試行錯誤しながら新しいチャレンジを続けている状況です。また、皆様とも情報交換などもさせていただければ幸いです。本日はありがとうございました。